劇壇ガルバ『ミネムラさん』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

劇壇ガルバ第6回公演

『ミネムラさん』



2024年9月13日(金)〜23日(月・祝)

新宿シアタートップス


作:細川洋平、笠木泉、山崎元晴

演出:西本由香(文学座)

音楽:鈴木光介 美術:杉浦充

音響:丸田裕也(文学座)

照明:賀澤礼子(文学座)  
衣裳:竹内陽子 衣裳進行:野村千名美

演出助手:大月リコ

舞台監督:村岡晋 演出部:桂川裕行
宣伝写真・舞台撮影:加藤孝

宣伝美術:陣内昭子 宣伝ヘアメイク:山口晃
ライター:ふしみしょうこ 票券:大橋さつき

制作:大橋さつき、時田曜子、山崎元晴、月館森、陣内昭子
企画製作:劇壇ガルバ


出演:

「フメイの家」(作:細川洋平)

大石継太(ミネムラさんの知人・オイシ)

山崎一(杉並警察署刑事・マヤザキ)

森谷ふみ(同・ヤモリ)

笠木泉(阿佐ヶ谷駅前交番警察官・サカギ)

上村聡(酔っ払い・ウエソン)

「世界一周サークル・ゲーム」(作:笠木泉)

峯村リエ(ミネムラ/赤ん坊連れの母親)

笠木泉(ヤスコ・小安由美子)

上村聡(タウンワークの男/スーパーの店長)

山崎一(バスの乗客/スーパーの店員)

大石継太(バスの乗客/スーパーの店員)

森谷ふみ(バスの乗客/スーパーの店員)

「ねむい」(作:山崎元晴)

峯村リエ(ミネムラ)

森谷ふみ(妹)

大石継太(夫)

山崎一(父)

笠木泉(母)

上村聡(救急隊員)


STORY

その女から届いた手紙には、これから姿を消すと書いてある。当局は彼女の捜索に取り掛かるのだが、封筒には名前がなく、手紙の受取人も記憶にない。少ない情報の中、塗り重ねられる彼女の肖像(イメージ)。
彼女は親友と船の旅に出たあ
の人か。それとも他人の赤ちゃんを押し付けられ悪夢を見たあの人か。もしくは、実在しない人物なのか? 記憶やフィクション、そして夢と幻想が折り重なって、"誰かであり誰でもない"、ある女の生涯に想いを馳せる。我々は彼女のことを、『ミネムラさん』と呼ぶことにした。

「久しぶりです。急に連絡がきて驚いていることかと思いますが、ご容赦ください。昨日は庭に、コスモスが咲きました。」【公式サイトより】


劇壇ガルバによる実験プロジェクト第2弾。

3名の劇作家がひとりの女性についての物語を書き、それを1つの作品として上演する。


舞台上には板で作られた可動式の壁がいくつか。組み合わせによって家や窓が出現する。その他、木のボックスが3つ。


まず何と言ってもタイトルがいい。

峯村リエさんが「ミネムラさん」を演じ、しかも3人の劇作家が競作/共作となれば、どんな作品なのか見当がつかなくても面白そうな予感は漂ってくる。

果たしてその予感は的中。それどころか期待を遥かに大きく上回り、悲しい話でも何でもないのに見終わった後に自然と涙が出てくるような作品だった。


細川さんの作品は別役実さんばりの不条理ギャグのオンパレード、笠木さんの作品はそっと隣に寄り添ってくれるような優しさがあり、山崎さんの作品はサスペンスフルなタッチと三者それぞれテイストが違う作品ながら、それぞれのパーツが寄木細工のごとく組み合わされ、1つの作品となるまさに匠の技。

配役表を見て驚いたのが、細川さん担当の「フメイの家」にミネムラさんが出てこないという点。パンフレットでの対談などによれば、当初は3作品とも出てくる予定だったのが、山崎さんの鶴の一声で急遽変更されたのだとか。これが見事に奏功していて、作品としての枠組が確固たるものになったように思う。

個人的にいちばん好きだったのは笠木さん担当の「世界一周サークルゲーム」で、タイトルはジョニ・ミッチェルさんの「サークル・ゲーム」から取られている。ミネムラさんとヤスコさんの関係性がとてもいいし、バスの中で浮遊感を感じるシーンが印象的。


どのキャストも当たり前のように上手かった。

峯村リエさんは出てこない「フメイの家」ですら存在感を発揮。同じく「フメイの家」では山崎さんは水を得た魚のように生き生きとされていたし、レギュラー俳優・大石継太さんも「ミ…なんとかさん」となかなか知人の名前を思い出せない男を演じてとぼけた味わい。上村聡さんの変幻自在っぷりも見事だった。

体調不良のため降板された安澤千草さんの代役として出演もすることになった笠木泉さんも「フメイの家」と「世界一周〜」とではまったく違うキャラクターを演じていた。


上演時間1時間49分。