SNSの青少年利用を禁止・制限する動きが世界的に広がっている。


アメリカでは州裁がSNS2社に多額の賠償

 オーストラリアでは、世界に先駆けて2025年12月から、16歳未満のSNS利用を禁止する法律が施行された。

 デンマークなど一部EU諸国も法的な利用禁止を目指し、その動きは日本にも少しずつ波及しつつある(写真=SNSで交流する子ども)。

 

 

 またアメリカでは3月にカリフォルニア州裁判所の陪審団がメタとグーグルに計600万ドルの賠償を命じた。評決は、原告側の「利用者が中毒になるようにSNSのアルゴリズムが設計されていて、それはたばこ産業と同じだ」との主張に沿ったものとなっいる。

 SNSとタバコが同列に並べられているように、「中毒」を含む耽溺性や犯罪に巻き込まれかねないことへのSNSへの警戒感が広がっている。


半世紀前の映画ではタバコを吸う姿は普通

 タバコ喫煙禁止・制限とのアナロジーを、そこに感じとれる。イギリスで先進国で初めて18歳以上のタバコ販売が禁止される法律が制定されそうだが(4月29日付日記「イギリスで2009年以降生まれは生涯禁煙へ:世界で2番目、先進国で初の快挙」を参照)、法律で禁止しなければならないほど喫煙の根絶は難しいのだ。

 20世紀半ばまで、アメリカなどでは青少年を含めて喫煙が普通だった。アメリカ映画を観ると、レストランでもみんな喫煙している(写真=1961年作の『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーン)。

 

 

 成人に限っても半数以上が喫煙者だった。上流階級の女性も喫煙するのは普通の習慣だった。


タバコから逃げられない貧困層

 しかしタバコが健康被害を引き起こすリスクが疫学的に立証され、その恐れが少しずつ認識されるようになった1950年代から少しずつ喫煙者は減り始め、1964年にタバコの健康被害が公式に認定されると、上流の人々はタバコをやめた。公式認定直後の1965年に約42%だった喫煙率は、2022年には11〜13%程度にまで激減した。

 しかしそれでもなおアメリカ人の13%はタバコを吸っている。この多くは、皮肉にも栄養的偏りの無い食品購入ができないほどの貧困層だ(写真)。

 

 

 例えば大卒以上のアメリカ人の喫煙率は極めて低く、数%台に留まる。それは、とりもなおさず高所得層である。半面、高校中退者などの低学歴層、すなわち低所得層の喫煙率はかなり高く、30〜40%にも達するのだ。

 この傾向は、アメリカに限らず先進国で大なり小なり共通している。


子どもをSNSの負の側面から解放するために年齢制限は必要か

 SNSも、いずれはそうなっていくかもしれない。詳しい統計を知らないが、アメリカでも日本でも、高所得・高学歴の層ほど親はSNSに抑制的で、したがって子どもには制限をかける。溺れるのは、貧困層だけ、というアメリカのタバコ状況に近くなるかもしれない。

 闇バイトに誘い込まれる青少年がしばしば報道される。中毒状態になってSNSに浸りきりという子どもの話もよく聞く。

 最もセンシティブでこれからの可能性も無限な青少年が、SNSの闇に引きずり込まれるのを防ぐには、日本でも年齢制限が必要なのではないか。


昨年の今日の日記:「9000万年前の奇妙な新種恐竜を発見、2本指の1本にケラチン質の爪鞘」

 「君子は豹変する」という言葉がある。優れた人間は過ちは直ちに改め、速やかによい方向に向かう、という意味だ。中国の古典『易経』に出てくる。


華北の山野に棲むキタシナヒョウ

 ヒョウは秋になると毛が抜け替わり、新しい斑文がくっきりと表れることに由来するという。

 この言葉で、ヒョウが中国にもいた、いやまだ生き延びているらしいことを初めて知った。中国の野生のヒョウは、キタシナヒョウ(華北ヒョウ)という固有の亜種だ(写真)。シベリア、沿海州のウスリーヒョウとは別亜種で、もともとは同一個体群だった。主に華北地域(山西、河南、河北、陝西省)や東北地方にわずかに生息する。

 

 

 2015年に北京の郊外でキナシナヒョウが30年ぶりに確認され、大きな話題になった。


日本にも渡ったキタシナヒョウ、今は剥製が高知市に

 実はキタシナヒョウは、日本にもなじみ深い。

 日中戦争の最中の1941年(昭和16年)2月28日、中国湖北省の山中で日本軍の第8小隊にオスの幼体のヒョウを捕らえた。捕まえた時、ヒョウは親仔連れ4頭だったが、捕らえた仔2頭のうち、1頭を小隊長の成岡正久は宿営に連れ帰った。

