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私は東京都中央区銀座にある両角レディースクリニックの院長です。
産婦人科専門医であり、また生殖医療専門医でもあります。
専門は不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術です。
毎日、不妊治療、体外受精、顕微授精に携わっております。
専門医の立場から生殖医療に関する正確な情報をお伝えして、出来るだけ多くの方に早く妊娠して頂けたらと思いブログを始めました。
ブログには生殖医療に関係する最近の話題を、わかりやすく書きたいと思っております。可能な限り書籍、文献に基づき記載していく予定です。
また国内外の学会や論文で発表された最新の治療等についても書いていきたいと思います。
できるだけわかりやすく説明したいと思いますが、もし難しい内容があれば気軽にコメントを頂けたらと思います。
詳細はクリニックのホームページ
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ハワイ
に数年間留学していたので、息抜きにハワイ
の事も書きたいと思います

どうぞよろしくお願いいたします![]()
以下はこれまで掲載した記事の主なテーマになります。
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妊孕性温存はこの25年で大きく進化した分野の一つです。本論文は、その進歩と現在の到達点、そして今後の方向性を包括的に整理した重要なレビューです。
まず全体像として冒頭の図では妊孕性に影響を与える要因とそれに対する対策が体系的に示されています。加齢、抗がん剤、放射線、手術といった要因に対して、胚凍結、卵子凍結、卵巣組織凍結といった方法が対応している構造が視覚的に整理されています。この図から分かるのは、妊孕性温存は単一の方法ではなく、複数の選択肢を組み合わせる医療であるという点です。

妊孕性温存の歴史的な転換点は、卵子凍結が「実験的」から「標準治療」に変わったことです。本文でも、ガラス化法の導入により卵子凍結の成功率が大きく向上し、現在では一般的な選択肢として確立していることが示されています。
さらに重要なのが適応の拡大です。Table2では、従来のがん患者だけでなく、自己免疫疾患、遺伝疾患、子宮内膜症、さらには加齢による妊孕性低下まで対象が広がっていることが示されています。つまり妊孕性温存は「特殊な医療」から「一般医療」へと変化しています。

技術的な進歩としては、卵巣刺激の柔軟化が挙げられます。Figure2ではランダムスタート法が示されており、月経周期のどのタイミングからでも刺激を開始できることが分かります。これにより、がん治療前の限られた時間でも卵子凍結が可能となりました。

また、卵巣組織凍結も重要な進歩です。Figure3では実際の移植方法が示されており、移植後に自然妊娠が可能となる点が他の方法と大きく異なります。さらに内分泌機能の回復も期待できるため、「妊娠」だけでなく「女性としての機能維持」にも関与します。

一方で課題も明確です。Table3では各方法の成功率や限界が示されており、例えば卵子凍結の利用率は低く、実際に使われる割合は数%にとどまります。また卵巣組織移植では虚血による卵胞の喪失が問題となり、移植後に約3分の2が失われる可能性が指摘されています。

さらに今後の展望として注目されるのが、in vitro卵胞培養や人工配偶子です。本文では、卵巣組織を体外で成熟させる技術や、幹細胞から配偶子を作る研究が進んでいることが述べられています。これらはまだ臨床応用には至っていませんが、将来的には妊孕性温存の概念そのものを変える可能性があります。
この論文が示している最も重要なメッセージは、妊孕性温存は「一つの技術」ではなく、「個別化された戦略」であるという点です。年齢、疾患、治療までの時間、将来の希望などを踏まえ、最適な方法を組み合わせることが求められます。
現在の生殖医療は、単に妊娠を目指すだけでなく、「将来の選択肢を残す医療」へと進化しています。この論文は、その流れを明確に示した重要なまとめです。
出典
Female fertility preservation: 25 years of progress, expanding indications and future prospects
Human Reproduction Update, 2026
妊孕性温存とは、将来の妊娠の可能性を残すために卵子や胚、卵巣組織を凍結保存する医療です。これまで主にがん治療前の方が対象でしたが、現在では子宮内膜症や自己免疫疾患、さらには将来に備えて出産を遅らせたい方にも広がっています。特に卵子凍結は技術の進歩により一般的な方法となり、治療開始のタイミングも柔軟になりました。
一方で、年齢が上がると卵子の数や質は低下するため、効果は個人差が大きく、すべての方が将来妊娠できるわけではありません。また、実際に凍結した卵子を使用する方は多くないという現実もあります。それでも、「将来の選択肢を残せる」という点は大きな意味があります。
この論文が伝えているのは、妊孕性温存は特別な医療ではなくなりつつある一方で、正しい理解とタイミングが非常に重要だということです。ご自身のライフプランに合わせて、早めに知り、考えておくことが大切です。

