ゆうめい
『養生』
2024年2月17日(土)〜20日(火)
ザ・スズナリ
作・演出・美術:池田亮
ビジュアル出演:小松大二郎
宣伝美術:りょこ
舞台監督:黒澤多生(青年団)
音響:今里愛(Sugar Sound)
照明:阿部将之(LICHT-ER)
照明オペレーター:関口詩葉
制作:高橋戦車(劇団鹿殺し・オフィス鹿)
制作助手:笹本彩花
記録・稽古場写真:佐々木圭太
映像収録:川本啓
WEB制作:りょこ、池田亮
出演:
本橋龍[ウンゲツィーファ](美大の美術学部絵画科卒・橋本)
田中祐希(私大の経済学部卒・阿部)
黒澤多生[青年団](橋本と阿部の大学時代の社員・川口/新入社員、美大の芸術学部卒・清水)
STORY
絵画科の美大生橋本と、経済学部の大学生阿部は百貨店の内装作業を行う夜勤のバイトで出会った。意気投合し、当たりが強い正社員と仕事量に不満を漏らしながらも「卒業したら俺らこうはならんし」と笑い合う。数年後、二人はその夜勤でバイトから正社員になっていた。新入社員の清水の教育を任される阿部。一方橋本は、人気作家となった同期の展示が百貨店の画廊エリアでクリスマス後に開催されることをポスターのディスプレイ作業中に知る。喪失した時間と今とが対峙をしつづける、夕方から明け方への話。【公式サイトより】
第34回下北沢演劇祭参加作品。
舞台上には脚立を繋ぎ合わせた大中小の門が1つずつ。脚立は場面によってはクリスマスの飾りにもなる。背景に天井から地面までびっしりと張られた養生テープ。
この舞台美術は橋本が美大の卒制として作った《夜勤》という作品でもあるのだが、入場時、観客が養生テープの向こう側のマネキンなどが置かれた通路をぐるっと回って客席に着く時点からこの舞台は始まっていると言ってもいい。
物語は橋本を中心として、橋本が美大生で夜勤のバイトをしていた10年前と正社員となった現在が絡み合いつつ展開。橋本のバイト仲間だった阿部も同じタイミングで正社員となるのだが、かつて川口という社員にパワハラまがいの言動を受けて取り乱していた彼も、10年経てば新入社員の清水に同じような態度を取ってしまう。
現在の場面でSNSで自分の家を晒して人が殺到した清水、愛犬のここあがエレベーターのドアに挟まれて死んでしまった阿部、そして同期でこれから展覧会の準備を自分たちがしようとしていた佐伯が「飛び込んで」しまったことを知った阿部と最後は三者三様の地獄が訪れる。
最後に橋本は《夜勤》をもう一度門を作り始める。「そう使われるしかないって思われてるものでも、それ以外の、使い方も、価値も、存在の仕方もあるってことを、伝えたかった作品」の中で脚立の門は地獄の門に喩えられていたが、再び出来上がったそれは天国の門のようにも見えた。
キャストは3人とも素晴らしく、特に田中祐希さんは10年前と現在の演じ分けが見事だった。なお、田中さんは本公演をもって「丙次(へいじ)」に改名されるとのことで、プロフィールも当日パンフレットの束に挟まれていた。
前作『ハートランド』がようやく岸田國士戯曲賞の最終候補となっている池田亮さんだけど、個人的には今年は受賞を逃して、来年、本作で貰ってほしいなぁ。笑
上演時間1時間36分。