岐路に立つ日本を考える -4ページ目

岐路に立つ日本を考える

 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 人民元のSDR構成通貨入りに関しては11月に開く理事会で最終的に判断するということになっていますが、どうもこれを認める方向にIMFは傾いていると考えざるをえない事態が進行しています。

 10月9日に開かれたIMFの国際通貨金融委員会において、中国の国家統計局は本年の上四半期の中国のGDP成長率に対して、ともに7.0%を達成したと主張しました。そして、今月19日(2015年10月19日)に発表予定の第三四半期のGDP成長率についても、少し下がるかもしれないが、概ねこの水準を維持すると述べています。つまり、中国経済は昨年と比較してもほとんど減速していないとの判断を述べたということになります。これだけでも驚きですが、なんとIMF自身が中国の本年の経済成長率を6.8%、来年(2016年)についても6.3%との従来予測を変更しなかったのです。

 中国の輸入数量は対前年同月比で15%程度のマイナスが続いていますが、輸入が大幅に減少している中で国内の経済が相変わらず7%を維持しているというのはありえないでしょう。ちなみに輸出も対前年同月比で6%程度のマイナスが続いています。それなのに、経済成長率は相変わらず7%を維持しているというのが中国およびIMFの見立てだというのです。

 中国の奇妙な説明には続きがあります。中国のGDPに占める個人消費の割合は、今年の上半期は昨年より5.7%上昇して60.0%になったのだというのです。これを認めると、中国のGDPに占める個人消費の割合は2012年あたりから急上昇して、35%ほどだったのがついに今年は60%になったということになります。これはここ数年不況が深刻化するにつれてなぜか個人消費だけがどんどん伸びて2倍以上になったということになります。そして個人消費の急激な伸びがあるにも関わらず輸入数量が激減しているという、とても興味深い展開をしていることになります。どれだけ奇妙な議論を中国やIMFが行っているか、口をあんぐりせざるをえないでしょう。

 皆さんもよくご存知の通り、人民元は中国人民銀行の管理下にあって、その価格が市場原理によって決まる通貨ではありません。国境をまたぐ資本勘定の自由化が進んでいないどころか、これについては大幅に後退しているといえるでしょう。市中銀行が人民元を外貨に変える為替予約を締結する場合に、銀行は取引残高の20%をドル建てで中国人民銀行に預けないといけないとする規制を導入しました。要するに、外貨を購入して人民元を売るという動きを著しくとりにくくしたというわけです。クレジットカード(正確にはデビットカード)である銀聯カードを使っての海外での商品購入についても、1日につき1万元(約20万円)の引き出し上限額が設定され、今年は10月1日から12月31日までに引き出せる総額を5万元(約100万円)に、来年以降は1年間に引き出せる総額を10万元(約200万円)に制限するとしています。庶民の買い物には影響は軽微でしょうが、最富裕層に対する影響は極めて甚大でしょう。これは中国人民銀行の持つはずの外貨準備が実は流動資産としてはあまり保有されておらず、流動性のある外貨が尽きる心配を中国政府がせざるをえなくなっていることを如実に表していると考えるべきです。つまり、実質的には外貨準備は枯渇に近づいていると考えるのが適切だということです。

 本年(2015年)7月の上海株暴落に際して、空売りを行った人を「不正な相場操縦を行った」との容疑で逮捕するという事態も発生しています。暴落に慌てて投げ売りした人にまで捜査が及んでいるという、信じられない話も出ています。このような事態を放任した上で人民元のSDR構成通貨入りを認めた場合、SDR構成通貨入り後も同様の事態が発生しうる、つまり中国当局が自分の都合に応じてある日突然資本移動を認めないという処置を取りうることを認めることになる可能性もあるということになります。そのような通貨を準備通貨とすることは甚だ危険が高いということであるのに、IMFはこれにお墨付きを与えるかのような動きを見せていることになります。

 人民元のSDR通貨入りについては、欧州勢が賛成に回っており、日米の反対にも関わらず議決権の70%以上の賛成を得て可決される見込みとなっています。採用は最短でも来年(2016年)10月以降とされていますが、これを決めてよいのかどうかについて、欧州勢はまじめに考えるべきではないでしょうか。

 もっとも、アメリカのルー財務長官は中国に対して「市場原理に基づく改革」を要求しています。あまりに不透明でいびつな規制を撤廃しないと人民元のSDR通貨入りを認めないということなのですが、本年11月から今後1年間にそこまでの自由化を行えば、人民元の暴落は避けられないでしょう。また、一方でルー財務長官は先日の習近平との会談において人民元の安値誘導を認めないと釘を刺しました。両立しない2つの要求を突きつけることで、アメリカは中国を追い詰める方針を採用していると思われます。欧州勢が中国になびく政策を採用するのを黙認しつつ、結果として中国を徹底的に追い詰める戦略ではないかとも見えます。

 ただ、その結果は世界経済のハードランディングにつながるものであり、私としては歓迎できるものではありません。IMFが良識に基づいて人民元のSDR構成通貨入りを認めない結論に至ることを願っておりますが、どうもその道はなさそうだというのが現在の流れだと思われます。


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 なお、この記事は以下の記事を大いに参考にさせていただきました。
http://www.forbes.com/sites/gordonchang/2015/10/11/warning-the-imfs-not-worried-about-china/



