劇団普通

『春』




公演概要

2026年6月3日(水)~7日(日)

ムリウイ

STAFF

作・演出:石黒麻衣

舞台撮影・照明:福島健太

映像撮影・編集:竹田和哲

宣伝美術:関根美有

当日運営:小関悠佳

制作協力:エフ・エム・ジー、及川晴日

CAST

用松亮(父)

安川まり(姉・由紀)

岡部ひろき(弟・哲也)

STORY

とある地方の一軒家。年老いた父親とふたりの子どもたち。姉は毎日朝早く働きに出かけ、弟は、朝夕時間を問わずまちまちに出かけていく。母親は少し前に施設に入った。時々弟が運転する車で三人が出かけていく様子が見られる。いつからその暮らしをしているのか、話を聞いた者はいない。年老いた親とその“こどもたち”が暮らす家でのささやかな日々の暮らしを写し取る。【公式サイトより】


概評

今年6月に上演された劇団普通最新作を配信にて。

劇団普通はここ数年欠かさずに観ている劇団の一つではあったのだけど、本作に関してはチケットが取れず。プレビュー公演という形での追加公演はあったものの、なんせムリウイのキャパではチケット争奪戦になるのは必至なわけで……。


舞台はテーブルと椅子のみ。

いつものように全篇茨城弁で、老いた親と子供の話。ただし今回、母親は介護施設に入所していて不在(電話はかけてくる)。

そんな一家のとある休日、交わされる会話というと、どこかに出かけないのかとか、夕食の買い物に行くにもまずは洗濯をしてからとか、他愛のないものばかり。父親はどことなく子供2人が家に揃っていることが嬉しそう。

劇中、由紀が言うように子供たちもいつまでも家にいるわけではない。この2人はまだ未婚のようだが、いずれ家を出ていくことになるだろう。このまま先に母親が亡くなった場合、果たして父親は一人で暮らしていけるだろうか……1時間ちょっとの中篇ながら、これから先のことまで想像させられる手腕はやはり見事。


配信時間1時間8分。


余談ながら、話題となっている『新潮』9月号の「令和演劇ニューウェーブ」特集に石黒麻衣さんもエッセイを寄稿しているのだけど、演劇を始めるきっかけが実に変わっていて面白い。そんな方が次は『髪結いの亭主』をPARCO劇場でやるというのだから驚いてしまうなぁ(チケット取れますように!)。

 

 

『アメイジング・スパイダーマン』

THE AMAZING SPIDER-MAN

 
 
2012年アメリカ映画 136分
監督:マーク・ウェブ
脚本:ジェームズ・ヴァンダーボルト、アルヴィン・サージェント、スティーヴ・クローヴス
原案:ジェームズ・ヴァンダーボルト
原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ
製作:ローラ・ジスキン、アヴィ・アラッド、マット・トルマック
製作総指揮:スタン・リー、ケヴィン・ファイギ、マイケル・グリロ
撮影監督:ジョン・シュワルツマン
美術:J・マイケル・リヴァ
編集:アラン・エドワード・ベル、ピエトロ・スカリア
衣裳:キム・バレット
キャスティング:フランシーン・メイズラー
音楽:ジェームズ・ホーナー
視覚効果監修:ジェローム・チェン
 
