新・法水堂

新・法水堂

年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

エトエのミニ公演

『忘れ物』



2025年3月14日(金)・15日(土)

Paperback Studio


作・演出:滑川喬樹

音響・照明:木内コギト

当日運営:石原晴仁


出演:

すずき環

髙橋真理

長井健一

信國ひろみ(バケツまみれ)

滑川喬樹


◉演目

1. 飲み屋にて 髙橋(林の部下・藤井)、滑川(先輩社員・林)、長井(田中)

2. 夫婦 すずき(舞台俳優・ミユキ)、髙橋(夫・ケンジ)

3. 後輩 長井(新入社員・長井)、滑川(先輩社員・ケンイチ)、信國(同僚・信國)、すずき(ケンイチの恋人・ユミ)

4. 夏の日 すずき(松田の妻・サチコ)、髙橋(患者・松田)、長井(看護師)、滑川(医師)、信國(松田の娘・ユイ)

5. 離婚 信國(母親)、滑川(父親)、長井(ケンイチ)

6. 別れ 信國(ジョンの飼い主)、髙橋(子牛・ジョン)、長井(業者)、滑川(ギターを弾く男)

7. お見舞い 長井(守)、信國(守の母)、髙橋(スポーツ選手・大村国三郎太)、すずき(コールセンター勤務・橘木)


コント7本からなるミニ公演。


「飲み屋にて」。

林が部下の藤井と飲んでいると、別のテーブルで田中が林の悪口を言っている。それが許せない藤井は田中に文句を言いに行くが、止めに入った林を殴ってしまう。

これが繰り返されてエスカレートしていくパターンで、怒ると周りが見えなくなる藤井はしまいには直で林に摑みかかるのだけど、滑川さんは殴られる姿がよく似合う。


「夫婦」。

結婚記念日にどこかで外食しようと誘う夫に対して、その日はオーディションがあるからと断る妻・ミユキ。来る日も来る日もオーディションを受けているミユキだが、この20年、舞台も映像も一度も出たことがない。

20年もよく我慢したな、という感じだけど、オーディションでの演技をしてみせるミユキが白目を剝いて意味不明の声を発して…とすずき環さんの振り切った演技が可笑しかった。


「後輩」。

入社して1ヶ月になる長井を労いつつ、飲みに誘う滑川。内心では嫌そうな長井に気を使って今日は止めておこうと言うと長井は「僕と飲みにいきたくないんですか!?」と突っかかる。そこへやってきた信國も同じパターンで、飲みに行こうと言うと嫌がり、止めておこうと言うと何でですか、となる。更には滑川の恋人も……。

1本目とは違い、多少は良好な関係の先輩・後輩なのかと思いきや……ここまで内心だだ漏れな人たちもそうはいないだろうけど。笑


「夏の日」。

余命幾ばくもなさそうな患者とその妻(高橋さんは白髪のかつら)のお話。妻も看護師も医師もなぜかその手にはハンディファン。患者が亡くなった後、病室に駆けつけた娘だけは普通の扇風機を抱え、何かと思ったらPanasonicのCMだったというオチ。いや使えるかい!笑


「離婚」。

離婚することになった夫婦。どちらと暮らしたいかを聞かれた5歳になる息子のケンイチは、別の男性と暮らすことになった妻のマンションが賃貸なのか分譲なのか新築なのかを知りたがり、更には内見に行きたいと言い出す。

長井さんの子供演技がひたすら楽しい。そうね、パパもママもどっちも好きなら物件で選ぶしかないよね。笑


「別れ」。

子牛のジョンと飼い主。そこへ「ドナドナ」が聞こえてきて恐ろしい業者が現れ……。

面白かったけど、ジョンの頭がパーティーグッズでよく見る馬の被り物に着色したもので子牛に見えなかったのが残念。牛の被り物も探せばあると思うけど。


「お見舞い」。

手術を前に不安に怯える守。母親はそんな守のため、ファンであるオリックスの選手に見舞いに来て励ましてくれないかと手紙を送るが断られる。それでも諦めずに色々な選手に手紙を送ったところ、やって来てくれたのが大村国三郎太だった。