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 元欧州中央銀行総裁のジャン=クロード・トリシェ、元FRB議長のポール・ボルカー、JPモルガンチェース・インターナショナルの会長であるジェイコブ・フレンケルなどが主導し、世界経済に対する影響力も非常に大きいG30が、衝撃的な報告を出しました。
http://www.reuters.com/article/2015/10/10/us-imf-cenbank-idUSKCN0S40VE20151010

 リーマンショック後に各国の中央銀行が乗り出した大胆な金融緩和策が経済成長に大してつながらない一方で、株価や住宅価格のバブルを作り出しているとしています。バブルが崩壊すれば、投資家のみならず銀行にも影響を及ぼし、例えば新興国への過剰融資が引き上げられることにより、新興国の経済状況を悪化させるリスクなどがあることを指摘しています。ただもう一方で、金融緩和をやめた際にどうなるかが読めないために、現状維持を続けることになるのではないかとの見方を示しています。

 事実上財政政策を封印して金融政策のみに頼る経済政策の不適切性がようやく世界の金融界のトップによって認められた意義は大きいと思います。何しろ、マネタリズムを当然のことだとみなしてきた彼らが、マネタリズムを否定する報告書を提出したわけですから。

 軟着陸が難しいと彼らが述べているこの環境において、軟着陸につながる可能性のある唯一の道は大胆な財政政策ということになるでしょう。特に日米がここで協調して大胆な財政政策を打ち出せば、需要不足に悩む世界経済の大きな救いになるのではないかと考えています。


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 最近意外な事実を知りました。農協系の日本農業新聞の2015年7月17日号によりますと、日本が無税で輸入するミニマムアクセス米のうち、年間10万トンの主食用のSBS米については、昨年の輸入量が1万1600トンにしかならなかったことが記載されていました。

 SBS米とは商社などが買い入れたい銘柄を指定して、入札によって購入する分です。例えばカルフォルニア産のコシヒカリを無税で買いたいなどと商社に申し出てもらい、こうした申し出が合計で10万トンの上限を超えるようであれば、政府に払う手数料が高い方から順次落札させるようにして、10万トンまでは無税で輸入できるようにしているものです。「これは儲かる」と商社側が判断すれば、年間10万トンを上限に無税で輸入できるはずなのですが、昨年は1万1600トンにしかならなかったわけです。無税なのに枠全体の1割強の1万1600トンにとどまっているって、不思議ですよね。
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33968

 この原因に関連して、日本農業新聞は「昨年は国産米の価格が下落したことで輸入米の価格メリットが薄れ」と記載しています。何気なく書いてありますが、これはコメの内外価格差がなくなっているということを意味するはずです。内外価格差がないために、わざわざ外国からコメを輸入しても、国内の良質のコメとは競争できないという判断を商社は下したということでしょう。

 1ドル120円で計算してみましたら、カルフォルニア産コシヒカリは60キロあたり11000円程度(日本までの輸送料込み)です。ちなみに国産米が60キロあたり12000円程度ですので、こうなると確かに内外価格差はほぼないと言ってよいかと思います。

 報道によれば、TPPによりコメは従来のミニマムアクセス米と別枠で米国に7万トン、オーストラリアに8400トンのSBS米の輸入枠を設定するとしています。国会決議に縛られていたので仕方がないところもありますが、これならば現在1キロ341円(60キロあたり20460円)という関税を大幅に引き下げて、例えば半額にする代わりに、ミニマムアクセス米を廃止するという選択肢の方がよかったでしょう。半額にしたところで60キロあたり10320円の関税ですから、事実上日本国内へのコメの輸入はできないからです。1/4にしたところで外国のお米が日本の国内に入ってくることは極めて難しいでしょう。内外価格差が3倍とか4倍とかある場合とほとんどない場合では、どのような農業保護策がよいのかという中身は当然変わってくるはずで、私もこのあたりの知識を十分持っていなかったことを、今更ながら反省しています。


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 「急募!! 「油」を売る人 減り続けるガソリンスタンド ピーク時から45%減少」との記事が、産経新聞に出ていました。
http://www.sankei.com/economy/news/150922/ecn1509220023-n1.html

 全国のガソリンスタンドの数はピークとなった平成6年度末に比べてほぼ半減し、「GS過疎地」と呼ばれる地域が広がっていること、全国の高速道路で100キロ以上GSがない「空白区間」が83箇所も出てきているようです。そのため、ガソリンスタンドに危険物取扱者がいなくても場合によってはよいようにする規制緩和をすすめること、地下埋設を義務付けていた貯蔵タンクの地上設置でも大丈夫なように規制緩和をすること、高速道路走行時の給油については、一般道に一旦降りて給油して戻ってくる場合には、高速料金が割高にならない仕組みを導入することを検討しているとのことでした。

 条件付きとはいえ、危険物取扱者の常時監視を必要としない無人のガソリンスタンドを認めることは果たして問題ないのでしょうか。隣接のコンビニなどに危険物取扱者がいればよいとのことですが、それでは大事になるまで問題に全く気づかないということになりそうです。くわえタバコでの給油や危険性の高いポリタンクなどへのセルフ給油が広がることにならないでしょうか。さらに貯蔵タンクの地上設置まで認めるとすれば、テロ対策の点からかなり大きな問題をはらむととは考えられないでしょうか。また、高速道路を一旦降りて給油せざるをえないとすれば、高速道路の利便性は大いに損なわれることにならないでしょうか。

