「男はつらいよ50 お帰り寅さん」　★★★～寅さんダイジェスト

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2020』の掲載にあたって」

寅さんダイジェスト ★★★

（2019年／日本／116分） 【　原作・脚本・監督　】 山田洋次【　出演　】

渥美清
倍賞千恵子
吉岡秀隆
後藤久美子
前田吟
池脇千鶴
夏木マリ
浅丘ルリ子

美保純

佐藤雅次郎

桜田ひより

橋爪功

【あらすじ】

　東京、葛飾柴又。

　小説家になる夢が叶った満男は、7年前に亡くした妻の法要のため一人娘とともに団子屋“くるまや”を訪れる。両親や近所の人たちは昔から変わらず、和気あいあいと会話に花を咲かせるなかで伯父の寅次郎に思いを馳せるのだった。

　ある日、書店で新作のサイン会を行う満男の前に、初恋の相手イズミが姿を現す。今は海外に移住しているが、来日の際にたまたまサイン会を見つけ会いに来たのだった。

　思い出話に花を咲かせる二人、かつての恋心がお互いに再燃し始めていった―

【コメント】

　さて、今回行きつけのTSUTAYAで手に取ったのは、邦画の愛すべきキャラクター、日本の心であるご存じ“寅さん”の、まさかの新作・第50作である本作。今の若者は馴染みがあまりないかもしれませんが、僕の年代やそれ以上の老齢の人たちや真摯な映画好きなら誰もが知っているキャラクターですね。僕もなんだかんだでこの「男はつらいよ」シリーズ、ほぼ鑑賞しています。まあ映画好きなら当たり前ですかね。

　寅さん役の渥美清が亡くなったのはもう四半世紀くらい前ですが、ここへ来て山田洋次監督が一体どんな新作を完成させたのか興味もあって鑑賞してみた次第です。

　うむ、さすが山田洋次監督。満男とイズミの恋愛模様を主軸にしつつ過去の寅さんの映像をうまく使って、寅さんがいないながらも世界観は微塵もブレていない、まごうことなき“寅さん”映画を完成させましたね。寅さんダイジェストと言ってしまえばそれまでですが、現在のドラマとうまく絡ませて1本の作品に仕上がっているのは凄いことです。

　先にも言ったように、本作は一連の「男はつらいよ」シリーズの終盤から始まった満男とイズミの恋愛模様を継承した作品になっていて、大人になりそれぞれが家庭をもった二人が再会し再燃した純愛が繰り広げられる。両親でありすっかりおじいちゃんおばあちゃんになったさくらと博はもちろん、お馴染みのキャラクターも登場する。肝心の寅さんはそれぞれのキャラたちの思い出話として回想で登場するのみで生きているのか亡くなってしまっているのかは明確にしないまま進行していく。過去の名場面を随所に織り込みながら、光男とイズミのドラマがまた一歩進展する。

　寅さんの名場面、たとえば満男の運動会に行こうとするシーンや、メロンで説教するシーンは今観ても笑える。適当に言った言葉が満男たちの心に響いていたり、改めて寅さんというキャラの唯一無二な存在感は偉大だなーと感じさせるわけです。