高齢になると顕微受精か体外受精か | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

高齢なると顕微受精と体外受精のどちらが好ましいでしょうか?担当医からは卵子の防衛機能が下がり精子が2匹入ることもあるし、また卵子の殻が固くなるから顕微授精の方が好ましいと言われました。

 

このようなご質問がありましたのでお答えします。

 

通常卵子に1匹の精子が入るとその段階で卵子にシールド機構が働き2匹目の精子が入らないようにブロックします。それにより多精子受精を防ぐことができます。

高齢になるとこの卵子のシールド機構が弱くなり、精子が2匹、3匹入ることがあります。

もし精子が2匹以上入った場合には異常受精のため染色体の異常が生じ移植することができなくなります。

 

また高齢になると卵子の殻が固くなり精子が入りにくくなることがあります。これは事実として証明されています。

 

その一方顕微授精は卵子に対して非生理的な操作を多く加えます。以前も記事(顕微授精は卵子へストレスをおこしている)にしましたが、これらの非生理的な操作及び現象が受精をしたとしてもその後の胚発育や妊娠率、正児出産率に影響してきます。

 

顕微授精であれば卵子の殻も関係なくなるし、多精子受精も防御できるため、目的を受精とするのであれば顕微授精の方が明らかに受精率は高くなります

ただ目的は受精率ではなく、出産率としなければいけません。

 

高齢であれば修復機能が低下しており、非生理的な操作に対しての適応が難しくなります。

 

これらを総合的に判断して、(過去に授精障害がない+精液所見が問題ないという前提として)、高齢の場合には、卵子への負担を考え、体外受精を選択すべきであると思います。

 

以下の記事も参考にしてください。

 

高齢の場合体外と顕微のどちらが優れている?

 

顕微授精は体外受精よりも出産率が低下する

 

顕微授精よりも体外受精を選ぶべき