胚移植のコツ① | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

胚移植の成績を上げるために

患者様にできる事があります。

移植前はできるだけトイレに行かない事です。

意外に知られていない事ですが

これはすごく大切な事です。


どうしてかというと

膀胱が充満されることにより

子宮の傾きが緩やかになり

移植が容易になるからです。


ほとんどの女性の子宮は前屈といって

前方に傾いています。

その傾きがきついと

移植のカテーテルがつっかえてしまい

スムーズに入らなくなります。

そうすると移植に時間がかかったり、

出血したりして

妊娠率が極端に下がります。


入りにくい場合は、

外筒といって硬いチューブに変更して

移植を行うのですが、

硬いチューブだとどうしても出血したり

子宮を傷をつけてしまう事が多いのです。


移植の際に出血は

極力避けなければいけない事です。

胚にとって出血は着床を妨げる因子となります。


そうならないように

膀胱にたくさん尿をため

子宮の前屈の傾きを緩やかにします。


尿を貯める事のメリットがもう一つあります。

エコーは水を通すことで

鮮明に画像が得られるからです。

お腹の上からエコーをあてて

移植する際にカテーテルの位置が

より鮮明になります。

それにより最適な移植位置がわかります。


移植の時は緊張しており

尿を貯める事は非常に辛い事だと思いますが

ここは重要な点です。


その他良く質問される事として

「移植の後はどのくらい安静にしたらよいのですか?」

という事を聞かれます。


一般的には15分~30分程度の安静後に

帰宅させる病院が多いと思います。
私もその位で良いと思っています。


以前イタリアでこんな研究をした人がいました。

移植後丸1日間寝たままにした人達と

20分で帰宅した人達との間で

妊娠率に差が出るのか?

という研究です。


結果はというと

両者とも妊娠率は同じでした。

多くの研究が同様な結果を示しています。


つまり移植後1時間、2時間寝ているのは

科学的には意味が無いという事になります。