 市場原理にものごとを委ねれば大半のものごとは解決すると、日本の役人の大半が本気で考えるようになってしまったのでしょうか。市場原理で解決できない問題が噴出してきたために、安全性や快適性を犠牲にした弥縫策で取り繕おうとするのは、本末転倒と言わざるをえません。

 価格競争力の高いセルフスタンドの広がりとともに、セルフスタンドとの価格競争を強いられるフルスタンドの利幅は大きく圧縮させられるようになりました。客数が減って利幅も減れば、経営が急激に悪化するのは当然でしょう。この結果、セルフスタンドへ切り替える資金余力のないスタンドがどんどん潰れています。そしてそうした資金余力のないスタンドはもともと客数の少ない地方にこそ多いということが悲劇を加速させているようにも感じます。さらに古いガソリンタンクの改修には2000万円ほどかかるらしいのですが、この改修義務に適応できないために廃業・倒産に追い込まれているガソリンスタンドも多いようです。人口減少期に入って自動車の保有台数が頭打ちとなっている上、ハイブリッド車の普及、軽自動車へのシフトなどから、ガソリン需要が年々減少している中では、将来のガソリンスタンド経営の展望が見いだしにくいのも事実でしょう。

 地方においてガソリンスタンドが消えるということは、冬場に暖房用の灯油を求める過疎地の家庭には深刻な問題となります。地方のガソリンスタンドは過疎地への配達を行っていることも多かったわけですが、ガソリンスタンドが消えることでこうしたサービスもなくなってしまうわけです。それはすなわち、そこで生活している人々の生存にも大きく関わってきます。

 市場原理に従う限り、需要の小さい地方において新たにガソリンスタンドを開業しようという動きが出てくることを期待することはできないでしょう。車の走行数が少ない地方の高速道路においても、ガソリンスタンドの経営は市場原理のみに任せてはなかなか難しいところがあるでしょう。自由競争が全ていけないという極論を展開するつもりは毛頭ありませんが、自由競争が優勝劣敗の原理であり、自然に任せておけば都心地域が勝って地方は敗北することにもつながり、その結果過疎化はますます深刻になるという当たり前のことを忘れるべきではないでしょう。


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 大量の難民が欧州に殺到にして大混乱を引き起こしていることは、皆さんもよくご存知だろうと思います。ハンガリーは対セルビア国境に加えて対クロアチア国境にも鉄条網を張り巡らせて、自国内への難民の流入を押しとどめようとしていることに加えて、さらに国境に軍を派遣し、限定的な武器の使用も認めました。セルビアはまだEU加盟が認められていないものの、クロアチアはEU加盟国であるので、EU域内での人の移動の自由を認めたシェンゲン協定は、事実上崩れたと言ってよいでしょう。

 この難民の大量流入に関して、まず見落としてはならないことは、このような無秩序な難民の群れが発生した原因は、中東や北アフリカでの政治状況の不安定化にあるわけですが、そもそもそうした不安定化を引き起こしたのが欧米の利己主義にあったということです。

 反米のイラクのフセイン政権は「大量破壊兵器を隠し持っている」との嫌疑をかけられて、アメリカによって潰されました。実際には大量破壊兵器を隠し持っていた事実はなかったにも関わらず、フセインは逮捕され、死刑に処せられたのは、皆さんもよくご存知の通りです。これがきっかけで中東の軍事バランスが崩れて無秩序化が始まりました。

 2012年に反欧米のシリアのアサド政権が危機に陥った時に、ロシアが穏便な形でアサド退陣を提案した際に、欧米側がこのロシア提案を受け入れなくてもアサド政権はすぐに崩壊すると見て拒絶していたことも明らかになりました。もしロシア提案を受け入れていたら、シリアにおける混乱も今よりはずっと小さいものになっていたでしょう。
http://www.theguardian.com/world/2015/sep/15/west-ignored-russian-offer-in-2012-to-have-syrias-assad-step-aside?CMP=share_btn_tw

 反欧米のリビアのカダフィ政権はNATOの空爆によって崩壊させられるなど、北アフリカでは「アラブの春」が吹き荒れました。カダフィは1970年に欧米資本の石油会社の国有化を断行したことから欧米からにらまれるようになりました。彼はリビアが資金の大半を提供することで、アフリカ独自の通信衛星ネットワークを持てるようにし、情報分野で欧米から自立しようとしました。アフリカ通貨基金などの金融機関を設立し、ここに欧米の資本を入れないようにして、欧米の金融支配からアフリカが抜け出す道を進めようとしました。こうした動きを欧米は好まず、カダフィ政権は転覆させられたわけです。
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2011/khadafi_plan_for_africa_.htm

