制限速度20~30km/h
Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

商法その④

その④!これでひと段落するよんヽ(;´ω`)ノ



◆ 定款による株式譲渡の制限


我が国には小規模経営の株式会社が多数存在し、会社の業務に理解のないものによって会社の経営がゆがめられる虞から、好ましくないものの会社への参加を拒否するために、株式譲渡に一定の制限を加えることが認められている。それが、定款による株式譲渡の制限である。


しかしながらその制限は、単元未満株主は議決権をもたないため、そういう場合には必要ないのではないかという疑問がある。しかし、単元未満株式の譲渡に定款の譲渡制限がなければ、会社にとって好ましくない者にもそれが譲渡されてしまうことになるので、やはり特段の定めがない限り、単元未満株式にも譲渡制限の決まりが及ぶと考える。


では、株式に譲渡担保を設定する場合にも、定款による株式譲渡制限の適用があるのだろうか?<判例>は、株式を譲渡担保にすることは株式の譲渡にあたるとした。ただし、譲渡担保を設定することは「譲渡」にはあたらないが、譲渡担保が実行されれば、それは「譲渡」となるため、株式会社の承認が必要となる。


では、承認を欠く状態で譲渡が行われたら、会社に対する関係では無効であるとしても、譲渡の当事者間においてはその効力はどうなるのか?


譲渡の承認請求は譲受人からもすることができると137条138条にはあるので、これは当事者間においては譲渡が有効であることを前提としていると考えられる。


では、承認がない場合の譲渡について、会社はあいかわらず譲り渡し人を株主として取り扱う必要があるのか?
<判例>は、譲り渡し人も譲受人も、株主として取り扱うとしている。もし譲り渡し人を株主として扱わなければ、会社は譲渡の承認をしていないことから、意図的に株主としての権利の空白状態を作ることになるためである。
また余談であるが、株式譲渡の制限は、会社と株主の間の契約でも有効である。



◆ 名義書換をめぐって


株券占有者が相続によって株式を取得したとして、株式の名義書換を請求してきた場合、会社はそのものが相続人であるかを調査するために名義書換を拒むことができだろうか。128条によれば、株式譲渡は株券の交付によってなされるため、株券の占有者が権利者である蓋然性がたかいが、これは通常の譲渡を前提とした規定であると考える。


この点相続のような包括承継の場合には、会社は調査という主張を押し通すことができると考える。



◆ 名義書換がすんでいない株主


130条によれば、株式を譲り受けても名義書換をしていなければ権利の行使はできない。では、会社側から名義書換がおわってない譲受人を株主と認めて権利行使することはできるのか?


<判例>によれば、名義書換がなければ、譲受人は会社に「対抗できない」とするのが130条だが、逆に会社から移転があったことを主張するのをさまたげるものではないとする。なぜならその危険負担は、会社が行うからである。


では、会社が不当に名義書換の拒絶をした場合、民法709条に基づく損害賠償請求や、同415条の債務不履行責任の追及などができるが、他にはどのような手段があるか?


会社は譲受人に名義書換をしなかった場合の不利益を負わせているのに、自分の任務懈怠をたなにあげておくのは、信義誠実の原則に反する。


したがってそのような場合、<判例>は、譲受人は名義書換なくして会社にたいして株主たる地位を主張し、その権利を行使することができるとした。



◆ 失念株について


失念株とは、名義の書き換えをしていなかったために、会社から剰余金の配当を受けられなかったような場合の株式である。


例えば株式譲渡があったとき、譲受人が名義書換を失念していたために、株主割当による募集株式の発行がなされて、譲り渡し人が引き受けと払込をしてしまった場合、譲受人は「それは私の権利だ」と主張することはできないのだろうか?


まず、譲渡当事者間において、株式の割り当てを受ける権利はどちらのものになるのだろうか?


<判例>では、名義書換を失念している間に株主割当による募集株式の発行がなされた場合、その権利は譲渡人に帰属するものとする。なぜなら、株式の割り当てを受ける権利を与えるかどうかは、会社が任意に決定するものであるからであり、株式が譲渡されたからといって、株式の割り当てを受ける権利もそれに随伴するものではないためである。



◆ 従業員持ち株制度


これは、厚生費類似のものとみとめる範囲で、従業員の福祉増進のためのものとして適法とされる。また株主平等原則との関連では、これは従業員たる地位に基づいて与えられるものであるからよいとされる。また、従業員の持ち株制度で、従業員に奨励金が支払われることに関して<判例>は、従業員の福利厚生のためであるとして適法とした。


また従業員の持ち株は、退会時に一定価格で株式を譲渡すべき合意がなされている場合が多いが、これは株式譲渡自由の原則に反しないかということができないか?


この点<判例>では、退会時に株式を譲渡する合意は、会社と株主間でなされたものであっても、原則有効であるとする。なぜなら個別的な意思にかかわらず効力を発する定款の制限とは違って、これは契約によるものであるからである。



◆ 株式譲渡の自由とその制限について述べよ


127条によると、株式の譲渡は自由なのが原則である。


なぜなら、退社制度のない株式会社においては、投下資本を回収する手段が必要だし、たとえ譲渡されても、株式会社における株主は個性が問題とならないので、譲渡には一定の許容性が生まれてくるからである。


しかし常に株式譲渡の自由を認めるということには、技術的にも政策的にも問題がたくさんある。


したがって法律による制限というものが必要であり、権利株譲渡は制限されている。権利株というのは、会社が成立する前、もしくは新株が発行されるまえの株式の引受人の地位のことであるが、この権利株の譲渡を制限する趣旨は、会社の設立や新株発行事務を円滑に行うためである。これは、当事者間において勝手に譲渡をするのは可能であり、またそれに対して会社の側から自発的に譲渡の効力を認めることは、会社が責任を負うことを覚悟でやっているので可能であるとする。


そして、株券発行前の譲渡制限については128条に定めがあり、これは会社の株券発行事務を円滑になすための趣旨をもつ。その効果は、権利株の譲渡制限といっしょで、当事者間譲渡は可能であり、会社の側から自発的に譲渡の効力を認めることができるとする。


そして自己株式の取得制限だが、自己株式の取得は原則として許容される。


しかし無制限にこれを許容することは、実質的な払い戻しと同じになってしまい、資本維持の原則や、株主平等原則などに反してしまう。したがって、法は461条によって財源の規制を設けたり、株主が平等に売却する機会を得られるような手続きを要求したりして、そのような弊害を防止している。


また、子会社による親会社の株式の取得制限というものがある。


また、定款による制限について。譲渡自由の原則がみとめられるのは、多数の出資者の存在を前提とする大規模な会社であって、小規模で閉鎖的な会社においては、第三者の経営に対する介入を防止する必要が、企業の理解という観点が重要視される以上、非常に強い。したがって、定款による譲渡制限が可能とされており、例外として当事者間では譲渡が有効だが、ただし会社に対して対抗できないと解する。


そして最後に、契約による制限というものがある。



◆ 株式をいじくりたおす


178条によると、株式の消却とは、会社が有する自己株式を絶対的に消滅させる行為である。また180条によると、株式の併合とは、数個の株式をあわせてそれよりも少数の株式とすることをいう。また183条によれば、株式分割とは、株式を再分化して従来よりも多数の株式にすることをいう。



◆ 単元株制度とは?