凍結胚移植は現在の体外受精において中心的な治療となっています。しかし、「どの方法で子宮内膜を準備するのが最も良いのか」という点については、長く議論が続いてきました。今回ご紹介する論文は、その問いに対して非常に重要な答えを示したランダム化比較試験です。
この研究では、PGT-Aにより染色体正常と確認された胚盤胞のみを移植しています。つまり、流産の最大要因である胚染色体異常をできる限り除外したうえで、「内膜準備法そのもの」が妊娠予後に与える影響を評価しています。この点が本研究の非常に大きな価値です。
ページ4のFigure 1では、2つの内膜準備法が模式的に示されています。ひとつは自然排卵を利用するNatural Cycle-FET、もうひとつはエストロゲンとプロゲステロンを投与するArtificial Cycle-FETです。

自然周期では、自分の排卵と黄体を利用して内膜を作ります。一方、人工周期では排卵を抑え、外からホルモンを補充して内膜を準備します。人工周期は日程調整がしやすく、現在広く用いられています。
しかし、この論文ではその人工周期に大きな問題点が示されました。
ページ6のTable 3を見ると、早期流産率は自然周期で6.7%、人工周期で14.2%でした。つまり、人工周期では流産率が約2倍になっています。

さらに重要なのは、臨床妊娠率と生児獲得率です。自然周期では臨床妊娠率72.5%、生児獲得率67.4%であったのに対し、人工周期ではそれぞれ52.3%、47.2%に低下しています。この差はかなり大きく、有意差が出ている結果です。
ページ5のFigure 2では、実際の患者登録の流れが示されています。この研究はランダム化比較試験であり、しかも正常胚のみを対象にしているため、これまでの観察研究よりはるかに信頼性が高い設計になっています。

著者らは、人工周期で流産率が増える理由として「黄体の欠如」に注目しています。これは非常に興味深い考え方です。
従来、黄体は単にプロゲステロンを分泌する臓器と考えられてきました。しかし最近では、黄体はVEGFやrelaxinなど、妊娠初期に重要な血管作動性物質を分泌していることがわかってきています。
つまり、人工周期ではプロゲステロンを補充していても、「黄体そのもの」が存在しないため、自然妊娠や自然周期移植とは異なる状態になっている可能性があります。
この考え方は、近年報告されている妊娠高血圧症候群や胎盤異常との関連とも一致しています。論文中でも、人工周期では妊娠高血圧症候群などのリスクが高い可能性が述べられています。
また、この研究ではプロゲステロン値の測定が行われていない点も議論されています。ただ著者らは、低プロゲステロンは自然周期でも人工周期でも一定割合で存在するため、それだけでは今回の差を説明できないと考察しています。
個人的に非常に重要だと感じるのは、「正常胚でも流産する」という現実に対して、子宮内膜側の影響をここまで明確に示した点です。
これまでPGT-A後の流産は、「胚以外の問題」と漠然と考えられてきました。しかし本研究は、内膜準備法という非常に具体的な要因が結果を左右している可能性を示しています。
もちろん、人工周期が必要な患者さんもいます。卵巣機能低下や排卵障害がある場合には、人工周期は重要な選択肢です。しかし、自然排卵が可能な患者さんでは、できる限り自然周期を優先すべきではないか、という流れは今後さらに強まる可能性があります。
凍結胚移植は単なる「胚を戻す治療」ではなく、子宮内膜をどのように整えるかまで含めた治療です。この論文は、その本質を非常に明確に示していると思います。
Human Reproduction
The impact of endometrial preparation on pregnancy loss in vitrified-warmed euploid blastocyst transfer cycles: a randomized controlled trial
2026; Vol.41: 1–8