 ヒョウの仔は、小隊の名前をとって「ハチ」と命名された。小隊員にも慣れ、まるでネコのようだったという。

 小隊長の成岡正久と兵士たちはハチを可愛がって育て、ハチも兵士たちを慕うようになった(写真=成岡小隊長のそばでくつろぐハチ)。

 

 

 しかし戦局が切迫するにつれて小隊にハチを同行させることが困難になってきたため、成岡は伝手を頼って恩賜上野動物園にハチを引き取ってもらった。しかし悲しいことに、その後ハチは戦時猛獣処分の対象となって薬殺され、第2次大戦終戦後に成岡と再会した時には剥製になっていた。

 戦後、復員した成岡は高知に居を定め、ハチの剥製も高知に移った。現在も、市内の「高知みらい科学館」で展示されている(写真)。

 


ユキヒョウはキタシナヒョウとは別種

 一方、チベットや四川省など中国の高山地帯から中央アジアにかけて生息するユキヒョウとは別種だ。おそらく中国の古い知識人が目にしたのは、高山地帯に棲むユキヒョウではなく、キタシナヒョウだったろう。

 しかし秋に毛が抜け替えてくっきりした斑文が表れるなどという生態が紀元前の『易経』の筆者にも知られていたことは、今よりずっと身近にいたのだろう。

 孔子が「苛政は虎よりも猛なり」と書いたトラは、今では数十頭にまで減ったアムールトラだが、孔子が見た家族をトラに食い殺された女性は山西省の泰山の麓にいた。ヒョウのように、今は絶滅に近いトラだが、孔子の時代は里にいくらでも出没するほどトラは普通にいたのだ。


世界各地で激減したヒョウ

 僕は、アムールトラもユキヒョウも、旭川の旭山動物園で観たことがあるが(写真がユキヒョウ、がアムールトラ)、キタシナヒョウは未見だ。全中国で200~300頭くらいしかいないらしいから、珍獣に属するのだろう。

 

 

 

 しかし2024年にタンザニアのセレンゲティ国立公園ではるか遠くにヒョウを観た(かもしれない、という程度に遠目だった)時は、ヒョウはアフリカにしかいないと思っていたのだが、その後、アジア各地に激減しながらもごく小個体数ながら分布していたことを知り(24年11月3日付日記:「世界のヒョウが絶滅危機に、個体数も生息地も20年余で3割減、ただし一部には改善の兆しも」を参照)、あらためてキタシナヒョウのことを調べたのである。

 肉食獣は、農耕牧畜の広がりと人口増で、食物にする草食獣の生息域がどんどん狭められ、また個体数も激減し、つれて肉食獣も極限にまで減っている。

 いつまでも生き延びてほしいと願ってやまない。


昨年の今日の日記:「黒部立山アルペンルートととなみチューリップフェアの旅(1):雪の大谷を往く」

 1つの群れのチンパンジーが2つの集団に分かれ、かつての仲間を襲って殺害する「内戦」に陥った事例を、アメリカ、テキサス大オースティン校などの国際研究チームが30年余の調査で確認し、アメリカの科学誌『サイエンス』4月9日号で報告した。


観察初めは100頭余りの群れの中は平穏だった

 東アフリカ、ウガンダのキバレ国立公園での紛争である(地図)。

 

 

 研究チームは長年の観察で、群れの権力構造の変化や分断が進む集団間の架け橋だったメンバーの病死などを経て、対立が深刻化する過程を明らかにした。

 人間の間には集団間の暴力事件、内戦は、民族や宗教といった文化の違いに根ざしてしょっちゅうある。チンパンジーは人間に最も近い種だが、今回の観察は、文化の違いが無い条件でも内戦に至る可能性を示したものだ。

 調査は1995年、ウガンダのキバレ国立公園で始まった(写真=争いの現れる前のチンパンジーの群れ。毛繕いしたりして交流していた)。群れが100頭余りから次第に大きくなっていく中でも、共に食事や毛繕いをし、縄張りを守り、他の群れを襲っていた。

 


まず17年に中部群のオスが西部群のオスに襲われ重傷

 分断の兆候は2015年に表れた(写真=他のチンパンジーの声を聞き不安そうな表情を見せたり他の個体に触れあったりして安心を得ようとするチンパンジー)。6月24日、多数派集団「中部」が少数派の「西部」のメンバーを追い回し、その後6週間は、互いを長期間避ける様子が見られた。過去に観察されたことが無い長さだった。

 

 

 それを境に、分断が進んだ。

 チンパンジーは、オスが群れにとどまり、敵に対する縄張りのパトロールや争いなどで協力し、時に相手を死に至らしめるほど激しく攻撃する。まず16年に西部群のオスたちが、17年には中部群のオスたちも、縄張りのパトロールを始めた。

