両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

私は東京都中央区銀座にある両角レディースクリニックの院長です。


産婦人科専門医であり、また生殖医療専門医でもあります。


専門は不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術です。


毎日、不妊治療、体外受精、顕微授精に携わっております。


専門医の立場から生殖医療に関する正確な情報をお伝えして、出来るだけ多くの方に早く妊娠して頂けたらと思いブログを始めました。
ブログには生殖医療に関係する最近の話題を、わかりやすく書きたいと思っております。可能な限り書籍、文献に基づき記載していく予定です。


また国内外の学会や論文で発表された最新の治療等についても書いていきたいと思います。


できるだけわかりやすく説明したいと思いますが、もし難しい内容があれば気軽にコメントを頂けたらと思います。


2012年7月~中央区銀座で生殖医療専門のクリニックを開業しました。


詳細はクリニックのホームページ
を見て下さい。


個人のホームページ
も良ければ見て下さい。


ハワイダイヤモンド・ヘッドに数年間留学していたので、息抜きにハワイハワイ諸島の事も書きたいと思いますハイビスカスプルメリア


どうぞよろしくお願いいたしますニコニコ


以下はこれまで掲載した記事の主なテーマになります。


不妊ドックのすすめ
不妊のスクリーニング検査について

不妊の治療について


胚盤胞(グレード、妊娠率)

精子関連の話題

顕微授精のまとめ

体外受精のリスクについて

卵管造影検査について

凍結胚移植について

人工授精について

卵巣予備能低下症例の取り扱い

胚培養について(工夫、疑問)

子宮筋腫と不妊症

子宮内膜症について

腹腔鏡手術について

不妊治療とストレスについて

マイハワイベスト

ハワイ出産

アメンバー限定記事について


免責事項

移転を決断してから、何度も自分自身に問いかけてきました。

 銀座を離れるという決断は本当に正しかったのか。この場所を超えることができるのだろうか。ここまで大きな投資をして良いのだろうか。 

長年歩んできた銀座の街を見るたびに、心が揺れることがあります。 

 

それでも、そのたびに私の中で答えは一つです。 

私が目指しているのは、銀座にいることではありません。

 日本の中心から、世界に誇れる生殖医療を届けることです。 

 

私たちが今回の移転で大切にしたのは、目に見える豪華さではなく、患者さんが安心して治療を受けられる環境をつくることでした。

 

 新しいクリニックは、国内でも最高水準の耐震性能を備えた建物に入ります。

万が一の災害が起きたときにも、大切な受精卵や胚を守り続けるため、液体窒素を自ら製造できる設備を導入します。

また、ビルには停電時でも約3日間電力を維持できる非常用電源が備えられています。 これらは設備を自慢するためではありません。

 

患者さんからお預かりした大切な命を守る責任があるためであり、そして、その医療を支えるスタッフが安心して働き続けられる環境を整えるためです。 

 

培養室では、胚や精子の取り違えを限りなく防ぎ、安全性をさらに高めるため、世界的に導入が進んでいるRI Witnessシステムの導入も進めています。人の力だけに頼るのではなく、システムの力も活用しながら、限りなく安全な医療を目指していくことが私たちの責任だと考えています。 

 

通院環境も大きく変わります。新しいクリニックは東京駅に直結し、雨の日でも濡れることなくお越しいただけます。

新幹線、高速バスターミナル(地下に国内最大のバスターミナル)、空港からのアクセスも格段に向上し、都内だけでなく全国から通院される患者さんにとって、これまで以上に負担の少ない環境になります。 

 

さらに、ご好評いただいている託児施設も継続し、広さを約2倍に拡充します。改札からバリアフリーでアプローチ出来ます。小さなお子さんを育てながら治療を受ける方にも、安心して通院していただける環境を整えていきます。 

 

私が考える「安心」とは、優しい言葉だけでは生まれません。 安心とは、安全な建物であること。災害に備えた設備があること。最新の医療技術を取り入れること。スタッフが安心して働ける環境があること。そして、患者さん一人ひとりに真摯に寄り添うこと。 そのすべてがそろって初めて、本当の安心になるのだと思っています。

 

 もちろん、この移転には大きな責任が伴います。不安がまったくないと言えば嘘になります。 それでも、不安よりも「もっと多くの方に幸せを届けたい、そしてその責任が我々にはある」という思いです。