これまた長井さんの子供演技が楽しめる一作。1本目同様、髙橋さんの曇りなき眼差しがいいのよなぁ。


上演時間47分。

『少し前から、何かがずっと震えていた。スマホの振動なのかもしれないし、私の身体がぶるぶるしているだけなのかもしれなかった。』



2025年3月7日(金)〜9日(日)

CHUBBY


作・演出:本谷有希子

一部原案:『セルフィの死』(新潮社)

演出助手:𠮷中詩織

制作:寺本真美(ヴィレッヂ)

企画:本谷有希子 製作:ヴィレッヂ

出演:上田遥(女)


STORY

女は通勤ラッシュの時間帯の満員電車に乗ろうとしている。だが、同じく乗り込もうとしている人々が、大きな流動体の一部に見えて、なかなかそこに同化することができない。緑色の藻がびっしり張った水槽。ちゃんとした人間でないことを見抜かれて改札バーに挟まれている昔の自分。黄色い線の凹凸が自分の靴の裏を突き上げてくる感触…身体の感覚と共に、いろいろな記憶を思い出しながら、女が満員電車に乗ろうとするだけの話。もみあげを永久脱毛するために、女が池袋に行こうとするだけの話。【公式サイトより】


本谷有希子さん、3年ぶりの新作公演。


3年前、黒田大輔さんと安藤玉恵さん出演の『マイ・イベント』が全公演中止となり、本谷さん自らの出演という形で代替公演を行ってから今回の公演に至るまでの経緯は本谷さんがSNSに投稿し(こちら)、当日パンフレットにも転載されていたが、とりわけ、


「上田遥に自分が書いた言葉を吐いてもらいたい」


という言葉にグッとくる。

そして迎えた今回の公演は、本谷さんと上田さんの「愛と感謝とリスペクト」に満ちたガチンコバトルだった。表向きは一人の女性が満員電車の中でテトリスのブロックのようになりながら、様々な回想を一人語りしていくという、どうということのない話だが(もちろんそこには本谷さんの社会に対する鋭い眼差しがある)、作家が一人の俳優のために言葉を紡ぎ、俳優はそれに応えてパフォーマンスをする。そんな原初的かつ演劇的なやりとりが2人の間に交わされた結果をこうして目の当たりにできたことに喜びを感じずにはいられなかった。


上演時間1時間6分。



 

『Broken Rage』

 


2024年日本映画 67分

監督・脚本・編集:北野武

エグゼクティブ・プロデューサー:北野恵美子

プロデューサー:福島聡司

プロダクションスーパーバイザー:早川敬之

ラインプロデューサー:宿崎恵造

撮影監督:浜田毅(JSC) 照明:髙屋齋

美術:平井淳郎 録音:高野泰雄

音響効果:柴崎憲治 編集:太田義則

VFXスーパーバイザー:小坂一順

助監督:足立公良 音楽:清塚信也

衣裳デザイナー:黒澤秀之、黒澤爽

装飾:山本直輝 擬斗:二家本辰己

スクリプター:吉田久美子

キャスティング:椛澤節子

制作担当:田島啓次

 

出演:

ビートたけし(ねずみ)

浅野忠信(井上刑事)

大森南朋(福田刑事)

中村獅童(ヤクザの親分・金城)

白竜(若頭・富田)