 最初の致命的な襲撃は18年に発生し、中部群のエロールという名の若いオスが西部群に襲われた。襲ったのは縄張りのほぼ中央付近にあるイチジクの木で餌を食べていた西部群の成体のオス5頭だった。

 以降は互いのパトロールの頻度が高まった。


中部群の犠牲者は成体7頭、幼体17頭、他に行方不明14頭

 集団間の交流は18年には完全に消滅した。19年には2度目の致命的な襲撃が発生した(写真=19年、対立する西部群のチンパンジーに囲まれて牙をむく中部群のチンパンジーのオス)。

 

 

 これまでのところ、中部群の死者は成体7頭と幼体17頭に上り、さらに14頭が行方不明となっている。研究論文によると、行方不明のこれらのチンパンジーも致命的な攻撃の犠牲になった可能性が高いという。

 西部群のチンパンジーは中部群チンパンジーよりも攻撃的だ。研究によると18年から24年にかけて、西部群は4カ月ごとに最大15回のパトロールを行い、年間平均で中部群チンパンジーの中から成体1頭と幼体2頭を殺害している。西部群は中部群より優位に立っているようで、これはおそらく早くから西部群の結束力が強かったことによるものだとみられる。


群れの膨張で緊張感が高まった末に

 こうした背景には、200頭ほどにまで膨張していた群れの中で、食物や交尾機会の獲得競争が激化したことに加え、社会関係の動揺があったとみられるという。

 分断に先立つ14年に6頭の成体が死に、翌年にはボスが交代、群れ間の緊張の高まった17年には呼吸器病の流行で25頭が死亡していた。この中には西部群と中部群をつなぐ数少ない成体のうちの1頭が含まれていた。つなぎ役がいなくなり、歯止めが無くなったとみられる。

 群れの縄張りの境界線は常に変化しており、現在は西部群が境界線をさらに東へ押し広げているという(写真)。

 

 

 ちなみに「内戦」は500年に1度しか起こらないと推定される稀な出来事で、これまで観察されたのはこれ1度だけだ。

 いつまで争いが続くかだが、紛争は世代を超えて受け継がれているので、どちらか一方の群れ、現在の状況では劣勢の中部群が消滅するまで終わらないかもしれない。


昨年の今日の日記:「日露戦争、海では圧勝したが満州の陸戦では完全消耗、もはや余裕無く、ポーツマス講和で救われる」

 カラスは黒い、と決まっている。どことなく不気味だ。だからだろう、例えばスターリン時代のソ連では、反対派知識人を自宅からしょっ引くための、深夜に街中を走る移送車を「黒ガラス(チョールヌイ・ヴォロン:Чёрный ворон)」と呼んだ。市民は、いつ自宅玄関前に「黒ガラス」が駐められるかと恐れた。


◎知恵が発達するも不気味さがネガティブな印象

 カラスは、また路上に放置されたゴミ袋を漁って辺りを汚くさせるし(写真)、これからの季節、繁殖期になると、巣を守るために市街地を歩く人を頭上から襲ったりする。かなりの困りものだ。

 


 しかしカラスは知能が高く、自動車に堅い種を轢かせたりもする。特に南太平洋ニューカレドニア島に分布するカレドニアガラスは、小枝や葉を加工して「道具」を作り、木の穴の中にいる虫を捕まえることで有名だ(写真)。

 

 

 ただ多くの人たちのカラスに抱く印象は、ネガティブなものだ。

 その理由の大部分は、その真っ黒い姿の不気味さにあるだろう。世界中にカラスは500種ほどいるらしいが、ほとんど例外なく真っ黒だ。稀に遺伝子の突然変異や色素の異常によって「白いカラス」が出来ることがあるというが、非常に珍しく、数万羽に1羽程度の確率でしか現れないと言われている(写真)。

 


◎スイッチ役の「MC1R」受容体がオンのまま

 では、カラスの羽の色はなぜ黒いのだろう。

 カラスの黒い羽は、黒さを生み出す「スイッチ」役の「MC1R」受容体が、ホルモンの刺激無しでも高活性を保ち、黒い色素(ユーメラニン)を作り続ける「止まらないスイッチ」の役割を果たしているためであることを、このほど岡山大学の研究グルーブが発見した。

 鳥の羽の色や動物の体色は、主に黒色系のユーメラニンと赤褐色系のフェオメラニンのバランスで決まる。このバランスを調整するのがMC1Rだ。いわば「色の切り替えスイッチ」である。通常はホルモン刺激によって一時的にオンになり、ユーメラニンの合成を促す。


