2020年暮れから個人的キャンペーンとして、私の時刻表コレクションを元にスキー列車の歴史を、実物の時刻表とあわせて、紐解いています。

 

このシリーズの現在地確認です。

【1】1970年代 ○○銀嶺号から○○スキー号への移行期

【2】1980年代 ○○スキー号からシュプール号への移行期

【3】1990年代 シュプール号をはじめとした各地のスキー列車

1章 1年目(1985〜86)

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9章 10年目(1994〜1995)

10章 11年目(1995〜1996)

4】2000年代以降 シュプール号の終焉

【5】番外編

 

今回は第10章、シュプール号11年目(1995年〜96年)シーズンについてまとめます。このシーズンですが、白馬・栂池号が全面的に運転休止されます。理由は大糸線で発生した集中豪雨による長期不通です。その上でどのような運行体制になっていたでしょうか。

 

 

  ’95〜’96シーズンに追加されたシュプール号

 

シュプール勝山号

JR西日本が、今年もまた新たなシュプール号をリリースしてきました。福井駅から九頭竜湖駅につながる越美北線に乗り入れるシュプール号です。
 
非電化区間への乗り入れのため、使用車両は向日町運転所のエーデル型(キハ65)4連。例年は「シュプール白馬・栂池号」に使用されている編成も、大糸線災害の影響により「手が空い」ており、この新シュプール号の運用にはいったというものです。
 
さて、このダイヤ、一見何の変哲がないように見えますが、越美北線内の「送り込み」にただならぬ工夫がありました。
 
まず行きですが、神戸発22時30分に出発し、大阪、京都の主要駅でスキー客をひろったあと、北陸本線内で時間調整のための運転停車を実施(今庄駅)後、福井から越美北線に入ります。その後客扱いはなく、シュプールバスの接続駅である越前大野駅に到着。実は九頭竜湖駅ではスキー客への接続バスないのですが、越前大野で運転取りやめにしなかったのは、この線の閉そく方式が影響しています。
越美北線は越後大野までは特殊自動閉そく方式、越後大野〜九頭竜湖間はスタフ閉そく式と、定期列車に対して増発列車が設定しにくい状況でした。
そのため、「定期列車の代走」という形をとることでこのダイヤが実現したのですが、実際は下記のように運転されました。
【行き】
・福井→越前大野間はシュプール勝山ながら列車番号は「9103D」で運行。
・越前大野以降は、定期列車123D「普通列車」として運行(越前大野→九頭竜湖)
・折返しも定期列車124Dも「普通列車として運行」(九頭竜湖→福井)
【帰り】
・定期列車131D「普通列車」として九頭竜湖駅に送り込みかねて営業運転される
・定期列車134D「普通列車」にシュプール編成がそのまま使用される(九頭竜湖駅発16:32)
・越前大野駅からは9104D「普通列車」として福井まで運行。
・福井駅から9502D「シュプール勝山号」として運行される、というダイヤでした。
 
そのため、地元の利用者の視点でみると、シュプール運行日のみ越美北線内のローカル列車が、「豪華な普通列車」に様変わりしていた、という話ですね。
 
 

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

 

シュプール白馬アルプス号

JR西日本のシュプール号ながら、経由が東海道本線→中央本線と、JR東海社線を通る前代未聞の経路を取ることになった新たな列車の誕生です。これは1995年7月11日に発生した新潟・富山・長野の各県下で発生した集中豪雨によって大糸線不通となり、大糸線の乗り入れ等ダイヤの制約が大きく生じ、「シュプール白馬・栂池号」の運行が難しくなりました。その結果生まれた列車になります。

 

そのダイヤですが、姫路〜南小谷間1往復で、行きは姫路を20:15に出発し、東海道線米原までの主要駅でスキー客を拾いつつ、その後信濃大町まで客扱いを行わない(=JR東海エリアでは乗客を拾わない)ダイヤが組まれました。ちなみに客扱いは行っていませんが、目的地を有効時間帯とするために藪原で運転停車されました。帰りも夜行として運行され、こちらも時間調整で名古屋で運転停車されたようです。

