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国際法前期中間試験対策

国際法の特色

国際社会には全ての構成員を規律する明文法を作り出す立法機関は存在しないが、全ての構成員を規律する不文法である慣習法が存在する。その点条約は、当事国同士を拘束するものである。

国際社会には強制管轄権をもつ裁判機関が存在せず、例えば国際司法裁判所は、当事国間の同意がなければ管轄権を行使できず、よしんば裁判にこぎつけることができたとしても、敗訴国が判決による決定に自発的に従わない場合は、判決を強制的に執行する持たないため、形骸化する。

国際法の法源には、条約と慣習法、各国の国内法に共通の法原則、国際機構の決議などがあるが、フランスによる核実験事件のように、国家が自ら公に、かつ拘束される意思をもって宣言をした場合には、その宣言には法的拘束力が与えられ、かかる宣言は、法源たりうる性質を有する。

条約の原則はpacta sunt servanda(合意は拘束する)であるが、慣習法の成立要件は、長期にわたって行われる慣行、opinio juris(法的信念)とよばれる規範意識であるとされ、その成立の抽象性から、しばしば議論を呼ぶ。たとえば北海大陸棚事件は、北海油田の利権をめぐって西ドイツvsデンマーク、オランダがその領海を主張した事件であるが、国際司法裁判所は、大陸棚条約の慣習法的効力を否定し、衡平の原則に従って、個別に決めるべきである旨を判事した。

この判決によって、慣習法の成立はたとえ①短時間であっても、②利害関係国の行為が広範かつ一定であるということが必要であり、さらにかかる行為は③法的信念に基づく必要が主張された。

(ニカラグア事件)慣習法の存在を認定するためには、ある国家の行為がある承認された規則に反しており、それが新たな規則の承認を示すものではなく、規則の違反として扱われておれば足り、例えばある国家がある承認された規則に反するように行動していたとしても、規則それ自体に含まれる例外や正当化事由に訴えることで、自らの行為を擁護しようとする場合、その行為はそうした承認された規則を弱めるのではなく、むしろ慣習法としての効力を確認するものである。

判決では、国連憲章24項は武力行使を禁止しているが、その例外として、51条「自衛権」42条「軍事的措置」を認めているため、アメリカはそうした例外を使って自己を正当化した。

条約は特別法であり、慣習法は一般法であるため、当然に条約は慣習法に優先するが、海洋法の存在を考えれば自明であるように、慣習法の法典化が進んでおり、その逆もまた然りである。

国家承認

国家の承認には明示的承認と黙示的承認があり、前者は既存の国家から新規国家に向かって明示的に国家の承認が宣言される承認であり、後者は外交使節の派遣受入や、条約の締結など、実質的な国家承認行為が行われているとみなされるとき、黙示的に国家の承認が既存の国家により行われているとみなす承認であるが、その効果をめぐっては、第三国の承認を必要とする創設的効果説と、その承認を必要とせず、国家の三要素である領土、国民、統治国家を備えれば国家として成立するとする宣言的効果説があるが、現在では後者の宣言的効果説が通説であるとされる。

また、国際機構を通じて国家の不承認が義務付けられる場合があり、有名な例としては、南ローデシアにおいて少数の人権主義者が権力を簒奪した際に、安保理決議は全ての国家に対し、簒奪政府を承認しないように要請したことや、同じく安保理決議が、北キプロストルコ共和国の独立を無効とし、キプロス共和国以外のキプロス国家を承認しないように諸国に要請した例がある。

国内法における国家の承認の効果に関して、英米では未承認国家の法は適用しないとしているが、日本やドイツなどは、たとえ未承認国家の制定法であっても、実際に実施されている法を適用するというのは、王京花vs王金山事件において理解しやすい。当離婚訴訟において、中国人である夫の本国法は、夫の本籍である中華人民共和国のものなのか、中華民国のいずれのものなのかという点が論点となったが、夫は日本に居住し、中華民国の法令にしたがって生活しており、さらに中華人民共和国による国籍付与を受諾していない実質を鑑み、中華民国法を適用するとした。ちなみに、旧法令第16条には、「離婚について夫の本国法を適用する」という条文があった。