仁科貴(吉田店長)、宇野祥平(田村)、國本鐘建(ヤクの売人)、馬場園梓(ホステス)、長谷川雅紀[錦鯉](茂木やすお)、矢野聖人(大黒たかあき)、佳久創(ジムトレーナー)、前田志良[ビコーン!](カバンの中の男&警察の隊長)、秋山準(バーの覆面捜査官)、鈴木もぐら[空気階段](検眼の男)、劇団ひとり(椅子取りゲーム司会者)、アマレス兄、アマレス太郎、白神允、矢田政伸、鈴木雄二、渋谷正次、金森規郎、石川孝三、隼翔、深谷五朗、北村友彦(組員)、淺井孝行、兼松若人、市川理矩、鮫島満博、加賀谷圭、荒井武司、菅原けん、松井ショウキ、伊藤亜斗武(バーテンダー)、きづき、遠藤博之(面通しに並ぶ男・1番)、寺田ムロラン(面通しに並ぶ男・2番)、魚谷としお(面通しに並ぶ男・3番)、須間一也(面通しに並ぶ男・4番)、鈴木宏昌(面通しに並ぶ男・6番)、才藤長彦(面通しに並ぶ男・7番)、松井功(面通しに並ぶ老人・2番)、義江和也(面通しに並ぶ相撲取り・3番)、前田こうしん(面通しに並ぶ車椅子の男・1番)、望月ムサシ(面通しに並ぶ外国人・7番)、増井湖々(面通しに並ぶ少女・6番)、栗原斗蒼(面通しに並ぶ男の子・4番)、藤井千帆、光藤えり、中村元気、上川拓郎、佐藤京(キャバ嬢)、高野渚、高崎かなみ(バニーガール)、高砂ミドリ(バニーガール)

 

STORY

"ねずみ"と呼ばれる、一見冴えないが実は殺し屋の男が警察に捕まってしまう。釈放の代償として覆面捜査官となり、麻薬組織に潜入し、親玉との"偽の"直接取引を仕向けるが、予期せぬ展開が…。【Amazon Prime Video 作品紹介より】


第81回ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門正式出品作品。


1時間あまりの作品とは言え、北野武監督の新作がアマプラで観られる!というので期待していたのだけど……うーむ。

二部構成になっていて、前半は『アウトレイジ』シリーズのようなヤクザもので、後半は「Spin Off」と称してパロディとなる。

その構成自体は悪くはないのだが、前半パートがどうにも締まらない。80歳近いビートたけしさんが腕っぷしの強さを認められて……とか言ってる場合じゃないでしょ。笑

前半が今ひとつなものだから、後半のパロディパートが生きてこず、ギャグも寒々しく感じられてしまった。 


 

  

MONO 第52回公演

『デマゴギージャズ』



【東京公演】

2025年2月28日(金)〜3月9日(日)

吉祥寺シアター


作・演出:土田英生

舞台美術:柴田隆弘 照明:吉本有輝子

音楽:園田容子 音響:堂岡俊弘

衣裳:大野知英

演出助手:neco(劇団三毛猫座)

舞台監督:青野守浩 演出部:習田歩未

照明操作:岩元さやか 

宣伝美術:チャーハン・ラモーン

制作:垣脇純子、豊山佳美

企画・製作:キューカンバー


出演:

金替康博(出馬町民俗資料館館長・松村銀太/庶子・松丸)

尾方宣久(サラリーマン・畔上悟朗/長男・千太郎)

渡辺啓太(鉄工所職員・畔上祥二郎/千太郎の弟・次郎)

石丸奈菜美(ジュエリーデザイナー・真田悦子/千太郎の妹・えつ)

奥村泰彦(出馬要/出馬要助)

高橋明日香(祥二郎の妻・畔上初空/要助の娘、次郎の恋人・出馬そよ)

立川茜(出馬町民俗資料館職員・鴨あずさ/巫女・あづさ)

土田英生(医師、郷土史家・鮫島茂吉/鮫島勘吉)

水沼健(政府の職員・横溝達彦/政府から来た役人・横溝正彦)


STORY

出馬(いずま)町にある古民家。かつて畔上(あぜがみ)を名乗る一家が住んでいた場所だ。建物は保存されそのまま民俗資料館として使われている。「文化史財をいかした街づくり制度」。これは国が新たに始めた制度で、国、町、土地関係者が共同で活用方法を考えようとするものだ。この旧畔上家に隣接する裏山は現在は所有者不明。そこで、かつての所有者の子孫が探し出され、町の議員らと共に話し合いに召集される。ただ、最近では行政の実務能力も低下し、すっかり信用も失墜しているようだ。実際、この制度も曖昧で、話し合いはいきなり暗礁に乗り上げる。問題の中心は裏山にあるという謎の石だ。官僚、町議会議員、資料館の職員、そして子孫らはそれぞれの立場から自分の主張を繰り広げる。そして時代は遡って明治の始め。地租改正が行われた頃。価値観の転換点で困惑しながら生きる庶民。この畔上家も、元、村名主である出馬(でま)家と対立しながらも幸せに暮らしていた。ここでも話題は最近現れたという裏山の石についてだ。二つの時代を行き来しながら、まことしやかに語られる歴史と事実が交錯する。その中でデマ (=デマゴギー)はジャズのように奏でられていくのだ。【公演パンフレットより】