単元株制度とは、定款で定めた一定数の株式をまとめたものを一単元とし、一単元の株式について一個の議決権を与えるが、単元株式数に満たない株式には議決権を与えないこととする制度であると188条にある。



◆ 新株予約権について


新株予約権というのは、株式会社に対して行使することによって当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいうと、2条21項に書いてある。


新株予約権の効用としては、まず買収者の持ち株比率を下げることによる、買収防衛作の手段として用いられる部分がある。そしてまた、資金調達としての機能がある。


そして、ストックオプションとしての機能もある。これはインセンティブ報酬として、一定の期間内にあらかじめ定められた価格で会社から株式を取得できる権利のことである。だから、業績が上昇したら、それだけ得をするというわけで、インセンティブを目指して皆努力するだろうということである。


また株式会社は、募集新株予約権を発行する場合、238条により、金銭の払い込みはいらないとすることができる。



◆ 募集株式の発行


募集株式の発行等とは、会社設立後に株式引受人を募集することによって株式を発行すること、および自己株式を処分することをいう。


ただし、募集株式の発行等は、すでに会社に対して密接な関係を有している旧株主の地位に影響を与えるため、旧株主が持ち株比率の低下によって経済的な損失を受ける虞がある。


そこで公開会社の場合には、202条によって、法は旧株主の保護よりも、募集株式の発行による資金調達の迅速性を重視して、株主に割り当てを受ける権利を与えるかいなかは取締役会の決定にゆだねている。


また公開会社でない場合は、募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要とされており、その限度で旧株主の持ち株比率維持の利益は保護される。


では第三者に対して、「特に有利な金額」で募集株式の発行をする場合、株主総会の特別決議がひつようであるが、「特に有利な金額」とは何か?


旧株主を保護する視点からは新株主にも旧株主と同じ資金寄与をすべきだろうが、保護よりも資金調達の目的達成というのも大事である。また、払込金額を決定してから募集株式を発行するまでに株価が下落する場合もありえる。


したがって、「特に有利な金額」とは、通常募集株式の発行をする場合に払込金額とするべき公正な金額に比べて、本当に特に有利な金額のことをいう。だから、時価より10パーセント安いくらいでは、特に有利であるとはいわない。


また株価が高騰している場合でも、原則として市場価値を基準とすべきであるとするのが<判例>である。


また、募集株式の発行の差し止め処分を無視して募集株式の発行がなされた場合、その効力は無効となる。また、買収を考える者の持ち株比率を定価させるために募集株式の発行をすることは、210条の「著しく不公正な方法」による発行であるとされる。そして「著しく不公正な方法」であると認められれば、募集株式の発行事態は有効だが、423条で取締役の責任が生じる。


また公開会社において、公示をせずに募集株式を発行した場合、株主に発行差し止め請求をさせる210条の権利を害するので、原則無効だが、差し止め事由がない場合には、株主の利益が奪われたとはいえないため無効にはならない。

会社法その③

その③、でありマス(;´Д`)ノ



◆ 会社の不成立


会社の不成立とは、設立手続きが設立登記に至る前に途中で挫折し、会社が法律上も事実上も存在するに至らなかった場合のことをいう。


では、会社が不成立の場合、発起人は設立に関してした行為について連帯責任を負い、設立費用も発起人の負担になると58条には定められているが、創立総会で発起人の意図に反して設立は意思の決議がなされた場合のように、もっぱら株式の引受人側に不成立の原因がある場合にはどうだろうか?


56条が発起人に全部の責任を負わせたのは、株式引受人を保護するために、特に政策的に株式の引受人を第三者と同様に扱ったためと考えられる。


とすれば、株式の引受人に不成立の原因がある場合には、株式引受人を保護する必要はなく、56条後段の適用はないとするのが相当である。



◆ 株主の権利義務


自益権。これは、株主が会社から経済的な利益を受けることを目的とする権利であり、105条の剰余金配当請求権や、残余財産分配請求権などがある。


そして、共益権。これは、株主が会社の運営に参加し、経営に参加することを目的とする権利である。例えば、株主総会における議決権や、それ以外の監督是正権などがある。


また、単独株主権と少数株主権で違いがある。単独株主権とは、1株の株主でも行使できる権利であり、少数株主権というのは、総株主の議決権の一定割合以上、または一定数以上の議決権を有する株主のみが行使できる権利である。


また、固有権と非固有権。固有権とは、株主の同意がないと奪うことのできない権利であるのに対し、非固有権というのは、株主総会の決議によって奪うことのできる権利のことである。



◆ いろんな株式


107条の譲渡制限株式とは、株式譲渡に株式会社の承認を有する株式のことである。本来株式は他人に自由に譲渡できるのが原則であると127条にはあるが、特別な定めをすることができる。


そして、取得請求権つき株式とは、株主が会社に対して株式の取得を請求することができる株式である。


また、取得条項つき株式とは、会社が一定の自由を満たした場合に、当該株式を取得できる株式である。



◆ 種類株式の発行


種類株式を発行するには、定款の定めと登記がいる。普通は株主総会の特別決議で決めるが、それによって誰か株主が損害を被る場合は、種類株主総会の特別決議がいる。


種類株式としては、剰余金の配当に関する種類株式や、残余財産の分配に関する種類株式、株主総会において議決権を行使することができる事項に関する種類株式である、議決権制限種類株式などがある。他にも、譲渡制限種類株式、取得請求権種類株式、取得条項つき種類株式、全部取得条項つき種類株式、株主総会などにおける拒否権つき種類株式などがある。


また、公開会社ではない会社、すなわち発行株式の全部が譲渡制限株式である株式会社の場合、剰余金の配当や株主総会における議決権などについて、株主ごとに異なる取扱を行うことができることを定款に定めることができる。


これは、公開会社でない株式会社は、株主の異動が少なく株主相互間が密接な関係であることが多いため、定款自治をより広く認めようとする趣旨のものである。



◆ 株主平等の原則


株主平等原則とは、株式会社は株主をそのもっている株式の内容や数に応じて、平等に取り扱わなければならないという原則のことをいうと、109条にある。株式は均等な割合単位だから、権利も均等であるべきというのがその趣旨である。


したがって株式の数が異なる場合には、株式数に応じて平等に取り扱わなければならないが、種類株式の場合は別である。


また他の例外として、剰余金配当、残余財産分配、議決権に関しては、定款で株主ごとに異なる取扱ができる。

また共益権の行使に関して、少数株主権がある。また後に後述するが、単元株制度がある。


では、会社が一般の株主には無配としながら、特定の大株主には中元やお歳暮の名目で金銭を贈与した場合、株主平等原則に反するのではないか?<判例>は、大株主を特別有利に待遇するものとして無効にした。


では、電鉄会社や興行会社などで、優待乗車券、優待入場券などをあたえる場合があるが、こうした株主優待制度は、株主の平等原則に反するのではないか?


株主優待制度の場合、議決権や利益配当請求権のような、法律上強く平等が要求されている権利が問題となっているのだから、そこまで厳格であるひつようはなく、自社の製品や施設の宣伝などの正当目的があり、目的達成のための合理性があれば、株主優待制度は株主平等の原則に反することはないと理解できる。


また<判例>は、総会において従業員株主を別の入り口から入場させ前方の席に座らせたことについて、そのようにする合理的な理由はないが、それによって誰かの法的利益が侵害されてはいないので別段問題はないとした。


株主平等原則違反の効果は、これに反する決議や定款は、全て無効とかす。



◆ 株主の権利の濫用が問題となるのは?


