この記事は2021年1月16日に公開したものを分かりやすく再編・リニューアルしたものです。
その①からの続きです。
カロリー制限ダイエットで飢餓状態になるとどうなる?
カロリー制限ダイエットでは、個人差はありますが、厳格に行なえば行なうほど身体が飢餓状態になります。
身体は飢餓状態になると、血液中のブドウ糖が少なくなって低血糖になります。
低血糖は生死に関わる生命体最大のストレスです。
その低血糖に対応しようとストレスホルモンが分泌されます。
ストレスホルモンが分泌されると、身体に蓄えられたグリコーゲンや脂肪、タンパク質を分解して、ブドウ糖に変換します。
これを糖新生といいます。
ストレスホルモンの代表がコルチゾールやアドレナリンです。
これらのストレスホルモンは血糖値を上げるホルモンとしても知られています。
理由は糖新生が起こり、血液中にブドウ糖が増えるからです。
脂肪やタンパク質をブドウ糖に変換する理由は、赤血球がブドウ糖しかエネルギーにできないからです。
他にも身体は、脳や筋肉、肝臓、腎臓などブドウ糖を優先的に使う器官が複数あるので、
血中には常に一定量のブドウ糖(体重70kgの人で約4g)を保つ仕組みがあります。[1]
カロリー制限ダイエットでは、実際にコルチゾールが上昇することが確認されています。[2]
ストレスホルモンのコルチゾールのはたらきは?
コルチゾールのはたらきは、いくつかあります。
- 糖新生を行ない血中のブドウ糖を保つ
- 高揚感を感じさせる
- 免疫抑制作用(抗炎症作用)
- 脂肪分解作用と脂肪の異所化
- タンパク質分解作用
断食すると頭が冴えるということを聞いたことはあるでしょうか。
コルチゾールには高揚感を感じさせる作用があり、頭がスッキリした状態になります。
コルチゾールには免疫抑制作用があるので、炎症がある場合はその炎症がストップします。
この場合、免疫のはたらきを無理やりストップさせているだけなので、炎症の火種は残ってしまいます。
そのためカロリー制限ダイエットを行なうと、コルチゾールの作用で気分が高揚したり、炎症が治ったりするので、
あたかも調子が良くなったと錯覚を起こさせてしまいます。
しかし慢性的なコルチゾールの分泌が続くと、いずれかは免疫抑制が破綻し、感染症にかかりやすくなったり、慢性的な病気になるリスクが上がります。
他にも、何をしても疲れが取れないということも起こります。
コルチゾールには脂肪を分解し、脂肪を異所化させる作用を持っています。
コルチゾールによって分解された脂肪は、元の位置には戻りません。
主に内臓脂肪や皮下脂肪となるため、お腹がぽっこりしたり、野牛肩という首や肩に脂肪が蓄積したりします。
ステロイド剤はコルチゾールを薬にしたものですが、主作用に免疫抑制作用、副作用に中心性肥満や野牛肩ががあります。
ステロイド剤やコルチゾール過剰によるクッシング症候群がその1例です。[3]
コルチゾールにはタンパク質分解作用があります。
カロリー制限ダイエットの調査では、骨格筋、肝臓、腎臓の質量減少が確認されています。[4][5]
(おそらく、脂肪とタンパク質の両方が分解されていると思われる)
体内のタンパク質の塊である筋肉が分解されると、サルコペニアやロコモティブシンドロームのリスクが増加します。
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前回紹介した様々な悪影響や、今回紹介した悪影響は、
2年間の25%のカロリー制限試験(アメリカのCALERIE(Comprehensive Assessment of the Long-term Effects of Reducing Intake of Energy)研究プログラム)で、
健康な非肥満者の被験者において、神経系障害、筋骨格系障害、生殖器系障害、皮膚障害が起こり、ヘマトクリット値(血液中に占める赤血球の割合で低いと貧血を示す)の低下や骨量の急激な減少が確認されています。[6]
このようにカロリー制限ダイエットを行なうと、多くの弊害が起こることが想定されますので、僕はカロリー制限をするダイエットはオススメできません。
ファスティングや糖質制限ダイエットも同じ考えです。
そして皮肉なことに、カロリー制限で減少した体重は、カロリー制限をやめるとリバウンドすることが指摘されています。[7][8]
どうしたら健康的にダイエットができるのか。
ダイエットにまつわるコンテンツは無数にありますが、成功に結びつくものは少ないように思います。
僕が見る限り、現代型の食生活は肥満になりやすい三大栄養素の構成になっていると思っています。
古来からの伝統的な食事の内容に、ヒントが隠されています。
僕はダイエットを成功させるには、伝統的な食事を元に、三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質の比率の見直しが最重要と考えています。
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【参考文献】
[1] Four grams of glucose.
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2009 Jan; 296(1): E11–E21.
[2]Systematic review and meta-analysis reveals acutely elevated plasma cortisol following fasting but not less severe calorie restriction.
Stress . 2016;19(2):151-7.
[3] Mechanism, diagnosis, and treatment of cyclic Cushing's syndrome: A review.
Biomed Pharmacother . 2022 Sep:153:113301.
[4] Bosy-Westphal A, 2015. Metabolic adaptation to caloric restriction and subsequent refeeding: the Minnesota starvation experiment revisited.
Am. J. Clin. Nutr 102, 807–819.
[5]Caloric Restriction But Not Exercise-Induced Reductions in Fat Mass Decrease Plasma Triiodothyronine Concentrations: A Randomized Controlled Trial.
Rejuvenation Res. 2008;11:605–609.
[6] Safety of two-year caloric restriction in non-obese healthy individuals.
Oncotarget. 2016 Apr 12; 7(15): 19124–19133.
[7]Reduced rate of energy expenditure as a risk factor for body-weight gain.
N Engl J Med . 1988 Feb 25;318(8):467-72.
[8]Effect of weight loss and regain on adipose tissue distribution, composition of lean mass and resting energy expenditure in young overweight and obese adults.
Int J Obes (Lond) . 2013 Oct;37(10):1371-7.
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