はなパフ Page-turners 4
相変わらずのスローペースです。今週は珍しく火曜が平日休なので、久しぶりに本の話でも(笑)。なんやかんやと家事や仕事に追われてるせいか、最近は小説ものをとんと読まなくなってしまったなあ。よみふけってしまうと、たとえば晩御飯のしたくが飛んでしまったりする。長編ものは読むのもすごく気力つかうし。元気なときでないとなかなかしんどいんですよね。トシのせいか?このごろは、すぐにとめられるようなエッセイものなどばかり。マハさんや池井戸さんの文庫本がつんだままなんだけど・・・(;^_^A●生物と無生物のあいだ / 福岡 伸一読書メーターで気になっていた本。「文系の香りがする理系の本」と書いてあったので、だめもとで挑戦してみようかなと。文系の包み紙の下は、まるっきし、ガチ理系の話でしたわ(笑)。分子生物学が専門の著者が語るのは、DNAをはじめとする「生命の根っこ」についてのさまざまなセオリー。二重らせんで有名なこのDNA、二十世紀生命科学の一大発見であるのだけど、考えてみれば人間がこの不思議な存在を知ったのはまさに「ほんの5,60年まえのこと」なんだよね。まだまだ人間は生命の神秘についてしらないことが多いのだわ。著者は化学の真理を追い求める歴代の科学者たちにもスポットをあてる。気難しくてとっつきにくいイメージがある科学者たちだけど当たり前というか、とても人間くさいところがあって、論文発表の遅い早いで運命が変わってしまう話はなんだか去年のiPS騒動を思い起こさせる感じでした・・・。日本で有名な、というか、小学生が読む偉人物語に必ずでてくるあの野口英世先生もこの本ではなんだかザンネンなひとだと書いてあり、研究の評価って難しいですね。詩的な文章でとっつきやすい面もありながら、私には読みこななかった本の一つとなりました。科学が苦手な私、生物科学の結晶であるニンゲンである私。●サリンジャーと過ごした日々 / ジョアンナ・ラコフ原題は ”My Salinger Year”、アメリカの作家J ・D ・サリンジャーをめぐる小説、というより回顧録といった感じでしょうか。文学部出身の女子学生がNYで作家をマネジメントするエージェント会社に就職、そこで体験した実話をもとに、とある一年間の彼女の奮闘ぶりが描かれています。現代アメリカ文学のなかで異彩を放つ作家、サリンジャー。有名な「ライ麦畑でつかまえて」や「フラニーとゾーイ」などを発表し一時期一世を風靡した彼は、突然文壇から姿を消し、長い長い隠遁生活を送ります。時は90年代、若い彼女にとってサリンジャーは過去の作家、名前しか知らなかった彼から電話がかかってきたときから少し気難しい老作家との交流が始まります。実は、私、大学の卒論がサリンジャーでした。ライ麦畑のほうではなくて、グラースサーガのほうなんですが。だから、すごく懐かしい、不思議な感覚のなかで読み終えました。あのころ、わたしはサリンジャーの作品から、「アメリカンライフ」を感じていたように思います。サリンジャー先生はどんなひとだったんだろう?当時、そう思いながら、タイプライターをたたいてました。(ああ、あのときはまだ電動があまりなかったときで、重いキーボードにあくせくしていたわあ、懐かしのオリベッティよ)これはお話のなかでも紹介されていたのですが、サリンジャーが隠居していたときにも版元あてにそれこそ世界中の読者からファンレターがきていたそうです。日本からも多かったようですね。でも、サリンジャーは決して返事はかかないのでご容赦くださいとのまさに事務的な手紙をスタッフが返していたそうです。切々と語るファンレターに主人公はつい、いつもの紋切り文章ではなく、自分の意見を添えて返送し、かえって相手を傷つけてしまったりします。90年代ながらまだ古いオフィス、パソコンも携帯もない仕事場でアイ・ビー・エムのタイプライターに悪戦苦闘している彼女の仕事ぶりが紙面から伝わってきます。そして、あまりにも完璧主義なために以前の作品を再出版する話も自分でだめにしてしまうサリンジャー。気難しい老作家の寂しげで憂鬱な瞳が見えてきそうでした。エピローグで、後年自身も作家となった主人公のもとにサリンジャーが亡くなったという一報が入り、感慨にふけるところがあります。いつしか、自分の一部となっていたサリンジャー。自分の一部になっているものが永遠になくなったと気づいたときのあの感覚・・・。いろいろな感覚を思い出させてくれた、私にとってはとてもセンチメンタルな作品でした。●紙つなげ!彼らが本の紙を造っている / 佐々 涼子「エンジェルフライト」につづいての佐々さんもの。東日本大震災で壊滅的な打撃をうけた、宮城の日本製紙・石巻工場の再生をテーマにしたドキュメンタリーです。なんといってもおどろいたのは、日本製紙という一社だけで、この国の出版用紙の4割を担っているということ。とくにこの主力工場が壊滅状態になったということはほんとはものすごく恐ろしいことがおこっていたのだな、と。震災のあとも雑誌や文庫本は普通に売っていたよね?私たちの知らないところで、どれだけの努力と奮闘があったかを私たちはちゃんと知らないといけないなと強く思いました。知らないといけないのは、震災当時の現状も。マスコミでは伝えきれてない犯罪があったことも。津波に襲われた工場から、40人もの遺体がみつかったことも。紙が作れないから、同業他社が協力して納期を守り切ったことも。村上春樹の「多崎つくる」も、「ワンピース」や「NARUTO」のコミック本も、「Can Cam」のような女性誌も、この石巻工場が担っていた。私たちはもっともっと、本をつくっているひとのことを知らないと。これを読むと自分が持っている本たちがすごくいとおしくなりますよ。ただひとつ、前作でもおもったんだけど、作者さんがちょっと出すぎる感じがするかなあ。もうちょっと引いたほうが読みやすい気がします。勝手言ってゴメンナサイよ(笑)。最後に、私は紙の本、大好きですよ~~~~。