杉ウイメンズクリニック杉先生の記事です。

プロテインS活性に関して参考になることが書かれています。
 
当院のプロテインS活性の正常値は56%以上です。この数値は、大勢の正常健康日本人女性のデータから厳密に統計処理され、算出されたものです。

最近、正常日本人女性50人のプロテインS活性のデータを入手しました。それによると、プロテインS活性が56%未満の人は2%いました。また、70%未満の人は28%、90%未満の人は74%でした。中央値は79%です。

これらの女性は、正常人であり、不妊症でも不育症でもありません。もし、プロテインS活性70%未満の人に治療が必要であると診断した場合、正常女性の約3割は治療しないと子どもを産めない事になります。
もし、プロテインS活性が90%ないと子どもを産めないのであれば、正常女性の7割以上は、治療しないと子どもを産めない事になります。
 
しかし、プロテインS活性が70%未満でも、皆さん普通に妊娠、分娩している事は、まぎれもない事実です。

最近、プロテインS活性が正常値なのに、ヘパリン療法を勧められた人からの問い合わせが多いので、正常女性のデータを取り寄せ、解析しましたので、ここに報告します。
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反復流産の場合、治療として低用量アスピリンがしばしば用いられています。

抗リン脂質抗体症候群の場合には低用量アスピリン投与は効果があると認められています。

しかし抗リン脂質抗体症候群ではない場合に予防的に低用量アスピリン投与をしてもその有用性は確認されていません。

 

過去に1〜2回流産を経験している女性に低用量アスピリン投与をした場合、流産の予防に寄与するかどうかに関して調べている論文が昨年のHum Reprodにありましたので紹介します。

 

方法

過去に1〜2回の流産を経験している18〜40歳1288名の女性が2つの群に無作為に分けられた。

①低用量アスピリン(81mg/day)+葉酸(400μg/日)の投与:615名

②プラセボ+葉酸:613名

薬剤は妊娠36週で終了した。

 

結果

妊娠前から毎日低用量アスピリンを内服したとしても流産率、着床障害はプラセボ群と比較して差が認められなかった。

1088名(88.6%)が参加して、797名(64.6%)がhCG陽性になった。

 

低用量アスピリン投与群は12.7%、プラセボ群は11.8%が流産になった。

この2群間に有意差は認められなかった。P = 0.71

 

55名は着床障害に至ったが、低用量アスピリン群では5.2%、プラセボ群では4.9%で2群間で有意差が認められなかった。P = 0.89

 

正倍数性の流産の割合は低用量アスピリンとプラセボ群において差は認められなかった。その相対リスクは1.11であった。

 

結論

この論文の結論:過去に1〜2回流産の経験のある女性に、妊娠前から低用量アスピリンを予防的に連日投与しても、その有用性は確認されなかった。

 

Expanded findings from a randomized controlled trial of preconception low-dose aspirin and pregnancy loss 

Hum Reprod (2016) 31 (3): 657-665.

 

 

Pregnancy loss by treatment arm overall and among women who became pregnant: the EAGeR trial.

結果: N (%)a Total LDA プラセボ全体 RR (95% CI) 妊娠群 
RR (95% CI) 
Women who completed the trial N = 1088 N = 537 N = 551 — — 
hCG detected pregnancy N = 785 N = 405 N = 380 — — 
Any pregnancy loss 188 (17.3) 96 (17.9) 92 (16.7) 1.07 (0.83, 1.39) 0.99 (0.78, 1.27) 
Implantation failure 55 (5.1) 28 (5.2) 27 (4.9) 1.06 (0.64, 1.78) 0.97 (0.59, 1.60) 
 PPT, no confirmation 34 (3.1) 18 (3.4) 16 (2.9) 1.15 (0.59, 2.24) 1.10 (0.57, 2.12) 
 hCG, no PPT 21 (1.9) 10 (1.9) 11 (2.0) 0.93 (0.40, 2.18) 0.80 (0.35, 1.82) 
Clinical loss 133 (12.2) 68 (12.7) 65 (11.8) 1.07 (0.78, 1.48) 1.00 (0.73, 1.36) 
 Pre-embryonic 36 (3.3) 17 (3.2) 19 (3.5) 0.92 (0.48, 1.75) 0.91 (0.48, 1.71) 
 Embryonic 73 (6.7) 39 (7.3) 34 (6.2) 1.18 (0.75, 1.84) 1.07 (0.69, 1.65) 
 Fetal pregnancy loss (<20 weeks) 10 (0.9) 4 (0.7) 6 (1.1) 0.68 (0.19, 2.41) 0.61 (0.17, 2.23) 
 Stillbirth 4 (0.4) 2 (0.4) 2 (0.4) 1.03 (0.15, 7.26) 0.97 (0.14, 6.74) 
 Ectopic 6 (0.6) 3 (0.6) 3 (0.5) 1.03 (0.21, 5.06) 1.00 (0.19, 5.23) 
 Unknown 4 (0.4) 3 (0.6) 1 (0.2) 3.08 (0.32, 29.50) 2.54 (0.28, 23.41) 

プロテインS 欠乏症、プロテインC 欠乏症


プロテインS やプロテインC は、血液を固める( 凝固させる) 活性化Va 因子、活性化VIIIa 因子を不活性化させる作用があり、血液凝固を防いでいます。


プロテインS やプロテインC が減少すると血液凝固が起こりやすくなり、血栓、塞栓ができやすくなります。妊娠中は、プロテインS 量が低下しやすいため、血栓症のリスクが高くなります。


プロテインS 欠乏症は白人では、0.03 ~ 0.13% と低率ですが、日本人では1.6% と高率で、日本人に多いのが特徴です(3-3)。厚生労働科学研究班(齋藤班)では、不育症患者ではプロテインS 欠乏症が7.4% と日本人の平均値より高率でした。


Sakata T, Okamoto A, Mannami T, Tomoike H, Miyata T. Prevalence of proteinS deficiency in the Japanese general population: the Suita Study.