◎色素のユーメラニンが作られ続けて

 研究グループは、ハシブトガラスのMC1Rを培養細胞で詳細に解析した結果、ホルモンが無くても高い活性を保ち、ホルモン刺激への応答が弱いことが判明した。つまりカラスでは、このスイッチ自体が常にオンの状態にあり、ユーメラニンが作られ続けていると考える。さらに、マウスやニワトリでは1アミノ酸置換で生じる「止まらないスイッチ」が知られているが、カラスでは複数のアミノ酸変化の組み合わせで生じている可能性が示されたという。

 この研究は、野生の黒いカラスでこの仕組みを実験的に示した初めての成果だ。カラスの黒さの謎に新たな答えを与えるとともに、生物の色の収斂進化に関する重要な発見と言えるだろう。

 研究成果は、2026年4月6日に国際学術誌「General and Comparative Endocrinology」オンライン版に掲載された。


昨年の今日の日記:休載

 

 ネアンデルタール人の骨は、フランスなどのヨーロッパとイスラエル、イラクなど中東で合わせると数百体に及ぶ。わずかの例外を除き、ネアンデルタール人は死者を洞窟に「埋めた」から、肉食獣の死肉漁りにも遭わず、風化も免れたためだ(これを現生人類ホモ・サピエンスのような「埋葬」と言うには躊躇がある)。

 ただ骨がまだ軟骨に近い幼体は、それでも残りにくい。シリアのデデリエ1号、2号、そしてイスラエルのアムッド7号の幼児骨化石は希有な例だ。

 そのうちアムッド7号の子どもの化石を用いた研究により、ネアンデルタール人の子どもは、現生人類より超速で成長していたらしいことが分かった。


アムッド洞窟は日本の東大隊が発見、調査

 研究されたアムッド7号は、1992年にイスラエル北部、ガリラヤ湖近くのアムッド洞窟(下の写真の上)で発見されたネアンデルタール人の乳児骨格だ(下の写真の上)。5万5000年前頃のものという。イスラエル・テルアビブ大学の研究チームにより、この知見が提示された(シリアのデデリエ標本は、イスラエル研究者には政治的にアクセスできない)。

 

 

 

 アムッド洞窟は1960年、日本の東大調査隊が発見した中部旧石器遺跡だ。翌年の1961年と64年の2シーズンにわたって東大洪積世人類遺跡調査団によって発掘され、1年目からネアンデルタール人の全身骨格、アムッド1号(写真)が見つかった。

 アムッド1号は、25歳くらいの成人男性骨格で、特筆すべきは現生人類ホモ・サピエンスよりも大きい、推定脳容量1740㏄を備えていたことだ。アムッド1号は、これまでに見つかっているネアンデルタール頭蓋で最大の個体である。

 

 

 その後、アムッド洞窟の発掘はイスラエル研究者によって継続され、7号もイスラエル隊に発掘された(写真=1990年代のイスラエル隊の発掘風景。調査は洞窟前庭部で行われている)。なおその後のイスラエル隊の発見も含め、アムッド洞窟ではこれまで20体のネアンデルタール化石が発見されている。

 


歯の発達に比べて身体成長は進んでいた

 そのアムッド7号は、乳児遺体だけに100点以上の骨片にばらけていた。

 研究者たちのこの骨を手がかりに、7号の年齢の推定を試みた。通常、乳幼児の年齢推定は、人類学者が歯の発達ぶりや骨の大きさを手がかりにする。

 現代人では、歯と体の成長はある程度揃って進むため、この方法は比較的信頼性が高いのだが、アムッド7号では、奇妙な結果が出た。

 歯の発達から推定すると、この個体は約6カ月の乳児に相当した。ところが腕や脚、胸部などの骨の成長を見ると、約14カ月の子どもに近い状態だった。つまり、歯に比べて身体の成長だけが異常に速く進んでいたのだ。歯は保守的だから、進化は遅れるからだ。

 このような歯と身体の発達のズレは、単なる個体差では説明しにくく、ネアンデルタール人特有の成長パターンを反映している可能性が高いと考えらる。

 さらに分析した結果、新生児の段階ではネアンデルタール人と現代人に大きな違いは見られないものの、幼児期(1〜6歳頃)に入ると、ネアンデルタール人は身体成長が急激に加速することが推定された。
 