 このように欧米の都合で安定政権の転覆が図られ、政治状況の不安定化がもたらされたことが原因となって難民の大量発生が生み出されているわけです。

 ここから汲み取るべき私たちの教訓は、武力にせよ、巨大な資本力にせよ、力を背景として現状変更を他国に迫るような政治手法は誤りだということです。欧米は自らが正義の立場にあるかのような顔をしてこれまで様々な現状変更を迫ってきましたし、中国も力を付けるにつれてその傾向を激しくしてきました。力による現状変更は悲劇と不安定化の玉突き現象を生じさせるのだということを、われわれは忘れるべきではないと思います。


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 安保法制において、予想されたこととはいえ、国会が紛糾しています。野党の女性議員が理事会室の前に多数集結し、鴻池委員長が理事会室から出ようとしても阻止し、邪魔をする女性議員を排除しようとすると「セクハラ」との筋違いの言いがかりを加えるという言語道断の事態まで起きています。この結果、参議院平和安全法制特別委員会を昨晩(平成27年9月16日夜)開くことができなくなりました。今朝(9月17日朝)も大きな混乱が続き、夕方には何とか委員会採決までは持ち込めたものの、どうやら明日(9月18日)にもこの混乱は持ち越されそうです。

 今回の安保法制が通ると、地球の裏側でアメリカが引き起こした戦争にも自動的に自衛隊が付き合わされることになるなどという思い込みを世間に広げてきたのが野党とマスコミです。彼らの反対は理に基づくものではありません。このことについて、改めて根拠に基づいて示していきたいです。

 今回の安保法制において、自衛隊が海外で武器の使用が許されるケースは極めて限られており、具体的には以下の2つのケースです。

 第一は米軍等のサポートに関わるケースです。ただ、これには「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に従事しているものの武器等に限る」との規定が入っています。我が国の防衛に資する活動に従事していない部隊の防御を自衛隊が行うことはできないのです。

 例えば、中国が日本を攻撃する場合に、日本の自衛隊や日本国への攻撃を敢えて避け、洋上に出ている在日米軍の艦船に対してのみ攻撃を行ったとしましょう。この場合に、日本の防衛のために駐留している米軍が攻撃されても、我が国自体はまだ攻撃を受けていないので、米軍を助けるために自衛隊が動くことができないというのは正しい状態でしょうか。こうした場合に米軍を助けることができないのでは、その段階で日米安保は機能しなくなります。米軍側が「日本を守るために日本周辺に来ているのに、俺たちが攻撃されても日本の自衛隊は助けようともしないのか」という気持ちを持つのは当たり前のことです。このような不自然な状態を終わらせたいが、かといって無制限な米軍への協力を行うわけにはいかないから、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に従事しているものの武器等に限る」としているわけです。これが危険なことなのでしょうか。

 第ニは国連の平和維持活動(PKO活動)における駆け付け警護です。自衛隊とともにPKO活動に参加している他国の部隊や、NGO活動に参加している民間人が危険にさらされた時に、武器を持って駆け付けて救出活動ができるという規定です。これについても、こうした規定を建前にして、紛争当事国の一方の側に肩入れしてもう一方の側を叩くために恣意的に利用できるのではないかとの心配は一応ありうるかと思いますが、そのようなことができないように、やはり厳しい条件を突きつけています。

 まず、①紛争当事者が停戦の合意をしていなければなりません。そして、②紛争当事者が我が国のPKO活動への参加に同意しており、③PKO活動が中立的立場を厳守している状態でなければなりません。受け入れ同意が安定的に維持されていることが確認できなければ、駆け付け警護はできないことになります。さらに、④国連安保理の決議とか国連総会の要請などがなければならないことになっています。つまり、紛争当事者の両側と国連の支持がない限り、駆けつけ警護はできないわけです。

 また、自衛隊が従来のものを超えた活動ができる規定としては、上記以外には主として以下の2つです。

 第一は在外邦人の保護に関わるケースです。この在外邦人の保護は在外邦人が危険にさらされていれば、常に行使できるというものではありません。例えば、中国において内乱が発生した場合に、邦人保護のために自衛隊を中国に派遣することができるかといえば、事実上無理だと言ってよいかと思います。なにしろ、邦人保護のためには中国政府がきちんと機能して公共の安全と秩序の維持が図られていて、なおかつ戦闘行為が行われていないということが前提なのです。その上で、中国政府が自衛隊が邦人保護のために出動することに同意していなければなりません。そして、中国政府と日本の自衛隊との間で邦人救出のための連携と協力が確保されていないと、自衛隊を邦人救出のために中国に向かわせることはできないのです。ありうるケースとしては、例えば中国国内の内乱が例えば上海周辺に限られていて、北京の方はまだ治安維持がなされており、北京の方では戦闘行為がすぐさま始まるということがない場合に、日本の自衛隊が北京にいる日本人を救出するために自衛隊機を北京の空港に向かわせたいと伝えた場合には、ひょっとしたらうまくいく場合があるという程度の話です。この時も当然ながら、中国政府がその件を了承し、自衛隊と中国政府の間で邦人救出のための連携・協力がとれた場合に限られます。当たり前ですが、この場合には北京にいる邦人は救出できるかもしれませんが、上海に住む邦人を助け出すことはできないのです。つまり、法人保護を建前として外国に攻め込むようなことは全くできない規定になっているわけです。

