「ぼくらの７日間戦争」　★★★～こどもVS大人の構図はもう古いのでは？

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2020』の掲載にあたって」

こどもVS大人の構図はもう古いのでは？ ★★★

（2019年／日本／88分） 【　監督　】 村野佑太【　原作　】宗田理【　声の出演　】

北村匠海
芳根京子
潘めぐみ
鈴木達央
大塚剛央
道井悠
小市眞琴
櫻井孝宏

宮沢りえ

【あらすじ】

　高校２年生の鈴原守は、歴史好きの読書家で陰キャ。幼なじみの千代野綾に片想いするも告白できずにいた。

　そんな中、綾は家庭の都合で東京に引っ越すことに。東京に行きたくないという綾の気持ちに、守をはじめとした友人たちは、一週間、山中の古びた石炭工場に身を隠す家出計画を立てる。

　しかしそこには、予定外の“客”が潜んでおり、大人たちと攻防戦を繰り広げることとなる―

【コメント】

　『ぼくらの七日間戦争』といえば、我々オッサン世代が真っ先に思い出すのが宮沢りえ主演の映画。まだ中学生の初々しい人気絶頂期の宮沢りえをオッサンなら誰もが思い出すことでしょう。TMネットワークの主題歌も売れましたしね。ちなみに、続編には宮沢りえのかわりに具志堅ティナというこれまた懐かしいアイドルが出演していましたね。

　そんな懐かしの映画がアニメーションとして公開されたのが年末。劇場鑑賞はスルーしましたが、行きつけのTSUTAYAでレンタルされていたので、懐かしさもあり手に取ってみた次第です。

　うん、まあ可もなく不可もなく、こんなもんでしょう。大人の理不尽な都合に振り回されるこどもたちが廃墟に立てこもり、お店に七日間だけの抵抗をする。ドタバタあり青春ありドラマあり、アニメにする理由があったかどうかは微妙なところですが、まあまあといったところでしょうか。

　本作は、1988年の宮沢りえ主演の映画の30年後という設定で、宮沢りえ本人もラストに声で登場するというサービスがあり、前作とのリンクを作っているようです。大人に反旗を翻し抵抗する少年少女、大いに結構と言いたいところですが、個人的に感じたのは、この“こどもVS大人”といった対決構図はもう古いんじゃねーの？ということなんですね。

　当時はそりゃあいっぱいあったんです、大人に対する不平不満。不良や暴走族、家庭内暴力。校舎の窓をたたき割ったり盗んだバイクで走りだしたりという少年少女の必死の抵抗が、映画やドラマや歌に込められているものが実に多かった。今がどうだろう。ブラック校則なんてまだあるし、理不尽な大人への不満が決して無くなったとは言わないが、当時ほど荒れまくっているわけじゃない。ヤンキーや暴走族なんて絶滅危惧種でしょ。思うに、当時暴れてた少年少女が大人になって、そんな大人にはならんぞという気持ちが今の世の中を作ったんじゃないかと思いますね。いろんな問題は数あれど、現代は様々な理不尽に対し声を上げることができるし、大人もこどもの声を聞く耳を持っている。そんな現代の背景があるからこそ“こどもVS大人”の構図は一昔前のネタだと僕は感じます。