国家承認に関する主義には対立があり、ひとつは合憲に成立した政府しか承認しないという正当主義である。人民から自由に選ばれた代表が立憲的にその国を組織しない限り承認を与えないトバール主義はその代表例であり、これに対して政府に実効性があれば承認するという立場を事実主義と称し、この立場をより強固に推し進めたものがエストラーダ主義であるが、これによると、外国政府に正当性を判断する権利を一切認めない。また例外的なものとして、国家の三原則が認定される前に国家の承認が行われる、尚早の承認と呼ばれる様態があるが、これは「新政府を正式に承認する決定を表明しなければならないとなると、その新政府の政治体制をも黙示的に支持するものとなってしまう」との懸念を表明した、イギリスの明示的承認に対する批難にみられるように、実際には国家の三原則を満たしている国家を、そういった事情から承認しないというのは国際社会では普通に行われているのに対し、国家の三原則を見たさない点で、問題とされる。

また集合的不承認という不承認様態も問題となることがあり、1991年、ハイチにおいて民主的な選挙により選ばれた大統領を国外に追放する軍事クーデターが勃発した際、国連総会決議は、かかる違法状態から生じたいかなる実態も認められないとし、禁輸等の不承認政策を実行した。

国家承継

国家承継の一般的問題としては、その国家領域についての責任が、先行国から承継国へと承継される際に、国際関係の安定性を優先すべきなのか、それとも承継国の政治的経済的主導権を尊重すべきなのかが問題となる。なお、代表的な国家承継に関する条約には、ウィーン条約がある。

ここでは国家承継に関して、個別具体的な問題について論じてゆくが、まず国境移動に関しては、東西ドイツの統一などに見られるように、承継の問題は生じないとされる。次に国家の独立に際しては、クリーンスレート原則(白紙の状態)が採用され、ウィーン条約によれば、多国間条約については、承継の通告によって当事国の地位を確保でき、二国間条約については、両当事者の合意により有効であるとする。また財産に関しては移転するが、債務は移転しない点に注意する。そして、一般の承継については包括的承継原則が採用されており、東西ドイツの統一のように、国家が結合する場合においても、また分離分裂する場合においても、条約は原則継続され、さらに財産債務についても、問題なく移転ないし公平な分配がなされるということを理解しておく。

ただし、例外として国家承継は領域制度には影響を及ぼさない。つまり、対外境界は全ての場合において尊重されるべきであり、分裂に際して、内部境界は自由かつ相互の合意によってのみ修正されうるとした。ここで国家承継全般における具体例を示したいと思うが、条約承継に関しては、ソ連からロシアへの独立の際に国連の議席の承継が行われたことが有名である。また新ユーゴが旧ユーゴの継続国家を主張したが認められず、新たにセルビア・モンテネグロとして国民投票により分離独立を果たしたことなども有名である。また国際人権規約の委員長声明では、国際人権規約の自由権規則に責任を負う当事国が分裂した場合、先行国が規約に追っていた人権関係条約は、分裂後の国家をも拘束するとの見解がとられている。なお、香港は1997年にイギリスから中国へ返還されるにあたって、英中共同宣言により、変換後の香港が「特別行政区」として中央政府の権威の下、高度の自治作用によって市民の権利が特別行政区の法によって保障されることを定めたが、これはすなわち、承継後にも自由権規約の諸規定が効力を持ち続ける例である。

国家承継と紛らわしい概念として、政府承継がある。政府承継とは、一国内の政治体制の変更において、前政府から新政府へと権利義務が承継されることであり、その性質には、新政府が前政府の全ての権利義務、在外財産を引き継ぐ完全承継と、国家権力行使のための財産を認められないものについては、政府承認によって新政府に承継されるべき財産と認めない不完全承継がある。