男性不妊の評価は、これまで精液検査が中心でした。しかし、精子の数や運動率が正常であっても妊娠に至らないケースは少なくありません。本論文は、その背景にある「見えない炎症」に注目し、精液中のサイトカインと不妊との関係を大規模に解析した重要な研究です。
まずFigure1では、本研究の全体像が示されています。約5700本の論文から最終的に52研究が抽出され、8000人以上のデータが解析対象となっています。この規模は、この分野としては非常に大きく、現時点での到達点を示す内容です。
ここで重要なのがFigure2です。この図では、精液中の主要な炎症性サイトカインであるIL6、TNFα、CXCL8の濃度が比較されています。結果として、不妊男性ではこれらのサイトカインが有意に高いことが示されています。特にIL6は標準化平均差0.39と最も明確な差があり、TNFαやCXCL8も同様に上昇しています。つまり、精液中に炎症反応が存在している可能性が高いということです。
この意味は非常に重要です。従来の精液検査では炎症の有無はほとんど評価されていませんが、実際には慢性的な炎症が精子機能に影響している可能性があります。サイトカインは免疫や炎症を調整する物質であり、これが高い状態は生殖器内の環境が正常でないことを示唆します。
さらにFigure3では、「炎症が明らかな症例」に限定した解析が示されています。この場合、IL6やTNFαの上昇はさらに顕著となり、炎症と不妊の関連がより強く示されています。一方でCXCL8は必ずしも一貫した結果ではなく、炎症との関係は単純ではないことも示されています。
この結果から分かるのは、「すべての不妊が炎症で説明できるわけではない」という点です。炎症が主因のケースもあれば、全く関係しないケースも存在します。つまり男性不妊は一つの原因ではなく、複数のメカニズムが関与していると考えられます。
またFigure4では、研究全体のばらつきが評価されています。この図からは、大きな偏りは認められず、結果の信頼性は一定程度保たれていることが確認されています。ただし、研究間のばらつきは大きく、測定方法や対象の違いが結果に影響している可能性も指摘されています。
さらに本文では、サイトカインの役割が単なる「悪い因子」ではない点も強調されています。サイトカインは精子形成や免疫調整にも関与しており、適切なバランスが重要です。問題となるのは、そのバランスが崩れ、慢性的な炎症状態となった場合です。
この論文が伝えている最も重要なメッセージは、男性不妊は精子そのものだけでなく、「精液の環境」、特に炎症状態が関与している可能性があるという点です。
現時点では、サイトカイン測定は日常診療で標準的に行う検査ではありません。しかし将来的には、原因不明不妊や精子機能異常の評価において、重要な指標となる可能性があります。
男性不妊は今、「数や運動率を見る時代」から、「環境や炎症を評価する時代」へと進みつつあります。この研究は、その変化の方向性を明確に示した重要な一歩と言えるでしょう。
出典
Seminal plasma cytokines in fertile versus infertile men: a systematic review and meta-analysis
Human Reproduction Update, 2026
精液検査で問題がないのに妊娠に至らない場合、その原因の一つとして「精液中の炎症」が関係している可能性があります。本研究では、不妊男性ではIL6やTNFα、CXCL8といった炎症性サイトカインが高いことが示されました。これは精子の周囲環境に炎症が存在していることを意味します。ただし、すべての不妊が炎症で説明できるわけではなく、一部のケースに関与していると考えられます。現時点でこの検査は一般的ではありませんが、生活習慣の改善や感染の有無の確認は重要です。男性不妊は「精子の数」だけでなく、「精液の質や環境」も重要であるという新しい視点が示されています。
複数凍結胚(胚盤胞)がある場合どの順番で移植をすべきでしょうか?
このようなご質問が度々あります。
原則はグレードが優先されますが凍結の日にち(5日目か6日目か)、受精方式(IVFかICSI)や胚の大きさ(直径)、ダイレクト分割、そして近年ではAIのスコアも加味して総合的に判断します。
そして悩ましいのが一番良い胚盤胞から移植をすべきかどうかの質問ですが、やはりここはベストから移植をすることが良いと説明をしています。
過去の記事も参考にしてください。
20年前にハワイへ留学していた際、恩師である柳町隆造先生にPICSIについてご意見を伺ったことがあります。
当時はPICSIに関する論文が出始めた頃で、精子選別の新しい手法として注目されており、私自身も期待を寄せていました。
しかし先生は、「そんなに単純に結果が良くなるわけではないよ」とおっしゃいました。
精子の選別がある程度可能であっても、受精やその後の発育には卵子の質が大きく関わっており、顕微鏡で見える範囲だけで判断できるものではない、と。
さらに、「この分野は本当に奥が深いんだよ」と。
柳町先生は世界でも屈指の論文読解力を持ち、膨大な研究に目を通されている方です。
その言葉には常に深い洞察と確かな裏付けがありました。
実際、その後の多くの研究や追試によって、PICSIの有効性は必ずしも一貫した結果を示していません。先生の見解は極めて本質的であったと、臨床の現場で改めて実感しています。
この経験を通じて強く感じたのは、「新しい技術であれば結果が良くなる」という単純なものではないということです。
不妊治療は、見えている一部の情報だけで最適解が決まるほど単純なものではありません。
だからこそ当院では、新しい技術を安易に追加するのではなく、その本質と限界をエビデンスをもとにしっかりと見極めながら治療を選択することを大切にしています。
そして今でも常に柳町先生の言葉を思い出します。
自然の力を上手に活かすこと。
技術はあくまでそれを支えるものであり、目的ではないということを。
体外受精には保険適応の回数制限があります。
年齢によってその回数は異なり、40歳未満では最大6回の胚移植が可能ですが、40歳以上になると3回に減少します。
この制度には明確な国の意図があります。
年齢が上がる前に治療を開始していただくことで、より高い妊娠率を目指すという考え方です。
実際、妊娠率は年齢とともに低下していくため、早期に治療を開始することは非常に重要です。
ただ一方で、臨床の現場にいると別の側面も見えてきます。
40歳を超えると1回あたりの妊娠率は低下するため、本来は回数を増やして複数回の移植を積み重ねていく必要があります。
つまり医学的には「更なる回数が必要になる年代」です。
しかし制度上はその回数が減ってしまう。
この点には、どうしても違和感が残ります。
もちろん制度全体としてのバランスや医療資源の問題など、様々な背景があることは理解しています。
ただ、患者さんの立場で考えると
「最も難しい時期に、試行できる回数が減ってしまう」
という現実があるのが事実です。
だからこそ私たちが強くお伝えしたいのは一つです。
できるだけ早い段階で治療について考えること。
そして、もし40歳を超えて治療を始める場合には
「1回1回の移植を大切にすること」と同時に
「限られた回数の中で最適な選択をしていくこと」「根拠が乏しいことは行わない」が非常に重要になります。
制度は一律でも、治療は一人ひとり異なります。
その中で後悔のない選択をしていただくことが、私たち医療者の使命だと考えています。
今週土曜日に開催されるオンラインセミナーではこの回数制限への具体的な対策に関して話をしたいと思います。お申し込みはこちらから。

