NETFLIXのオリジナルアニメ。小松左京氏の「日本沈没」を原案に描かれる、災害大国「日本」でのサバイバルドラマです。
一気見しました。 2020年、東京オリンピックが終わった直後に大地震に襲われる日本。 そして、どんどんと沈んでいく。
各話で衝撃的な出来事が多すぎるのでアレなのですが、通じて言えることは、アイデンティティの確認をずっと求められる作品だったかと思います。 1話ごとに人が死んでは新しい人が出てくるけれど、主人公兄弟は様々な人の犠牲の上に生き延びていく物語でした。 そんな死に方あるかよ!ってランキングが作れそうな気もします。
ただ、これまで映像化されてきた「日本沈没」と比べて、とても小さなコミュニティの中で生き残るさまが描かれており、政治的な色などはそこまで大きく取り扱われていない一市民目線の世界観から、徐々に膨大なスケールにたどり着き、そして、沈没するだけでない終わりにはとても好感を持てます。
2006年の草彅剛が主演した「日本沈没」では、たしか外国に難民として訪れた日本人を疎ましく思う現地人たちの描写がありました。実際に戦乱などで難民として多国に移り住むことで現地との衝突は起こっており、難しい問題ですね。これまで受け入れる側だったはずの自分たちが受け入れてもらう立場になるときにどのように思うのかということも大事ではありますが、この作品に至っては、再生する日本を目的としているところが多いので、だいぶ内向きな演出ではあります。
避難船に乗船できるのはマイナンバーを使ったランダムくじで選ばれたものに限るという設定があるなどにはリアリティを感じました。だって、自分のマイナンバーなんて一々覚えてないですよね。それに、カードを持っている人、持ってなくて確認に来る人で長蛇の列になり、持ってても外れて乗れない人もいたりするなかで、将来の希望を託すために強化選手は優先的に登場できるという裏口も存在していたり、さらにはおこぼれでコーチなども優先乗船できるなど、色々現実でいうと議論を呼びそうな演出も多数。
現状がコロナ禍なので、ワクチンが生産されたときにどのような形で配布されるのかなどこれから訪れるだろう現実に対しても警戒心を持てるかと思います。
さらには、こんな非常時においても日本人のみを乗船させようとするグループなども見所です。 母親がフィリピン国籍という演出はかなり奇抜ですね。有事だからこそ、国純主義って猛威を振るうのかもと。。。
それに、弟のGOがしきりに日本をディするのも多様性を持たせています。エストニアに移住したいとか、日本に居なければこんな災害に遭わずに済んだんだと短絡的に考える、頭でっかちな小学生の考え方も、大人になっても豪語している人はいますからね。 エストニアってIT先端国って言われますよね。選挙も電子投票を行ってたりするなどかなり革新的です。 まぁ、そんな表面的な知識をかじってあこがれているんでしょうね。
僕も一度だけエストニアの首都タリンには行ったことがあります。IT先進国って言われる前だったと思いますが、中世の雰囲気を残したままの町並みはとてもきれいでした。フィンランドから船で行きましたが、物価の高いフィンランドの人々の生活必需品を購入する場所みたいになっていました。
あとは宗教のようなコミュニティの登場もきな臭いので大好きです。 何かにすがる思いとか、犠牲になっていった人の言葉にすがる心情は痛いほどよくわかります。そんな中で、優しい言葉を投げかけるだけでなく、攻める言葉が出てくるのとかもとても新鮮でした。みんな少しずつ可笑しいところがあるのが味わい深いです。
こんな災害大国であるからこそ、身を守る手段というものはしっかり身につけなくてはいけないんだと思わされました。所詮フィクションなので、上手く行きすぎな部分はあるにせよ、主人公家族のように色々なアンテナを持つことは大事ですね。
生への執着心だけが、命を守るんじゃないかなって思う節もあります。どうせダメだろうって思いながら生活するよりも、希望を持ち続けるってとても良いことではありますよね。 NETFLIX配信だけに、そういうのも盛り込むのねってカットもありました。
ただ、ちょっと残念なのが、時折、キャラクターデザインが崩壊しているようなカットが何か所かあるところです。 特にお父さんの顔がよく崩壊しているように思えます。 最初はカッコいいババ像に期待していたのに、なんかしょんぼりです。