出演:
アンドルー・ガーフィールド(スパイダーマン/ピーター・パーカー)
エマ・ストーン(グウェン・ステイシー)
リース・イヴァンス(リザード/カート・コナーズ博士)
デニス・リアリー(グウェンの父ジョージ・ステイシー警部)
マーティン・シーン(ピーターの伯父ベン・パーカー)
サリー・フィールド(ピーターの伯母メイ・パーカー)
イルファーン・カーン(オズコープ社社員ラジット・ラーサ)
キャンベル・スコット(ピーターの父リチャード・パーカー)
エンベス・デイヴィッツ(ピーターの母メアリー・パーカー)
クリス・ジルカ(ピーターの同級生フラッシュ・トンプソン)
マックス・チャールズ(4歳のピーター)、C・トーマス・ハウエル(ジャックの父トロイ)、ジェイク・ライアン・キーファー(ジャック)、カーリ・コールマン(グウェンの母ヘレン・ステイシー)、マイケル・バラ(店員)、リーフ・ギャントファート(レジ強盗)、アンディ・ペッソア(ピーターの同級生ゴードン)、ハナ・マークス(ポスターを描く生徒ミッシー・カレンバック)、ケルシー・チョウ(ピーターに写真を頼む生徒サリー・アヴリル)、ケヴィン・マッコークル(クレイマー先生)、アンディ・グラッドバック(物理学オタク)、リング・ヘンドリクス=テレフセン(同)、バーバラ・イヴ・ハリス(リッター先生)、スタン・リー(図書館司書)、ダニエル・バージオ(ニッキーの恋人)、トム・ウェイト(恋人に暴力を振るう男ニッキー)、キース・キャンベル(車泥棒)、スティーヴ・デカストロ(車泥棒を追う警官)、ジル・フリント(オズコープ社受付)、マーク・ドハティ(オズコープ社の研修生)、ミルトン・ゴンザレス(本物のロドリゴ・ゲバラ)、スカイラー・ギソンド(グウェンの弟ハワード・ステイシー)、チャーリー・デピュー(同フィリップ・ステイシー)、ジェイコブ・ロディア(同サイモン・ステイシー)、ヴィンセント・カレスカ(工事現場作業員)、ダミアン・レモン(タクシー運転手)、タイ・アップショー(似顔絵を持った警官)、ジェームズ・チェン(警官)、アレグザンダー・ベロリア(SWAT隊員)、ティア・テクサダ(地下鉄の若い女性シーラ)、ジェイ・カプート(地下鉄の男)、ジョン・バーク(ニュースキャスター)、テリー・ボーズマン(校長)、ジェニファー・ライオンズ(地下鉄の2人目の若い女性)、マイケル・マッシー(謎の男)、アンバー・スティーヴンズ(エアリアル)
 
STORY
13年前に父リチャードと母メアリーが失踪して以来、伯父夫婦であるベンとメイに育てられてきた高校生のピーター・パーカー。彼は、ニューヨーク市警ステイシー警部の娘で、同級生のグウェン・ステイシーを密かに慕っていた。そんなある日、ピーターは自宅で父親の残していった鞄を見つける。中には、父の親友であった生物学者カート・コナーズ博士と父の関わりを記したメモが入っていた。父のことを知ろうと、ピーターはオズコープ社で遺伝子を研究するコナーズ博士を訪ねるが、そこで遺伝子操作の実験中の蜘蛛に噛まれてしまう。その翌日、ピーターの体内で大きな異変が起こり始める……。。【「KINENOTE」より】

リブート版『スパイダーマン』第1作。
サム・ライミ監督版『スパイダーマン』三部作を見終えてちょうど4年、新作公開のタイミングでようやく『アメイジング・スパイダーマン』に突入。笑

何となくのイメージで『アメイジング〜』の2作は評判がよくなかったのかなという印象を持っていたけど、作品としては特に見劣りするわけではなく、とりわけ終盤のリザードとの対決はスリルもあって十分に楽しめた。
ただ、ピーターが復讐のためにレジ強盗を探すため、実際は関係のない風貌がよく似た男たちを襲うというのはどうなんだろう。まぁ彼らも恋人に暴力を振るっていたり自動車泥棒をしていたりと褒められた人々ではないけど……。
あとピーター、お店のテーブルや椅子をぐちゃぐちゃにしたなら、ちゃんと元に戻さんかい。そういうとこだぞ、ピーター。
ちなみに本作ではピーターは高校生のままで、カメラ好きという設定。撮影当時、アンドルー・ガーフィールドさんもエマ・ストーンさんも二十代後半なので大学生でもよかったのでは。特にグウェンはオズコープ社で主任研修生とやらになっていて、高校生でもなれるものなの?と思ってしまった。

毎度お馴染みスタン・リーさんは図書館の司書役で、後ろでスパイダーマンとリザードが戦いを繰り広げているのに一切気づかないという役どころ。
エンディングクレジットでは、プロデューサーのローラ・ジスキンさんと美術のJ・マイケル・リヴァさんへの献辞あり。

 

 

 

猿博打特別公演

『この夏、屋根裏から異世界へ(※行けません)』




公演概要

2026年8月5日(水)〜9日(日)

OFF・OFFシアター

STAFF

作:笠浦静花(やみ・あがりシアター)

演出:村上弦(猿博打)

舞台監督:水澤桃花、鈴木穂野美

照明:緒方稔記 音響:大嵜逸生

美術協力:いとうすずらん

当日運営:宮野風紗音(かるがも団地)

宣伝美術:村上弦

フライヤー写真:堀山俊紀

撮影アシスタント:箱崎優大

フライヤー衣装:鈴木啓佑

稽古場代役:ほんま。

劇中曲:AnmituTea Records

CAST

村上弦(元会社員アオイ)

河村凌(勇者レイド)

板場充樹(???)

