シュプール号名鑑と銘打って、意外にも情報の少ないシュプール号各列車のダイヤや使用車両を可能な限り追ってみたいと思います。
第11回目はJR東海が運行していたシュプールユーロ赤倉号を取り上げます。
名古屋圏から運転されたシュプール号であり、主にジョイフルトレイン「ユーロライナー」を利用した客車列車。客車列車が削減されていく時期にあって、ピーク期には10両編成で運行されていた列車は、格好の撮影被写体だったようです。
また、ユーロライナーを利用をした列車であることは有名ながら、
- 多客期には「ユーロピア」編成が増結された
- カートレイン名古屋号の運行の影響で、ディーゼル列車のジョイフルトレインである「リゾートライナー」が年末のみ代打で運行に入った
- 晩年は381系での運行
など、運用編成でも、興味深い歴史を有している列車です。
シュプールユーロ赤倉(赤倉・志賀)号、リゾート赤倉・志賀号
運転された年(シーズン)
シュプールユーロ赤倉号 1987〜89年 (3シーズン)
シュプールユーロ赤倉・志賀号 1990〜99年 (10シーズン)
シュプールリゾート赤倉・志賀号 1991〜94号(4シーズン)
シュプール赤倉・志賀号 2000、01年 (2シーズン)
※1987〜2001年でトータル15シーズンで運行
年ごとの運転概要
運転シーズンについての補足ですが、首都圏のシュプール号のように複雑なダイヤ調整が少なかったためか、首都圏シュプール号が年明けからの運行が多数はだったところ、ユーロ〜号は比較的長期にわたって、年末から運転されており、一部は年をまたぐダイヤもありました。
1987 | ユーロ赤倉号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:不明(調査中) |
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1988 | ユーロ赤倉号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:かえり 松本、塩尻 |
1989 | ユーロ赤倉号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:かえり 松本、塩尻 なお松本停車は〜3/10 |
1990 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:かえり 塩尻
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1991 | リゾート赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※’90年末のみ ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:かえりの「ユーロ」のみ 塩尻
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1992 | リゾート赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※’91年末のみ ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※弁当販売駅の停車駅:なし(〜ラスト) |
1993 | リゾート赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※’92年末のみ ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復
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1994 | リゾート赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 ※’93年末のみ ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 |
1995 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復
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1996 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 |
1997 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 |
1998 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 |
1999 | ユーロ赤倉・志賀号 名古屋〜妙高高原間 1往復 |
2000 | 赤倉・志賀号 名古屋→妙高高原間 0.5往復 ※ゆきのみ
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2001 | 赤倉・志賀号 名古屋→妙高高原間 0.5往復 ※ゆきのみ |
使用車両
ユーロ赤倉号
ユーロライナー(12系客車)
:名古屋客車区7連(’87〜’89)
ユーロ赤倉・志賀号
ユーロライナー(12系客車)とユーロピア(14系700番台客車、普通車)
:ユーロライナーは名古屋客車区、ユーロピアは美濃太田車両区所属
:(牽引機)EF64 専用機指定(稲沢機関区)
ユーロライナー【以下、欧】+ユーロピア【以下、P】 の組み合わせは、シーズンごとにバリエーションがありますので、簡単に列挙しておきます。
欧5両+P2両 7連 ’90〜’92
欧7両+P2両 9連 ’92の一部
欧6両+P4両 10連 ’93〜’99
欧2両+P6両 8連 ’94の年始。欧2両はいづれも展望車
欧3両+P2両 5連 ’95,’96の年末
※上記はいづれも当時の鉄道ダイヤ情報をまとめたもの。実際の編成両数との差異が生じている可能性があります
なお、欧+P 編成での展望車の用いられ方ですが、展望車は欧側1両のみ連結で、欧とPを挟み込む形で展望車が用いられたことはほとんどなく、欧+P編成での両端展望車編成が確認できたのは、鉄道ダイヤ情報の情報から’94の一部のみでした。
リゾート赤倉・志賀号
:リゾートライナー(キハ80系82形DC)3連(’91〜’94)
:リゾートライナー3両+一般形気動車(キハ58,65)2両 の5連(’93の年末)
※リゾートライナーは名古屋車両区所属
シュプール赤倉・志賀号
381系特急形電車
:神領電車区6連(’00、’01)
運転ダイヤ(各年時刻表より)
ダイヤについては、どのシーズンも、名古屋〜妙高高原間の1往復、中京圏、現地発着時刻ともに概ね大きな変更はないのが特徴でしょうか。首都圏のシュプール号のような目まぐるしい変更がなかったのは首都圏内を縫うように走る列車ではなかったことは大きな一因だったと思われます。
あと、この列車の運転区間について、インターネット上に「直江津までの運行」という記事も見かけましたが、これは妙高高原駅から直江津駅に回送、日中留置を指していると思われます。そのため妙高高原〜直江津間は客扱いは行っていません。
’87〜’90
’90には、1989年3月開業した金山総合駅に加え、高蔵寺、多治見、中津川に停車するようになります。弁当販売のための停車駅は、松本駅が早々になくなっているのが気になるポイントです。
【ゆき】
【かえり】
’91〜’94
この時期のダイヤでは「リゾート赤倉・志賀号」が加わっているものの、ユーロ〜号とほとんど同じスジで運転されています。特に【ゆき】について、妙高高原到着時刻が「リゾート〜号」と「ユーロ〜号」とで15分程度ずれているのは、首都圏から運行されていたシュプール信越号とのダイヤの折り合いだと推察します。おそらくJR東海的には「リゾート〜号」で「ユーロ〜号」を運行したかったが、年始から運転されるJR東日本のシュプール号が妙高高原に入るスジとの調整の結果が「リゾート〜号」より到着時間を繰り上げざる得なかったというものです。
【ゆき】
【かえり】
’95〜ラスト
この時期のダイヤについて、前項のつづきでシュプール信越号との兼ね合いで見てみると、【ゆき】については、長野新幹線開業にともないシュプール信越号の経由線が信越本線から中央東線・篠ノ井線経由に変更になり、〜信越号の現地到着時刻が1時間ほど後ろ倒しとなります。その結果、ここからは推察ですが、ユーロ〜号との到着時刻調整がなくなり、従来の6:00着から、最大7:23に後ろ倒しできています。一見現地の滞在可能時間が短くなったように見えますが、スキーヤーとしては「寝坊」ができるゆっくりダイヤが、求められていたダイヤだったのかなと思います。
【ゆき】
【かえり】
過去のシュプール号はじめ、日本のスキー列車の歴史をまとめた一連のブログはこちらからご覧になれます。あわせてよろしくお願いいたします。
参考資料 1987年〜2001年のJR時刻表、交通公社時刻表、JTB時刻表、鉄道ダイヤ情報(シュプール号運転情報)