MONO新作公演。

産休されていた石丸奈菜美が復帰。


舞台は日本家屋。現代のパートでは出馬町民俗資料館で、下手側の壁に看板、上手側の壁に説明パネル。土間の部分に小さなテーブルが2つ。これらは明治時代のパートでは撤去される。上手側に囲炉裏、その外側に農機具が立てかけられている。


現代と明治時代を行ったり来たりしながら展開していく本作、役者は全員一人二役を担うことになるが、それぞれの関係性が時代によって異なるのが面白い点。

明治時代は兄弟でも数代経てばほとんど他人も同然となる。近年、同性婚やら選択的夫婦別姓制をめぐって家制度やら日本の伝統やらを持ち出す人がいるけど、所詮、家なんてものはそれぐらいに緩やかなものということだろう。


一方で本作はタイトルにもあるデマゴギー、すなわちデマがテーマとなっているが、こちらはやや物足りなさを感じた。土田さんの作品は近年、架空の設定を用いていながらも、必ずと言っていいほど現代社会に対する風刺があり、時には土田さんの怒りが込められていることもある。このところ、ドナルド・トランプや立花孝志など息を吐くようにデマゴギーを流し、民衆を煽って社会に悪影響しか与えない政治家がいるだけに本作にもそえした描写があるのかと思っていたが、デマと言うより噂レベルの話に終始してしまっていた。


上演時間1時間47分。

北村想×perky pat presents

『空がとってもあおいからⅢ~My Pure Sky~』



2025年2月15日(土)〜23日(日)

円頓寺Les Piliers


作・演出:北村想

音楽/音響:ノノヤママナコ

照明:平野行俊(劇座)

衣装:大池かおり 舞台監督:中村公彦

映像収録:村崎哲也(muvin)

チラシデザイン:藤崎アンジェ(妄烈キネマレコード

制作:加藤智宏(office Perky pat)

制作助手:金原祐三子

主催:北村想、office Perky pat


出演: 

小林正和[ファーム・コバヤシ](マスター) 

中島由紀子(女・夜のお店のママ) 

二宮信也[星の女子さん](男)

川本麻里那[劇団あおきりみかん](女2・戦争孤児)


STORY

とあるミルクホール。そこに一見の客がやってくる。マスターと常連である夜のお店のママを交えて話をしていると、一人の戦争孤児が入ってくる。


北村想さんの新作公演を配信にて。

昨年12月の『空がとってもあおいからⅡ』の続篇、のようなもの。


舞台はミルクホール。下手奥にドアがあるのは前作と同じ。ただし、絵画は外されている。


マスターと常連客は同じだが、どうやら核戦争が起きた後という設定のようで、『寿歌』のキョウコやゲサクへの言及もあり。

再度、タイトルに立ち返ってみると、ひょっとしたらこの世界では空がとっても青くなるなんてことがもはやないのかもしれない。川本麻里那さん扮する戦争孤児が美空ひばりさんas少年キッドを思わせる恰好をしていることもあって、太平洋戦争終戦直後の空気を感じさせもするが、おそらくはそれよりも悪くなることを想定しているのであろう(そりゃ核戦争だし)。

もちろん北村想作品ゆえ、全体的には洒脱なやりとりを楽しめるのだが、今、目の前にあるものがいついつまでもあると思わない方がいい、という気にはさせられた。


配信時間1時間8分(本篇1時間6分)。


 


KERA & Broken Flowersワンマンライブ2025



2025年2月28日(金)
SHIBUYA CLUB QUATTRO

〈KERA&Broken Flowers〉
KERA(vo.)
田渕ひさ子(g.)
かわいしのぶ(b.)
ハラナツコ(sax, etc)
杉山ケイティ(key.)
REIKO(ds.)