 以前にも書きましたが、今回の安保法制が成立したとしても、アルジェリアのプラントが襲撃されて日揮の社員が人質として取られた事件と同じようなケースが起こったとしても、自衛隊は邦人保護のために出動することはできません。あの場合にはアルジェリア政府は日本の自衛隊が邦人救出に参加することに反対しなかったでしょうし、アルジェリア政府と自衛隊の間で邦人救出のための連携と協力は成り立ったでしょうが、反政府勢力との間で戦闘行為が行われていたわけですから、自衛隊は出せないということになります。戦闘行為がある時には自衛隊は動けないのです。

 第二は米軍等の後方支援等に関してです。これによって地球の裏側で米軍が起こした戦争に自衛隊は参加させられると思っている方が多いかと思いますが、そんなことはありません。我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でない限り自衛隊は参加はできませんし、例外なく国会での事前承認を要することになっています。

 さらに、この後方支援等に関しては、米軍と一体化して行動することを回避する規定が入っています。現に戦闘行為が行われている現場では自衛隊は行動できません。活動の実施区域は防衛大臣があらかじめ定めなければならず、その範囲を超えた活動は認められません。そして実施区域やその近傍でも戦闘行為が行われるようになった場合、あるいはそのように予測される場合には、活動の一時休止を行わねばならず、実施区域に不都合が生じた場合には区域の変更を行うか、活動の中断を防衛大臣は命じなければならないとなっています。自衛隊は米軍の主力とは離れたところでしか行動ができないし、戦闘行為が自衛隊の展開地域に及んだ場合には活動を休止し、場合によっては撤退しなければならないのです。

 冷静に考えてもらいたいのですが、こうした規定からなる法案をいったいどう読めば「危険な戦争法案」になるのでしょうか。

 安倍首相はこれによって「日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、 切れ目のない備えを行う」と言っていますが、実際には切れ目だらけです。例えば日本の領海内に中国の潜水艦が潜航してきたことがわかったとしても、これを武力で排除することは、この安保法制が成立したとしてもできないでしょう。中国の漁船が再び小笠原の赤サンゴを取りにきたとしても、これを武力で排除することもできないでしょう。中国の潜水艦が領海に入っただけとか中国漁船が赤サンゴの密漁を行っただけでは、我が国の「存立危機事態」だと認定することはできないだろうからです。アルジェリアで起きたような事件があっても、戦闘が行われている限り、邦人救出活動はできません。

 通常の軍隊であれば、自国の領土・領空・領海に外国の軍隊が無断で入ってきて、警告しても出て行かない事態になれば、銃撃することになるでしょう。赤サンゴなどの自国の天然資源が外国人によって略奪されることが予見されれば、やはり警告を発して排除しようとし、それでもうまくいかなければやはり銃撃することになるでしょう。自国民が反政府勢力によって人質に取られる事件が発生し、現地政府が当該国の軍隊の出動に期待を寄せるような事態になれば、戦闘行為が発生していようがいまいが、軍隊が救出に向かうのが普通のあり方でしょう。そうした規定さえ入れられないレベルの今回の安保法制のどこが「戦争法案」なのでしょうか。与党に徹底的に逆らうことでしか存在価値を示せない野党の堕落ぶりと、法案の中身を正確に国民に知らせようともしなかった主要マスコミの歪んだあり方に憤慨するのは、私1人ではないと思います。


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 今回の鬼怒川、渋井川などの河川の氾濫により、甚大な被害が生まれたのは、皆様もよくご存知のところです。被災された方々には、謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 すでに多くの方が指摘されているように、今回の被災については人災の要素も強いという側面を、私たちは軽視すべきではないでしょう。公共事業は土建屋ばかりを儲けさせるだけで無駄だという「公共事業不要論」が小泉政権期あたりから特に強まり、公共事業費を削減すればするほど正しいと言いたげな風潮が世の中を蔓延しました。「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げた民主党が政権を取り、この路線をさらに強化していったことは、まだ記憶に新しいところでもあります。

 ところで、気象庁のウェブページで、奥日光における「月最大24時間降水量」のランキングを調べましたら、今回の降水量はここ35年間で第9位に相当し、この程度の雨が栃木県で降る確率は案外と高いということがわかりました。今回より降水量が多いのは8回(1981年、1982年(2回)、1990年、1991年、2001年、2002年、2007年)ありました。確かに線状降水帯にあたった地域では50年に1度の降雨だったと言えるところ(栃木県栃木市、茨城県古河市など)もありますが、奥日光の降水量データで見る限りは、4年に1回レベルの降水量だったともいえるわけです。

 実際国土交通省でも鬼怒川や渋井川の危険性について十分に承知をしており、今回の決壊地点は「10年に1回」のレベルの大雨で危険な箇所として認識をしていたようです。しかしながら公共事業費がどんどんと削られる中で、こうした危険河川の整備も遅れがちになっています。民主党政権最後の平成24年には治水関係の事業費がピーク時だった平成9年から66%以上削減されました。民主党がスーパー堤防の事業仕分けを行ったことと今回の鬼怒川の堤防決壊を結びつける議論に対しては、それは無関係だと逃げを打っていますが、形式論理としては確かにそんな見方もできなくはないものの、「コンクリートから人へ」に基づいて治水事業についても進展を遅らせた責任は大きいといわざるをえないでしょう。安倍政権の誕生後はこのボトムから見ればそれなりの増額はされてきたとはいえるものの、ピーク時から見ればなお62%以上の削減にとどまっています。