STORY

ひさしぶりに来た祖父母の家。子どものころ遊んだ屋根裏部屋。そこで私が出会ったのは、いわゆる、いかにもな、"勇者"だった。どういうわけか、異世界とこの屋根裏がつながっちゃったらしい! もしかしたら私はずっとこの日をずっと待っていたのかも。さあ勇者くん、私を異世界に連れてってくれ!!! でも、どんなに頑張っても向こうの世界には行けない。そんな時、さらに別の世界の住人が現れて・・・・・・。狭くて暑い屋根裏で繰り広げられる、異世界交流譚!【公式サイトより】


概評

外部の脚本家による特別公演第6弾は、『とりつくひま』以来3年ぶりとなるやみ・あがりシアターの笠浦静花さん脚本。


舞台は主人公・アオイの祖父母の家にある屋根裏部屋で、改装を終えたOFF・OFFシアターにぴったり。出入口は上手手前のドアのみで、下に降りる階段があるという設定。


会社を辞め、8月31日に取り壊しが決まっている亡き祖母の家の片づけを命じられたアオイが、祖母に預けておいたライトノベルの詰まった段ボールを探しに屋根裏部屋に入るのが物語の始まり。

いつの間にかなくした指輪を探していると、そこに現れたのが勇者の格好をしたレイド。あれこれやっているうちに屋根裏部屋のみが異世界に通じていることが分かってくるのだけど、レイドは自分の世界のことを知り尽くし、自分たちの世界が上位世界であることを鼻にかけるアオイに対して嫌悪感を抱き始める。

そんな中、現れたのが???。アオイの境遇をよくある設定とみなす彼はこの世界よりも上位世界からやってきた人物(だから名前も聞き取れないのだけど、あえてカタカナで表すならイエローハット)。「人の振り見て我が振りなおせ」とはよく言ったもので、???の自分に対する態度を見てアオイはレイドに対する言動を反省する。

と思ったら、レイドは???の上位世界の存在で、つまりは三すくみの状況となる(ちなみにアオイが青、レイドが赤、???が黄色がイメージカラー)。

笠浦静花さんは3人の魅力を最大限に引き出したキャラ設定で、なおかつこの三つ巴感が面白さを加速させる。まさに最強の3人と感じさせる作品で、客席の反応もすこぶるよかった(初日でファンが詰めかけたということを差し引いても)。


中でも村上弦さんはジャージ&眼鏡姿がキュートで、コメディエンヌっぷりに磨きがかかっていた。特に母親の電話に出るところと扇風機のところが笑えた。


上演時間1時間35分。



新国立劇場

『20の物語―週末を、劇場で―』

「水のほとりの女」

20 Stories -Weekend at Theatre-


公演概要

2026年7月16日(木)・19日(日)
新国立劇場 小劇場

STAFF

作:田中澄江 演出:小林七緒
照明:鈴木武人 音響:秦大介
衣裳アドバイザー:山野辺雅子
ヘアメイク:高村マドカ
舞台監督:川除学
演出部:雲田恵、加藤唯、山本修司
衣裳部:柿野彩、井上美佐子、中村洋一
音響助手:橘憲一郎
小道具:高津装飾美術 西村太志
衣裳:東京衣裳 本多あゆみ、宇佐美和香、小川和美
制作助手:林弥生、小川真理、佐藤奈々
制作担当:伊澤雅子、七字紗衣、永田聖子、中柄毅志、井上舞子
プロデューサー:茂木令子、太田衛
芸術監督:小川絵梨子

CAST

町田マリー(きよ)
鹿野真央(みち)
笹野美由紀(きよの義姉の親友・森)

STORY

戦死した夫の帰還を信じ、息子と静かに暮らす未亡人きよ。その家に、同じく未亡人で奔放に生きる旧友みちが訪れる。水辺を望む部屋で、二人は夫への執着、喪失の痛み、女として生きる欲望と罪悪感を激しくぶつけ合う。現実を直視し生き抜こうとするみちと、幻想にすがるきよ。その対立と告白の果てに、きよが選んだ道は......。【公式サイトより】

概評

新国立劇場芸術監督の小川絵梨子さん、任期のラストを飾る企画『20の物語』の一篇。
1960年、俳優座劇場にて初演された作品。

床に部屋を表す線。下手に机と椅子、上手にスーツなどがかかったハンガーラック。
開演時、上手側にみちが寝そべっているところへ、きよが登場して椅子に座り、ミシンを踏むところから物語が始まる。
2人は同じ未亡人(この言葉も近年は避けられる傾向にあるようだが、原作に従う)という立場にありながら、片や夫が生きていることを信じて待ち、片やあっけらかんと自由奔放に生きている。
やがて2人の因縁も明らかとなっていくが、戦後、夫を亡くした女性たちの緩やかな連帯のようなものも感じられた。