株主による権利の濫用が問題となるのは、株主であることと関係のない純個人的利益を追求することによって会社の利益を追求する場合と考えることができる。


では、議決権の行使はどうか?議決権の行使に関しては、原則株主は自己のために行使できるのだが、その判断基準として<判例>は、株式を高く買い取らせる目的の一環で、会社のっとりのための議決権の行使は権利の濫用とした。


また<判例>は、会計帳簿閲覧謄写権についても、株式の譲渡にあたってその株式の適正な価格を知る目的でした場合は、その目的は適正であるとしてその権利の行使は濫用ではないとした。


では、株主総会で以下の定款変更がなされる場合の問題点を指摘せよ。


①株式譲渡は株主総会の承認を必要とする
会社法では、譲渡について会社の承認を要する譲渡制限株式を発行することができる


②ある一定株以上の株主は、自社製品を定価の4割引で入手できる。

合理的な必要性が欠け、さらに株主平等原則に反するので認められない。


③ある年以降に発行する株式に対して行う利益配当は、それまでの2分の1とする。
公開会社であれば許されないが、未公開会社であれば可能である。



◆ 株券の発行について


会社が株券を作ったあと株主に発想したが、運送途中で株券が紛失し善意の第三者が善意で手にいれた場合、善意取得はなるのだろうか?


<判例>では、会社が株券を作成した、これを株主に交付したときに株券の効力が生じるとしたので、事案においては善意取得はないと考えられる。



◆ 株主名簿


株主名簿とは、株主および株券に関する事項をあきらかにするために、会社法の規定によって作成することを必要とする帳簿のことである。


その内容は変動しやすいので、124条によって、基準日が設定される。また基準日がすぎたあとに株式を譲渡されたものは、基準日の株主の権利を害することになるので、議決権を行使することはできないとされる。また株主名簿は本店に備え置かなければならないし、また閲覧や謄写などは請求の理由がいるし、場合によっては、株式会社はそれを拒むこともできる。



◆ 株式の譲渡とは?


株式の譲渡とは、法律行為によって株主の地位を移転することをいう。株主の資格の一切が移転するわけである。基本的に株主が投下資本を回収するには、この株式譲渡による。


したがってこれは、127条によって株式譲渡自由の原則として保障される。


株券譲渡の方法としては、株券発行会社としては、譲渡の効力の発生の要件は株券の交付である。株券の占有者は適法な所持人と推定されるので、その占有者から株券を交付されたものは、悪意重過失でない限り善意取得する。


また株券不発行会社については、当事者間の意思表示で譲渡ができるとする。



◆ 時期による株式譲渡の制限


権利株とは会社成立前の株式引受人の立場である。


権利株の譲渡は、会社との間では対抗できないが、<判例>は、当事者間の譲渡は有効であるとする。では、権利株の譲渡を会社が効果として認めることができるかについては、もともと設立手続きや募集株式の発行を円滑にすることが目的なので、進んで譲渡の効力を会社が認めることはできると考える。株券発行前の株式譲渡についても同様であろう。


では、会社が意図的に株券の発行を遅らせていた場合にはどうだろうか?<判例>は、株券発行前の株式譲渡であってもその効力を否定できないとした。



◆ 自己株式の保有に関して


自己株式の保有とは、株式会社が自社株を取得することである。


これは、実質的に出資を払い戻したことになるので資本維持の原則に反し、さらに一部の買主から優先的に買い取る場合があるので株主平等原則に反すること、そして、取締役が自己の地位の強化のために使うという虞があるし、株価の操作やインサイダー取引に利用されたりするかもしれない。


したがって、自己株式を取得できる場合には、いくつもの制限があるが、それは155条に列挙されている。また会社は、自己株式には議決権などの共益権は認められないとされている。そして、剰余金配当請求権や、残余財産分配請求権などの自益権も否定されている。


財源規制に違反して自己株式が取得された場合には、その取得は有効としたうえで、損害は株主、取締役などに支払い義務を負わせることで解決するが、株主総会を経ずに、勝手に取締役会のみで、公開買い付けの方法で自己株式を取得した場合はどうなるのか?


原則無効であるが、自己株式の取得が第三者の名義でなされた場合には、常に向こうとすれば取引の安全を害することになるので、譲り渡し人が悪意、つまり会社が自分の名をかたって自己株式の取得をやっているな、ということを知ってする場合には、無効となると考える。


では、無効の権利者は誰だろうか?自己株式取得の禁止の規定によって保護されるべきなのは、一般の投資家や株主、会社を含めた会社側の人間である。それに対して、譲渡人は相手が誰であろうと株式を譲渡することが目的なので、譲渡人は向こうの主張権利者とはなりえないと考える。


自己株式取得をするにしても、例えば無償取得の場合のように、実質的に何の弊害もない場合には、株主総会の決議などは省略できる。ではそれ以外に、会社の事業の継続や安定など、会社の利益を守るために緊急避難的に株主総会の決議を省略してもいいものだろうか?


しかしこれでは、取締役による権利の濫用のおそれがあるため、弊害が生じないことが明らかな場合だけに限ると考えられる。


会社法その②

会社法、その②でありマス(-^□^-)



◆ 法人資格否定の法理


友達に借金があるものが、財産の強制執行を避けるために、全財産を出資して会社を設立するなどした場合など、違法な目的達成のためや、法人格が形骸化している場合に、会社に法人格を認めていいのだろうか。


そもそも法人格の付与というのは、社会的に実際に存在する団体に対して、その価値を評価してなされる立法政策である。


だとすれば、この立法の目的を超えて法人格が不法に利用されている場合、つまり法人格が法の適用を回避するために濫用されている場合、法人格が形骸化している場合には、その限度で法人格を否定することが、民法1条3項の趣旨からして妥当であるとするのが、<判例>の立場である。


では、山形が所有する建物を借りた太田が、その一階で電気販売店を営み、二階に住んでいたという事案において、その電気販売店が実質的には太田の個人企業であり、税金対策上会社形態にしたにすぎない場合、山形が太田に建物の明け渡し請求をして和解が成立したが、その後太田が、会社の使用している部分は明け渡さないといった場合、どうなるのだろうか。


<判例>は、会社とその背後の社員が実質的に同一であり、その取引が会社としてなされたのか個人としてなされたのか判別がつかないような場合には、会社名義でなされた取引であっても個人の行為であるとみとめるし、また個人名義でなされた行為であっても、会社法504条に基づいて、直ちに相手方はその行為を会社の行為であるとすることができると判示した。


つまり、法人格というものを濫用しているといえるためには、会社の背後にあって支配するものが、違法または不当な目的のために会社の法人格を利用しているといえるような状態がなくてはならない。


では、倒産の危機に瀕した会社が、強制執行を免除され、財産を隠匿するために商号を変更し、旧会社との間に同一商号の新会社に財産を移転して、あいかわらず同一の営業を継続したため、債権者が新会社に対して履行の請求をした事案について、<判例>はどのように判断したのだろうか?


<判例>は、新会社の設立は、旧会社の債務を免脱する目的で設立されているので、相手方は新しい会社でも旧い会社のいずれにも責任追及ができるとした。



◆ 会社の区分


大会社とは資本金が5億円以上か、もしくは採集事業年度の貸借対照表に負債額が200億以上である会社のことである。


そして、公開会社とは、発行する全部または一部の株式の譲渡について、株式会社の承認がいらないと定款に定めた会社である。


また親会社とは、株式会社を子会社とする会社のことであり、またその会社の経営を支配する法人として法務省令で定めるものである。そして、子会社とは、親会社に議決権の過半数を握られている会社であり、またその会社の経営を支配されている法人として法務省令で定めるものである。



◆ 名板貸人の責任


名板貸人の責任として、交通事故などの、名板借人の事実的な不法行為によって生じた債務は含まれないと、<判例>はいう。なぜなら、会社法9条の趣旨は、営業主らしい外観を信頼した第三者を保護することで、取引の安全を確保するというものだからである。


そうだとすれば、「当該取引によって生じた債務」とは、名板借人がその取引をしたことによって負担をした債務であると考えられる。それならば、詐欺などの取引上の不法行為によって負担した債務はそれに含まれるにしても、事実的な不法行為によって生じた債務は、名板貸人の責任には含まれないと考えるべきだ、ということである。


また、第三者の保護要件として、名板貸人と名板借人の営業が同種であることを要するか。判例では、第三者が事業主体を誤認するおそれが十分に認められる特段の事情があればよいとした。



◆ 株式とは何か?