なぜ「速く成長する」必要があったのか

 では、なぜネアンデルタール人はこれほど速く成長する必要があったのか。

 研究者たちは、その理由として「環境」を挙げている。ネアンデルタール人が暮らしていたユーラシア大陸の環境は、氷期の影響を受けた寒冷で過酷なものだった。

 こうした環境では、幼いままでは体温維持や生存そのものが難しくなる。

 そのため、できるだけ速く体を大きくし、環境に耐えられる状態になることが有利だったと考えられる。

 実際に今回の研究では、ネアンデルタール人は乳幼児期に急速に身体を発達させ、その後の成長段階では現代人に近いペースに落ち着く可能性が示された。

 これは言い換えれば、成長の初期に「一気に加速」し、その後にバランスを取るという独自の成長戦略と言える。


ネアンデルタールの発達は「短期決戦型」

 私たち現代人は、歯や身体が比較的バランスよく、緩やかに成長していく。それに対してネアンデルタール人は、序盤にリソースを集中させる「短期決戦型」の発達パターンを持っていた可能性があるのだ。

 ただ研究者たちは、この結果がすべてのネアンデルタール人に当てはまるかどうかはまだ断定できない、としている。乳幼児の化石は冒頭に述べたように非常に少ないため、今後さらなる検証が必要なことは確かだ。

 研究の詳細は2026年4月15日付の学術誌『Current Biology』に掲載された。


昨年の今日の日記:休載

 

 イギリスで近々、世界に先駆け先進国で「生涯禁煙」の法律が成立する。4月16日、下院で与野党の賛成多数で可決されたからだ。今後、上院でも可決されると法案成立となる(ちなみに下院で可決された法案が上院で否決されることはほとんど無い)。


喫煙率半減で10%強でもなお喫煙禁止を拡大

 2009年1月1日以降に生まれた人は、タバコや電子タバコの入手が生涯にわたって禁じられる。

 現在、イギリスでタバコを購入できるのは、他の先進国同様に18歳以上だ。この法律が出来ると、年齢制限が毎年1歳ずつ引き上げられることになるから、将来、イギリスの成人はタバコを買うことができなくなる。違反者には、罰則もある。シャーロック・ホームズが生きていたら、さぞや嘆くことだろう(写真)。

 

 

 統計によると、イギリスでは2024年時点でおよそ530万人が喫煙していた(写真)。18歳以上人口の10.6%だ。統計を取り始めた11年の喫煙人口は20.2%だったから、13年で半減したことになる。ちなみに日本の成人喫煙率は15%程度だから、イギリスの現在の喫煙率より大幅に高い。

 

 


健康被害の上に国全体で莫大な損害

 理由は、むろん健康被害の恐れだ(後述するように、年々価格が上げられて高額化したタバコ料金もある)。喫煙で、脳卒中、糖尿病、認知症、ぜんそくなどのリスクが高まり、イギリスでは年間8万人が喫煙が原因で命を落としているという。癌による死亡の4分の1は、タバコが原因だ。

 そうした啓発と理解が広がったから、前記のように13年間で喫煙率が半減という成果を挙げたが、それでもイギリスが国を挙げて喫煙の根絶を目指すのは、喫煙による収入減少、失業、早期の死亡、医療費増などで、イギリス全体で年間218億ボンド(約4兆7000億円)もの損失をもたらしているからだ。


モルディブが世界初の禁煙法

 イギリスが世界の先鞭をつけたわけではない。インド洋の島国のモルディブは、25年11月に07年1月1日以降に生まれた人へのタバコ販売を禁止したのが最初だ。世界的なリゾート地のモルディブ(写真)で成人の喫煙が事実上禁止されたことは、イギリスの政界に大きな刺激になり、今回の法制化となった。

 

 

 販売禁止なら、ニュージーランドはもっと早い。22年12月に、09年1月1日以降に生まれた人は生涯タバコを購入できなくなる法改正が可決・成立したが、23年末の政権交代に伴い、この「タバコ販売禁止法」は撤回される方針となった。だから、計画されていた世代別の全面的なタバコ販売禁止は施行されていない。

 だからイギリスで法施行となれば、世界的にも画期的な壮挙となる。


タバコ1箱の値段が4000円前後!

 ただイギリス財政には、多少の痛みを伴うことになる。タバコ関連税収は、25年で約80億ポンド(政府税収の0.6%)あり、これが漸減していく。

 年々喫煙禁止人口が繰り上がっていくことで、実は最も恩恵を受けるはずの貧困層が、実は最も痛手を受けることになる。

 大学卒業以上の高学歴、したがって高所得層の喫煙率は数%にまで落ちているが、低学歴、したがって低所得層の喫煙率は20%以上に達している。イギリスでは先進国でも課税済みのタバコの値段は極めて高く、20本入り1箱の値段は約15〜20ポンドもする。日本円換算すれば、3225円~4300円だ! しかも年々、値段は上げられている。