 

 より安全に、より確実に、より安心して治療を受けていただける環境を追求し続けること。

そして、一人でも多くの方に新しい命との出会いを届け、その先にあるご家族の笑顔につなげていくこと。それが、私に託された使命だと信じています。

 

 これからも、一歩一歩改善を重ねながら、日本で、そして世界でも「ここなら安心して治療を受けられる」と思っていただける生殖医療クリニックを目指して歩み続けます。  

 

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6月1日より、40〜42歳の患者様を対象とした「凍結胚移植支援パック」を開始しました。

現在の保険制度では、39歳までに治療を開始した方は移植6回まで保険適用ですが、40歳以上43歳未満で開始した方は3回までとなっています。

しかし実際には、40代前半は若い方以上に回数が必要になる年代です。年齢とともに妊娠率は低下し、流産率は上昇します。だからこそ回数を重ねながら結果を目指す必要があります。

それにもかかわらず、最も回数が必要な年代で移植回数が半分になってしまう。この点に私は以前から強い違和感を感じていました。

実際に、「あと数回移植できていれば結果に至ったのではないか」と思う方を何人も見てきました。しかし保険終了後は自費移植となり、経済的な理由から治療を断念される方も少なくありません。

40代前半の方に本来必要と考えられる回数を確保し、「保険が終わったから諦める」という状況を少しでも減らしたい。その思いから作った制度です。

正しい戦略を立て、必要な回数を確保し、最後までやり切る。そのために医療側も責任を持って支える。それが今回の制度に込めた思いです。

 

診察・採血費用等も含むパック料金1周期66,000円(税込)

43歳未満で保険移植制限3回終了してしまった方へ適用可能です。
保険治療開始が40歳未満の方は対象外です。(現行保険制度で6回移植可能なため)
転院の方は紹介状で保険移植回数が確認できる場合のみ制度利用可能です。
4回目~6回目までの移植で適用できます。
凍結胚移植のみ適用です。(新鮮胚は対象外)
自費診療になりますが診察回数3回までなど基本的なルールは保険診療のルールに従います。
追加検査を希望される場合は自費診療と同額で実施可能です。
妊娠した場合、それ以降の処方薬や診察料も全て自費の費用がかかります。

45歳以上の方から生まれましたと報告が届きカルテを見返すと治療方法に共通点があります。

 

その方法は、多くの方がフェマーラ(レトロゾール)とHMGを用いての新鮮胚2個移植です。

 

45歳以上の場合以下の点がポイントです。

①新鮮胚移植

②初期胚移植

③2個移植

④フェマーラ(レトロゾール)を用いる

⑤体外受精をする

 

以下説明します。

高齢の方には初期胚が良い理由として、

高齢になると採卵数が減りなかなか胚盤胞になりにくくなります。

胚盤胞にならなければ移植できなくなります。

採卵だけ繰り返して移植しなければ妊娠しません。

また、高齢になると胚盤胞が凍結に対して弱くなる傾向があります。融解後収縮して孵化しにくい傾向があります。

また、高齢になると培養庫での長期の培養がストレスになり胚盤胞培養が合わないケースもあります。培養液に関しても相性があります。合わないと発生が止まります。

培養庫の環境は子宮内とほぼ同等ですが、やはり母体の方が優っています。

 

そのため、胚盤胞で結果出ない高齢の方には初期胚での移植をお勧めします。

 

更に追加として、高齢の方には胚へのストレスを減らすと言う観点で、精液所見が正常ならば顕微授精よりは体外受精の方がお勧めです。高齢になると顕微受精か体外受精か

 

また凍結胚移植よりは新鮮胚移植の方が胚へのストレスが減るためお勧めです。

 

刺激をする際に気をつけることとして一般的に用いるのはクロミッドですがクロミッドは子宮の内膜が薄くなり着床にはどうしても不利となるため、フェマーラを用いる事がポイントであり、フェマーラは複数胚を採卵でき、かつ子宮内膜へ非常に良い作用を及ぼします。

フェマーラの具体的な内服方法ですが、AFが複数個見えている場合は生理2日目か3日目から朝夕で5日間内服します。この際HMGの注射も数回用います。

 

その他45歳以上の高齢の場合、採卵の際に変性卵が出やすいため吸引する圧を下げる事もポイントになります。

 

これらに通して言えることとして全てが、卵子と胚へのストレスを最大限減らすことです。

卵子の質や卵子の力は年齢に依存しますが、45歳の場合かなりギリギリなので、できるだけ引き算をさせない形で、卵子のポテンシャルを最大限発揮できる形での採卵、受精、培養、移植を行います。

 

45歳以上の高齢の場合、フェマーラ(レトロゾール)を用いての初期胚の新鮮胚2個移植が最も結果を出せる治療方法になります。

 

宜しければ以下の記事も参考にしてください。

高齢の場合の治療のポイント 

FSHが高く良い卵子が出来ません。良い方法はありますか?