町田マリーさんと鹿野真央さんは台本を持ちながらちょっとリーディング公演っぽくしていたのだけど、台本を小道具のように使用する場面もあり。マリーさんはここぞという時は台本を読むように台詞を発しているように見えた。
戯曲では声のみとなっている森役の笹野美由紀さん(新国立劇場演劇研修所第15期修了生)はマリーさんとの身長差(頭一つ分ぐらい大きい)を活かし、文字通り見下ろす格好になっているのが面白かった。

上演時間43分。

 

 

奥山樹生とかるがも団地
『わたしの団地さん〜諏訪・永山ものがたり〜』


公演概要

2026年7月18日(土)
諏訪第七公園 風の森バザール 森のステージ

STAFF

作:奥山樹生、藤田恭輔(かるがも団地)

CAST

奥山樹生(団地)
冨岡英香[マチルダアパルトマン](はるみ)
古戸森陽乃[かるがも団地](鍵盤/お母さん)
藤田恭輔[かるがも団地](六弦/お父さん)

STORY

多摩ニュータウンの中で最も歴史が長い諏訪・永山団地。1971年に入居が始まった時には希望者が殺到したものの、周囲にはまだ何もなく、土タウンとも呼ばれた。両親とともに諏訪団地にやってきたはるみは団地とともに成長していき、大学を卒業して国語の教師となるが、やがてこの地を離れることになる。

概評

多摩ニュータウン出身の奥山樹生さんと多摩ニュータウン発(東京都立大学、当時は首都大学東京で結成)のかるがも団地による野外音楽劇。
今年で2回目となる「風の森バザール」の催しとして1回のみの上演。

まさに団地を舞台にした団地ストによる団地のための舞台。1971年から始まる団地の歴史を人生と重ね合わせ、歌と演奏も交えながら綴っていく。55年が経ち、老朽化、建て替えといった現実もあるが、こうやって人が集まっている間はまだまだ大丈夫という気がする。
私も東京に来てから昨年末までおよそ10年間、いわゆる多摩ニュータウンに住んでいたので親近感を持って観ることができた。第2弾も期待したい。
開演前、野外劇ということで声が聞こえない時のために台本データを読み込めるQRコードを掲出していたけど、そんな心配は御無用ノ介でござった。

奥山樹生さんと冨岡英香さんはあちこちの作品でお見かけしているけど(冨岡さんはついこの前見たばかり)、藤田恭輔さんと古戸森さんが揃って出演するのはかなりレア(イベントではあるけど)。
なお、かるがも団地もう一人のメンバー、宮野風紗音さんは制作を務める端栞里と高熱『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』の公演中のために不在。昨日、ご本人と話して初めてこっちには参加していないことを知った次第。笑


端栞里と高熱 vol.2
『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』


公演概要

2026年7月17日(金)〜19日(日)

浅草九劇

STAFF

脚本・演出:三浦直之(ロロ)
音楽:江本祐介(Enjoy Music Club)
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
美術:いとうすずらん 照明:中村仁(黒猿)
音響:近藤海人(かまどキッチン)
スタイリスト:カワグチコウ
演出助手:木香花菜
宣伝美術:渋木耀太(DINARYworks)
宣伝写真:わたしのような天気
配信映像:稲川悟史
制作:宮野風紗音(かるがも団地)
企画製作:月館森

CAST

端栞里(栞川ひだり/小学生時代の友人・アセバンダリ/中学生時代の同級生・鉄平/大学生時代の友人・七不思議/アリーナ)

STORY

2021年、東京の小さなライブハウスで、栞川ひだりのライブが始まる。ひだりは歌いながら、自身の半生の断片をつなぎ合わせていく。プラスチックのペットボトルだけが友だちだった幼少期。YouTubeで出会った歌姫への憧れ。「アリーナ!」という言葉をひとりの女性の名前だと思い込み、その人に会いたいと願った記憶。そして、無観客ライブとなってしまった今この瞬間。歌のなかで、ひだりのこれまでが浮かんでは消えていく。アクリルの向こう側へ届くことを信じて歌い続ける、ポップライフ・プレイリスト。【公式サイトより】