ゲストギター:
ハヤシヒロユキ(POLYSICS)

KERA & Broken Flowers、一昨年11月以来、1年3ヶ月ぶりのワンマンライブ。

仕事の都合で開演時間から少し遅れての参加となってしまったが、そんなことはすぐに忘れてしまうぐらい没入できたライブだった(むしろ妨げになっていたのは会場のバカでかい柱ね…)。
新曲として舞台と同名の「骨と軽蔑」、前回も披露された砂漠監視隊隊歌の「耳と砂漠」の他、仮題の2曲。「フローズンワルツ」の方はまだイントロもなく、歌詞もライブ当日の朝、書き上げたとか。そろそろオリジナルアルバムのリリースを期待したいところ。

Broken Flowersは毎回、田渕ひさ子さんの流麗なるギターテクニックに惚れ惚れしているのだけど(手首の動きが驚異的に柔らかい)、今回はゲストとして登場したPOLYSICSのハヤシヒロユキさんとのギターバトルに痺れた。


KERAさんのボーカルも調子がよく、特に「神様とその他の変種」はこれまでも何度か聴いているのに自然と涙がこぼれてきた。
MCもいつも通りで、先日の『INU-KERA vol.100』でも話していたけど、相棒の鈴木慶一さんが最近はすっかり俳優になり、広瀬すずさん、杉咲花さんともう1人がメインの映画にも出ているという流れの中でなかなかもう1人の名前が出てこないのだけど、正解は清原果耶さんですな(映画は『片思い世界』)。

セットリストは以下の通り。
1.ネズミは沈みかかった船を見捨てる
2.真夜中のギター
3.エレキテル・ハイ(仮題)
4.ゴメンナサイ
5.サーフ・ダンシング
6.夜のスポーツ
7.ナイト・サーファーズ
8.1980
9.Drive to TOKIO
10.骨と軽蔑
11.フローズンワルツ(仮題)
12.新しい椅子
13.シャープさんフラットさん
14.耳と砂漠(砂漠監視隊隊歌)
15.マリリン・モンロー・ノー・リターン
16.MORE SONG(withハヤシ)
17.ロケットソング(同)
18.できない
19.Broken Flowers
20.神様とその他の変種
〜encore 1〜
1.冷たいギフト
2.SUNDAY→FRIDAY
〜encore 2〜
3.Body & Song
4.Too Late Jonee (withハヤシ)

パルコ・プロデュース2025

東京サンシャインボーイズ 復活公演

『蒙古が襲来』

Mongolia is coming



【東京公演】

2025年2月9日(日)〜3月2日(日)

PARCO劇場


作・演出:三谷幸喜

美術:大竹潤一郎 照明:佐藤公穂

音楽:荻野清子 音響:井上正弘

衣裳:浜井貴子 ヘアメイク:宮内宏明

舞台監督:山本修司、村岡晋

演出補:福島三郎 演出助手:伊達紀行

テーマソング「どんちゃんの歌」作詞・作曲:甲本ヒロト 振付:本間憲一

宣伝美術:鳥井和昌(チラシ・ポスター)、タカハシデザイン室(パンフレット)

宣伝写真:平間至

イラストレーション:早乙女道春

メイキング撮影:岩間玄

宣伝PR :金井智子、関真恵、る・ひまわり

パルコ広報:大川慶子 宣伝映像:尾野慎太郎

ポスター貼り:ポスターハリス・カンパニー

パンフレット編集:市川安紀

舞台写真:細野晋司

劇団制作:大竹亜由美、浅井美衣、大口星子、中村修子

制作:本中野しのぶ

プロデューサー:佐藤玄、藤井綾子

パルコ製作:小林大介

企画:東京サンシャインボーイズ

製作:株式会社パルコ


出演:

梶原善(漁師・ニラブ)

宮地雅子(ニラブの妻・カメ)

相島一之(カメの兄・トラジ)

小林隆(トラジの幼馴染・タマオ)

西村まさ彦(トラジの父・オンゾ)

谷川清美(オンゾの妻・ウツボ)

甲本雅裕(カメの元恋人・ジンタ)

吉田羊(歩き巫女・おばば)

阿南健治(傀儡師・ましら)