J Thromb Haemost. 2004 ; 2 : 1012-1013.


(日本産婦人科学会HPにあるこちらからの記事 を引用しました。)

抗リン脂質抗体

テーマ:

抗リン脂質抗体
 

国際基準では、抗カルジオリピンβ2 グリコプロテインI(CLβ2 GPI)複合体抗体、抗カルジオリピン(CL)IgG 抗体、抗カルジオリピン(CL)IgM 抗体、ループスアンチコアグラントのいずれか一つ以上が陽性で、12 週間以上の間隔をあけて再検査しても、再度陽性となる場合と定められています。


したがって、陽性となった際は12 週間以上の間隔をあけて再検することが必要です(4-1)。


陽性が持続した場合、抗リン脂質抗体症候群と診断され、陽性から陰性化した場合、偶発的抗リン脂質抗体陽性例と診断されます。



[不育症選択的検査]
 以下の検査は、不育症のリスク因子として、確実な科学的根拠があるという段階には至っていませんが、不育症との関連性が示唆されている検査です。


患者さんの状況等に応じ、実施が検討されます。

 ① 抗フォスファチジルエタノールアミン(PE) 抗体
  ・抗PE 抗体(IgG 抗体、IgM 抗体 )(※)
 ② 血栓性素因スクリーニング(凝固因子検査)
  ・第Ⅻ 因子活性
    妊娠初期の流産を繰り返す方に、第Ⅻ 因子欠乏症が認められる場合があります。
  ・プロテインS 活性もしくは抗原

   妊娠初期流産、後期流産もしくは死産を繰り返す方に、プロテインS 欠乏症が認められる場合があります。
  ・プロテインC 活性もしくは抗原
   頻度は低いが、不育症例の一部に低下する症例があります。
  ・APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
    抗リン脂質抗体症候群や血栓性素因のある方では、APTT が延長する場合があります。


※ 抗PE 抗体の取り扱い
抗PE 抗体は、測定法、病原性の評価が定まっておらず、国内外の抗リン脂質抗体症候群の診断基準にも含まれていません。

従って、抗PE 抗体検査は研究段階の検査です。厚生労働科学研究班(齋藤班) でも、抗PE 抗体の病原性については、意見が一致していません(4-2、4-3)。

最近の知見(4-4) によると、抗PE 抗体の中には病気の原因になるタイプと、ならないタイプがあることが判ってきました。

いずれにせよ、抗PE 抗体の取扱いは研究段階であり、抗PE 抗体のみが陽性である場合、それだけで過去の流産の原因であると診断し、治療を行うべきということにはなりません。



4-1) Report of the Obstetric Task Force: 13th International Congress onAntiphospholipid Antibodies , Lupus 2011 ; 20 : 158-164.


4-2) 齋藤滋, 田中忠夫, 藤井知行 他. 本邦における不育症リスク因子とその予後に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業. 不育症に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究. 平成20 年度~ 22 年度総合研究報告書. 2011. PP49-5


4-3) Obayashi S, Ozaki Y,Sugi T, Kitaori T,Suzuki S, Sugiura-Ogasawara M.  Antiphosphatidylethanolamine antibodies might not be independent risk factors for further miscarriage in patients suffering recurrent pregnancy loss. J Reprod Immunol, 2010 ; 85 : 186-192. 16


4-4) Katsunuma J, Sugi T, Inomo A, Matsubayashi H, Izumi S, Makino T. Kininogen domain 3 contains regions recognized by antiphosphatidylethanolamineantibodies. J Thromb Haemost. 2003 ; 1 : 132-138.



(日本産婦人科学会のHPのこちらの記事 から引用しました。)

体重と流産の関係

テーマ:

体重が流産にどのような影響を及ぼすかについて調べている論文がありましたので紹介します。


方法、対象

反復流産後の妊娠に体重(やせ気味、低体重、太り気味)がどのような影響を与えているかを検討しています。反復流産患者491名、844症例を対象に検討しています。

以下の様に分類しています

①肥満群はBMI:30以上

②太り気味群はBMI:25.0-29.9

③正常はBMI:19.0-24.9

③低体重群はBMI:19.0以下


結果

正常のBMI群と以下の3群(肥満群、低体重群、太り気味群)を比較した。

①肥満群において流産のリスクは有意に上昇した。

 オッズ比は1.71、95%信頼区間1.05-2.8

②低体重群において流産のリスクは有意に上昇した。

 オッズ比は3.98、95%信頼区間1.06-14.92

③太り気味群において流産のリスクは変化がなかった。

 オッズ比1.02、95%信頼区間0.72-1.45


両角 和人のブログ


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結論

反復流産の患者にとってBMIが少し上昇する様な太り気味の場合は流産のリスクは上昇しない。しかし肥満や低体重の場合は流産のリスクが有意に上昇した事が判明した。


Body mass index and risk of miscarriage in women with recurrent miscarriage

Fertility and Sterility Volume 94, Issue 1 , Pages 290-295, June 2010


この結果から言える事として

反復流産の患者にとって、次の妊娠までに体重を正常に戻す努力をする事が大切と言えます。



ちなみにBIMについてですがウィキペディアによると

BMIとは、体重 身長 の関係から算出される、ヒト の肥満度を表す体格指数 である。

BMIの計算式は世界共通であるが、肥満の判定基準は国により異なる。

WHO では25以上を「標準以上 (overweight)」、30以上を「肥満 (obese)」としている

日本肥満学会 では、BMI22の場合を標準体重 としており、25以上の場合を肥満 、18.5未満である場合を低体重 としている。