顕微授精の適応について

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顕微授精の適応について

 

現在顕微授精は広く用いられている受精方法で、普通の体外受精で受精しない場合に用いられる方法です。安易に用いることは避けるべきでありしっかりと適応を守ることが大切です。

どういうケースが適応になるか具体的に考えてみます。

 

①乏精子症

原精液を調整して、運動性良好精子を回収した後の最終運動精子濃度が低い場合には受精しない可能性が高いため顕微授精を選択します。

 

②前回の体外受精での受精障害

体外受精で全滅する可能性は10~20%と言われています。そして2回目にも再び受精障害になるケースは40%と言われています。

そのため前回の体外受精で受精率が極端に悪い場合には受精障害と考えて次回は顕微授精を選択します。

 

③不動精子のみ

全ての精子が動いていないケースです。(ちなみに、この全てが死滅している場合を死滅精子症と呼びます。)当然動いていなければ自然受精はできないため顕微授精を選択します。

この際に精子が生きているかどうかを判定する方法がHOSTテストと呼ばれている物です。精子を低浸透圧溶液に置き、尻尾が膨らむものが生きている精子、尻尾に変化がないものが死んでいる精子となります。

 

上記のケースは全て「顕微授精の適応がある」と考えられます。

 

 

以下日本産婦人科学会のホームページからの見解です。

 

顕微授精に関する見解

 顕微授精(以下,本法と称する)は,高度な技術を要する不妊症の治療行為であり,その実施に際しては,わが国における倫理的・法的・社会的基盤に十分配慮し,本法の有効性と安全性を評価した上で,これを実施する.本法は,体外受精・胚移植の一環として行われる医療行為であり,その実施に際しては,本学会会告「体外受精・胚移植に関する見解」を踏まえ,さらに以下の点に留意して行う.

1. 本法は,男性不妊や受精障害など,本法以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断される夫婦を対象とする.

2. 本法の実施に当たっては,被実施者夫婦に,本法の内容,問題点,予想される成績について,事前に文書を用いて説明し,了解を得た上で同意を取得し,同意文書を保管する.

3. 本学会会員が本法を行うに当たっては,所定の書式に従って本学会に登録・報告しなければならない.

  

(平成4年1月発表、会長 鈴木雅洲)
(平成18年4月改定、理事長 武谷雄二、倫理委員会委員長 吉村泰典)

高齢だと殻が硬いとか、ついつい不安だから顕微授精を選んでしまう傾向があります。

ただ本当に体外受精では受精しないのでしょうか。

 

これに関して先日の受精着床学会で年齢により体外受精による受精率を調べている演題がありました。

 

35歳以下、36〜39歳、40〜42歳、43歳以上で受精率を調べたところ各群間で有意差を認めませんでした。

 

また周期あたりのキャンセル率(体外受精で正常な受精が得られないこと)も各群間で有意差を認めませんでした。

 

つまり高齢だから顕微授精を選ぶということは正しい判断ではないということになります。

 

顕微授精はあくまで男性因子か受精障害がある場合にのみ選択すべきと言えます。

 

高齢なると顕微授精か体外受精か

 

受精障害に対して

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精液所見が問題ない場合、最初の治療では体外受精を選択すべきです。


顕微授精はあくまで「顕微授精の適応がある場合」にのみ行うべき方法と言えます。


なんとなく不安だからとか、卵子が1個だから、高齢だから、卵子の殻が固そうだから、などという理由で顕微授精を選ぶべきではありません。

 

精液所見が良いにもかかわらず初回の体外受精をして受精率が極端に低い場合、次の治療法としては顕微授精を選ぶべきです。

この場合には顕微授精はその威力を発揮してかなりの効果をもたらします。

 

もし顕微授精でも受精率が低い場合、卵子の活性化処理であるカルシウムイオノフォア処理を行うべきです。カルシウムイオノフォアはそのような受精障害のケースでも高率で受精させることが可能になります。

 

このようにステップを踏んで治療法を当てはめていく事が大切です。

 


このような話をすると、それならば最初から顕微授精をしてかつカルシウムイオノフォアを用いれば無駄なく高率に受精するのでは、という質問をする方がいます。

それはその通りで、受精率を上げるのであればまさにその通りです。

ただ生殖医療では必要な技術を必要な分だけ用いて、決して過剰な事をすべきではないというスタンスが大切です。

心配だからとか、目の前の受精率を求めるのではなく、その子の一生を考え、不必要な技術は使わないという概念が大切であると思います。