1976年の軍事政権下のアルゼンチン。人生を諦めかけていた英語教師が重油にまみれた瀕死のペンギンの出会で変化していく実話に基づくスペイン・イギリス合作作品。
「ペンギン・ハイウエイ」(2018)という面白いアニメ作品がありました。この作品もペンギンが何かをしでかしてくれると観ましたが、ペンギンは何もしない、そこにいるだけ。
ペンギンは何もしないが一緒に居ることで自分が、生徒が、校長が変るという「ペンギンが側にいることに”何を感じとり“自分が変る大切さ」を描いた作品。軍事政権下理由なく拘束される中で大切なものは何かを考え如何に行動するかを説く”知が詰まった”作品です。
テーマから分るように右翼化していく今の日本にあって、こんな社会は嫌だと、ぜひ観て欲しい作品です。
原作者:世界22カ国で刊行されたベストセラーノンフィクション「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」のトム・ミシェル、監督:ピーター・カッタネオ、脚本:ジェフ・ポープ、撮影:シャビ・ヒメネス、編集:ロビン・ピーターズ タリク・アンウォー、音楽:フェデリコ・フシド。
出演者:スティーブ・クーガン、エル・ジャバー、ビョルン・グスタフソン、アルフォンシーナ・カロッチオ、デビッド・エレロ、ジョナサン・プライス。
物語は、
1976年のアルゼンチン。人生に希望を見いだせずにいた英国人の英語教師トム(スティーブ・クーガン)は、名門寄宿学校に赴任する。軍事政権下で混乱する社会、そして手強い生徒たちに苦戦する中、トムは旅先で出会った女性とともに、重油まみれの瀕死のペンギンを救う。しかし女性にはあっさりふられてしまい、トムのもとにはペンギンだけが残る。海に戻そうとしても不思議と彼のもとに戻ってくるペンギンを「サルバトール」と名付け、奇妙な同居生活が始まる。やがてトムは、サルバトールとの生活を通して、人生にとって本当に大切なものを取り戻していく。(映画COMから)
あらすじ&感想:
〇セントジョージ校に英語教師として着任したトム・ミシェル。
冒頭、トムがタクシーでセントジョージ校に着くと壁の“革命派ファススト野郎と戦うぞ”というスローガを消す男を目にした。門衛から「降りろ!」と促がされ「新任英語教師です」と申告して通された。
バクル校長(ジョナサン・プライス)の出迎えを受けた。
着任に当たっての注意を受けた。「じきに軍事クーデターが始まる。軍部は革命派の行動を取り締まれていない。政府は力を失いつつある。生徒は富裕層、セントジョージ校に政治を持ち込んではならない」と厳命された。宿舎は23号室でテラス付で、“”騒音禁止、禁煙、ペット禁止“だった。家政婦のマリア(ビビアン・エル・ジャバー)が面倒を見てくれる。彼女は「主人がガンで亡くなった」と言った。
隣室の物理教師・タピオ(ビョルン・グスタフソン)の挨拶を受けた。
タピオは「ここの生徒は特権階級で甘やかされている。校長は革命家きどり。戦後大勢のナチがこのあたりに移住した。よろしく」と挨拶。
教頭から注意事項と担任クラスが示された。
「政治的意見がどんな意見を持とう」と注意し!「担当クラスは中学下位組と12歳以下のラグビー2部副監督」と示された。
授業が始まったがちょっと手がつけられない状態だった。
英語の時間。皮肉、比喩、悲哀と黒板に英語で書いて意味を説明するが、生徒は遊んでいる。あほくさくなって「皮肉な文章を英語で書いて見ろ、俺はこの新聞から探す。あとで討議だ」と半ば授業放棄?
