【技術士対策63】ベンゼン対策 | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●ベンゼンの水質基準超過に関する通知文

厚生労働省は、令和5年6月15日付けで「ガソリンスタンドからのガソリン漏洩に伴うベンゼンの水質基準超過について」を通知しています。

001108110.pdf (mhlw.go.jp)

この内容について解説したいと思います。

 

通知文の本文は、以下の通りです。

3つの段落で構成されています。

 

 先般、北海道室蘭市において、ガソリンスタンドで発生した漏洩により、ガソリンに含まれるベンゼンが水道管に混入したため、近隣住民の利用する水道水から水質基準を超えるベンゼンが検出されたところである。

 ついては「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」(平成15 年10 月10日付け健水発第 1010001号厚生労働省健康局水道課長通知)の第2「水質異常時の対応について」及び「水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方について」(平成28年3月31日付け生食水発0331第2~4号厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課長通知)に基づき、必要な対応を迅速かつ適切に行うとともに、需要者から検査の請求があった場合は水道法第18条に基づき速やかに検査を実施するよう改めてお願いする。

 また、飲料水に係る水質異常などが発生した場合には、「飲料水健康危機管理実施要領」及び「健康危機管理の適正な実施並びに水道施設への被害情報及び水質事故等に関する情報の提供について」(平成25 年10月25日付け健水発1025第1号厚生労働省健康局水道課長通知)に基づき、当課宛てに直ちに連絡することも併せてお願いする。
 

まず、①つ目の段落に着目します。

これは、令和4年度に北海道室蘭市で発生した事故を説明したものです。

ガソリンスタンドからガソリンが漏れていました。

ガソリンが地中に浸透し、埋設されている配水用ポリエチレン管に染み込みました。

ガソリンにはベンゼンが含まれています。このベンゼンが配水管内の水道水に混入しました。

ベンゼンは独特の臭いがあり、近隣の住民が水道局に苦情を申し出ました。

当初、室蘭市は、配水管にベンゼンが浸透しているとは考えていませんでした。

ところが、水質試験を行った結果、配水管内の水のベンゼンが水質基準値(0.01mg/ℓ)を超過し、問題になったものです。

詳細については、以下をご覧ください。

【技術士対策48】ポリエチレン管とベンゼン | 新見一郎 (ameblo.jp)

 

次に、②つ目の段落についてです。

本文中の「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」は、平成15年度の水道基準改正に際して、厚生労働省が通知を行ったものです。

詳細については、以下をご覧ください。

<5461726F2D30373033323989DB92B78E7B8D7392CA926D89FC90B3967B95B6> (mhlw.go.jp)

この通知は、第一から第四で構成されています。第二では、水質異常時の対応について説明されています。

水質異常時の対応は、物質によって異なります。

ベンゼンは、長期的な健康影響を考慮して水質基準に設定されたものです。

このため、水道水中の濃度が水質基準値を超えた場合、直ちに原因究明を行い、基準値以下になるよう所要の低減化対策を実施する必要があります

基準値の超過が継続することが見込まれる場合は、所要の対応を実施します。

所要の対応については、「別添3」に述べられています。

具体的には、水道水中のベンゼンの濃度が水質基準値を超過してこの状況が続く場合は、給水の緊急停止措置を行う必要があります。

 

これまでの話をまとめると、

ベンゼンが水質基準値を超過した場合、原水由来で発生したものであれば浄水場において活性炭処理等を行い、浄水場以降が原因であれば管路の排水作業等の措置を講じることになります。

こうした措置を行っても水質が改善しない場合、給水停止を行う必要があります。

給水停止は、配水池の流出弁の閉止、配水管の仕切弁の閉止又は各給水管の止水栓の閉止を行い、水道水の供給を停止します。

同時に、水の使用が危険であることを使用者等に周知する必要があるわけです。

 

一方、本文では「水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方について」に言及しています。

これは、平成28年度、厚生労働省が通知したものです。

具体的には、一部物質については水質基準を超過したとしても、水道水の摂取を控えるよう広報することにより、給水を継続することができることにしたものです。

一部物質は、長期的な健康影響をもとに水質基準が設定されているもので、ベンゼンもこれに該当します。

摂取制限を伴う給水継続を行う際、水利用者に対して、水道水の飲用不可を迅速・適切に周知しなければならないです。

このため、水道事業者等は、ビラ、エリアメール・緊急速報メール、ウェブ、連絡網、テレビ(データ放送)、ラジオ、広報車、防災無線等のうち、複数の方法を用いて広報する必要があります。

また、水道水が飲用できない事態が生じうることを、日頃から周知することが重要であることに言及しています。

 

摂取制限の詳細については、以下をご覧ください。

Microsoft Word - (水道行政担当部局宛)水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方について (mhlw.go.jp)


これまでの話をまとめると、

ベンゼンが水質基準値を超過した場合、給水停止を行う方法もありますが、社会的な影響を勘案すると、給水を継続するのが現実的であり、摂取制限という方法を選択することになるわけです。

 

③つ目の段落では、事故が発生した際は、厚生労働省に連絡することに言及しています。

健康危機管理の適正な実施並びに水道施設への被害情報及び水質事故等に関する情報の提供について」は、以下をご覧ください。

Microsoft Word - 【通知案トレ】(都道府県・市・特別区・大臣認可)1025 (mhlw.go.jp)

 

 

●配水管の埋設

この通知文には、室蘭市における対応の経緯、配水管の埋設及び情報連絡体制も示されています。

このうち、配水管の埋設については以下の通りです。

2つことに言及しています。

 

 配水管の埋設については、水道施設の技術的基準を定める省令の第7条第12号ロに規定するとおり、埋設場所の諸条件に応じて適切な管の種類を使用すること。

 なお、室蘭市の事例のように、ガソリン等の漏洩が予期せず生じる場合もあるため、溶剤浸透防護スリーブ等の防護措置や埋設場所の変更等について、必要に応じ、検討されたい。

 

①つ目の段核で、「水道施設の技術的基準を定める省令」の第7条第12号ロ について言及しています。

内容は、以下の通りです。

 

第七条 配水施設は、次に掲げる要件を備えるものでなければならない。

十二 配水管は、次に掲げる要件を備えること。

ロ 配水管を埋設する場合にあっては、埋設場所の諸条件に応じて、適切な管の種類及び伸縮継手が使用されていること。

 

要するに、適切な管種選定をする必要があるわけです。

 

次に②つ目の段落では、溶剤浸透防護スリーブ等の防護措置や埋設場所の変更等について言及しています。

溶剤浸透防護スリーブは、管路外面に防護シートを巻きつけるものです。

特殊な加工が施されていて、有機溶剤が浸透しません。

 

話をまとめると、土壌に有機溶剤が浸透している場合、配水管布設時の対応は以下の3点です。

 

❶金属管を使用する(ポリエチレン管や塩化ビニル管を使用しない)。

❷溶剤浸透防護スリーブを巻く(ポリエチレン管や塩化ビニル管を使用する)

❸布設場所を変更する(有機溶剤等の影響がない場所でポリエチレン管や塩化ビニル管を使用する)

 

技術士試験対策としては、ベンゼン対策において、溶剤浸透防護スリーブという用語を使うことが重要ですね。

 

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