月経周期は規則的で、排卵は周期の中央に起こるというイメージを持たれている方は少なくありません。しかし本論文は、その常識に大きな疑問を投げかける研究です。約2000人、4万周期以上という長期データを用い、排卵日と周期の変動を詳細に解析しています。
まず研究全体の構造として、Figure1では解析対象がどのように選定されたかが示されています。最終的に約1000人が12周期ずつ詳細に解析されており、長期間にわたる個人内の変動を評価できる点がこの研究の大きな特徴です。
結果として最も重要なのは、「周期も排卵日も大きく変動する」という点です。Figure2では周期長の分布が示されており、中央値は28日ですが、実際には25日未満や35日以上の周期も一定数存在し、28日周期はわずか13%程度に過ぎません。さらに、Tableに相当するデータとして、約62%の女性で1年間に1週間以上の周期変動が認められています。

排卵日の変動はさらに顕著です。Figure4では排卵日の分布が示されており、排卵は主に12〜16日目に集中するものの、それ以外の日にも広く分布しています。実際には約半数が16日以降に排卵しており、いわゆる「14日目排卵」は決して一般的ではないことが分かります。

さらに重要なのが個人内の変動です。Figure5では同一女性内での排卵日のばらつきが示されており、約55%の女性で1年間に1週間以上のずれが生じています。中央値でも約8日程度の変動があり、同じ人でも毎周期大きく異なることが明らかです。