 国土交通省では、100年に1度程度の雨では川の水位が堤防を超えないようにしようという河川整備計画が策定されていますが、計画の進捗状況はまだ計画の1/4程度に留まっており、なかなか進捗していません。こうした河川整備計画がもっと進捗していたら、今回の水害は防げた可能性は高いでしょう。実際、こうした計画に基づいて整備を進めていた鬼怒川の下流域では、川幅を広げ、堤防の高さを嵩上げして付け替えていく強化策が採用され、被災を免れました。これがさらに上流にまで進んでいれば今回の堤防の決壊を防げたとの見方がさほど現実離れしているとは思えません。

 もちろん、それでも堤防は決壊したかもしれません。そしてそのようになった場合を想定した防災計画を策定する必要もあるのではないかと、私は思います。例えば、堤防から300メートルほどまでの地帯は居住対象外の区域として、田畑はあってもよいが、人間の居住は避けるようにするのはどうかと思います。そして、人が居住する区域とその外部の間にもう一段の堤防を用意し、仮に河川横の堤防が決壊しても、人間の居住区域には直接的な被害が及ばないようにするといった工夫がなされてもよいのではないかと思います。

 こうした整備を行う上で問題になるのは、私有財産権の問題でしょう。公的権力が私有財産に制限を加えることに関してあまりに敏感な反応を示すようになった現代においては、実に困難な事業と言わざるをえませんが、「民」が自由に行動できるようにすればするほどよく、「公」はなるべく「民」に干渉しないほうがよいとの見方のおかしさを浮き彫りにしたのも今回の事件だったともいえます。自然堤防として機能していた民有地を、ソーラーパネルの事業者がその事業運営のために切り崩していた事例が今回の災害によって明らかになりましたが、これなどは「民」に自由にやらせておけば常に良い結果になるとは到底言えない事例だったといえるでしょう。

 長年にわたる公共事業叩きに対する反省を私たちは行うべきです。また何でも「民」に自由に任せたほうがうまくいくという考えに疑問符をつけ、時には公益性に基づいて私権に制限を加えることは正当化されるという当たり前のことを思い出す必要もあるのではないでしょうか。

 隣接する市町村まで含めての避難計画を策定することや、事前に住民がハザードマップで危険地域と避難先について確認しておくことの重要性も浮き彫りになったかと思います。

 今回の被災者の方々の犠牲と苦労を無駄にしないためにも、従来の防災の考えを大きく転換した議論を展開していくべきだと私は考えます。


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 消費税率の10%引き上げに関して、軽減税率の品目を定める方向性ではなく、マイナンバーカードの利用を通じて、1人あたり年額4000円を上限に還付金を採用する方針が検討されていることが明らかになりました。

 マイナンバーカードを提示して酒類を除く食料品の購入情報を記録すれば、あらかじめ登録した金融機関の口座に還付金が振り込まれるという仕組みについては、問題は大ありでしょう。制度設計が複雑で現実的ではないという点も問題ですが、そもそもマイナンバー制度というのは年金や医療における国民の利便性の向上と脱税の防止を目的としたものであって、国民の消費生活の把握は目的の対象外だという原点に立ち返って考えて頂きたいと思います。

 マイナンバー制度の必要性は同様の趣旨から推進が図られた30年前のグリーンカード構想の時からあったわけですが、プライバシーの侵害に当たるという反対が根強かったことから断念してきた経緯があります。食料品を購入するたびにマイナンバーカードを提示して、購入情報が国家に引き渡されるということについては、実害がどの程度あるかどうかは別として、不愉快に感じる方も多いことでしょう。プライバシーの侵害について慎重さが求められるべきところで、このような制度趣旨から外れた個人情報の収集とも取られかねない案を示してきたことには、デリカシーのなさを感じざるをえません。

 但し、軽減税率を適応する商品、適応しない商品の峻別と絡んで政治的な利権が発生する可能性が高い従来の検討案よりも、還付金方式は制度的には洗練している部分もあり、その点は評価したいと思います。また、収入の低い人ほど収入に対する納税額の比率が高まる、いわゆる税の逆進性を軽減できるという点もあり、運用次第では還付金方式というのは検討に値するものだと私は思います。

 では、こうした問題点を克服した上で還付金制度を運用するためにはどうすればよいでしょうか。私は国民1人当たり1年で100万円の支出は生活必需に基づくものであって、租税対象にそぐわないとみなし、そこには税金をかけないという仕組みにしてしまえばよいと考えます。つまり、100万円の10%に相当する10万円は、消費実態がどうなのかなど調べることなしに、あらかじめ登録した金融機関の口座に還付金として、一律に振り込んでしまえばよいと考えます。この案に基づくと、消費税額は当初想定の半額程度になるかと思いますが、税の逆進性によって懸念される問題は大筋解決できるのではないでしょうか。