 それでも低所得層の暮らす地区の喫煙率は、そうでない地区より倍くらい高い。満足な食事を摂らなくとも、タバコを止められないのだ。極めて不健全な社会構造だ。

 今回のタバコ生涯禁止法はそうした貧困層を救うことにもつながるとも言えそうだ。


昨年の今日の日記:「私たち現代人は1万年以内に絶滅へ、進化生物学専門の『ネイチャー』上級編集者が予言」

 イラン戦争によるホルムズ海峡封鎖の今後が全く見通せないのに、日経平均株価は好調だ。27日には、とうとう終値で6万円越えの6万0537.36円(821.18円高)で引けた(写真)。

 

 

 しかし全体の株価動向を表すTOPIX(東証株価指数)はほとんど上がっていない。だから株価新高値の実感は、ほとんどの人が持っていないだろう。

 それは市場のほんの一部である生成AIと半導体・データセンター関連だけが上がっているからだ。


投資家人口は6年で2倍

 それは、隣国の韓国ではいっそう際立つ。韓国の代表的株価指数のKOSPIは、なんと1年で2.6倍になっているのだ(写真)。世界1のパフォーマンスである。

 

 

 絶好調の半導体のメーカーであるサムスン電子(写真)とSKハイニックスの2社が時価総額の約4割を占めているからだ。

 

 

 と、こうなると、住宅価格の高騰や日本を上回る少子化による年金制度の破綻懸念で、韓国人の株式投資が沸騰する。投資家の数は、2025年末に1450万人ほどになった。実に韓国人の3人に1人が株式投資をしている。武漢肺炎前の19年末から2倍以上に増えた。

 実数も凄いが、質はかなり危うい。日本のような堅実なNISAを通じての投資ならまだいいが、韓国の場合は株を担保に投資資金を借りる信用取引が大盛況なのだ。


零細投資家は信用取引で投げ売りを余儀なくされる

 2月末、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まると、ホルムズ海峡閉鎖による石油危機観からKOSPIは一時20%近くも急落した(写真=急落したKOSPI)。

 

 

 信用取引の怖さは、担保の株価が値下がりし、同時に建玉も価格下落するから、維持率割れを起こすと強制売却されることだ。多くの投資家は、それで損失を被った。

 大口投資家は、それでも余裕があるから、下げ局面を絶好の買い場として押し目買いを入れ、その後の日米株価の回復に伴うKOSPIの回復に乗れたが、ギリギリで危ない投機を行っていた零細投資家は、なけなしの資産を失った。


KOSPIの爆上げはバブルか

 かつてバブル時代の日本では、株を担保に街金を含めた金融機関がカネを貸してくれた。韓国の場合も、銀行やノンバンクがカネを貸す。その利子が半端でない。大手証券の信用取引の利率は年7.5%で6カ月を超すと年9.7%に跳ね上がるという。

 今の韓国株式市場は、異常な半導体ブームによるバブルだ。日本でも警戒する必要がある。


昨年の今日の日記:「スペイン、シマ・デル・エレファンテ洞窟下層からホモ・アンテセソールと異なるヒト族中顔部見つかる」

 エジプト北部の1800万~1700万年前の地層から霊長類の下顎骨(写真)や歯の化石を発見し、新属新種に分類した、と同国のマンスーラ大やアメリカ、南カリフォルニア大などの研究チームがアメリカの科学週刊誌『サイエンス』3月26日号に発表した(想像図)。

 

 


気候変動に適応力を高めて

 ヒトの他、チンパンジーやゴリラ、テナガザルなどの類人猿に共通する祖先に近いとみられ、進化過程の解明に役立つという。

 下顎骨は頑丈で、歯の構造を解析した結果、新種霊長類は主に柔らかい果実を食べていたが、気候変動で食物が少なくなった時は堅いナッツ類や種子も食べるという柔軟な食性をとっていたと推定される。当時、この地域では季節による環境変化が激しくなりつつあったが、この適応力こそが、彼らが過酷な時代を生き抜き、後に世界へ広がる原動力となったようだ。


エジプトから中東の地域がヒトと類人猿の共通祖先の誕生地か

 学名はエジプトやサルを意味する言葉、発見場所の地名から「マスリピテクス・モグラエンシス」と付けられた。属名の「マスリピテクス」はアラビア語でエジプトを意味する「マスル(Masr)」を、種小名の「モグラエンシス」は発見地である「ワディ・モグラ」の名を冠したものだ。

 古人類やその前段階の霊長類の化石は、これまでアフリカ大陸の東部付近で見つかることが多かった。周辺の地域で化石の発掘が進めば、進化や生息地域の移動・拡大の全体像が明らかになると期待される。


