「ミッドサマー」　★★★★～不条理で狂いまくった最高の胸糞映画

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2020』の掲載にあたって」

不条理で狂いまくった最高の胸糞映画 ★★★★

（2019年／アメリカ・スウェーデン／147分／Midsommar） 【　脚本・監督　】

アリ・アスター

【　出演　】

フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
ウィル・ポールター

【あらすじ】

　精神疾患の妹を持つ大学生のダニーは、恋人のクリスチャンともうまくいかず悩んでいた。そんな折、妹が両親を巻き添えに無理心中を図り、ダニーは天涯孤独の身となってしまう。

　悲しみに暮れるダニーを見かねたクリスチャンは、友人ペレの誘いで仲間と計画を立てていたスウェーデンの田舎町ホルガへの旅行に誘う。

　ホルガは、90年に一度開催される夏至祭が執り行われる時だった。その祝祭に参加したダニーら一行は、自然豊かな風景の幻想的な祝祭に魅了されるが、祭りが進むにつれ、一行は不安と恐怖に蝕まれていく―

【コメント】

　さて、今回鑑賞したのは、2018年公開のオカルト映画の佳作『ヘレディタリー継承』を監督したアリ・アスターの最新作である本作。あの不条理でイヤーな空気は未だ印象に残っています。

　本作も予告を観た限り明らかな不条理さが伝わってきていて、こりゃあもしかしたら面白いかも・・・と言う期待を持って「立川シネマシティ」に足を運んだ次第です。しかし観客多かったなー、特に若い女子率がとても高く、本当に内容分かってて観に来たのか？と不思議な感じでした。

　・・・いや～、凄ぇなこれ。呆然、絶句、胸糞感。久しぶりにこんな嫌な気持ちにさせてくれる映画を観させていただきました。とにかく狂ってる！美しい映像の中で繰り広げられる不条理で狂いまくった展開の数々、気分が悪くなること間違いなしのスリラー映画でしたね！この手の作品、かなり評価が分かれると思います。嫌いな人は大っ嫌いでしょうし、愛せる人は大好きになる。2時間半という長尺ながら、片時も目が離せずハラハラする。僕はもちろん、本作、大好きです！

　とにかくですね、予告で観て想像した以上に鑑賞後はダメージを喰らいます。オープニングからこれは嫌な予感は察知できるし、全編において映し出される美しい映像とは裏腹に起こる不条理な展開の数々。ホラーテイストではあるものの、いわゆるゴーストやモンスターといったものは一切登場せず、まるでカルト宗教に洗脳されてしまった信者に飲み込まれていくかのような集団の人間という恐怖がエグい。グロいシーンも随所にちりばめられているから、本作の狂い具合がさらに際立つ。

　本作は、未だ世界の地方に伝わっている民間伝承という題材を取り扱ったものですが、都会の常識に染まった人間と地方の常識に染まった人間の考え方・ギャップがうまく表現されていて、主人公ダニーのように都会で心折れた者が、地方の祝祭によってラスト心が救われる。決して後味はよくはないが、これはこれである意味ハッピーエンドなんでしょうかね。

　単なる怖がらせ、胸糞な作品ではなく、民間伝承にかかるリサーチや細かな設定が隅々まで作り込まれていて、改めてアリ・アスター監督の凄さを感じさせる一本です。