この記事は2021年1月16日に公開したものを分かりやすく再編・リニューアルしたものです。
気温が暖かくなり、半袖でも過ごせる季節になりました。
露出が増えると、どうしても体型が気になるという方はいると思います。
そうなるとダイエットに挑戦したいと考える人は多いのではないでしょうか。
ダイエットで、未だに根強い考えがあるのが、カロリー制限をしたダイエット方法です。
体重を1kg減量するには、およそ7000kcal消費しないといけません。
カロリー制限ダイエットの考え方は、食生活の乱れや運動不足から、たくさんカロリーを摂りすぎてしまったために太った。
だから食べ物から入ってくるカロリーを制限すれば、減量できる。
という考えに基づいています。
1食抜いたり、もう少し食べたいのに我慢したりと、比較的簡単にできることからも、
多くの人が実践したことがあるのではないかと思います。
また体調が良くなったということも、しばしば聞きます。
しかし僕は、カロリー制限ダイエットは危険な方法だと思っています。
個人差はありますが、特に厳格に行なって、長期的に行なうほどに危険が伴います。
その理由を、エビデンスを元に解説していきます。
カロリー制限ダイエットはどうして危険なのか?
僕がカロリー制限ダイエットを危険だと思うのは、主に以下の理由があります。
- 基礎代謝が低下する(省エネモードになる)
- 生命維持に関係ない機能がストップしてしまう
- 飢餓状態になると弊害が起こりやすい
- カロリー制限をやめるとリバウンドしやすい
これらを見ていきましょう。
カロリー制限は、短期的にみると体重減少に効果があります。
しかし長期的に続けると、だんだんとその効果はなくなり、体重減少が緩やかになったり、体重が変わらなくなっていきます。
その理由が、身体がエネルギーを使わないように省エネモードになるからです。[1][2]
数々のカロリー制限ダイエットの調査研究で明らかとなっています。
更に、身体に悪影響が起こります。
次の図をご覧ください。
上の図は基礎代謝、そして身体活動にエネルギーをこうやって使っているよ。
というものを簡易的に図式にしたものです。
基礎代謝というのは、自分の意思でどうにもならない無意識の身体活動です。
心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を一定に保とうとしたり、という生命を維持するために、使うエネルギー代謝のことです。
これを基にして、カロリー制限をするとどうなるでしょうか。
カロリー制限をすると、今まで入ってきたはずのエネルギーが入って来なくなります。
個人差はありますが、厳格に行なえば行なうほど、身体が飢餓状態になります。
それでも生命維持をしなければならないので、
身体に蓄えた脂肪やタンパク質(筋肉や臓器)を分解してエネルギーにします。
カロリー制限で痩せるのは、自分に溜まっている脂肪や筋肉を切り崩しているからです。
しかしその分代償が伴います。
基礎代謝を犠牲(省エネモード)にして、生命維持に関係ない機能をストップしてしまうからです。
実際にカロリー制限ダイエットを行うと、基礎代謝の指標となる甲状腺機能が低下することが確認されています。[3][4][5][6][7]
(甲状腺ホルモンのT3レベルが減少し、TSH(甲状腺刺激ホルモン)とT4が上昇するという典型的な甲状腺機能低下のパターンになります)
更に、カロリー制限ダイエットを行うと、
女性の場合では、不妊や生理不順、生理が止まることがあります。
男性の場合では、前立腺や精子の病気、ED(勃起不全)、性欲の低下などが起こります。
入ってくるはずのエネルギーが少なくなると、生殖に必要なエネルギーを切り捨てて、
生命維持にエネルギーを割り当てるようにするからです。
実際にそれを裏付けるように、
男性の場合、カロリー制限ダイエットでは男性ホルモンと呼ばれているテストステロンの分泌が減少します。[4][8]
また別の実験では、男女ともに性ホルモンが減少することが確認されています。[9]
カロリー制限ダイエットをまとめたレビュー論文でも、性ホルモンが減少することが指摘されています。[10]
それでは、カロリー制限ダイエットで飢餓状態になると、他にはどんなことが起こるのでしょうか。
その②へつづきます。
その②はこちら
【参考文献】
[1] Impact of calorie restriction on energy metabolism in humans.
Exp Gerontol. 2020 May; 133: 110875.
[2]Metabolic and Behavioral Compensations in Response to Caloric Restriction: Implications for the Maintenance of Weight Loss.
PLoS One. 2009; 4(2): e4377.
[3] Contribution of individual organ mass loss to weight loss-associated decline in resting energy expenditure.
Am J Clin Nutr . 2009 Oct;90(4):993-1001.
[4] Bosy-Westphal A, 2015. Metabolic adaptation to caloric restriction and subsequent refeeding: the Minnesota starvation experiment revisited.
Am. J. Clin. Nutr 102, 807–819.
[5]Caloric Restriction But Not Exercise-Induced Reductions in Fat Mass Decrease Plasma Triiodothyronine Concentrations: A Randomized Controlled Trial.
Rejuvenation Res. 2008;11:605–609.
[6]Effect of Long-Term Calorie Restriction with Adequate Protein and Micronutrients on Thyroid Hormones.
J. Clin. Endocrinol. Metab. 2006;91:3232–3235.
[7]Metabolic Slowing and Reduced Oxidative Damage with Sustained Caloric Restriction Support the Rate of Living and Oxidative Damage Theories of Aging. Cell Metab. 2018;27:805–815.e4.
[8]Comprehensive assessment of long-term effects of reducing intake of energy phase 2 study, G. effect of calorie restriction on mood, quality of life, sleep, and sexual function in healthy nonobese adults: the CALERIE 2 randomized clinical trial.
JAMA Intern. Med 176, 743–752.
[9] Long-term effects of calorie restriction on serum sex-hormone concentrations in men.
Aging Cell 9, 236–242.
[10]The Critical Role of Metabolic Pathways in Aging.
Diabetes. 2012 Jun; 61(6): 1315–1322.
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