外交・領事関係

外交使節団や領事機関について定められた国際条約はウィーン条約である。外交使節団に関しては、その2条で相互の同意の必要、4条でアグレマン(外交使節団の長を決定するに際し、接受国の同意が必要であること)、9条でペルソナ・ノン・グラータ(理由を示さず、好ましからざる人物であることを相手国に通達し、相手国はその人物の召還ないし任務の終了を決定する)について規定している。また外交使節団には様々な特権が与えられているが、その根拠としては、派遣国の領域には接受国の管轄権が及ばないとする治外法権説や、国家代表としての外交使節団には、それ相応の特権免除が与えられるべきとする代表(威厳)説、また外交使節団がその職務を遂行するにあたって、必要な特権免除を与えるべきとする職務(機能的)必要説がある。ちなみに、外交関係に関するウィーン条約には、外交使節団の特権免除の目的として、「国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行」を前文に掲げており、代表説と職務必要説を採っている。

外交使節団の基本特権として、公館の不可侵、裁判権からの免除などが挙げられるが、後者に関しては刑事裁判権が完全に免除され、民事行政裁判権に関しては原則免除となる。民事行政裁判権免除の例外としては、個人の不動産関連訴訟、相続に関する訴訟、任務の範囲外で行う活動に関する訴訟などが強制執行の対象となるが、その際、身体や住居の不可侵原則は堅持される。ちなみに特権免除は放棄可能であり、その意思は常に明示的に行われなくてはならず、推定されない。また特権免除の期間は、接受国に入国したときから、接受国を出国するまでの間であるが、武力抗争が生じた場合にはその特権享有期間は存続し、また享有機関が消滅したあとであっても、任務推敲行為については引き続き特権免除が存続するとウィーン条約において規定されている。

では、外交使節団の基本特権としての公館の不可侵とは別にして、diplomatic asylum(外交的庇護)は認められるのだろうか。ペルーでの反乱に失敗した人物が、コロンビア大使館に庇護を求めた事件について、外交的庇護の決定はその国の主権を侵害し、接受国の国内管轄事項に対する干渉となるため、このような外交的庇護は一般国際法上認められるべきものではないとされた。

外交使節団の主たる任務が派遣国及びその国民の代表することであるのに対し、領事機関の主たる任務は、派遣国及びその国民の利益の保護である。ここでは領事機関と外交使節団の相違点について列挙したいが、外交官の派遣について、相手国の同意やペルソナ・ノン・グラータが規定されている点で同じだが、領事館員に関してはアグレマンが不要である。また外交使節団の特権免除の根拠は職務必要説に限定されるので、外交使節団特権免除よりも制限的であるといえ、その特権に関する比較においては、外交使節団の身体不可侵権は絶対であるのに対し、領事館員の場合は、一定の場合には司法の決定に基づき逮捕拘禁されるとしており、また民事裁判権からの免除に関しては、数種の例外を除いて外交使節団は原則免除となるのに大使、領事館員は任務遂行行為以外については免除されず、また刑事裁判権について、証人としての出頭義務が科される。

内政不干渉とその根拠

国際法における主権は、形式的平等であるとされている。形式的平等とは、各国の権利義務が等しく、自国を拘束する国際法の定立や決定の過程に関して、平等な立場で参加できることを旨とする。そうした形式的平等を制限する立場としては機能的平等という考え方があり、これによれば権限というものは、その国家の能力と責任の重さに比例すべきであるとされ、例を挙げると、国連安保理における常任理事国の拒否権や、IMF(国際通貨基金)やIBRD(世界銀行)において、保有する一株式ごとに各一票の票数を獲得する加重投票制度などに、そうした考え方が底流している。また形式的平等の修正として、実質的平等という考え方もある。これによると、経済力の弱い国家などに対して特別の待遇を与えるべきとされ、国家承継における新独立国に対するクリーンスレート原則の適用などは、その典型例であるといえる。以上が、主権の内容である。