 

 

 



近年、NIPT(新型出生前診断)は胎児の染色体異常を調べるスクリーニング検査として広く普及しています。しかし、体外受精(ART)で妊娠した場合にも自然妊娠と同じ精度で利用できるのかについては、これまで十分なデータがありませんでした。今回、Fertility and Sterilityに掲載されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、この疑問について13研究を統合して解析しています。


解析では548報の文献から13研究が採用され、ART妊娠におけるNIPTの診断精度が検討されました。研究選択の流れはFigure 1に示されており、多数の文献を厳密な基準で絞り込んで解析したことが分かります。

Table 1では採用された13研究の特徴がまとめられています。対象は単胎妊娠と双胎妊娠の両方を含み、IVF、ICSI、凍結胚移植などさまざまなARTが対象となっています。また、NIPTを一次スクリーニングとして用いた研究と、従来のスクリーニング後に実施した研究が含まれており、ART妊娠における実臨床を反映した解析となっています。

その結果、NIPTの特異度は単胎・双胎とも99%以上と非常に高く、陽性でない妊娠を正しく陰性と判定する能力は高いことが確認されました。一方で、感度は約88%であり、ダウン症候群(21トリソミー)に限っても約87%でした。これは自然妊娠で報告されている感度より低い結果であり、ART妊娠では陰性結果であっても完全に染色体異常を否定できない可能性が示唆されました。単胎妊娠の結果はTable 2に整理されており、100,000妊娠あたりの真陽性、偽陽性、偽陰性まで具体的に示されているため、臨床的なイメージが理解しやすくなっています。

双胎妊娠でも同様の傾向が認められました。Table 3では双胎ART妊娠における解析結果がまとめられており、特異度は非常に高い一方で、感度は約87~88%にとどまりました。著者らは、ART妊娠では胎児DNA濃度(fetal fraction)が低くなりやすいことや、多胎妊娠、消失双胎(vanishing twin)などが検査精度に影響している可能性を指摘しています。

さらに、NIPTを一次スクリーニングとして用いた場合は、従来のスクリーニング後に実施する方法よりやや良好な成績を示しましたが、ARTの種類や新鮮胚移植・凍結胚移植の違いによる影響については、十分なデータがなく結論は出ていませんでした。

今回の研究は、ART妊娠でもNIPTは有用なスクリーニング検査である一方、自然妊娠と同じ精度とは考えず、検査前に十分な説明を行うことの重要性を示した報告です。超音波検査の結果や妊婦さんの背景も総合的に評価し、必要に応じて羊水検査などの確定診断を検討することが大切であると結論づけています。

Kamath V, Sivakumar MB, Callado GY, et al.
Noninvasive prenatal testing as a prenatal screening test in pregnancies following assisted reproductive technologies: a diagnostic test accuracy systematic review and meta-analysis.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):345-359.

一人目は体外受精で授かりました。現在二人目を考えていますが、一人生むと二人目は授かりやすくなりますでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

二人目の方はやはり妊娠する可能性が高くなります。

一人生んでいるという事は全てが問題ないからできることであり、診療をしていると本当にこの二人目の方のパワーを実感します。

 

一人目から数年年齢が上がっているとしても、また採卵して本当に良い胚盤胞ができます。

年齢が上がることで流産して苦戦する事も有りますが、最終的には一人目のように順調に結果を出していきます。

 

また一人目を産むと精神的にプレッシャーが取れて二人目を授かりやすくなることも多々あるのだと思います。

 

特に妊娠中や産後の授乳中は卵巣が休んでいるため好ましくなります。

 

二人目の方には是非自信を持って治療を受けて欲しいと思います。

 

 

以前一度記事にしましたが以下のような興味深い報告もあります。

妊娠により若返る

 