ラグビーの指導。スクラムを組めといっても聞き入れない。「残りは自分たちでやれ。俺はルールブックを調べる」と授業放棄。
クーデターが発生!学校は休校となった。
その朝、トムはマリアに替って家事手伝いにきたマリアの姪・ソフィア(アルフォンシーナ・カロッチオ)が若い男と話す声「軍部から我々を守るためだ」を聞きながらうとうととしていた。トムは突然の軍隊行進曲で目覚めた。クーデターが始まり、学校が一時休校となった。
〇トムはタビオとウルグアイに旅行。そこで運命のペンギンに出会った。
「軍はゲリラと戦っているが次は左翼狩りが始める。さらば自由、こんにちは恐怖」とい環境の中で、トムは“建築の歴史”を見るためにウルグァイを旅行することにした。ウルグアイの建物の面白さはその歴史にあるという。実は美人たちに出会うのが目的だった。(笑)
旅の途中でタビオの別れた妻にケチをつけたことでふたりは仲たがい。(笑)ふたりはウルグアイに着いて評判のホテル、“プンタ・デル・エステ”で美人を物色。トムは美人を見つけて踊りまくった。一方、タビオは逃げた妻を思い出しアルゼンチンに戻って行った。
次の朝、トムは彼女とビーチを散歩していて、オイルまみれのペンギンを見つけた。彼女は「人間に殺されかかっている。だから助ける」とホテルに持ち帰り、「雄だ」と言い、油を流した。「あなたが愛情を示す番よ」とキスして「今夜は楽しもうと思って最後まで行くつもりだったけど、でもダメ」とペンギンを置いて帰ってしまった。 (笑)
トムはペンギンをビーチに連れ出し海に戻そうとしたが帰らない。これを見た人たちから「あなたのペンギンでしょう」と非難されホテルに連れ戻った。ホテルに置き去りにしたかったが警官に見つかり逮捕されそうになり「俺のものだ」と連れてアルゼンチンに帰ることにした。
税関でひっかかり、預けようとしたが許されず動物園に預けることでここを通過し学校に戻った。
トムは動物園の係官に「ペンギンを引取らないなら殺す。園長に話してくれ」と伝えた。(笑)
しばらくの間、缶詰のイワシを与え、昼間はテラス、夜は部屋のトイレで面倒を見ることにした。
〇トムはペンギンを宿舎に置いたままで、授業に臨んだ。
校長からクラスのレベルを“中学終了程度に上げろ”と指示された。そこで選んだのが“シェークスピアのハムレット”。
「生きるべきか死ぬべきか。そうではない、精神的高貴さが過酷な運命に耐えることの方が・・」と喋りながら文章を黒板に書く。振り向いて「困難の海の例は?ラエロ答えろ!」と指名した。
ラエロは「僕は兵隊、ディエゴは革命派、父親が社会主義のブタ、敵だ。革命派と言わないと殺す」と言い、クラス全員でディエゴ(デビッド・エレロ)虐めをしていた。トムは「社会情勢の緊張感を利用するな!」と叱りつけ、ふたりに課題を出した。ラエロには「私は社会主義のブタだ」を一人称過去系で答えろ」、一方ディエゴには「ラエロの父はフシスト野郎だ」を未来完了形で答えることを求めた。ふたりとも立派に英訳できた。トムは「これで仲良くできるだろう」と褒めた(これ訳してみてください、納得できるから)。
「困難の海の例(比喩)は?」の質問もすごいが、ラエロとディエゴの喧嘩を止めるやり方も凄い!
〇トムは給与支給を受け、給与係から「すぐ使え!」と指示を受けた。
トムは街を見て回り長い靴ベラとペンギンの餌しか買わなかった。会計係が「何故全額使わない」という。「残余を取っておいて来月欲しいものを買う」と言うと「分ってない!月曜日にはお金の価値は半分にある」という。給与係の言い出しで靴下2足と靴ベラを交換した。(笑)
〇ペンギンがソフィアに見つかった。どうするかの論争の末、マリアも加わり三人でこの部屋で面倒みることになった。
ソフィアはペンギンの名を小説の主人公で空を飛ぶ研究をするカモメから“ファン・サルバドール”と名づけた。ソフィアがイワシをやるとしっかりサルバドールが食べる。サルバドールはソフィアが気にいった。
トムが「動物園に連れていく、それが規則だ」と話すと「だから従うの、でも助けたのはあなたよ」と反論、「理想でない方法を選ぶこともある」と言い返すと「軍の広報官みたいだ」と言った。サルバドールが分かるような振りして聞いている。(笑)
トムが「ファシストはもっとも嫌いだ!」と話すと「あなたはデモで見かけない!」と批判、これに「僕は教師だ。僕の国ではない、口を閉じてうまくやってる」と答えた。ソフィアが「私は家政婦だが嫌なことは嫌と口を開く」と責めた。そこにマリアが現れ「やめなさい」とソフィアを叱り「悪い人は悪いことをする。でも善い人が何もしないと殴りたくなる」と言い、「もうやめなさい」とソフィアを部屋から出そうとした。