株式とは、均一に細分化された割合単位をとった株式会社の社員の地位のことである。


しかしこの点、合名、合資会社においては、社員の持つ会社の地位は常にひとつであって、その大きさが社員の出資の額によって異なる。



◆ 間接有限責任について


株主は会社の債権者に対して責任を負担せず、会社に対して出資義務を負うにとどまっている。しかもその責任は、各株主の有する株式の引き受け価格が限度となっている。それによって、会社への参加を簡単にして、多数の資本を合体させることによって大規模経営が可能となる。



◆ 資本金とは何か?


資本金とは、会社の債権者を保護するために、会社財産を確保する基準となる額面のことである。会社にとっては、会社の財産のみが会社の財産的基礎となり、会社の債権者の担保となる。


そして、授権資本制度というものがあるが、これは将来会社が発行する予定の株式数を定款で定めておいて、その授権の範囲内で、会社が取締役会などの決議で株式を発行することを認める制度である。これは、いちいち株主総会の決議をまつことのまどろっこしさを省くための制度である。


また授権株式数には制限があり、まず公開会社の設立には、授権株式数の4分の1以上の株式を発行しなければならない。そして、公開会社が定款を変更することで、授権株式数を増加するためには、発行済みの株式の4倍までしか増加できないとする。


この制限には、無限に新株を発行することによって、既存の株主が被る持分比率の低下を防ぐという意味がある。



◆ 資本に関する原則


資本に関する原則としては、資本金額に相当する財産が現実に会社に拠出されなくてはならないとする資本充実の原則、また現実に会社に保有されなくてはならないとする、資本充実の原則などがある。また、いったん確定された資本金の額は任意に減少することはできないとする資本不変の原則がある。そして、資本確定の原則というのは、設立や資本金の増加には、定款で決めた資本金の額や増加資本の金額にあたる株式が全て引き受けられていなければならないとするものである。



◆ 定款における変態設立事項について


変態設立事項としては、金銭以外の財産をもってする出資である現物出資などがある。現物出資は、会社の設立時において発起人のみができる。なぜこれを定款に記載しないといけないかというと、現物出資を無制限に認めると、目的物が過大評価されることによって会社の財産的基礎がよくわからなくなってしまうからである。


また、財産引き受けもその事項に含まれる。財産引き受けとは、例えば会社が設立されるのを条件に、後々原材料を誰かからもらうことを約束するといった契約である。これも、これによって目的物が過大評価されてしまうおそれがあるから、わざわざ定款に定めておかなくてはならないのである。


他には、発起人が出した設立費用などがある。これは、本来設立後の会社が負担すべきものであるため、その額をはっきりさせておかないと、後々会社の財産的な基礎が害されるおそれがあるためである。設立にあたっての借入金などもそれにあたる。



◆ 会社設立の際の預けあいについて


預けあいとは、発起人が払込取扱銀行からお金を借りて、これを設立中の会社の預金として株式の払い込みにあてるが、そのお金を返済するまではその預金を引き出さないことを約束することである。これは仮装払込として、払込の効力は認められない。


同じようなものとして、見せ金と呼ばれるものがある。これは、発起人が払込取扱銀行以外のものから金銭を借り入れて株式の払い込みにあてて、会社が設立したあとにはれてそのお金を引き出して借りた人に返すものである。


<判例>は、見せ金は、実質的には会社の資金として運用されていないとして、見せ金による払込の効力を否定した。


見せ金をすると、963条1項によって、会社財産を危うくする罪に処されることとなる。



◆ 設立中の会社



設立中に発起人のした法律行為の効果は、成立後の会社に帰属するのか?
設立中の会社は権利能力なき社団とされているが、設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一のものであるといえるため、会社の成立前においても発起人の法律行為の効果は、実質的には設立中の会社に帰属しているため、会社の成立と共に形式的にも当然に会社に帰属するものと考えることができる。



◆ 設立段階の発起人の行為は、どこまで会社に帰属するのか?


設立中の会社の実質的な権利能力の範囲は、設立中の会社は単に会社の設立のみを目的にしているのではなく、会社として成立したあとに営業行為を行う準備をも目的としている。したがって、設立中の会社の実質的な権利能力の範囲は、営業行為には及ばないが、開業準備行為には及ぶとすべきだ。


また発起人の権限の範囲として、<判例>は、会社の設立事態に必要な行為のほかは、たとえ開業行為といえども認められないが、ただし財産引き受けのみは例外として許されるとしている。



◆ 会社が設立したあとの追認について


財産引き受けなど、発起人が定款にない権限外の行為をしたとき、創立総会にて変態設立事項に関する定めを追加して、発起人の効果を会社に帰属させることができるのだろうか?


そもそも変態設立事項に関する規制は、会社の財産的基礎が害されるのを防止する目的で作られている。


だとすれば、創立総会での定款の変更というのも、原始定款が不当な場合に、これを縮小、削除するためにのみ行使されるとしないと、仮に追加、拡張が行われるとすれば、検査役の調査が及ばないことにまで創立総会に権限を与えてしまう。


したがって、変態設立事項に関する定めを追加したり拡張したりして、原始定款に記載のない変態設立事項の効力を認めることはできないと考える。


では会社が成立したあとに、会社が追認することで会社に発起人の行為を帰属させることはできないのだろうか?


判例は、会社の追認はできないとしている。なぜなら28条2項は、定款に記載のない財産引き受けは「その効力を生じない」としており、両当事者がその無効を主張できるからである。


そうなると、発起人の責任はどうなるだろうか?


判例は、民法117条を類推適用して発起人の責任を認めるのが判例である。そして、117条の「相手に過失がある場合」だが 、相手が「会社の成立を条件として」契約をしたならば、相手はまだ会社が成立していないことを知っていたはずなので、発起人の無権代理人としての責任はなくなると考える。



◆ 設立費用は誰が払う?


設立費用は本来設立後の会社が負担すべきだが、会社の財産的基礎を安定させるために、それは変態設立事項となっている。よって発起人がすでに設立費用を払った場合、その範囲で会社に求償できるが、では会社が成立した後に、未だに設立費用の債務が履行されていないとき、その債務は誰が払うのだろうか?


<判例>は、定款などの法定の要件を満たした額の範囲で会社に帰属するとし、それを越える部分については発起人が責任を負うとしている。



◆ 設立に関する責任


発起人が任務を懈怠したときは、発起人は会社に対して連帯して損害賠償責任を負う。


また、現物出資に不足分があった場合、発起人は同様に、会社に対して連帯して債務を負う。


ただし前者は、懈怠がなかったことを証明できれば責任を負わないし、現物出資に関しても、検査役の調査を受けていた場合は責任を負わないとする。



◆ 設立無効


設立無効の原因として、客観的無効原因は多岐にわたっている。


では、「設立に際して出資される財産の価格またはその最低額」が満たされないことは、設立の無効原因であるが、発起人が引き受け払込を行うことによって、設立無効が回避できるのだろうか。


この点、引き受けは払込がないことが設立無効の原因となるのは、会社の財産を確保をすることが目的であるので、発起人が現実に補填をおこなったときには、設立無効は回避されると考えるのが相当であろう。


では、主観的な無効原因はどうだろうか?