内政干渉の定義は、他国の国内管轄事項に命令的に介入することである。では国内管轄事項とはなにかということになるが、従来それは、国家の基本構造や統治に関する事項であるとされていた。しかし現在では、国際法の規律が及んでいないが故に国家の自由な処理が可能な事項であるとされている。なお補足として、友好関係宣言を行った当事国同士は、お互いに国内管轄権内にある事項に干渉しない義務を負う。次に特殊な内政干渉について列挙してゆきたいが、他国の領域内での掃海活動や、他国の政府を妥当する目的をもった武装集団への援助供与なども、内政干渉にあたる。ニカラグア事件判決では、かかる武装集団への援助供与は内政干渉であるとした。また、政治経済的圧力としての経済援助の停止や、放送衛星によるテレビ番組の送信や、探査衛星による探査なども、他国の国内問題へ影響を与えるおそれがある点で、内政干渉の虞がある。

内戦への干渉については、従来反政府側への援助が内政干渉とされた一方で、政府側への援助は豪放であるとされたが、現在では内戦に対する双方不干渉が原則となっている。また、その例外は認められるかという問題があるが、例えば内戦において一方の当事者に対する敵性第三国の援助がある場合、それに対抗して他方当事者への援助が認められるかということについて、かかる対抗干渉は禁止されているとみなされている。そして、植民地独立付与宣言により、植民地施政国への援助の禁止が宣言されているが、これは植民地施政国への援助は内政干渉であることを意味する。なお、NATOによるコソボ空爆は、内政干渉であると同時に人道的干渉ともいわれる。

国内管轄事項についてであるが、国連憲章に「essentially」と書いてある意図は、対象事項に国際法の規律が及んでいても、加盟国はこれが本質上国内管轄事項に属すると排他的に主張することができるというが、実際の実行において、国内管轄事項に属するか否かという問題は、「matters of international concern」という観念の成立により、大規模な人権侵害は、もはや本質的に国内管轄事項とはみなされず、例え当事国が国内管轄事項であると強弁しても、国連の軍事的または非軍事的強制措置に対しては、内政不干渉の原則を主張することは不可能となる。

主権免除

※前回の内政干渉の問題の続きであるが、教科書問題について中韓の抗議は内政干渉にあたるのだろうか。内政不干渉原則の定義をもう一度おさらいすると、内政干渉とは、国際法の規律が及んでいないがゆえに或る国家の自由な処理が可能である事項に関して、他国が命令的に介入することであり、この定義に即して考えると、中韓の抗議は、命令的、すなわち強制的に自国の意思に従わせる行為であるかどうかというのが問題となるが、実際に中韓の抗議が世論や国家政策に与える影響は大きく、かかる抗議は内政干渉であると結論付けざるをえないのが実情であろう。

国際法では、国家はその行為や財産について、一般に外国の裁判管轄権に服しないとされるが、厳密には、国家活動は全て外国の裁判管轄権から免除されるとする絶対免除主義と、国家の行為を主権的行動と業務管理行動に分離し、主権的行動については全て外国の裁判管轄権から免除されるにしても、校舎の業務管理行為については、外国の裁判管轄権の免除が制限されるとする制限免除主義の二つの立場がある。スクーナー船エクスチェンジ号事件は、帝政時代のフランスが、公海上で拿捕したアメリカ船籍の船舶をフランス海軍に編入し、後に海難事故にあった同船舶をフィラデルフィアにて発見した当該船舶の所有者であるアメリカ人が、同船舶の所有権をもとめた事件であるが、判決は、主権者はいかなる場合も他の主権者に従うことはないとの絶対免除主義を採用した。他方で、WWⅡの国家賠償として、日本がフィリピンに譲渡した船舶を、フィリピン政府が汽船会社に売却するについて同社にその運航を委託していたが、同社は後に香港の海運代理業者と用船契約を結び、その当時同船舶は、修繕のために香港に入港していた経緯から、当該汽船会社と当該海運代理業者との間に修繕費拠出の債務について争い、汽船会社が当該契約を破棄しようとした結果、当該海運代理業者が対物訴訟を提起し、台湾最高法院は、当船舶の競売と代金納付を命じたため、これに対してフィリピン政府が、同船舶が政府の所有物であることを理由に主権免除を主張したアドミラル号事件判決において、枢密院司法委員会は、通常の業務管理行為を行う商業用国有船については、主権的行為と峻別して主権免除は認められないとした。

