山本試験紙『ピクトグラム』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

山本試験紙 vol.2

『ピクトグラム』



2024年5月2日(木)〜7日(火)
シアターサンモール

脚本:山本試験紙
演出:杉本達(こころ)、倉本朋幸(幻影的情熱)
舞台監督:本郷剛史 音響:遠藤瑶子
照明:山内祐太 演出助手:渡邊力
衣装:西本朋子 ヘアメイク:齋藤美幸
メインビジュアルデザイン:吉田電話
カメラマン:水津惣一郎
制作:野元綾希子、佐藤奈々、田中あやせ

出演:
「こころ」
横尾渉(中山)

智順(橋口)

津村知与支(村田)

吉田電話(安崎)

安川まり(深海)

細井じゅん(宮川)

「幻影的情熱」
安川まり(被指導部・植村夢子)

智順(指導部・長田玲子)

津村知与支(指導部・林章夫)

横尾渉(被指導部・鳴門達夫)

吉田電話(指導部・神岡真一)

生田麻里菜(被指導部・庄子幸代)

生田麻里菜・細井じゅん(天使)

STORY
「こころ」
「これは偶然ではなく必然だ。」…彼らはそう信じた。1989年。急激に巨大化した教団。その教団にある問題が起こっていた。家を捨て教団内で生活する出家信者たちが急増し、その家族たちが自分の子供たちを教団から取り戻そうと動き出したのだ。この活動の先頭に立っていた弁護士は教団と話し合うが「返せ!」「返さない!」の平行線をたどっていた。元医師の中山は教団内で信頼する村田の命を受け、ある作 戦に参加する。その作戦とは、話し合う為に弁護士を自宅近くで拉致し教団に連行するというもの。しかし本当の狙いは、拉致した後に亡き者にしようという作戦だった。中山はそれにうっすら気づいていたが確信を持てずにいた。「尊師が、村田が自分に嘘を言う訳がない… 」しかし作戦に集められた仲間たちは過去に人を殺めた事のある武闘派たちだった。中山が入信したのは友人の誘いだった。行く気はなかったが偶然バスに乗ってしまった。その偶然が教団に入る必然になった。作戦に参加した中山は、仲間たちに思い止まるように説得する。が、自身も何が正しくて何が間違いなのかが分からなかった。彼もまた宗教という熱に犯されていた…拉致する時聞が刻一刻と近づいてくる。
「幻影的情熱」
「総括せよ!」…その言葉で山小屋は恐怖に支配されていた。1971年。日本全土に吹き荒れた学生運動の波。その波も終わりを告げようとしていた。「革命新派」は自身の弱体化に伴い、「赤闘派」と共闘を決める。しかし政府の追手が迫り、彼らは山岳の小屋に拠点を移さざるを得なくなる。その拠点で近い将来起こるであろう警察との殲滅戦に備える軍事訓練が行われる。「革命新派」のリーダー長田は、山岳で家族を作り革命戦士を育てる理想郷を夢見て、植村・庄子をオルグ(勧誘)し軍事訓練に臨む。 訓練には「赤闘派」「革命新派」合計12名が参加していた。全員が希望に満ちていた。全員が何も疑っていなかった。全員が熱に浮かされていた。その熱の原因を誰も分からずに。訓練が始まって数日が過ぎた頃、指導部と呼ばれるリーダー集団のひとり林が「総括」という自己批判を仲間たちに要求し始める。真の革命戦士になる為には自身の欲を捨て、他者の為に生きなければいけない。その為には自身勝手な行動を振り返り、反省する自己批判が必要なのだと林は言う。参加者は各々に総括を始めるが林はそれを総括したと認めない。そこで林は「援助」という名目で仲間内の暴力を強要し始める。その山小屋では誰もが熱に浮かされていた…【当日パンフレットより誤字修正の上、引用】

映像ディレクターの杉本達さんと舞台演出家の倉本朋幸さんが〈W演出〉を担うユニット、山本試験紙の第2弾。

「こころ」と「幻影的情熱」の2作品を杉本さんと倉本さん、それぞれが演出し、1本の作品として上演するという実験的な取り組みとのこと。
あらすじを読めば、「こころ」がオウム真理教による弁護士一家殺人事件、「幻影的情熱」が連合赤軍による山岳ベース事件をモチーフにしていることはすぐ分かるし、2つの組織に共通項を見出すことも難しくはない。ただ、本作に限って言えば、まったく奏功していなかったし、この2つの事件をよくもこれだけ薄っぺらく描けたものだなと感心してしまった。
特に役者が前後に動きながら、腕を振り上げたりしながら台詞を言う演出の意図がさっぱり分からず、単なるノイズでしかなかった。

役者陣も今ひとつ。特に横尾渉さんは間も悪いし、滑舌もよくないし、そのくせ妙な笑いを取りに来るし……10年ぶりの舞台出演らしいけど、1回目のカーテンコールですぐにスタンディングオベーションするのは止めてほしいのう。
お目当ての智順さんや安川まりさんらはよかったけど、それだけではねぇ……。

上演時間1時間50分。