この点、設立自体は人的理由によって影響を受けないはずであり、主観的無効原因というのはない。なぜなら、株式会社においては株主の個性は重視されていないからである。


ただし、持分会社の場合は人的会社なので別である。


この場合、個々の社員の設立行為の取消が常に会社の設立自体の取り消しの原因となる。


また、設立無効の訴えの効果は対世効といい、第三者にも及び、さらにその効果は将来効である。

会社法その①

今日は会社法について、その基礎を勉強していきましょうσ(^_^;)



◆ 法源の適用順位


定款規定>銀行法など特別法>社債など特別法>会社法>商慣習法>民法



◆ 会社の種類


株式会社:有限責任社員のみで構成。株主の責任が軽いぶん、株主は業務の執行には参加しない。所有と経営が分離されているのである。株主総会で基本事項、業務執行の意思決定は取締役会、実際の執行権は代表取締役の仕事である。


合名会社:無限責任社員のみで構成。社員は会社債権者に無限責任をおうが、会社の業務を執行し、会社を代表する権利義務をもつので、社員の個性が重視される。つまり、所有と経営が一致しているのである。


合資会社:無限責任社員と有限責任社員で構成。有限責任とは、自らが出資した限度で責任を負うものである。


合同会社:会社の内部関係では、構成員は自由な合意に基づく組合的規制に服するが、対外的には構成員は出資を限度とする有限責任を負う形態。


それらすべてにある特徴→①営利性、②社団性、③法人性がみられる。



◆ ②の社団性


形式的な区別によれば、社団とは組合に対する概念であり、構成員が団体との社員関係によって、間接的に社員同士が結合する団体のことである。それに対して組合とは、構成員がお互いの契約関係によって直接に結合する団体である点で区別できる。


それに対して実質的な区別としては、組合は少数の構成員で成立しておりそれらの個性が濃厚であって、重要事項を決めるにあたって構成員全員の一致が必要であるのに対して、社団は多数の構成員から成立しそれらの個性が希薄であって、重要事項は構成員の多数決で決定することのできるような団体である。


では、社員が一人である一人会社は成立するのだろうか。


合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の両方をそなえていなければならないので、576条2項によって、一人会社は認めることができない。


しかし株式会社、合名会社、合同会社については、①社員が新たに入ってきたり、自分の持分を誰かに分けてあげたりすることによって、いつでも社員が増える余地があること。そして、②これを社員一人の意思で行うことができることから、潜在的な社団性が認められる。


したがって、株式会社、合名会社、合同会社については、一人会社も認められると考える。


では、一人会社が成立してしまうとすると、株主総会招集手続きはどうなるのだろうか。


この点、株主総会の招集に298条以下の手続きが要求される理由は、株主の総会への出席の機会を確保して、その準備期間を与えるためであると考えられる。


そうすれば、株主全員(一人だが)が総会の開催に応じることによって、その準備期間がいらないといっているのだから、そういう場合にはただちに総会の成立を認めてもいいはずである。


したがって、一人会社の場合には、その一人株式が総会開催を認めれば、招集手続きはいらないと理解する。

では通常、取締役が会社の利益と相反する行為を行うには、株主総会の承認が必要だが、一人会社でも承認が必要なのか。


取締役が利益相反行為をするにあたって、株主総会を開く必要があるとする356条の趣旨は、取締役が会社との利益相反行為をすることによって、自己または第三者の利益をはかって、会社に損害を与えるのを防ぐものである。


そうだとすれば、取締役が一人である会社には、会社と取締役との間には利益の相反が認められないため、株主総会の承認を必要としない。


もっとも、このように考えると会社に対する債権者の権利を害するということもできるが、この点429条は別途に取締役の責任追及を認めているので、問題はない。


<判例>も、会社の一人会社である取締役が、会社に自己所有の土地を売却した場合、両者の間に実質的な利益の相反関係はないので、取締役会の承認は必要ないとしている。


また、会社法107条1項1号は、株式譲渡の自由の原則の例外として、会社の株式を譲渡するには、会社の承認がいるとしているが、一人株主が会社の全部株式を譲渡しようとするときに、定款所定の当該会社の承認がなかった場合、譲渡の効力はどうなるのか。


107条1項1号の趣旨は、会社にとって好ましくない人が株主になることを防止して、それによって他の株主を保護するものである。


だから、一人株主が保有株式を他人に譲渡しても、他に株主はいないのだから、107条1項1号の趣旨が妥当しないことになるため、一人株主による株式の譲渡は有効となる。


<判例>も、定款に株式譲渡制限の定めがある会社において、一人株主が株式を譲渡した場合、取締役会の承認がなくてもその譲渡は有効であるとした。



◆ ③の法人性


会社の受ける制限というのは、例えば会社は自然人ではないことから、生命や身体に関する権利は与えられない。では、会社には27条1項によって、その目的を定款に記載しなければならず、なおかつ911条の3の1項には、それを登記しなければならないとするが、この目的によって会社は権利能力の制限を受けるのだろうか。民法43条は、法人が目的の範囲内で権利を有し義務を負うと書いていることから問題となる。


法が会社に法人格を認めるのは、会社が一定の目的のために事業をおこし、社会的に価値のある機能を果たすためであり、さらに民法43条は法人一般に関する通則である。


だから、会社にも民法43条が類推適用され、会社の権利能力はその目的の範囲に限定されると考える。


もっとも、その範囲をあまりに厳格に目的そのものに限定してしまうと、取引の安全をがいしてしまうため、「目的の範囲内」の行為とは、定款に定められた目的を遂行する上で必要な行為をも含む、とするのが<判例>の立場であり、その基準は客観的、抽象的に行うべきである。

緊急避難

お次は過剰避難です。正当防衛との違いをハッキリさせようね((((((ノ゚⊿゚)ノ



◆ 緊急避難


緊急避難とは、現在の危難を避けるためにやむを得ずした行為であり、他にその害悪を避ける方法がなく、またその行為から生じた害悪が避けようとした害悪を超えないものをいうとする。正当防衛が、必要性と相当性を要件とするのに対し、緊急避難は補充性と法益の均衡を要件としている。


緊急避難が37条1項によって不可罰とされる根拠は、一つは他人のための緊急危難を認めていることと、緊急避難に対する正当防衛を認めることは避難行為を行った者に酷である点にある。つまり、違法性阻却事由であるという点にあると考えられる。


緊急避難は、①自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する「現在の危難」を、②「避けるため」、③「やむを得ずにした行為」であった、④「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」であるとしている。


①における「現在」とは、法益の侵害が現実に存在していること、または法益の侵害が目前に切迫していることをいい、正当防衛における「急迫」と同じ意味である。また「危難」とは、法益に対する実害または危険の状態のことをいう。


②の避けるため、とは「防衛の意思」である。


③の「やむを得ずにした」とは、避難行為が唯一の方法であったこと、つまり補充制を意味する。なぜなら、緊急避難は「正」対「正」の関係を要請しているためである。


④の「これによって生じた害が避けようとした害の必要を超えなかった場合」とは、避難行為から生じた保全法益が、侵害法益を超えていることを要請する法益均衡の原則を要請するものと理解できる。


<判例>は、緊急避難のために道路交通法上の酒気帯び運転を行ったものに対して、侵害法益が保護法益を上回っているとして、過剰避難を認めた。法益の均衡がない場合には、37条1項後半の過剰避難となる可能性があるということだ。


また<判例>は、監禁状態を脱するために放火を行った事案に関して、他にもとりうる手段があったはずであるとして、過剰避難を認めた。これは、補充制がない場合にも、37条1項後半の過剰避難となる可能性があるということだ。




◆ 自招危難


本人が犬に石を投げたら犬が襲い掛かってきたので、本人は友達の家に勝手に逃げ込んだが、これは住居侵入罪にあたらないのか。自らが招いた危難に対しても、緊急避難ができるのかが問題となる。


<判例>では、行為者が有責に引き起こした危難から逃れようとする場合には、緊急避難が認められないとしている。


しかしながら、緊急状態を積極的に利用する意図で自ら危難を招いた場合は別として、まったく偶然の事情から自ら招いた危難について緊急避難が成立しないというのは妥当ではない。


