R5技術士予想問題の解答例[Q11 管路の耐震化] | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

Q11 管路の耐震化 1200字

管路の耐震化計画を策定する場合、①耐震化の優先順位の決定手順とその内容、②管種を選定する際の留意点、工夫を要する点を含めて述べた上で、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

 

【解答例】

1 管路の耐震化の優先順位の決定手順

管路の耐震化は布設替えが必要になる。このため、以下の(1)から(4)の手順で優先順位を決定する。

(1)基本情報の整理

①管路(口径、材質、継手種類、布設年度、導・送・配水機能、延長、附属設備、水質異常や漏水事故の履歴等)、②布設環境(ポリエチレンスリーブの有無、土壌の腐食性、盛土や埋立土の有無等)、③被害復旧の困難性(バックアップの有無、仮配管の困難性)、④供給状況(断水人口、重要給水施設の有無とその規模等)、⑤想定地震(震源の位置、震度、加速度、発生周期、液状化危険度等)等の情報を整理する。

(2)管路の機能の評価

既設管路の耐震性や老朽度、布設環境、想定地震に関する情報に基づき、地震発生時に既設管路が漏水・折損する可能性を見極める。具体的には、想定地震における管路の断水被害シミュレーションを実施し、管路の機能を評価する。

(3)管路の重要性の評価

管路の口径や導・送・配水機能、被害復旧の困難性、供給状況に関する情報の情報に基づき、地震発生時に断水することによる影響を見極め、管路の重要性を評価する。

(4)耐震化の優先順位の決定

管路の機能と重要性の評価結果を総合的に勘案して、管路の耐震化に関する優先順位を決定する。具体的には、地震発生時の管路の直接的な被害額、断水による被害額、道路陥没等の二次災害の被害額、応急復旧・応急給水にかかる費用等を算定し、これを耐震化による効果と位置付ける。その上で、管路の耐震化にかかる費用を算定し、これを耐震化の費用とする。これらから路線毎の費用対効果を算定し、耐震化の優先順位を見極める。

2 管種選定における留意点

管種は、安全性、施工性、耐震性、布設環境等を考慮して、最適なものを選定する。

安全性の観点から、内圧的には、想定される最大静水圧及び水撃圧に耐えうる強度を備え、外圧的には、土圧、路面荷重、地震力等に耐えうる強度を有した管種を選定する。

施工性の観点から、作業時間に制限がある場合、継手が容易な管種を選定する。

耐震性の観点から、埋設後の地盤変動,地震時を想定した管種を選定する。具体的には、離脱防止機構付き継手のダクタイル鋳鉄管、溶接継手の鋼管、熱融着継手の水道配水用ポリエチレン管等の中から適切なものを選定する。

布設環境を考慮し、腐食性の強い土壌、有機溶剤の漏出リスク、海水や地下水の影響等が予想される場合、耐食性、耐薬品性の高い管種を選定する。

3 関係者との調整方策

関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。

 

【出題者の感想】

管路の耐震化の優先順位と管種選定に関する問題です。

かなり詰め込み過ぎの難問になってしまいました。

「重要給水施設管路の耐震化計画策定の手引き」、「耐震化計画策定指針」、「水道施設更新指針」、「水道施設設計指針」、「水道事業の費用対効果分析マニュアル」等、いろいろな文献を読みながら解答例を作ることになり、かなり苦労しました。

耐震化の優先順位は、「重要給水施設管路の耐震化計画策定の手引き」がメインになっています。ただし、管路更新にあわせた耐震化という意味では、「水道施設更新指針」の方向性を加味したものになっています。

管種選定は、「水道施設設計指針」がメインになっています。これに、3種類の耐震管の情報を付加したものです。

こんなややこしい問題が出題されるとは思いませんし、こうした問題の解答例を2枚でまとめるのは無理がありましたね。

このため、言葉足らずで、解答例も分かりにくいになっていると思います。ご了承ください。

ただし、管種選定を一枚にまとめる問題は出題される可能性があります。

管路の耐震化の優先順位については、色々と考える必要があります。

この問題が出題される可能性は極めて低いですが、見識の幅をひろげるには、悪くはない問題だと思っています。

 

 

【上述以外で勉強するべき事柄】

・水道施設の耐震化計画の策定

 

●予想問題の解答例

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●技術士の試験対策のテキスト

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●二次試験の過去問と解答例

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