 例えば、年間で100万円を生活費に充てている一人暮らしの方の場合、消費税10%が課されると10万円の負担が必要ですが、10万円が還付金名目で戻ってくるなら、実質的な負担額はゼロになります。つまりこの方の場合には消費税率は実質ゼロです。一方、年間で1000万円を生活費に充てている一人暮らしの方の場合、消費税10%が課されると100万円の負担が必要ですが、10万円が還付金名目で戻ってくるなら、実質的な負担額は90万円になります。つまりこの方の場合には1000万円の消費に対して負担額は90万円ですから、消費税率は実質9%です。一律の還付金制度を導入することによって、消費税が実質的には生活程度に対応した累進課税に変わるわけです。

 安倍政権は消費税率の10%への引き上げについては、景気の状況などに関わらず絶対に行う旨を表明しておりますが、このような還付金制度との抱き合わせであれば、実質的には消費税の国民負担を引き下げ、さらに税の逆進性の問題を解決しつつ、公約には一切違反しない形になります。その上、消費性向の高い低所得者ほど減税率が高いですから、景気回復にもダイレクトに効いてくることになります。財務省は激しく抵抗するでしょうが、将来の消費税率の引き上げの際にうまみが出てくることになるという方便を用いて、説得を試みてはいかがでしょうか。


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 中共による「抗日戦勝70周年祈念式典」は実に不気味なものでした。

 習近平は国際刑事裁判所から人道に対する罪などで逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領をわざわざ招聘し、親密ぶりを世界にアピールしました。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20150901-OYT1T50097.html

 このバシル大統領に関しては、国連を代表する形で国際社会に逮捕を要請している立場にあるのが潘基文国連事務総長であるにも関わらず、この潘基文国連事務総長がこのバシル大統領と同席する形で平然とこの式典に参列しました。しかも潘基文事務総長は中国に関して「世界の平和と安定、安全保障、国連平和維持活動(PKO)、途上国間の援助で重大な役割を果たしている」と持ち上げての参加でした。
http://www.recordchina.co.jp/a117845.html

 そしてこの記念式典のメインイベントとされたのが軍事パレードであり、ここで示された武器のうち84%が初公開の新兵器であり、その中にはマッハ10で飛翔し、現段階では米軍には迎撃できないとされている対艦弾道ミサイルDF-21、DF-21を発展させて航続距離が3500キロにまで延びたDF-26、米トマホーク並みの能力を持つとされる巡航ミサイルDH-10、射程距離が11000キロ以上持つ多弾頭型移動式弾道ミサイルDF-31などが含まれ、中共に対して対抗しようとするアメリカへの露骨な恫喝であったといえるでしょう。
http://blogos.com/article/131839/

 さらにこのような悪趣味の軍事パレードを「平和の祭典」だと中共は強弁してみせました。習近平は「正義は必ず勝つ!平和は必ず勝つ!人民は必ず勝つ!」と、演説の最後を締めくくりましたが、「平和は必ず勝つ!」という言葉に対する違和感は、私だけのものではないでしょう。これが意味することを中共の行っていることと整合性を持って考えれば、中共の軍事力に世界中が畏怖して、ムダな抵抗を諦める状態を「平和」として表現しているということになるかと思います。このような意味での「平和』であるなら、確かにこれに抵抗しようとする勢力をひれ伏させ、勝利するという意味で「平和」を捉えることはできるでしょう。
http://www.peoplechina.com.cn/zhuanti/2015-09/03/content_703029.htm

 お笑いぐさは230万人いる人民解放軍のうち30万人を削減するとして、これを「軍縮」だと表現したことです。武器を近代化すれば必要となる兵士の数は当然少なくなります。軍縮というのであれば、軍事予算を抜本的に削減すべきですが、そのような方針を中国が発表したということは断じてありません。実際中国はここ10年の軍事費の伸びが167%(2.67倍)という世界最高の伸び率を示している国家であり、2015年度予算においても前年比10.1%増の予算を計上しています。これを「軍縮」と呼ぶのが正しいことでしょうか。
http://www.sankei.com/world/news/150413/wor1504130037-n1.html
http://www.sankei.com/column/news/150306/clm1503060002-n1.html


 そもそも中共は正規兵230万人に加えて、予備役として51万人、武装警察という準軍事組織として66万人、民兵として800万人を組織している世界最大の軍事組織なのであり、30万人を予備役や武装警察にスライドさせただけで「30万人の削減」は実現します。
https://ja.wikipedia.org/wiki/中国人民解放軍

 こうした中共の不気味さに加えて不気味なのは日本のマスメディアの報道姿勢です。中共の主張には上記のように突っ込みどころが満載ですが、彼らの主張のおかしさや危険性を浮き彫りにした報道は差し控え、彼らの主張に沿った内容をそのまま流しました。日本の防衛省が平成28年度予算編成において防衛予算の2.2%増を要求していることについて、「過去最高額」で「記録的な水準」だとあたかも極めて危険な動きに出ているかのように報じながら、軍事費を10%以上増額する中国については「軍縮」だと報じるその姿勢は、現実を無視するのもいい加減にしろと言いたくなります。

 日本の「反戦、平和運動」に肩入れしてきた中共、韓国、北朝鮮が、日本国内の良心的な平和運動家たちの願いとは完全にかけ離れた行動をどんどんエスカレートさせていく中で、「平和勢力」内部での矛盾はどんどんと強まっているといえるでしょう。