なぜなら、予期せぬ緊急状態が生じた場合について、それが自ら招いたものであろうがそうでなかろうが、行為者が困惑することには変わりがないためである。


したがって、緊急避難による違法性の阻却が行われるか否かは、「これによって生じた害が、避けようとした害の必要を超えなかった場合」というほう駅の均衡を重視して、避難行為によって守られる法益がどの程度存在するかによって決するものとする。


すなわち、自招危難による緊急行為が自己の法益を守るためであった場合には、緊急避難が成立しないとする。他方で、他者の法益を保全する場合には、たとえ自招危難による緊急避難であっても、他者の法益の保護性は減少しないので、緊急避難の成立を認めてよいと解する。




◆ 過剰避難


過剰避難とは、緊急避難の要件が満たされている場合において、補充性や法益の均衡原則が守られなかった場合に適用され、37条1項によって規定されている。


AがつないであったBの飼い犬を解き放ち本人にけしかけてきたので、本人がBの犬を蹴り殺した場合、本人はBに対して正当防衛を主張できるか。Bは第三者であって、「正」の法益所有者であることから問題となる。


確かに違法性阻却自由として正当防衛が成立するには、「正」対「不正」の関係が必要であり、動物は「不正」の意思にもとづく行為をすることはできないため、「不正」は人の行為に基づくものであるとも考えられるが、それでは被害者の法益保護が不十分である。したがって、「人の意思に基づくもの」でなくても、およそ何らかの法益侵害が起きていればそれは「不正」の行為であり、「不正」を違法性ととらえるのではなく、正当防衛の成立根拠ととらえるべきである。


したがって、本件においては、本人は具体的な急迫の侵害に対して防衛の意思をもってやむを得ず反撃したものと理解できるため、本人の行為には正当防衛が成立すると考えられる。

正当防衛

今回のエントリーでは刑法、なかでも正当防衛の類型を勉強します。刑法オモシロいので、ハリキっていこう!(´Д`;)



◆ 正当防衛の成立要件


36条1項によれば、①「急迫不正の侵害」にたいし、②自己または他人の権利を「防衛するため」、③「やむを得ずにした」行為であることが必要であるとする。


①について、あらかじめ侵害が予期された場合、その侵害に急迫性があるといえるのだろうか。


この点<判例>は、侵害が確実に予期されるとしても、それだけで急迫性が失われることはないが、その機会を利用して積極的な加害行為に及んだ場合、急迫性がみとめられないとした。


積極的加害意思に基づいて行為を行った場合、そもそも防衛行為ではないので、過剰防衛の成立はないものとする。


②について、「防衛の意思」が必要なのかについては、争いがある。


思うに「防衛の意思」の必要性を認めなければ、偶然防衛の際に、犯罪の積極的意図を持っていた者を保護してしまう虞がある。そして、違法性の判断をするにあたっては行為者の主観と客観の全体で考慮すべきであり、したがって行為者の主観面も判断の基準とするべきである。


<判例>では、防衛の意思は必要としたうえで、憤激逆上した反撃行為であっても、攻撃を受けたに乗じて積極的な加害行為にでたのではない限り、正当防衛が成立するという。なぜなら、攻撃を受けた際に、一般人であるならば興奮してしまうのはやむをえないことであると考えられるためである。


したがって防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつそれを回避しようとする単純な心理状態であると理解するのが相当であろう。


またそういう事情から、<判例>では、防衛の意思と攻撃の意思が並存していた場合には、防衛の意思を欠くものではない、としている。


③について、「やむを得ずにした行為」とは、急迫不正の侵害に対する反撃の①必要性と、②相当性が認められることと解する。つまり防衛行為は侵害を排除するための必要な限度で許され、防衛手段として相当な性質を備えていることを意味するが、36条2項は、相当性が欠ける場合には、過剰防衛の問題となるとしている。


<判例>では、反撃行為が必要最小限のものであり、かつそれが防衛手段として相当であれば、それによって生じた結果がたまたま侵害されようとした法益よりも大きかったとしても、過剰防衛にはならないとしている。


また、鉄パイプで殴ってきた男に対する正当防衛として、男をアパートの2階から階下に落とした事案において、<判例>は、反撃の必要性はあったが、相当性が認められないことから「過剰防衛」が成立するとしたが、<学説>はこれに対して、「当該行為以外にとりえる手段を明示せよ」と、判例には批判的である。


従って、手段の相当性が欠けるとして過剰防衛を成立させる際には、代替手段を提示すべきである。
以上、これらの3つの要素が認められる場合には、正当防衛が成立するものと解する。




◆ 対物防衛


友人の飼い犬が襲ってきたので、本人はこれを撲殺した場合、261条の器物損壊罪が成立するか。


違法性阻却事由として正当防衛が成立する場合には、相手の侵害が「不正」である必要があるが、人以外の行為が「不正」の範囲に含まれるのかが問題となる。


確かに、物や動物が違法な行為を行うはずがないため、「不正」とは「人の意思にになわれた行為」であると考えられるが、それでは被害者の法益保護が不十分である。


したがって、「人の意思にになわれた行為」がなくとも、およそ何らかの意味で法益侵害が生じていれば、それは「不正」の行為であるとし、「不正」を違法性と捉えるのではなく、正当防衛の成立要件であると考える。


事案においては、友人の飼い犬が襲ってきたことにより、本人の法益侵害の危険性が生じているため、それは「不正」の侵害であるとして、36条1項の正当防衛が成立する。




◆ 偶然防衛


本人が友人を射殺したところ、相手もこちらを狙っているところだった場合、どうなるか。


②の「防衛するため」というためには、「防衛の意思」が必要なのかどうかが問題となる。


「防衛の意思」が必要かどうかには、争いがある。


思うに、「防衛の意思」が必要であるとすると、明らかに犯罪的な意図をもってなされた偶然防衛をも保護してしまうことになり、結論が不当となるため、違法性の判断をするにあたっては、行為の客観性のみならず、行為者の主観をも含めた全体で判断すべきである。


したがって、「防衛するため」というためには、行為者の主観をも正当化事由とする。


<判例>では防衛の意思が必要であるとしたうえで、それがたとえ憤激逆上した結果行った反撃行為であっても、攻撃を受けたのに乗じて積極的な加害行為にでたのではない限り、正当防衛を認めるとしている。


したがって、防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態で足りると考えられる。
事案においては、本人にまったく防衛の意思がないため、正当防衛は成立せず殺人罪となる。




◆ 過剰防衛


過剰防衛とは、急迫不正の侵害に対して、防衛の意思で反撃行為を行ったが、その反撃行為の相当性が認められない場合である。


過剰防衛の効果は36条2項によれば任意的減免である。


思うにその根拠として、過剰防衛は急迫不正の状況下における行為であり精神的な動揺が不可避的に生じるため、多少の「行き過ぎ」があっても強く非難できないために、防衛者の責任が減少する点にあると解する。


そして過剰防衛には、過剰の基礎となる事実について認識がある場合があるが、これは例えば、素手による暴行に対して日本刀によって反撃する場合のことである。この場合、故意犯が成立するが、過剰防衛として36条2項により刑が減免されうる。


それに対して、過剰防衛には、過剰の基礎となる事実について認識のない場合があるが、例えば殴られそうになったので、とっさに近くにある棒をとって反撃しようとしたら、それが日本刀だった場合である。この場合、故意が阻却され過失犯が成立するが、36条2項によって刑が減刑されうる。


<判例>では、反撃行為が必要最小限度であり、かつ防衛手段としての相当性があれば、たとえそれによって生じた結果が、侵害されようとした法益よりも大きかったとしても、過剰防衛とはならない、としている。