概評

南極の端栞里さんによる個人企画第2弾。
第1弾は速攻で予約したものの、仕事やら電車遅延やらで結局見逃して配信で鑑賞した思い出。
前作はオムニバス構成だったが、今回は端さん出演、ロロ『いつだって窓際であたしたち』の三浦直之さんが手掛ける音楽劇。

舞台には滑り台。下手にベンチとギター。上手にもスタンドに立てかけられたギター。滑り台は回転できて、裏側はアセバンダリのペットボトルだらけの部屋となる。

南極の本公演はもちろん、様々な団体に客演して引く手あまたな端栞里さん、その実力は誰しもが認めるところだと思うけど、今回の一人芝居はその魅力を十分に堪能できるものとなっていた。
東葛スポーツ『アルファード』ではラップ調ではない歌も披露していてなかなかうまいなと思っていたけど、今回は人生初めてのライブをする女性の役ということでその歌唱力を遺憾なく発揮してギターの弾き語りも披露。
観ていて改めて感じたのは端さんの声のよさ。とりわけ「アリーナ!」と叫ぶ時の声はただ大きい声というだけではなく、そこに一抹の孤独や不安が入り混じっている。まぁそれはこっちが勝手に感じていることに過ぎず、演者や演出家の意図とは違うのかもしれないけど、色々な解釈をしたくなる声なのは確か。
また今後とも新たな試みに挑戦してもらいたい。

上演時間1時間10分。

東京芸術劇場

『NORA』




公演概要

【東京公演】
2026年7月15日(水)〜26日(日)
東京芸術劇場プレイハウス 

STAFF

原作:ヘンリック・イプセン『人形の家』
上演台本・演出:ティモフェイ・クリャービン
上演台本・ドラマターグ:ロマン・ドルジャンスキー
翻訳:小賀明子
美術:オレグ・ゴロフコ
音楽:ティモフェイ・パストゥホフ
照明:佐藤啓 音響:長野朋美
映像:栗山聡之(マグナックス)
衣裳:ヴラダ・ポミルコヴァナヤ
ヘアメイク:赤松絵利(ESPER)
舞台監督:守山真利恵
演出助手:田丸一宏
プロダクションスーパーバイザー:ルスタム・アフメドシン
演出部:川上大二郎(スケラボ)、岩淵吉能(ステージワークスURAK)、野村久美子、石井研一郎、小玉珠成、枯芝千夏
照明操作:三浦詩織、伊賀康
音響アシスタント:立石智史
音響操作:北村夏主馬、渡辺茂、岡田紗果
映像操作:安里奈保見、竹内愛奈、大納奈々果
衣裳部:今村あずさ 衣裳進行:飛田紗和
ヘアメイク部:上野美智代
通訳:小賀明子
制作進行:藤野和美(オフィス・REN)、豊田夕羽希、陳逸君
宣伝美術:加藤秀幸、柴田リオ(grindhouse)
宣伝カメラマン:北岡稔章
宣伝ヘアメイク:植木歩、後藤麻里
宣伝スタイリスト:森川雅代
宣伝動画:神之門隆広
宣伝・特設Web:DIPPS PLANET
パンフレット編集・執筆:大堀久美子
舞台写真:後藤敦司 印刷:エーゼット
字幕制作:イヤホンガイド
主催・企画制作:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)

CAST

黒木華(ノラ・ヘルメル)
勝地涼(トラヴァル・ヘルメル)
瀧内公美(クリスティーン・リンデ)
鈴木浩介(ニルス・クログスタ)
石村みか(乳母アンナ・マリア)
今井公平(理容師/招待客夫婦A)
越後静月(ネイリスト/ダンス教師生徒/招待客夫婦A)
大滝樹(テーラー/大使夫人/ダンスインストラクター)
小幡貴史(銀行の秘書/招待客夫婦B)
木山廉彬(ブティックの店長/イタリア大使)
中野風音(母/ダンス教室生徒/招待客夫婦B)
天野叶愛[Wキャスト](クログスタの長女)
福元愛悠[Wキャスト](クログスタの次女)
佐々木直輝[Wキャスト](ノラとトラヴァルの息子イヴァール・ヘルメル)

STORY

ノラは弁護士の夫・ヘルメルと仲睦まじく暮らしていた。献身的に家族と夫を支えるノラと「可愛いわが妻」と優しく妻を扱うヘルメルの間には子供もいて、誰から見ても理想的な生活を送っていた。クリスマスイブ、年明けから信託銀行の頭取として着任予定のヘルメルの元に彼の古くからの友人であるクログスタが訪れる。ヘルメルの部下になるはずだったクログスタは、実は周りからの評判が悪く、ヘルメルの頭取就任とともに解雇される運命にあった。代わりにクログスタのポジションに就くのはノラの友人で旦那を失ったクリスティーンだった。そのやりとりは、静かに関係を変えていく。【公式サイトより】