西田薫(傀儡師・きんば)

野仲イサオ(隣村の村長・ウンジ)

近藤芳正(権宮司・ゴングージ)

小原雅人(鎌倉武士・サカザキ)

伊藤俊人(大宰府から来た客人・九条実実)


STORY

時は鎌倉、対馬の漁村。漁師のニラブとその妻・カメは鎌倉からやってくる武士・サカザキを迎え入れる準備に忙しい。サカザキが来るのは「ムクリ(モンゴル)が攻めてくる」という話の真偽を確かめるためで、集まりには10年ぶりに実家に帰ってきたカメの兄・トラジをはじめ、村長を務めるトラジの父・オンゾと再婚相手のウツボ、隣村の村長・ウンジ、権宮司のゴングージなどがやってくることになっていた。そんな中、歩き巫女のおばばに「思いがけない人と再会する」と告げられたカメの前に元恋人のジンタが現れる。


30年間の充電期間を終えた東京サンシャインボーイズの復活公演。


背景に海と青空。周囲に松や岩の書き割り。上手にニラブとカメが住む藁葺き屋根の家。下手に納屋。納屋の前に木造の舟。


『12人の優しい日本人』、『ラジオの時間』、『彦馬がゆく』、『ショー・マスト・ゴー・オン』など映像ではいくつか見たことはあるが、劇場では初めての東京サンシャインボーイズ。

伊藤俊人さんが40歳の若さで亡くなってしまったが、他のメンバーがちゃんと揃って復活公演が実現したことが何よりも凄い(伊藤俊人さんも『東京サンシャインボーイズの罠』の音声を使用して"出演")。ちなみに次回公演は80年後の2105年、『リア玉2』とのこと。これ、誰か実現してほしいなぁ。見届けることはできないけど。


本作はタイトルから分かる通り、1274年の元寇を題材にしているが、全体的には対馬の漁村を舞台にどこかのんびりとしたやりとりが展開される。いざ姿を現したムクリの艦隊も書き割りで出てくるので笑いが起きたほどだが、その後、雨のように矢が飛んできて一人また一人と斃れていく。

平穏な日常が一瞬にして奪われるという意味ではパレスチナのガザ地区で起きているジェノサイドを思い起こさずにはいられず、三谷さんもそういったテーマの作品を書くのねとは思ったものの、全盛時代を目撃できなかった者としては往年のコメディで笑わせてほしかったなというのが正直なところ。まあそんな期待をいい意味で裏切りたいという作り手の気持も理解はできるけど、会場が揺れるほどに笑いの渦が巻き起こるのを体感してみたかった。


最後は甲本ヒロトさん作詞・作曲の主題歌を一同振付ありで歌っておしまい。次回公演は80年後、演目は『リア玉2』だそうな。


上演時間1時間55分。



スラステslatstick 第6回公演

『ヨゴレピンク』



2025年2月19日(水)〜26日(水)

駅前劇場


作・演出:松本哲也(小松台東)

舞台監督:竹内彩(H9puls)

音響:田島誠治(Sound Gimmick)

照明:西崎浩造(キザシ)

宣伝デザイン:インディ高橋(劇団☆新感線)

音楽:クスミヒデオ(赤犬)

美術プラン:中道英二

制作:閑社明子(The Stone Age)

衣装:スラステ


出演:

中村なる美(モモタマキコ)

酒井晴江[KAKUTA](サクラダミノリ)

高木稟(印刷工場勤務・ヤギヌマコウタ(56))

佐藤達[劇団桃唄309](郵便局員・ロバタジュン(50))

緒方晋[The Stone Age](カメラマン・オオクマタダシ)

太田清伸(合コンダクター・サイキヤスオ(49))


STORY

バツ1で高校生の娘がいるモモタマキコは、中学からの友人サクラダミノリに誘われて45歳〜60歳の男女を対象にしたバス旅行に参加する。合コンダクターのサイキヤスオの仕切りのもと自己紹介をしていた一同だったが、突然男たちがバスに乗り込んでくる。真っ先に逃げたサイキを追いかけてマキコ、ミノリ、ヤギヌマ、ロバタ、そしてカメラマンのオオクマは森の中に迷い込む。