商行為法総則をザクッとまとめてみました。

タイトル通りです。いってみようヽ(;´ω`)ノヤルゾー



■ 商法の定める契約概念


507条は、商人である対話者の一方が承諾期間の定めがない申し込みをしたとき、一方が直ちに申し込みに対する承諾をしないと、申し込みの効力は失われるとしている。


また508条は、離れている商人同士の間で、承諾期間の定めのない申し込みがされた場合、申し込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しないときは、申し込みは効力を失うとしている。民法542条は、相当の期間が経過したら申込者が取り消しうるにとどまっており、申し込みの効力を失うとまではいってない。


また509条によれば、商人が平生から取引をなす人からその営業に関する契約の申し込みを受けたときは、すぐに返事を返さなくてはならず、それを怠った場合には申し込みを承諾したものとみなされる。


また510条は、商人がその営業に関する契約の申し込みを受けたときに、申し込みとともに受け取った物品がある場合には、その申し込みを拒絶したときであっても、申し込み者の費用を使ってその物品を保管しなくてはならないことを定めている。ただ、その物品の価格が保管費用にたらないときや、保管によって商人が損害をうけるときはその限りではないとする。



■ 債務に関して


511条は、数人の者がそのうちの一人または皆のためにする商行為によって債務を負担する場合は、その債務は連帯債務となることを定めている。これは連帯責任をとらせることで、その者たち相互の信用を強化するねらいがある。この点、民法427条では、別段の意思表示がない限り分割債務となるとしている。


また同条2項は、商法における「保証人」とは連帯保証人であることを書いている。


また515条は、商行為によって生まれた債権を担保するための質権については、流質契約をしてもいいと欠いてある。これは、民法では禁じられている。


また521条は商人の留置権について定めているが、<判例>によれば、不動産については留置権を認めないとしている。


また516条は、どこそこで何を引き渡すといった債務の履行の場所がお互いに決まらない場合、特定物の引渡は行為の当時その物が存在した場所でなすことを規定しており、そのほかの履行は営業所に持参してなすことを要求している。


そして、560条は取引時間について、慣習や法令の定めがあれば、その取引時間内に限り、また特約があればその時間にするものとしている。<判例>はしかし、取引の時間外になされた弁済の提供であっても、債権者が任意で弁済を受け、それが弁済期にあった場合だったら、債務者は遅滞の責任を負わないとしている。
また522条は、商事消滅時効を定めている。5年である。



◆ 代理および委任に関して


504条によれば、商行為の代理は、代理人が本人のためにすることを示さない場合においても、その行為は本人に対して効力を生じるとした。取引の迅速性が要請されるためである。


ただし相手方が本人のためにすることを知らなかった場合は、相手方が不足の損害を被るかもしれないため、同条但し書きは、本人のみならず代理人に対しても履行の請求をすることができるとする。


<判例>ではこの点、相手方は本人、あるいは代理人との法律関係を択一的に主張できるものとしている。


また他の<判例>では、本人のためにすることについて、相手方は善意無過失であることを要求しているが、これは過失の者まで保護する必要はないだろうという考えに基づいている。


また相手方に、本人と代理人との法律関係を択一的に主張する権利をあたえると、例えば本人が相手方に債務の履行を請求し、その後相手方が択一的選択に基づいて代理人に債務の履行をしようとした場合、代理人の債権の消滅時効期間が経過していたということがありえるので、<判例>は、本人の請求は、訴訟が続いている間、代理人の債権について催告に準じた時効中断の効力をもつとする。


また、506条によれば、代理権は本人の死亡によって消滅せず、代理人は当然に相続人の代理人となるとする。
そして505条によれば、商行為の受任者は、委任の本旨にずれない限り、委任されていない行為をもすることができるとしている。



◆ 営利が重視された規定について


512条によれば、商人がその営業の範囲内で他人のためにある行為をしたときは、それなりの報酬を請求することができるとしている。


そして113条は、商人間で金銭の消費貸借をしたときは、貸主は法定利息を請求できるとしている。また514条によれば、商事法定利率は、年6分である。ちなみに、民法404条では、法定利率は年5分である。



◆ 商事売買について


524条1項によれば、商人間の売買において、買主が目的物を受け取ることを拒み、または受け取ることができない場合、売主は目的物を供託することができるとする。


また同条同項は、それでも買主が目的物を受け取ることを拒み続けたり、それができなかったりする場合は、売主は相当な期間を定めて催告した後、目的物を競売することができるとする。そして同条3項は、そうして得た競売金を供託しなければならないとするが、供託費用にそれをあてることができるとしている。



◆ 確定期売買


一定の日時や期間内に履行しなければ、契約の目的を達成できないような売買、すなわち確定期売買について、当事者の一方が履行をせずにその期間がすぎてしまった場合、相手は直ちにその履行を請求しない限り、その契約は解除されたことになるとするのが525条である。


民法542条の定期行為では、相手方が催告なしに解除できるのみである。



◆ 買主の義務


商人間売買において、買主は目的物を受け取ると、すぐにこれを検査しなければならないと526条は定めている。そして、6ヶ月以内にその目的物に瑕疵や数量不足をみつけた場合は、買主は直ちに売主に対してその通知をしなくてはならないとする。それをしなかった場合は、それによる契約の解除や代金減額請求、損害賠償請求ができなくなるとする。


そして、買主がその通知をした場合、527条によれば、買主は売主の指示があるまで目的物の保管や供託をしておかなければならないとする。


そして、目的物に滅失や損傷のおそれがある場合には、裁判所の許可を得て競売して、その対価を保管または供託することを527条1項但し書きで定めている。


ただしこれらの526条、527条の規定は、売主が悪意の場合は、買主は保管・供託・競売義務を負わないとしている。



◆ 交互計算


交互計算とは、契約で生じた債権債務を、期末に一度に一括して決済する制度であると529条が定めている。



◆ 匿名組合


匿名組合とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をなし、その営業から生じる利益を分配すべきことを約する契約であると535条は定めている。


536条2項によれば、その出資は財産出資でなければならず、同条1項で、この出資は営業者の財産に帰属するとする。匿名組合においては、営業者のみがその事業運営にあたる。


また、536条4項は、匿名者は営業者の行為について直接の権利義務を有しない。ただし、商号の使用を許諾したときは、匿名組合員も連帯して責任を負うとするのが527条である。


そして匿名組合契約が終わるときは、540条、541条に定めている。


また、匿名組合契約が終わったら、営業者は匿名組合員にその出資の価格を返還しなければならないとするのが542条であるが、出資が損失によって減少したときは、その差額を返還すれば十分であるとする。

営業譲渡

営業譲渡についてやります。問題として、よく出題されるんだってサ(;´Д`)ノガンバロウ



■ 営業譲渡とは


①一定の営業目的のために組織され、有機的一体として機能する財産を譲渡し、
②これによって、譲渡人がその営業活動を譲受人に受け継がせ、
③譲渡人が法律上当然に、16条所定の競業防止義務を負う、というものである。



◆ 営業譲渡の効果


営業譲渡には、組織としての営業を移転する義務がある。具体的には、①物や権利、②債務、③得意先を教えるとか、営業上の秘訣を伝授するとかいった、のれんそのほかの事実関係を譲渡しなくてはならない。


また、16条は、営業譲渡のさいには競業防止義務が生じるとしている。


具体的には、当事者に特約がなければ、同一地域において20年間競業してはならず、特約があれば30年の範囲でそれをしてはならないとする。そして同条3項は、不正の目的をもって同一の営業をしてはならないとする。
営業譲渡をすれば、債務に関しては譲渡人から譲受人に移動するが、それに対する債権者は、依然として譲渡人に対して債権を有する。