概評

ノルウェーの劇作家イプセンの代表作『人形の家』をロシア連邦ウドムルト共和国出身のティモフェイ・クリャービンさんが演出。


舞台にはスクリーンがあり、最大4台分のスマホ画面が表示され、下半分はマジックミラーになっていて役者陣が2か所ないしは3か所に分かれて演技をする。ほとんどは日常会話のような感じではっきりは聞こえず、時折、電話で話したりボイスメッセージを送ったりする時はマイクを通して台詞が発せられる。

8割はそうしたスマホ画面を通したやりとりが繰り広げられるとのことだったけど、体感としてはもっと長く感じられる。ややもすれば通常の演劇とは異なるスタイルに戸惑ってしまうところだが、思いの外、退屈はしなかった。読むのは疲れるし(文字が読める座席でよかった)、やや見上げる姿勢となるので首が痛くなったけど!


上述した通り、下半分がマジックミラーとなっていて、場面転換などでは客席が映し出されるのだが、この物語はスマホを片時も離せない現代人を映し出す鏡であり、決して他人事ではないのだと言わんばかりでゾクッとさせられる。ノラが家を出ていく有名なラストもスマホのやりとりで済まされてしまうとは……。

役者陣は通常の演技形態とは異なるのでさぞかしストレスが溜まるだろうなと思いつつ、アンサンブルの皆さんもきちんとそれぞれの場面を作り上げていた。

それにしてもよくこの作品の日本語版を作ろうと思ったなと感心する。ヨーロッパ諸国ではWhatsAppが主流だけど、今回はLINEとFacebookのメッセンジャーをメインに使用。時折、ビデオ通話も使用していたけど、映像関係のスタッフにも拍手を送りたい。そう言えば、友達の中に演出部の川上大二郎さんのお名前もあったな。笑


上演時間2時間41分(一幕1時間39分、休憩21分、二幕41分)。



AMUSE CREATIVE STUDIO

音楽劇『超、Maria』

 



公演概要

2026年7月4日(土)~12日(日)

I'M A SHOWA(アイマショウ)

STAFF

作・演出:根本宗子

音楽:小春(チャラン・ポ・ランタン)

振付:山之口理香子

舞台装飾・衣裳:東佳苗(rurumu:/縷縷夢兎)

照明:磯川敬徳 音響:原田耕児

ヘアメイク:二宮ミハル

演出助手:加藤由紀子

舞台監督:竹井祐樹、松井桃子

宣伝美術:榎悠太 宣伝写真:須藤絢乃

宣伝衣裳:東佳苗(rurumu:/縷縷夢兎)

宣伝ヘアメイク:友森理恵

票券:サンライズプロモーション

アシスタントプロデューサー:内藤真希

プロデューサー:渡邉可奈子

エグゼクティブプロデューサー:小見太佳子

主催:AMUSE CREATIVE STUDIO/サンライズプロモーション

企画・製作:AMUSE CREATIVE STUDIO

CAST

もも[チャラン・ポ・ランタン](佐々木かな/ゆうの母)

根本宗子(佐伯ゆう/かなの母)


演奏:

小春(Acc)

カンカンバルカン楽団
 ふーちん(Di)
 岡村"オカピ"トモ子(Sax)
 舞子(Vn)


前説・一緒に観劇:

田村芽実

清水くるみ

STORY

小学校に入ったばかり、6歳のかなはノートを見せてもらったことをきっかけに、ゆうと仲良くなる。2人はともに父親が忙しく、ろくに家にも帰れない仕事人間という境遇が似ており、父親参観の日に父親が来なかったのもクラスで2人だけだった。しかし2人はそれぞれの母親にその分、父親のことを想像することができる、忙しいのはカッコいいことと言われて自慢に思う。ところが小学6年生のある日、母親が父親と見たこともないような大喧嘩をする。そしてその後、2人は自分の父親が中学生らしき女の子と車に乗っているところを見かけ、“父親らしき存在”が同じだったことを知る。その後、高校生になったかなは年上の男性の匂いが好きなあまり盗みを働くようになり、ゆうはケータイゲームの課金にはまり込む。