マスリピテクスはエジプトピテクスよりはるかに新しい

 今度の発見は、エジプト北東部と中東一帯は、ヒトや現生類人猿の共通祖先の誕生した場所であることを示唆している、と研究チームは指摘している。

 なおこれよりはるかに古く、約3800万年前に生息していたエジプトピテクス(写真)という化石霊長類はやはりエジプト出土である。1966年に発見されたエジプトピテクスは、旧世界ザルと化石類人猿が分岐する前の霊長類で、系統関係は不明なもののマスリピテクスのはるかなる祖先である。

 


昨年の今日の日記:「立民の野田代表も食料品の消費税率ゼロを表明、政界覆うポピュリズムの波に飲み込まれて」

 超大型動物の恐竜の交尾行動がどのようなものであったか、そもそもその証拠の化石すら確認できなかった。

 それが、一部の古生物学者のふとした発見で、浮き彫りになろうとしている。


調べていくと世界中の多くのハドロサウルス尾骨に骨折の跡

 ところが、それらをまとめると違った物語が見えてくる。

 北米、ヨーロッパ、ロシアで骨折痕のあるハドロサウルス類(復元想像図)の化石を数多く研究してきたベルトッツォ博士やタンケ博士らは、2025年11月21日付けの学術誌『iScience』に、骨折の最も有力な原因は交尾であると考えられると発表した(写真=ドイツ、ゼンケンベルク博物館に展示されているハドロサウルス科の骨格)。

 

 

 

 世界中で尾の骨を折ったハドロサウルス類が見つかるということは、それが事実上すべてのハドロサウルス類に共通するパターン、つまり交尾によるものだということだ、とベルトッツォ博士は指摘する。

 尾の傷痕に噛み痕や他の恐竜の歯は残っておらず、肉食恐竜に襲われた可能性はまずない。また種、大陸、時代を問わず、傷ついた尾椎が主に腰近くに位置していた事実も、転倒や倒木の下敷きになるなどの事故ではない共通の原因を示唆している。


横向きに寝ていたメスにオスが斜めからのしかかる行動、メスは痛みに耐えた

 大型のハドロサウルス類は体重が、非常に重い。神経棘の変形の状態は、横向きに寝ていたメスにオスが斜め上からのしかかる密接な身体接触があったモデルと最もよく一致した。ハドロサウルスたちが単に抱き合っていたとは考えにくいため、交尾が最も可能性の高い説明となる。

 ハドロサウルス類が互いに強く寄りかからなければならなかった解剖学的理由は、つい最近、化石から発見された。恐竜は近縁である現生の鳥類と同様に、総排出腔を持っていたのだ。

 総排出腔は鳥類の他、ワニ類などの爬虫類にもある。見た目は尾の付け根にある切れ込み程度だが、肛門管、尿管、生殖器の末端が一体となっている。近縁である鳥類やクロコダイル(大型のワニ)に総排出腔があることから、恐竜にもあると考えられてきたものの、その証拠となる化石は長らく発見されていなかった。

 しかし2022年にオーストラリア、ニューイングランド大学の古生物学者フィル・ベル博士らが、非常に保存状態のいいプシッタコサウルス(Psittacosaurus=復元模型)という小型の恐竜の化石について報告した論文で事態は一変した。

 


互いに総排出腔を近づけてメスに骨折

 化石には皮膚の痕も残っており、数種類のパターンの鱗を確認できた。そして保存された皮膚の中には総排出腔と見られるものもあった。現生のワニと同様に、腰のすぐ後ろにある切れ込みだ。

 2頭の恐竜が交尾するには、互いの総排出腔を近づける必要があった。その姿勢は非常に窮屈なもので、その結果、ベルトッツォ博士らが指摘するとおり骨折が生じたことに間違いないだろう。しかし現在のところ、化石からそれ以上のことは分かっていない。

 プシッタコサウルスの皮膚化石から確認できるのは総排出腔の外側の部分だけだ。クロコダイルや鳥類と同様に恐竜にも性別によって陰茎ないしは陰核があると古生物学者たちは考えているが、そうした軟組織の痕跡はまだ化石から発見されていない。


恐竜の性別鑑定は難しい

 発見されたとしても、恐竜の性別を判別するのは難しいだろう。ワニやヒクイドリなど多くの鳥類では、オスの陰茎もメスの陰核もよく似ていて、見分けられるのは専門家だけだ。そうした器官はまた種によって違いが大きい。

 おそらくすべての恐竜が総排出腔を持っていただろう。しかしその構造や機能は、動物学者たちが現生の爬虫類で記録しているとおり、種によって異なっていたはずだ。

 これまで古生物学者は恐竜の求愛行動について多くを学んできたが、それらの知見は特定の種やグループのみに当てはまるものだ。新発見があるたびに、恐竜の求愛行動について新たな疑問が浮かび上がる。