 中共などの実態を明らかにしながら、いかに「平和勢力」が中共にいいように扱われているかを見せることによって、良心的な平和運動家たちにその矛盾に気付かせていきたいと思っています。


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 本日(9月3日)開催された「抗日戦争勝利70年記念式典」において、習近平国家主席は「日本の軍国主義の侵略者は極めて残虐で、この世のものと思えぬほどの悲惨な手段で中国人民を扱い、大量虐殺をもって、屈服させようとたくらんだ」と述べました。今回の記念式典は「特定の国を標的にしたものではない」と中共は一貫して主張してきたはずですが、明確に日本を標的とした式典になったことは明らかです。
http://www.sankei.com/world/print/150903/wor1509030005-c.html

 さらに中共は、推定30万人が死亡したダルフール紛争を巡る戦争犯罪などの容疑に問われて国際刑事裁判所から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領をこの記念式典に平然と招待した上で、習近平国家主席自らがバシル大統領との個別会談まで行いました。これに対して米国務省のトナー副報道官は「中国は国際社会の懸念を重く受け止めるべきだ」と牽制しましたが、中国外務省は「中国は同裁判所の設立条約(ローマ規程)の締約国ではない」として、全く問題視する姿勢を見せませんでした。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150902/frn1509021535008-n1.htm

 ここに見えるのは、自らの都合によってその場その場でテキトーなことを言い募り、国際的な法秩序さえ歯牙にもかけない唯我独尊な中共のあり方です。この唯我独尊な中共はネット統制強化により1万5千人を逮捕して、言論統制を強めていたことが明らかになりました。ポルノとか違法薬物のネット販売と関係した逮捕者ももちろんそれなりにはいるでしょうが、政治的な主張に対する強力な言論統制が現に行われており、メールもラインもフェイスブックも連絡手段として利用できない国家であるということを前提にして考えた場合に、この逮捕者の中に政府に遠慮ない言論を行ったために捕まった人たちがたくさんいるということは、当然に想像しなければなりません。
http://jp.reuters.com/article/2015/08/19/china-internet-idJPKCN0QO02720150819

 そもそも中共は平和愛好的な独立国だったチベットに軍事侵攻を行って力で奪い取り、1976年までに120万人ほどの虐殺(但し、中共との戦闘行為における死者や餓死者を含む)を行ったとも言われています。中共支配に対する抗議の焼身自殺を行った僧侶が100名以上いるわけですが、力による弾圧は今なお継続しています。ウィグル人に対する徹底した弾圧もよく知られており、核実験がウィグル人居住区で行われてきたために、現地の人たちの間には深刻な放射線被害が生み出されています。政治犯の臓器を生きたまま取り出し、平然と臓器移植を行う国家でもあります。とてもではないですが、人権や民族の自治を大切にしているとはとてもいえないわけです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/チベット問題
http://www.sankei.com/premium/news/150715/prm1507150001-n1.html
http://www.epochtimes.jp/jp/2009/12/html/d72072.html

 このような国が在日本大使館で開いた「抗日戦勝70年」を記念するレセプションに、共産党の穀田恵二国対委員長、公明党の山口那津男代表、民主党の赤松広隆前衆院副議長、村山富市元首相らが出席しているところに、日本の民主主義の本当の危機があります。彼らは民主主義を守る気概など初めからないのでしょう。
http://www.sankei.com/politics/news/150901/plt1509010015-n1.html

 このレセプションの挨拶において、程大使は「第二次世界大戦の東方の主戦場となった中国において、数知れぬ平和を願う兵士と一般民衆が、日本軍国主義による侵略戦争、大虐殺、無差別爆撃、生物化学兵器の攻撃と実験によって尊い命を失い、数万人もの女性が残虐に蹂躙され、たくさんの労働者が日本へ強制連行されて残酷で非人道的な扱いを受けた。これによって、人類の文明史上極めて暗黒の一ページが残された」「中国人民は強暴を恐れず、日本軍国主義の野蛮な侵略に対して英雄的な戦いを繰り広げ、大きな民族的犠牲を払い、世界反ファシズム戦争の最終的な勝利のために、重要な貢献をした。」と述べました。歴史の捏造も極まれりといわざるをえず、その場にいたのであるなら、日本人なら徹底して反論すべきだったところでしょう。
http://www.china-embassy.or.jp/jpn/tpxw/t1292832.htm

さらに北京での記念式典の取材に向かおうとした産経新聞特派員に対する取材票の発行を中共は拒否しました。中共の気に入らない報道を行う産経新聞に対する露骨な嫌がらせですが、この民主主義の見地から見て極めて重大なことを、当の産経新聞以外には日本のマスコミが報道していないというのはどういうことなのでしょうか。
http://www.sankei.com/world/news/150902/wor1509020032-n1.html

 以上のような事実を日本国民が広く知るようになったら、普段おとなしい日本国民とて黙ってはいられないでしょう。それゆえにメジャーなマスコミ、特にテレビ局はこうした情報をほとんど報道していません。民主主義の前提というのは先入観によって歪められることなく、情報が国民に伝えられるというところにあるはずですが、この点が現在の日本では決定的に狂っています。こんなことがいつまでも続くわけがないということを、ネット社会の特性を利用してわからせていきたいです。皆様もご協力をお願い致します。


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