年齢による違いも興味深い結果です。若年層では変動が大きく、35〜39歳では比較的安定する一方、40歳以降では再びばらつきが増加します。つまり「安定している時期」は限定的であり、多くの期間で変動が存在します。
この論文が示す最も重要なメッセージは、「排卵日は固定されたものではない」という点です。カレンダーだけで排卵日を予測することは難しく、個々の周期を実際に観察する必要があります。
臨床的には、タイミング療法や自然妊娠を目指す場合、この変動を前提に考えることが重要です。排卵日は予測するものではなく「確認するもの」であり、頸管粘液や基礎体温などの変化を組み合わせた評価が必要となります。
この研究は、これまでの「28日周期・14日排卵」という単純なモデルを見直し、より現実に即した個別化された理解の必要性を示しています。妊娠を考える上で、正確な周期理解がいかに重要かを改めて示した非常に示唆に富む研究です。
出典
Variations in ovulation time and menstrual cycle characteristics: analysis of a prospective long-term cohort study
Human Reproduction, 2026
多くの方が「排卵はだいたい同じ日に起こる」と思われていますが、この研究では実際にはそうではないことが分かりました。同じ方でも月によって排卵日は大きく変わり、半数以上の方で1週間以上ずれることがあります。また、生理周期も毎回同じとは限らず、思っている以上に変動しています。つまり「14日目が排卵日」といった計算だけでは、正確なタイミングをとることは難しいということです。妊娠を希望される場合は、カレンダーだけに頼るのではなく、排卵検査薬や基礎体温などを組み合わせて、その周期ごとに確認していくことが大切です。

凍結胚移植において、「自然周期は良いがスケジュールが読めない」「ホルモン補充周期は楽だが生理的ではない」というジレンマは日常診療でよく直面します。本論文は、その解決策として提案された自然増殖期プロトコールを詳細に検討した重要な報告です。
まずFigure1をご覧ください。この図では3つのプロトコール、すなわち人工周期、自然周期、自然増殖期プロトコールが視覚的に整理されています。人工周期は外からエストロゲンとプロゲステロンを投与して内膜を作る方法です。自然周期は排卵を待ってタイミングを合わせる方法です。それに対して自然増殖期プロトコールは、内因性エストロゲンで内膜を育てた後、排卵を待たずにプロゲステロンを開始するという点が大きく異なります。

具体的な流れは非常にシンプルです。月経後、卵胞発育に伴う自然のエストロゲンで内膜を増殖させ、内膜が7mm以上となり、血中プロゲステロンが1.5ng/ml未満であることを確認した時点で、卵胞径やLH値に関わらずプロゲステロンを開始します。その後、プロゲステロン開始日を基準に移植日を設定します。
この時点では排卵はまだ起こっていない可能性がありますが、その後自然に排卵・黄体形成が起こるケースが多く、完全なホルモン補充周期とは異なり、体内のホルモン環境がある程度維持される点が特徴です。
次にFigure2では、本研究の対象集団が示されています。約5800周期という大規模データの中で、自然周期、自然増殖期、人工周期が比較されています。この規模は単施設研究としては非常に大きく、臨床的な傾向を把握する上で重要なデータです。

実際の結果はTable2にまとめられています。生児獲得率は、人工周期38.4%に対して、自然増殖期49.1%、自然周期45.2%と、有意に高い結果が示されています。また流産率も人工周期34.9%に対して自然増殖期19.7%と低下しています。これらの結果は、内因性ホルモン環境の存在が妊娠維持に寄与している可能性を示唆しています。

さらにTable3では周産期アウトカムが示されています。特に注目すべきは妊娠初期出血で、人工周期37.6%に対し自然増殖期17.4%と大きく低下しています。また妊娠高血圧症候群も人工周期14.5%に対し自然増殖期9.4%と低い傾向が見られます。これらは黄体の存在による血管調整機能の影響と考えられています。

このプロトコールの最大の特徴は「柔軟性」です。論文中でも具体例として、日曜にLHサージが起こった場合でも、その日にプロゲステロンを開始することで、移植日を週内に調整できることが示されています。つまり自然周期の生理的メリットを維持しながら、スケジュールの制約を大きく軽減できる点が臨床的に非常に重要です。
一方で、この研究は後ろ向き研究であり、自然増殖期群の症例数も比較的少ないという限界があります。そのため、この方法を第一選択として位置付けるにはまだエビデンスが十分とは言えません。
本論文が示す最も重要なメッセージは、自然増殖期プロトコールは「自然周期と人工周期の中間に位置する新しい選択肢」であり、特にスケジュール調整が必要な症例において有用である可能性が高いという点です。
現時点では標準治療ではありませんが、日程制約がある症例や自然周期のタイミングが合わない場合には、非常に合理的な戦略となり得ます。今後の前向き研究により、この位置付けがさらに明確になることが期待されます。
出典
Natural proliferative phase frozen embryo transfer—a new approach which may facilitate scheduling without hindering pregnancy outcomes
Human Reproduction, 2024