トムは「こんなにいい口論をしたのは久しぶりだ」と、トムがソーセージとマッシュポテトを作って、三人で食べた。ソフィアとマリアがサルバドールに餌を与えるのを見て「僕が昔は若くて理想化だった。だが、人生は人を変える」と二人に誓った。
「サルバドールをどうするか」で言い合いになり“ファシストを傍観する話”へと拡大し、ついに“これに関わる”とトムは大きく人生の舵を切った。
〇トムはサルバドールを教室に連れ出し、サルバドール人気を煽り、“自由”についての授業を始めた。
トムはサルバドールを教壇に載せ“メンスフィールド”の詩を講義し始めた。「私が求めるのは帆船と風だけ」の意味を問うた。生徒からはサルバドールに関する質問ばかり。そこでトムは「残りの授業で詩の意味が理解できたら昼休みに魚を与えさせてやる」と約束を取り付け、授業を再開した。うまい具合いにサルバドールが頷く!(笑)
トムは「面舵の反動と風の歌」を詠む、「海熱は何を言っているか?」と質問。
生徒はサルバドールが教室内を歩きまわるが気になって「プールに入れたい」と言い出す。(笑)トムは「詩の意味を考えよ、単に船だけではない。サルバドールになれ!広い海を感じろ!風の吹くままどこにでも行く」とヒントを与えた。ディエゴが手を挙げ「比喩です。自由です」と答えた。トムは「正解だ」と「その意味を、馬鹿から自由?学校からの自由?独裁者からの自由?」と英語で説明した。
トムは生徒を教室外に連れ出しディエゴに餌やり係を命じた。生徒が「なぜディエゴか?」と聞くから「俺が独裁者だからだ」と言った。するとディエゴがみんなに餌やりをさせていた。
メンスフィールドの詩から比喩として自由を引き出させ、これをサルバドールへの餌やりで「独裁と自由」を体験させるという教育だった。この映画はとても知が詰まった作品だと思った。
〇ソフィアが革命派に捕らえられ「助て!」と叫ぶが、トムは動くことが出来なかった!
トムが買い物に出掛けた。そこで伯母のマリアにと“イチジク”を買うソフィアと出会った。
ソフィアが「サルバドールが動物園に連れていかなくていい、私が面倒みる」と申し出た。マリアが「主人は死んだといったのは嘘で、太って捨てられた」と笑い話をして別れたところで、突然ふたりの男に捕まり車で連れ去られた。その際「トム、トム、助けて!」と声を上げた。トムは動けなかった!
学校長に従業員らがソフィアの釈放協力を願い出た。
これにはトムもタビオも参加した。トムは「僕は前に出ようとしたが人が多くて、あっという間の出来事ですまない」と謝った。マリアは「父兄は偉い人だから、誰かが話が出来るはず」と校長に聞いた。校長は「革命派の上級生マテオの父親を誘拐した政府の革命派逮捕への報復だ。ソフィアとは規模が違う。マテオの父親は当校の理事会の父兄代表だ。革命派は身代金を要求しているが、交渉は進んでいる」とマリアの申出を断わった。
トムは部屋に戻りサルバドールに「ソフィアを助けなかった」と話した。そこにタビオが現れペンギンの能力を話した!トムには嘘でも本当に聞こえた。
トムが「僕は何もしなかった。いつも何もしない、確かに俺は怖かった!」とサルバドールに話し掛けていた。
そこにタビオが顔を出し「サルバドールのこと校長が知ったらひどい目に合うぞ、意味が分かるか?」と注意した。トムが「動物は食って寝るだけだ」と言うと「それは違う!ペンギンは感覚が鋭い。共感力がないというのは誤解だ。こいつの脳のどこかに君を恩人だと理解している」と話した。
そしてタビオがサルバドールと“権威”について話した。これをトムは信じた。
タビオが「真の権威が力を持つのは自由の原則に従うときだ。悪い考えが浮かんでくる。ふたりともいい人間だし祈っている」とサルバドールに話し掛けているのをトムは聞いていた。
〇トムはマリアと一緒にサルバドールを引き渡すため動物園を訪れたが、悪質な保管実態を見て引き渡しを止めた。
マリアが部屋を掃除にやってきた。ミシェルが居なくなってずいぶんと憔悴していた。「サルバドールンを動物園へ連れてゆく」と話すと「私もお別れを言いたい」と付いて行くことになった。マリアが「嘆願書を書いて欲しい」と言ったが「軍の独裁政権は詩を理解しない」と断った。
動物園では女性が対応してくれた。「6週間隔離してから仲間に会わせる」と狭い部屋を見せられた。トムはここにサルバドールを預けるのを止めた。おそらくミシェルを思い出したからだ。突然マリアが倒れた。