 

使用車両については、中央本線を経由するため、パンタ折りたたみの高さの制約が生じ、従来「シュプール白馬・栂池号」で使用されていた485系、583系の充当が叶わず、JR西日本の「やくも号」、「くろしお号」で使用されていた381系の予備車を捻出し、381系6連を2本捻出したとのことです。

 

 

  ’95〜’96シーズンでみかけなくなった(前シーズンまで存在した)シュプール号

 

今シーズンから消滅したシュプールはありませんでしたが、1995年7月集中豪雨によって発生した大糸線の不通の影響による「シュプール白馬・栂池号」の運休が発生しています。

JTB時刻表1995年9月号より
 

 

  各シュプール号のダイヤの動き(前シーズン【’94〜’95】との比較を中心に)

 

シュプール蔵王号シュプール猪苗代

シュプール猪苗代号の帰りのダイヤについては、30分ほど繰り上げて運転されていること以外は、両列車ともに、ダイヤ、使用車両ともに前シーズンを踏襲しています。(蔵王:青森運転所583系6連、猪苗代:勝田電車区485系7連)

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプールニセコ

前シーズンとほぼ変わらずのダイヤ、使用車両も引き続き尾久客車区24系5連(1両は青森運転所の電源車)でした。
※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプール上越号シュプール草津・万座号

シュプール上越号草津・万座号の併結組み合わせが代わったことで、号数と使用車両の紐付けが代わったことが前シーズンとの大きな違いとなります。
前シーズン 1・号が583系、・3号が185系 でしたが、
今シーズン 1・号が583系、3・号が185系 となりました。
 
この入替は、昨シーズン4号のダイヤが3時間程度の繰り上げされた結果で、シュプール草津・万座号のお相手は上越3号・4号となりました。
使用車両については、上越号の185系の所属が前シーズンまでの田町車から新前橋車に変更になったことで、上越号草津・万座号は、両方とも新前橋電車区で6連+6連の12連運転となりました。583系は変わらず青森運転所の9連が使用されていました。
 

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

 

シュプール信越号シュプールレインボー信越号シュプール戸狩・野沢号

シュプール戸狩・野沢号は、ダイヤ、使用車両ともに前シーズンを踏襲(車両は尾久車14系ハザ5連)。
シュプール信越号については、帰りの出発時間が大幅に繰り上げされています。
【妙高高原の帰り発車時刻の変化】
2号 95年 16:14→96年 13:58
4号 95年 16:52→96年 16:14
使用車両は前シーズン同様の、長野総合車両所の489系(189系)9連でした。
シュプールレインボー信越号は、ダイヤ面で、帰りの設定がなくなりました。理由は特急退避などで生じていた所要時間の長さだったようです。
※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプール白馬号、シュプールゆう白馬号

シュプール白馬号シュプールゆう白馬号ともに、帰りのダイヤが全体的に繰り上げられています。その影響なのか、弁当販売駅について、前シーズン6号が松本駅、塩尻駅の2駅だったのが、松本駅1駅のみに絞られました。
使用車両ですが、
1・4号 幕張電車区183系6連(モノクラス)、8連、9連(グリーン車あり)
5・2号 幕張電車区183系9連
3号 松本運転所183系9連
6号 田町電車区185系7連
ゆう白馬号 リゾートエクスプレスゆう 勝田電車区485系6連
※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプールユーロ赤倉・志賀

ダイヤ、使用車両ともに、前シーズンを踏襲しています。

使用車両はユーロライナー6連+ユーロピア4連の10両編成。

※名古屋発1995年12月28日〜30日、妙高高原発12月31日はユーロライナー3連+ユーロピア2連の5両編成での運行。

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプール栂池・八方号

前シーズンに始終着が大垣に変更されたばかりでしたが、そのスジを踏襲しつつ、大垣から更に神戸まで延伸運転されています。これはJR西日本の「シュプール白馬・栂池号」の運休に伴う緊急状況への会社を超えた「救済処置」とのことでした。そのため、使用車両はJR東海の神領電車区の381系6連を変わらず使用したため、JR西日本内への送り込みとして、名古屋〜神戸間の回送が発生しました。ちなみに、この「栂池・八方号」の座席販売については、JR西日本、JR東海がそれぞれ販売枠をもち、6両編成のうち2両がJR西日本エリア発着分として割当られていたそうです。