元劇団☆新感線の中村なる美さんとAripeの永津真奈さんによるユニット・スラステの新作公演(今回、永津さんは不参加)。


舞台の左右に黒い柱、天井から細長い布切れが垂れ下がり、木々に見立てられる(下の写真参照)。その他、黒と白のツートンの箱馬が並べられ、バスの座席になったりもする。


毎回のように作・演出は変わっているようで、今回は小松台東の松本哲也さんが担当。

いつもの作風とはだいぶ印象が異なり、こういう作品も書けるんだという新鮮さはあったものの、全体的には設定自体に興味を惹かれる部分が少なく、終盤はこちらの気持がダレてしまった。

バスジャックかと思いきや、借金取りが乗り込んできたがためにサイキが真っ先に逃げ出した……と思ったらそれも仕込みだったとか(やる気のないサイキはそれすら分かっていなかった)、その辺の展開がうまくいってなかった。


上演時間1時間27分。


アフタートークのゲストは劇団☆新感線の粟根まことさんで、松本哲也さん、中村なる美さん、酒井晴江さん、太田清伸さんが登壇。理知的という言葉がしっくり来る粟根さんの受け答えにひたすら感心。



太郎物語 企画第七弾

『洒落をきかせて』



2025年2月20日(木)〜22日(土)

木馬亭


脚本:杏優 衣装:果音

演出:杏優、果音

音楽:カホリ 短歌:宮田愛萌

装飾品:LEO GON’DO 舞台監督:佐藤瑛子

照明:海老原日和(eimatsumoto Co.Ltd.)

劇伴協力:揺楽瑠香(南極ゴジラ)

音響:吉田拓哉 音響操作:塚本友美

美術:小倉美愛 演出助手:新行内音々

制作:杏優、新行内音々

宣伝美術:伊藤理莉子

広報:酒井まりあ(タイダン)

当日運営:山井杏香

主催:太郎物語


出演:

果音(冠)

杏優(春/夏/秋/冬)


STORY

3025年、色も季節も失われた日本。冠は病室で絵を描いていたクラスメイトに春、熱血指導をする学校のセンセには夏、バイト先のテンチョには秋、そして短歌好きの恋人に冬とあだ名をつけ、好きなことに純情に生きようとする。


杏優さんと果音さんからなるユニット、太郎物語の新作公演。月刊「根本宗子」『共闘者』など客演作品は観たことがあるが、ユニットの公演は初鑑賞。


舞台上には厚みのある衝立のようなものが4つ。それらは横に倒して使われたりもする。上手側にギターのカホリさんが陣取って生演奏。


脚本、衣装、演出をそれぞれ分業しながらやっている2人だけど、自分たちの見せ方をよく分かっている、すなわちセルフプロデュース力に長けているなというのが第一印象。そもそも木馬亭で上演するという点からして個性的だが、ギターや短歌といった要素もいい塩梅で作品を引き立てていた。

2人とも演技がうまく、2人しかいないことを感じさせないほどだった。


ちなみに本作の短歌を担当した宮田愛萌さんは元日向坂46なんだそうで。へぇ。


上演時間1時間21分。



タカハ劇団 第20回公演

『他者の国』

 

 

2025年2月20日(木)〜23日(日)

本多劇場

 

脚本・演出:高羽彩

舞台監督:藤田有紀彦

舞台美術:稲田美智子

照明:小林愛子(Fantasista?ish.)

音響:田中亮大(Paddy Field)

衣裳:千葉奏子 ヘアメイク:武部千里

演出助手:和田沙緒理

演出部:神永結花、櫻井健太郎

照明操作:佐々木夕貴

照明ピンチーフ:三浦詩織

衣裳製作:佃彩可、川本彩乃、井上史子

稽古場代役:溝口太陽、滝田愛香

方言指導:新田周子

稽古場・舞台写真:塚田史香

宣伝美術:羽尾万里子 宣伝写真:金山フヒト

装花:後藤亜希子(BIONIC PLANTS)

フライヤー撮影着付:松本しゃこ(垢抜け屋)

宣伝動画:久高将也 収録:米倉伸

広報:伊藤優花

制作:村田紫音 制作助手:松嶋奈々夢

票券:中尾莉久

運営:三國谷花、柴田紗希、及川晴日、矢部昂子、臼田菜南

制作協力:嶌津信勝(krei inc.)