トムはマリアを長男のところに届け、その家族の暖かさに嘆願書を書くことにした。
サルバドールが一緒だったので「ペンギンだ!」と長男の家族に暖かく迎い入れられた。トムはこの家族の暖かみを知り、マリアのために嘆願書を書くことにした。サルバドールの癒しの効果だった。
〇トムの授業が政治的になり、校長から出ていくよう勧告された。
トムはサルバドールを連れて授業した。サルバドールの気持ちを知るため全員をサルバドールと同じ高さにするため寝かせて詩を読んだ。生徒たちは感動した。「目覚めたライオンのように打ち負かせ!少ない数で立て!お前に降りた霧のように鎖を地に揺らせ、お前たちは少なく彼らは多い。相手の数が多くても倒せばよいと言っている。打ち負かせないのは克服できないことだ」とW・オーウェンの詩の解釈をしていた。これを校長が聞いていた。
校長は「ライオンのように立てと生徒を煽った。故意に敵対する詩を取り上げている」として「ペンギンともども出て行け!」と勧告した。
〇トムはソフィアを逮捕した男を見つけ出し釈放を要求、これで逮捕された。
トムは匿名で送られてきたマリアの「孫娘のところに連れて行って」の手紙を読んだ。街頭で仲間と一緒に救済活動をするマリアに会った。マリアは「マテオの父親は会社が身代金を払って釈放された。ソフィアの身代金は払えない」と訴えた。
トムはサルバドールと連れてソフィアを誘拐した男に釈保要求、しかし逆に逮捕された。
トムはソフィア釈放を要求した。男は「ペンギンと悲しい話を聞かせて正しいことをしろというのか、消えろ!」と激高した。諦めて帰るトムは2人の男につけられた。トムは店に飛び込みサルバドールをセントジョージ校に届けるよう依頼して逮捕された。
〇学校長がトムの授業を認め、ソフィア解放に協力することになった。
トムは拘置所から解放された。出迎えはタビオだった。部屋に戻ると校長がテラスでサルバドールに話していた。
「トムは人気ものになった。お前のお陰だ。私は親しい人がいない」と話していた。校長はトムを見て「ソフィアの件は当局に陳情する。使用人ではなく学校保護下にある者としてだ。ペンギンの助けで授業に身が入り生徒の成績も上がってる。だから君とペンギンも残れ!」と言った。
これからはサルバドールが大活躍だった。
タピオの実験にお付き合い、美術部のモデル、ラグビーの応援、水泳、終業式写真の中心で写るなど。
1976年の成績優秀者にこのクラスからずらり選ばれた。
〇トムが終業式から部屋にもどると、サルバドールが亡くなっていた。
トイレを調べると白い石鹸やおもちゃが出てきた。サルバドールはきっと寂しかったんだと思った。
〇沢山の参列者を迎え、サルバドールの埋葬がなされた。
トムが挨拶した。「サルバドールはこの学校にきたとき困ったと思うが、次第にいい人たちだ、何か役立ってやろうと、何か変えられるかもしれない特にプールに入れてくれた。つまりこういうことだ「人生ではときにペンギンをプールに入れろ!」ということだ。分るかこの比喩!
まとめ:
ペンギンのサルバドール、食べて走りまわる以外ほとんど芸らしいことをしない。羽島慎一モーニングショーでフラミンゴの踊りを真似るペンギンを見たが、サルバドールはなにもしない。(笑)
そのサルバドールが凄いことを成し遂げる話。
サルバドールがそこに存在するだけでまわりの人が何かを比喩して変化していく。
サルバドールを動物園に引き渡すか否かの議論でトムとマリア、ソフィアが仲良くなり、その論議でトムが“この国のために“と人生を変えた。トムは生徒に”自由と独裁“を説き、さらに” 目覚めたライオンの生き甲斐“を教え、自らが「逮捕された人を助ける人”になる。これが校長に伝わり、学校を上げて逮捕者救済に動くという“比喩の連鎖“を描いた作品だった。
トムが生徒にこの比喩の面白さを英国の有名作家の詩で教える、これが知的で面白かった。
そこに居るだけ、歩き回るだけと言ったが、ペンギン君には大変だったんだろうなと考えています。
トム・ミシェル役のスティーブ・クーガン、すばらしい演技でした。
今般の皇室典範の改正では、
男子の養子を認めその子が男子であれば皇位継承資格を認めることが大問題になり、“麻生副総裁の皇室乗っ取り”とまで言われています。
本当の怖さは平和主義の象徴、今上天皇の皇統を断つ陰謀が存在すること。右翼化していく今の日本にとって何が大切なのか、ぜひ本作を観て欲しい。
*****