概評

チームエンジェルに続いてオリジナルキャストのチームシスターを鑑賞。

この日は「超、前説付き一緒に観劇Day」と銘打ち、田村芽実さんと清水くるみさんが前説をしてから一緒に観劇するというスペシャル回(マチネはその逆)。

お二人の服装は役柄と同じく、それぞれ白と黒を基調にしたもの。めいめいがテンション高く、拍手はともかく笑う練習までさせるのを清水さんが苦笑しつつもまとめるという役柄そのままな関係性。


面白さはもう保証されているようなものなのだけど、やはりももさんのめいめいに負けず劣らずの百面相が魅力的で、「おじさんの匂いが好き」などと歌い上げる歌唱力の無駄使いっぷりがいい。

改めて感じたのは、ももさん、田村芽実さん、清水くるみさんという歌がうまい人たちに混じってゆう役をしかと務めている根本さん、凄いなということ。先日、大腸に潰瘍が見つかったと公表されたことを感じさせない演技&歌唱であった。

小春さんは率いるバンドの演奏も相変わらずカッコよく、2枚組のサントラ(チーム別で)を出してほしいくらい。


カーテンコールは撮影OK。チームエンジェルの2人も舞台に上がらないかなぁと期待していたけどそれはなし。

上演時間1時間15分(カーテンコール含む)。

AMUSE CREATIVE STUDIO

音楽劇『超、Maria』

 



公演概要

2026年7月4日(土)~12日(日)

I'M A SHOWA(アイマショウ)

STAFF

作・演出:根本宗子

音楽:小春(チャラン・ポ・ランタン)

振付:山之口理香子

舞台装飾・衣裳:東佳苗(rurumu:/縷縷夢兎)

照明:磯川敬徳 音響:原田耕児

ヘアメイク:二宮ミハル

演出助手:加藤由紀子

舞台監督:竹井祐樹、松井桃子

宣伝美術:榎悠太 宣伝写真:須藤絢乃

宣伝衣裳:東佳苗(rurumu:/縷縷夢兎)

宣伝ヘアメイク:友森理恵

票券:サンライズプロモーション

アシスタントプロデューサー:内藤真希

プロデューサー:渡邉可奈子

エグゼクティブプロデューサー:小見太佳子

主催:AMUSE CREATIVE STUDIO/サンライズプロモーション

企画・製作:AMUSE CREATIVE STUDIO

CAST

田村芽実(佐々木かな/ゆうの母)
清水くるみ(佐伯ゆう/かなの母)

演奏:

小春(Acc)

カンカンバルカン楽団
 ふーちん(Di)
 岡村"オカピ"トモ子(Sax)
 舞子(Vn)

STORY

小学校に入ったばかり、6歳のかなはノートを見せてもらったことをきっかけに、ゆうと仲良くなる。2人はともに父親が忙しく、ろくに家にも帰れない仕事人間という境遇が似ており、父親参観の日に父親が来なかったのもクラスで2人だけだった。しかし2人はそれぞれの母親にその分、父親のことを想像することができる、忙しいのはカッコいいことと言われて自慢に思う。ところが小学6年生のある日、母親が父親と見たこともないような大喧嘩をする。そしてその後、2人は自分の父親が中学生らしき女の子と車に乗っているところを見かけ、“父親らしき存在”が同じだったことを知る。その後、高校生になったかなは年上の男性の匂いが好きなあまり盗みを働くようになり、ゆうはケータイゲームの課金にはまり込む。


概評

2020年初演、その後のコロナ期には超、リモートねもしゅーとして配信版も作られた音楽劇を2チーム編成で再演。

今回は田村芽実さん&清水くるみさんによるチームエンジェル。


舞台は全体にゴスロリ趣味の部屋。十字架や日傘などが点在し、下手側に黒い衣裳のマネキン、上手に白い衣裳のマネキン。それぞれ電球が点くようになっていて、黒はゆうの、白はかなの母親となる。


私は配信版のみ鑑賞していたが、チャラン・ポ・ランタン小春さんによる楽曲がどれもこれもキャッチーで耳に残り、今回6年ぶりの鑑賞でもしっかり覚えていた。 

再演にあたってのWキャストの片方が田村芽実さん&清水くるみさんという、元々好きなミュージカル俳優同士というこれ以上にない最高の組合せ。

元々この作品はももさんと根本さんにあて書きされたものだろうけど、この2人にとってはそんなことは関係なく、新たなかなとゆうを作り出していた。

田村芽実さんはいつもながらに百面相の表情が楽しいのだけど(今回は歯を出しがち)、ゆうの母親役のときはガラッと声のトーンを変えていてさすが。清水くるみさんは天然なかなに対して、ちょっと落ち着いたところのあるゆうを演じていて、根本さんとはまた違った印象だった。

今回も小春さんとカンカンバルカン楽団の面々は同級生役などを演じ(小春さんは母親役も)、特にかなとの絡みが楽しかった。


カーテンコールは撮影OK。

お二人が客席に降りてくるどころかスマホを借りて自撮りするなど、ファンサも最高!