二人目を考える際に気を付ける点として以下の記事も参考にしてください。

妊娠間隔と早産に関して

二人目で苦戦しています

 

年齢が上がると子宮も影響を受け、また妊娠中の合併症が増えるため早めに二人目にトライする方が好ましいと思います。

母体の年齢が上がり凍結胚を移植すると

凍結胚移植では、子宮内膜をホルモン補充周期(HRT)で準備する方法と、排卵を利用する自然周期(Natural Cycle:NC)の2つが広く行われています。どちらも一般的な方法ですが、妊娠中や分娩時の安全性に違いがあるのかは近年大きな関心を集めています。

今回、Fertility and Sterilityに掲載された日本からの大規模研究では、この疑問について詳しく検討されています。

 

本研究では2015年から2023年までに実施された11,873周期の凍結胚移植を解析し、HRT周期5,115周期と自然周期6,758周期を比較しました。患者背景の違いによる影響をできるだけ少なくするため、IPTWという高度な統計解析を用いて検討しています。対象患者の選択過程はFigure 1に示されており、多数の症例から厳密な基準で解析対象が選ばれたことが分かります。また、Table 1では両群の患者背景がまとめられており、解析ではこれらの違いを統計学的に補正しています。

 

その結果、自然周期では流産率が低く、生児獲得率は高いことが示されました。さらに単胎出生例では、妊娠高血圧症候群(HDP)、癒着胎盤スペクトラム(PAS)、帝王切開率がいずれも自然周期で有意に低く、経腟分娩における1,000mL以上の産後出血も少ないという結果でした。Table 2にはそれぞれのリスク比が整理されており、特に癒着胎盤はHRT周期で約5倍高いという結果が示されています。

研究施設では、10年前から徐々に自然周期を積極的に採用する方針へ変更していました。そこで施設全体として自然周期の割合が増えたことによる影響も解析したところ、自然周期の割合が年間10%増加するごとに、癒着胎盤、妊娠高血圧症候群、帝王切開、1,000mL以上の産後出血、大きく生まれる児(LGA)がいずれも有意に減少していました。この結果はTable 3にまとめられており、自然周期を積極的に選択する施設方針そのものが妊娠・分娩成績の改善につながる可能性を示しています。

著者らは、この違いの背景として、自然周期では黄体が形成され、プロゲステロンやリラキシンなど黄体由来ホルモンが正常に分泌されることを挙げています。一方、HRT周期では黄体が存在せず、胎盤形成や母体血管の適応に影響を及ぼす可能性があり、それが妊娠高血圧症候群や癒着胎盤などの増加につながるのではないかと考察しています。もちろん本研究は後ろ向き研究であり、すべてを証明できるわけではありませんが、最新のランダム化比較試験とも概ね一致する結果であり、自然周期を優先する治療戦略を支持する重要なデータとなっています。

凍結胚移植では、すべての患者さんが自然周期を選択できるわけではありません。排卵障害などではHRT周期が必要になる場合もあります。しかし、自然排卵が可能な患者さんでは、妊娠率だけでなく妊娠中や分娩時の安全性まで考慮したうえで治療方法を選択する時代になってきたことを示す、非常に興味深い研究と言えるでしょう。

 

So S, Murabayashi N, Yamaguchi W, et al.

Natural cycle frozen embryo transfer reduces obstetric complications: an inverse probability of treatment-weighted analysis.

Fertility and Sterility. 2026;126(2):360-368

「45歳を超えると妊娠は難しい」とよく言われます。

実際に、年齢とともに妊娠率や出産率が低下することは、多くの研究で明らかになっています。しかし、私は「限られたチャンスをいかに最大限に生かすか」が最も重要だと考えています。

当院では45歳以上の患者さんに対して、一人ひとりの状況に応じた独自の移植戦略を行っています。

その一つが、「最も若い時に作成した凍結初期胚」と、「今回採卵で得られた新鮮初期胚」を組み合わせて移植する方法です。

最も若い時期に作成した胚は、その時点での卵子の質を反映しており、加齢による影響を少しでも受けていない胚です。採卵時年齢が若いほど妊娠率や生児獲得率が高いことは数多くの研究で示されており、この点は現在の生殖医療でも広く認められています。