 さらなる証拠は化石などに必ず残っているはずだ。極めて稀ではあるが、足跡からも恐竜の交尾を特定できる可能性もある。


期待される交尾行動のさらなる発見

 踊る恐竜の足跡が求愛行動の痕跡として残っているが、それ以外の足跡やひっかき傷などは恐竜の交尾の瞬間を明らかにしてくれるだろう。

 ベルトッツォ博士は今回の新たな研究によってこれまでに発掘された標本からも、交尾に関連する病理痕が発見されることを期待している。多くの研究者たちが、こうした眼で化石をもう1度見直すことが求められている。

 ひっかき傷から骨折痕まで、恐竜たちの交尾の証拠は増え続けている。彼らの出会いはおそらくほんの数秒、長くても数分で終わっていたはずだ。しかし岩石や骨はその親密な瞬間を何百万年もの間保管してきた。

 重なり合う足跡、捕まれた時の爪痕、堆積物の局所的な変化など、交尾の際に特徴的な痕跡を残す体位が伴えば、それらは例外的な条件の下で保存される可能性があるのだ。


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 そのハドロサウルス類に何があったにせよ、想像を絶するような痛みだっただろう。尾椎骨から伸びる突起の多くが折れていたのだ。オロロティタン(Olorotitan=復元想像図)として知られるその恐竜が単に愚鈍だったからだろうと考えるには、あまりにも多くの骨が折れていた。

 


体重3トンもの恐竜の尾椎に骨折の跡

 骨折は尾の付け根部分に強い下向きの圧力がかかったせいだと考えられる。もしも体長約8メートル、体重約3トンにもなるもう1頭のオロロティタンであれば、こんなケガを負わせられたかもしれない。

 ベルギー王立自然史博物館の古生物学者フィリッポ・ベルトッツォ博士は、2019年にロシアのブラゴベシチェンスクにある古生物学博物館にオロロティタンの骨を研究しに来ていた時に、こうした奇妙な骨折に気が付いた。

 自分の目の前にあるものが分かった時、うれしさのあまり叫んでしまった、とベルトッツォ博士は明かす。以前から自身の研究や科学文献の中で、腰の辺りの椎骨が折れているハドロサウルス類の化石を見てきたからだ。
 

化石にほとんど跡が残らない求愛行動や交尾

 1989年、古生物学者のダレン・タンケ博士は、こうした骨折は交尾をするために1頭が相手に背後から覆いかぶさったことで起きたのではないかという仮説を唱えた。しかし当時、骨折痕が残るハドロサウルス類の化石はほとんどなく、骨折が交尾によるものなのか、あるいは例外的なケガであったのかを判断することはできなかった。

 ベルトッツォ博士の発見はタンケ博士の説をよみがえらせた。骨折痕によって、恐竜がどのように交尾をしたかという長年の謎が明らかになる可能性が出てきたのだ(写真=様々なハドロサウルスの尾椎化石。尾椎の上部にある神経棘に骨折が治癒した痕が確認できる)。

 

 

 古生物学者たちは、恐竜が今の爬虫類や鳥類と同じような姿勢で交尾をしていたことを疑ってはいない。しかし、交尾の姿勢のままで保存された恐竜はこれまでのところ発見されていない。

 恐竜の求愛行動や交尾を再構築するのが本質的に難しいのは、そうした行動が短時間で、季節限定で行われており、化石に痕跡がほとんど残っていないからだ。スペイン、カンタブリア大学の古生物学者イグナシオ・ディアス・マルティネス博士は、そう説明する。
 

骨折痕が示す恐竜の交尾の儀式

 古生物学者にとって恐竜の交尾は、恐竜の模型をぶつけ合わせるだけでは解明できない難問だった。骨格を調査し、現生動物と比較するというこれまでの研究は、現生の陸生動物の中には、恐竜のように交尾を難しくさせるほど太く大きい尾を持つものがいないという事実に阻まれてきた。

 そんな恐竜たちの交尾はおそらくアクロバティックなチャレンジだったに違いない。ステゴサウルス(復元想像図)など鎧をまとったような恐竜が、どう交尾をしていたかは誰にも分からない。

 

 

 鎧を持たないハドロサウルス類でさえ、どう交尾をしていたのか研究者たちを悩ませてきた。なぜならハドロサウルスのように大きく、長い筋肉質の尾を高く水平に保てる、参考にできる現生動物はいないからだ。残っている骨からヒントを探るしかない。

 他の恐竜に比べ、ハドロサウルス類の化石に骨折痕が多く見つかっているのは、ハドロサウルス類の化石が数多く発掘されているからでもある。単独の化石を見た場合、骨折を生じさせた理由としては、肉食恐竜に噛まれたとか、あるいは転倒したとか様々な要因が考えられる。

(この項、続く)


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