 

上演時間1時間13分(カーテンコール含む)。

劇団チョコレートケーキ

『帰還不能点』
 


公演概要

【名古屋公演】

2026年7月4日(土)~5日(日)
メニコン シアターAoi

STAFF

脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
舞台美術:長田佳代子 美術助手:小島沙月
照明:松本大介(松本デザイン室)
照明オペレーター:和田東史子
照明スタッフ:小嶋愛梨、谷口柚佳
音楽:佐藤こうじ(Sugar Sound)
音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)
音響オペレーター:泉田雄太
衣装:藤田友

タブレット字幕:G-marc(株式会社イヤホンガイド)

演出助手:平戸麻衣
舞台監督:本郷剛史、藤本貴行
演出部:高橋英司
宣伝美術:R-design 宣伝写真:池村隆司
写真:池村隆司、菅野佐知子(劇団チョコレートケーキ)
制作:菅野佐知子(劇団チョコレートケーキ)

CAST

岡本篤[劇団チョコレートケーキ](元内閣書記官長役・岡田一郎)
今里真[ファザーズコーポレーション](元総理大臣役・久米拓二)
東谷英人[8体](元外務大臣役・千田高)
粟野史浩[文学座](元陸軍大臣役・城政明)
青木柳葉魚[タテヨコ企画](元海軍大臣役・市川仁)
小川哲也[平泳ぎ本店](元大蔵大臣役・泉野俊寛)
浅井伸治[劇団チョコレートケーキ](元内務大臣役・吉良孝一)
加藤広祐[藤一色](元文部大臣役・庄子豊)
伊藤白馬(元外務次官役・木藤芳男)
黒沢あすか(小料理屋の女将・山崎道子)
村上誠基(元日銀総裁役・山崎進次郎の声)

STORY

1950年、敗戦前の若手エリート官僚が久しぶりに集い久闊を叙す。やがて酒が進むうちに話は二人の故人に収斂する。一人は首相近衛文麿。近衛の最大の失策、日中戦争長期化の経緯が語られる。もう一人は外相松岡洋右。アメリカの警戒レベルを引き上げた三国同盟締結の経緯が語られる。更に語られる対米戦への「帰還不能点」南部仏印進駐。大日本帝国を破滅させた文官たちの物語。【公式サイトより】

概評

2021年初演作、四度目の上演。
東京では見逃したのでタイミングよく名古屋にて鑑賞。なお、泉野役と庄子役はそれぞれ東京公演でスウィングを務めた小川哲也さんと加藤広祐さんが演じている。
 
本作は初演再演を観ていて、今回が3度目の鑑賞。何だか時を経るたびに政治情勢が悪化していて本当に嫌になってくる。
劇中の登場人物たちが言うように、誰もが「歴史に学ぶ」はず、「戦争は懲り懲りだ」と感じているはずなのに、残念ながらこの国の政治家は些かも学ぶ気がないし、最悪なことに先の侵略戦争に対して「反省なんかしておりません」とのたまう人間が総理大臣になってしまった。2022年の再演の時に「この国がとっくに帰還不能点を越えてしまった」と書いたけど、それでも少しでも歯止めをかけるためにも現在の総理大臣を退陣させるべくできることをしていかねば、悔やんでも悔やみきれない。

今回で3回目の鑑賞だけど、改めて設定のうまさに惚れ惚れ。
かつて総力戦研究所で議論を戦わせたエリートたちが戦後から5年が経ち、小料理屋で「遊び」(言うまでもなく、英語では演劇も遊びよplay)に興じるうちにあの戦争は何だったのか、自分たちには何もできなかったのかを問い質していく。そうすることで単なる過去の出来事を描いた作品にならず、一歩踏み込んで考えさせるものになっているし、道子というキャラクターが市井の人々を代表するとともに観客の代弁者としてそこにいてくれるので議論にもついていける。
また、1941年の模擬内閣のシーンは観客に背を向けた形で進むのに対し、最後に再び模擬内閣を開く際にはこちら側を向いているのも巧みな演出。
 
今回は観劇サポート回で、日本語字幕タブレットの貸出の他、上演前に舞台説明会あり。
 
上演時間2時間13分。