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

シュプール苗場・湯沢号

ダイヤは前年踏襲、使用車両については、前シーズンの向日町運転所の14系寝台車6連から、宮原客車区の24系25型9連に変更されています。

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。
 

シュプール妙高・志賀号シュプール立山号

シュプール立山号については、昨シーズンまで「スーパー雷鳥」付属編成3連が運用にはいっていたのですが、この’95〜’96シーズンから1995年4月から営業運転に入っている681系サンダーバード編成3連が使用されています。この3連も「スーパー雷鳥」同様「付属編成」でした。ダイヤも始発駅で発車時刻の大幅に繰り上げが行われました(23:55→22:25と1時間半)が、目的地立山にはほぼ同じ時刻に到着でした。※木ノ本、武生で時間調整の運転停車実施
 
シュプール妙高・志賀号については、下記が運行の詳細となります。
 

1号・6号 西明石〜黒姫間 583系12連

3号・2号 姫路〜長野間 485系7連+583系7連 

5号・4号 神戸〜黒姫間 14系座席車12連 ※大阪方は展望車

11号・12号 神戸〜黒姫間 金沢運転所の485系9連、または489系(白山編成)9連

13号・14号 神戸〜直江津間 向日町車583系12連、金沢車485系9連、または、14系寝台車7連+レガートシート1両。 

 

ダイヤでは、11号・12号が、前シーズンは直江津止まりだったのが、ダイヤ調整がかなって黒姫発着に信越本線乗り入れと変更されています。

 

使用車両については、

・583系が昨シーズンまで10連または12連だったのが、12連のみと「増強」された

・5号・4号については、従来と変わらず座席車ながら、このシーズンは運休の「白馬・栂池号」で通常使用されていた展望車付き編成が入ったといういわくつきの運用でした。

・13号・14号の14系寝台車使用編成には、あかつき号で使用されていた「レガートシート」車が連結された

 

その他、運転日によって、スーパー雷鳥編成が入ったりなど、編成のバラエティーには枚挙の暇がない、例年通りの賑やかさでした。

 
※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。
※7号、9号、8号、10号は紙面上は欠番
 
 

シュプール白馬・栂池号

前述の通り、1995年夏に発生した大雨による災害が大糸線に発生し、その影響をうけて、このシーズンは、運行されておりません。

 

前シーズンに誕生した神鍋・鉢伏号ですが、1シーズン終えて、ダイヤ、使用車両ともに大幅に変更されています。
ダイヤについては、運転経路が福知山線から播但線に経由が変更になり、大阪〜姫路間の主要駅でスキー客を拾えるようになりました。使用車両についても、非電化の播但線経由となるため、前シーズンの381系電車7連から、向日町運転所のキハ181系7連に変更されています。
※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。
 

シュプール大山号

前シーズンと概ね同じダイヤ。使用車両も引き続き熊本運転所の12系6連での運行が基本で、下記紙面には明記がないもの、運転日によっては寝台車付き(24系25型3連)となり、12系4連+24系25型3連の7連という編成だったようです。

※運転時刻の詳細は、列車名をクリックした先にまとめております。

 

 

今回は、以上です。

 

次回は、11章 12年目(1996〜97)のシュプール号についてまとめます。

 

参考資料 

JTB時刻表1995年9月号、12月号

鉄道ダイヤ情報 1996年1月号(No.141)

参考サイト  http://gingaexp.web.fc2.com/jr/spur/spur_1.html

https://macchayasan.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

※車両情報を中心に参考にさせていただきました。

国鉄185系電車(Wikipedia)

カバー画像 Oleksandr PyrohovによるPixabayからの画像