プロデューサー:半田桃子

バリアフリサポート:NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)、パラブラ

字幕・音声ガイド制作:パラブラ

舞台手話通訳:田中結夏(となりのきのこ)

手話監修:江副悟史 (エンタメロード)

製作協力:WIT STUDIO、krei inc.、momocan

主催:タカハ劇団

 

出演:

平埜生成(東北帝国大学医学部精神科勤務医・岡本三郎(31))

小西成弥(日東帝国大学医学部附属病院勤務医、精神科助手・正木信親(30))

野添義弘[スーパーエキセントリックシアター](日東帝国大学医学部第一外科教授・橘典裕(66))

土屋佑壱[こまつ座](日東帝国大学医学部第一外科助教授・嵐山正憲(45))

西尾友樹[劇団チョコレートケーキ](京都帝国大学医学部第二外科助教授、附属病院勤務・神原武博(41))

本折最強さとし(名古屋医科大学博士・尾白知己(41) )

近藤強[青年団](九州帝国大学医学部解剖学教室教授、病理解剖学医・岩佐一(53))

平井珠生(日東帝国大学医学部附属病院勤務看護婦、典裕の娘・橘ミチ子(24))

田中真弓(日東帝国大学医学部附属病院勤務看護婦、産婆・望月りょう(69))

柿丸美智恵(典裕の妻・橘寧々(54))

高羽彩(典裕の秘書・山田美紗(41))

丸山港都[東京夜光](刑務官・野口勝(36))

 

STORY

日本が大正デモクラシーから、やめられない戦争の時代へと突入していく頃。六人の医者が大学の解剖学教室に集められた。彼らの目的は、とある死刑囚の遺体を解剖し、並外れた犯罪者の肉体には形質的・医学的特徴があるか否かを調べること。しかし、待てど暮らせど肝心の遺体が届かない。医者達は遺体を待ちながら無為な時間を過ごすうち、それぞれの胸の内を語り出す。彼らのメスで切り裂かれるのは死刑囚か、それとも。他者とは誰のこと――?【公式サイトより】


第35回下北沢演劇祭参加作品。

 

開演時は緞帳が降りていて、岡本三郎が山田美紗とともに客席通路からやってきてノックをすると、緞帳が上がって解剖学教室が現れる。

舞台中央に解剖台、その背後にすり鉢状になった見学席。上手に医師控室があり、本棚が置かれ、下手に解剖準備室があり、棚には器具が並ぶ。


舞台は昭和11年(1936年)2月(何やら外が騒がしく、警官が多いということで、すぐに2・26事件が連想される)。

泉という死刑囚を解剖するために日東帝国大学の橘特任教授が中心となり、京都、名古屋、仙台から医師たちが集められる。岡本三郎は遅れてやってくるが、検体が運ばれてこないと頭を抱えている。更にはこの解剖は一部の医師には知らされていなかったが、生体解剖、すなわち生きたままで行われるものということで、精神科の助手・正木が今回の解剖について問題提起を行う。

犯罪者の資質は遺伝するのか、そもそもいくら死刑囚と言えど生きたまま解剖することに対する医師の倫理観はどうなのか、この時には人間くさい議論のやりとりが本作の見どころの1つ。とりわけ、正木がとある秘密を告白した後の演説は心を動かされるものだった。

それだけに留まらず、今度は岡本の正体が判明してからの展開は息を飲むばかりで、劇場の空気が一瞬にして変化するのが肌で感じられるほどだった。


キャストはいずれも素晴らしく、平埜生成さんは正体を現してからの演技は鬼気迫るものがあり、小西成弥さんの上述の演説ともども目を離すことができなかった。

自己保身に走ろうとする野添義弘さんのタヌキっぷり、1人異質な存在としての柿丸美智恵さんの自由奔放さ、平井珠生さんの純粋さと真っ直ぐさも印象に残った。

 

上演時間2時間1分。