一方、新鮮胚には凍結・融解という過程を経ていないという特徴があります。もちろん、すべての患者さんで新鮮胚が凍結胚より優れているというわけではありません。しかし、実際の診療では、凍結胚移植を何度繰り返しても妊娠に至らなかった方が、新鮮胚で妊娠・出産された症例を数多く経験しています。患者さんによっては、新鮮胚の方が適している可能性もあるのではないかと考えています。

さらに、この方法にはもう一つ利点があります。それは、採卵・刺激周期そのものを妊娠のチャンスとして生かせることです。45歳を超えると、一回一回の採卵周期は非常に貴重です。採卵後にすべての胚を凍結して次の周期を待つのではなく、今回得られた新鮮胚も同時に活用することで、その採卵周期自体を妊娠の機会にすることができます。さらに、移植しなかった良好な胚は凍結保存できるため、次回以降の治療にもつなげることができます。

つまり当院では、「最も若い時期の胚」「新鮮胚」「採卵周期そのもの」という三つの可能性を同時に生かし、限られた妊娠のチャンスを最大限に広げることを目指しています。

実際に、この方法で高年齢の患者さんが妊娠・出産された症例も経験しています。

もちろん、これは現時点で十分なエビデンスが確立された治療法ではありません。当院では現在、この治療戦略の成績を解析しており、本当に有効な方法なのかを学会や論文を通じて科学的に検証していきたいと考えています。

 

 

 



反復着床不全(Recurrent Implantation Failure:RIF)は、生殖医療の中でも長年明確な定義がなく、施設や研究によって診断基準が異なっていました。今回、アメリカ生殖医学会(ASRM)は最新のCommittee Opinionを発表し、反復着床不全の定義から検査、治療までを現時点のエビデンスに基づいて整理しました。まず論文のタイトルページを掲載すると、今回がASRMの公式見解であることが読者にも伝わりやすくなります。

これまでのRIFは、「3回失敗したら」「4回失敗したら」など様々な定義が使われてきました。Table 1では、これまで世界で提案されてきた定義が一覧でまとめられており、統一された基準が存在しなかったことがよく分かります。

このような背景を踏まえ、ASRMは「良好な胚盤胞を移植し、妊娠判定陽性となる累積確率が95%に達するはずの回数を移植しても妊娠しない状態」をRIFと定義することを提案しました。一般的には、正常胚であれば3~6回程度の移植、それ以外では年齢によって必要な移植回数が異なるとしています。Figure 1では年齢ごとに95%の妊娠率へ到達するために必要な移植胚数が示されており、高齢になるほど未検査胚では必要な移植回数が大きく増えることが視覚的に理解できます。



今回のガイドラインで特に重要なのは、「反復着床不全だからといって、あらゆる検査を行うべきではない」と明確に述べている点です。Table 2では、推奨される検査と推奨されない検査・治療が整理されています。

子宮内腔の評価や子宮鏡検査、必要に応じた両親の染色体検査、慢性子宮内膜炎の評価などは状況に応じて検討されますが、一方でERA(子宮内膜受容能検査)、BCL6検査、子宮内膜スクラッチ、精子DNA断片化検査、免疫グロブリン療法(IVIG)、G-CSF、ヘパリンなどについては、現時点では生児獲得率を改善する十分なエビデンスはなく、日常診療として routine に行うことは推奨されていません。Table 2は、現在のエビデンスを非常に分かりやすくまとめた表であり、診療方針を理解するうえで参考になります。

また、PGT-Aについても興味深い見解が示されています。未検査胚を繰り返し移植している患者さんでは、胚の染色体異常が原因かどうかを確認する目的でPGT-Aを検討することは選択肢となりますが、反復着床不全患者さんにおいてPGT-Aが生児獲得率を改善するという十分な証拠はないと結論づけています。同様にERAについても、大規模ランダム化比較試験を含めた最新のデータを踏まえ、現時点では routine に実施することは推奨されないとしています。

さらに、慢性子宮内膜炎については一定の可能性が示唆されているものの、診断基準や治療方法が統一されておらず、今後さらに質の高い研究が必要とされています。子宮内膜症や腺筋症についても、GnRHアゴニストやアロマターゼ阻害薬による前治療が有効である可能性はありますが、現時点では十分なエビデンスとは言えないとしています。生活習慣については、禁煙や適正体重の維持は推奨されるものの、生活習慣改善だけで反復着床不全が改善するという明確な証拠はありませんでした。

今回のASRMガイドラインで最も印象的なのは、原因が見つからない場合には過剰な検査を繰り返すのではなく、これまでの治療内容や胚の質、移植手技を丁寧に見直したうえで、追加の胚移植を継続することも合理的な選択肢であると述べている点です。反復着床不全は非常に難しい病態ですが、現時点で効果が証明されている治療と、まだ研究段階の治療を区別しながら診療を進めることの重要性を示した、非常に実践的なガイドラインと言えるでしょう。

Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine.
Recurrent implantation failure: a committee opinion.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):277-293.

