②社会保険料という名の人頭税

 

 次に論じるべき問題は、社会保険制度は徴収において最も重大な誤りを犯しているという問題です。

 今の日本の社会保険制度は、給付は民間保険会社の如く行い、徴収は税金の如く行うという大変矛盾した構造になっています。

 社会保険料の徴収方法の問題は、給付の問題とは異なります。本来、徴収と給付の二つに関連性はなく、それぞれ独立した概念のものです。

 受益者負担などの理屈であたかも関連があるように言われていますが、通貨発行権が介在すれば、その収支に意味は無くなります。

 あらゆる政府の事業においては、それは全て公共の福祉が目的であるからには、収支は問題外となります。これは、安全保障において収支が問題外であることと何ら変わりはありません。

 「税金・社会保険料」と「政府支出・給付」の間にインフレ政策とデフレ政策のどちらを採るかの判断を介在させるだけで良いのです。

 高額所得者は社会保険料についてフラット税方式や累進制による上限の無い高額負担を行うべきであるという趣旨は、税金の場合と同じくインフレ対策の一つです。

 もし、そのインフレ対策が無用であると言い、だから高額所得者の負担は無用であると言うのなら、高額所得者は黙ってインフレを受け入れるべきです。インフレも嫌だ、高額負担も嫌だといったエゴイズムは、低所得者と貧困層にとっては受け容れられるものではありません。

 すなわち、社会保険であろうと何であろうと財源は通貨発行権であり、通貨発行の副作用であるインフレだけが障害になるのです。だから、インフレ対策として社会保険料を取るにすぎないということです。

 インフレ対策として社会保険料を取るのであれば、低所得者や貧困層から取るべきではなく、お金の余っているところ、つまり、富裕層から取るべきだということになります。富裕層の貯蓄を減らすことは流動性選好を抑制し、不況対策になります。

 水道料金などの公共料金でも同じです。料金を取る必要はありません。それは、料金未払いの時に、水道や電気を止めてみれば判ります。止められれば、普通死にます。死なないのは、なんとかしているからです。なんとか出来なければ死ぬしかありません。

 水道が止められたことで誰かが死ねば、役所は世間から非難を浴びるでしょう。それが、料金など関係なく、役所が負う使命であり、命の源である水を供給しなければならないという証拠です。

 水の供給も、国民全員で生産したものをみんなで分け合うという所得再分配の一つです。本来、料金などは取ってはならないものです。ただし、使い過ぎを放置するわけには行きませんから、国民一人当たりの一定量を決めて、それを超えた分については懲罰として料金を取るということはあるべきでしょう。しかし、それはあくまで懲罰なのであって、料金ではありません。

 生活保護の場合はそれらが無料の上、生活費まで支給されるのに、たかだか水道料を低所得者や貧困層から取るというのは矛盾ですから、一般の国民にとっても水道料金の基本料金は無料が正しいのです。電気も、ガスも、教育も無料を目指すべきです。

 生活保護制度を取り入れたときに、社会はすでに社会主義に一歩足を踏み入れています。ゆえに、あとは、その合理性や整合性を確保して行かなければなりません。

 ケインズは、社会の基盤となる産業、燃料、水道、電気、原子力発電、公共交通、郵便、通信などについては国営とし、その他の趣味、芸術、娯楽、高度な家電機器、高度な交通手段など文化的分野を民間にまかせるという社会を想定しています。ケインズが社会主義と言われる所以はここにあります。

 政府が行う事業はすべて所得再分配なのですから、国民全員で作ったものを、国民全員に分配することの道徳や正義を作ることが社会づくりの最初の仕事になります。

 そして、そのことを現実の資本主義的な社会体制の中に、出来るところから配置していくのです。そうすれば、あらゆる事業について民営化とはまったく逆のトレンドが巻き起こって行くはずです。

 もし、国民全員が生きて行けるようにするということが国是になるならば、一部の国民を守り、他の国民は見殺しにするなどというみみっちい政策はあり得ないのです。

 現在の日本は完全にケインズの社会主義的理想とは逆の方向に走っています。

 日本国民が社会保険が社会福祉の一つであるから自己責任ではないと思い込んでいるのは、刷り込みの結果であり、繰り返し刷り込まれることによって錯覚しているだけです。

 社会保険事業において完全な民営化が行われれば、全ての加入者は任意加入となり、医療は完全な自己責任となるでしょう。

 しかし、これまで言って来た通り、社会保険は強制加入であるにも関わらず、すでに、収支を重視する民営化状況となっていることによって、限りなく営利目的的な運用が行われているのです。一体、社会保険は福祉政策なのか、営利事業なのか、ハッキリさせてもらいたいものです。これでは国民は生殺しです。

 とりわけ、国民年金は年収に関係なく一律の徴収となっており、完全な人頭税方式となっています。健康保険と年金保険を合わせた社会保険も、このような悪辣な徴収は廃止し、全額所得累進課税方式にすべきです。

 国民年金については、老後の生活保護という位置付けに変えるべく改革すべきです。すでに、老後の生活に至っては、国民年金は現在の生活保護よりも不利な状態になっています。

 厚生年金については、他人より多い年金を受けたいと思う人のためのものであるからには、そのようなものは無用ですから、ただちに廃止し、国民年金に一本化すべきです。

 

 

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