17条は、譲受人は譲渡人の商号を続けて使う場合には、譲渡人の持っていた債務についても責任を負うとしている。


では、どのような場合に、「商号の続用」があったといえるか。<判例>はこの点、従来の商号に譲受人が「新」の文字をつけただけの場合について、商号の続用はないとしているが、それがあったかなかったかという判断については、前後の両商号が主要な部分で共通であるなど、債権者が信頼をもってしまうような状況があった場合も含むと考える。


では、金銭以外の財産をもってする現物出資によって、営業の譲渡が行われて単なる店から株式会社となった場合、第三者が前の店の主との間に売買契約の債権をもっていたとすると、その第三者は後の会社に対して代金の支払いを請求できるか。営業譲渡ではなく現物出資である点、17条と同じ規定である会社法22条を類推適用できるのか。


確かに現物出資は会社法の設立行為であり、取引行為である営業譲渡とは違うが、<判例>では営業譲渡と現物出資の営業の趣旨が同じであり、商号が続用されている場合には債権者の信頼を保護する必要があるから、17条の類推適用が可能であるとし、商号を続用する会社は出資者の債務の弁済をする義務があるとした。
では、商号の続用がなかった場合はどうだろうか。


原則は、譲渡人の債務を負担しないのが原則である。しかし、譲受人が債務を引き受けるという広告をした場合、18条によって譲渡人の債務を負わなくてはならない。


では、広告とはいかなるものをさすのか。<判例>は、単に業務を承継した趣旨の書面を取引先に送っただけなら、それはただの挨拶状なので、債務引き受けの広告にはあたらないとしている。

司法試験問題をつかって勉強しよう♪

<昭和30年旧司法試験第1問>


代表取締役と、本店の支配人の違いを説明せよ。


1、意義
代表取締役とは、株式会社の業務の執行と対外的な代表を担当する必要的常置機関である。それに対して支配人とは、営業に関する包括的代理権をもつ商業使用人である。


2、その共通点
権限はいずれも、営業に関する裁判上の、または裁判外の一切の行為におよぶ
①登記
②取引の相手方保護
③競業防止義務


3、その相違点
代表取締役は会社の機関の一部であり、企業主体との関係では委任の関係にたつのに対し、支配人は商業使用人であり、企業主体との関係では雇傭関係にたつ。
具体的には、代表取締役は会社の行為そのものとして、会社の代表権をもつのに対し、支配人は会社の代理権を有する。


そしてその権限の範囲だが、代表取締役の権限は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為であるのに対し、支配人の権限は、特定の営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為である。
そして、代表取締役と支配人は競業防止義務を負うが、支配人は企業主体との関係では商業使用人としての従属性があるために、精力分散防止義務を課されている。

商業使用人について

商業使用人と、商業帳簿についてザッとみていこう。今日はたくさん勉強するよ☆


■ 商業帳簿


商業帳簿とは、商人が営業をする上で財産や損益の状態を明らかにするために、商法上の義務として作らなくてはならない帳簿のことをいう。


①会計帳簿
会計帳簿とは、商人が営業をする上で財産やその評価額ならびに、取引やそのほか営業上の財産に影響を及ぼす事項を継続的かつ組織的に記録する帳簿のことである。
②賃借対照表
賃借対照表とは、一定の時点における、商人の財政状況を明らかにする一覧の帳簿である。
③損益計算書
④付属明細書



■ 商業使用人


◆ 支配人について


支配人とは何か?


支配人とは、営業主に代わってその営業に関する一切の、(裁判上または裁判外の行為をなす)包括代理権を有する商業使用人のことをいう。包括的代理権とは、商人の営業に関して、その種類や事項を限定せずに包括的に授与された代理権であると考える。


したがって、営業に関して種類や事項が制限された代理権しかもっていない者は支配人とはいえず、24条の表権支配人の問題として処理する。


また営業に関して種類や事項が制限されず、量的または手続き的な制限が課されているにすぎない場合には、そのものは支配人となり、21条3項によって、善意の第三者には対抗できない。


また、支配人は営業主とは雇傭関係にたつ。


20条によって、支配人は営業主である商人かその代理人が選任し、さらに営業主は22条により、それについて登記をしなければならないとする。


その支配権については、営業に関する裁判外の行為についての代理権を持ち、そしてそれが営業に関する行為かどうかは、行為の客観的な性質からみて営業に関するものかを決める。


そして、支配人の代理権に制限を加えても、その制限を加えたことを理由にして第三者に対抗することはできないと21条3項は定めているため、支配人は営業に関する包括的で画一的な支配権を持っているということになる。


また23条1項は、支配人は自ら営業をすることはできず、また他の商人や会社の使用人、取締役や執行役などになってはならないとして、支配人に精力分散防止義務を課している。なぜなら支配人は営業主との間に高い信頼関係があるため、営業主の営業のために全力を尽くさなくてはならないためである。


そして同条同項は、支配人は営業主の許可がないと、営業主の営業の部類に属する取引をすることはできないとして、競業防止義務を支配人に課している。もし支配人が競業防止義務に違反して競業取引を行った場合、同条2項により営業主は支配人に対して損害賠償を請求できるほか、支配人を解任することができる。



◆ 24条表権支配人とは?


支配人とは、その営業に関して包括的支配権を有するものであるため、たとえ支店長などの名称が使われていても、その権利を有していなかれば支配人とはいえない。


しかしそれでは、そのような外観を信頼したものは不利な立場に立たされるため、「営業の主任者であることを示す名称」をつかった使用人は、支配人と同じ権限を有するものとみるのが、24条表見代理人の制度趣旨である。その要件は、


①外観の存在
②営業主の帰責性
③相手方の信頼
④営業所の実質を備えること


であるが、24条は「営業所」の営業主任者であることを示す名称、例えば支店長のような名称をつけた使用人は、その営業所の支配人と同一の権限を有するとしているが、ここにいう「営業所」は、商法上の営業所としての実質を備えていなければならないのだろうか。


24条の趣旨は、本店や支店には営業の主任者というものが必要であり、そうした営業の主任者としての外観をもっている者との取引の安全を確保するものである。


そうすると、支店という名称がつけられていても、営業所としての実質を備えていなければ、そこに営業の主任者がいるとは限らないことになってしまう。


したがって、「営業所」とは、商法上の営業所としての実質を備えているもののみであると考える。この点、<判例>も同趣旨である。



では、営業所としての実質の判断基準はいかなるものであろうか。
営業所は、営業活動を統括するために一定の人的・物的な施設をそなえた場所であると理解する。具体的には、


①従業員がいること
②長が部下への指揮権をもつこと
③帳簿が本店と別であること
④営業所名義の銀行口座があること
…などを、総合的に判断すればよい。



◆ その他の商業使用人


支配人以外に、使用人にはどのようなものがあるのか?


25条は、営業に関してある特別な委任を受けた使用人は、一切の裁判外の行為をなす権限を有するとする。また同条2項で、これに制限を加えても善意の第三者には対抗できないとする。


また26条は、物品販売店の使用人は、その店舗にある物品の販売に関する権限を有するとしている。



■ 代理商とは?


代理商とは、商業使用人ではないが、一定の商人のために営業の部類に属する取引の代理を行うものであると27条は規定する。


その特徴は、商業使用人とは違って独立の商人であることと、特定の承認のためにその営業を補助するのであって、不特定多数の商人の営業を補助する問屋さんとか仲立とは違う点である。


代理商の権利義務としては、代理商は自分の行為を本人に通知しなくてはならないとする通知義務が27条で定められており、28条1項は、競業防止義務を定めている。そして31条は、代理によって得た債権を相手が弁済してくれないとき、代理商はその弁済を受けるまで本人のために占有するもの、または有価証券を留置することができる留置権をもっている。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>