海外から保険で体外受精を受けたいです。夫は外国人で保険は無く私は国保です。可能でしょうか?また夫は何日くらい日本にいれば良いでしょうか?またいついればよいでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

数年前から海外からの通院が増えています。その理由として以下の点があります。

①日本の保険が使える

②円安

③日本の方が技術が高い

④母国語で治療が受けられる

⑤体質や体格や倫理観が母国のため合う

⑥実家に帰ったり諸々用事も済ませられる

⑦不妊治療でとても大切なカウセリングやメンタルへの配慮が高い

 

他にも多数ありますが大体はこの様な理由で一時帰国して治療を受けています。

私自身32歳の時ハワイに2年半住んでおり海外での医療を受けることの大変さを身を持って感じており気持ちは本当によく分かります。

 

奥様が保険がある場合ご主人が保険がなくても保険で治療を受けることは可能です。

ただ条件があり採卵日に来院するか持ち込みで精子を採取する必要があります。

凍結精子は使用できません。

採卵は生理の14日目前後のため生理が開始したらご主人の航空券を決められるとよいと思います。

大切なこととしてご主人は事前に感染症の検査をしてくる必要があります。項目は以下の4項目です。(HIV、HCV、HBV、梅毒)。

またご自身の住まわれているところで主治医を決めておくことも大切です。その場合体外受精をしている施設が好ましいです。事前にしっかりと引き継ぎをしてくれるようにお願いをしておくと良いです。

 

 



この論文は昨日の記事の「正常胚移植後でも肥満は流産リスクを高める」という研究に対して掲載されたコメント論文です。
著者らは、肥満は体外受精の成績だけでなく、妊娠・出産までを含めた生殖医療全体に大きな影響を及ぼすことを改めて強調しています。正常胚のみを移植した約1万5,000例を解析したWhiteheadらの研究では、肥満女性では流産リスクが19%高く、BMIが高くなるほど流産リスクも上昇していました。特に38~40歳でBMI40以上の女性では、流産率が27.1%と最も高くなることが示されており、この結果は年齢とBMI別のヒートマップでも分かりやすく示されています。年齢が高くなるほど次の正常胚を獲得できる可能性も低下するため、一回の流産が与える影響はより大きくなることを指摘しています。

一方で、著者らはBMIだけですべてを判断すべきではないとも述べています。例えばBMI34.9と35.0ではわずかな差しかありませんが、WHO分類では異なるカテゴリーになります。また、高血圧や糖尿病などの代謝異常を伴わない「代謝的に健康な肥満」の方も存在するため、一人ひとりの代謝状態や背景を踏まえた個別評価が重要であるとしています。

さらに、肥満が流産リスクを高める理由として、慢性的な炎症やインスリン抵抗性だけでなく、脂肪組織でのエストロゲン産生増加によるホルモン環境の変化、子宮内膜の脱落膜化障害、酸化ストレス、サイトカイン異常など、さまざまな母体側の要因が複雑に関与している可能性が紹介されています。正常胚であっても、着床や胎盤形成に影響を及ぼす母体環境が十分に整っていなければ、妊娠維持が難しくなる可能性があるという考え方です。

興味深いことに、妊娠前に減量介入を行うことで妊娠率は改善するという報告はあるものの、生児獲得率や流産率の改善については現時点では十分なエビデンスはないことも紹介されています。

そのため著者らは、肥満になってから治療するだけではなく、妊娠を希望する年代より前から肥満を予防する社会全体の取り組みこそが、生殖医療の成績向上や将来の母子の健康につながる重要な課題であると結論づけています。

Lawrenz B, Didar H, Fatemi H.
Beyond treatment: making obesity prevention central to reproductive health and reducing pregnancy loss.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):275-276.