日本においては、松山事件が、不動産に関する訴訟など特別の理由の存するものを除き、民事訴訟に関して外国は日本の裁判権に服さないとの判決をしているように、絶対免除主義がみられる傍らで、横田基地夜間飛行差止等請求事件については、合衆国軍機の横田基地における夜間離発着は、合衆国軍の公的活動そのものであるとして、国家の主権的行為と業務管理行動とを明確に分離する限定免除主義を採用し、またパキスタン人の代理人である会社との間に売買契約を締結し、売買目的物を引き渡した後に売買代金債務を消費貸借の目的とする準消費貸借契約を行った者が、そのパキスタン人に対して貸金元本を請求した事案であるが、パキスタン人は主権免除を主張したのに対し、最高裁は横田基地夜間飛行差止等請求事件同様に、限定免除主義を採用した。

制限免除主義について、主権的行為と業務管理行為を区別する基準については、横田基地事件において、「その目的ないし性質上、主権的行為であることは明らかであって」と判事されるように、行為の目的と性質に着眼するものとされている。これを受けて貸金請求事件では、「その性質上、私人でも行うことが可能な商業取引であるから、その目的のいかんにかかわらず、業務管理的な行為にあたるべきである」と判事して、このように行為目的説、行為性質説を採用した。

主権免除に関する条約としては、国連国家免除条約と呼ばれるものがあり、同条約は原則として行為性質説を採用しているが、但し書きとして行為目的の考慮があるとされている。また同条約には、主権免除に関して明示の放棄をすることが可能であるとし、この点貸金請求事件においては、当該事件における会社の注文書には、パキスタン人が売買契約に関して紛争が生じた場合に、日本の裁判所で裁判手続きを行うことに同意する旨が明らかに記載されており、主権免除に関する明示の放棄がなされたと考えられる。この立場に対し、黙示の放棄で足るとする立場もある。

また主権免除に関して、不法行為の被害者は加害行為以前に加害者との間に何らの債権債務の関係も有しないことから、契約の場合にはその契約の際に相手に主権免除を放棄する旨の言質を得ておくことが可能であるのに対し、不法行為の場合にはそれを事前に得ることができず著しく不合理であるため、不法行為については、主権的行為であっても免除しないとの立場が主張される。

そして免除が否定される場合でも、外交関係に及ぼす影響を考慮して、国連国家免除条約には、強制執行や仮差押などの措置からの免除が認められる場合について規定してあることに注意。

債務不履行①

 さて、債権編もいよいよ四回目ですね。ハリキっていきましょう(*^ー^)ノ


 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


 これは民法415条債務不履行に関する条文です。「やるといったことをやらないこと」、これを法律用語で履行遅滞といいます。つまり債務者が履行遅滞をしたり時、債権者は「コラッ!約束を破ったな!」と損害賠償請求をすることができるというワケですね。


 では、具体的に履行遅滞の要件は何なのでしょうか。それは債務が履行期に履行可能であり、その履行期を過ぎてしまったことに加え、履行遅滞が債務者の責めに帰すべき事由に基づくことです。債務が履行期に履行可能である、という要件は、裏を返せば債務が履行不能であるときは、債務の完全履行請求を債務者に行うことができないので覚えておきましょう。


 また、履行遅滞が債務者の責めに帰すべき事由に基づく、とはどういうことでしょうか。責め、といわれれば、まず債務者の故意・過失のことを思い浮かべることと思いますが、それに加えて「信義則上、それと同視すべき事由」も含まれます。どういうことか、具体的に例を挙げますと、例えば履行補助者の故意・過失です。履行補助者とは、文字通り主債務者の履行を補助する人のことで、ラーメン屋のオヤジが作ったラーメンを、小遣いを貰って近所の八百屋さんに運ぶ小僧のようなものを想像してくれれば良いでしょう。仮に小僧がラーメンの配達中にコケてラーメンの汁が半分になったとして、それは主債務者であるオヤジが責任をとるべきだろ、ということです。「全部、このバイトのガキがやったことなんだ!俺はしらねぇ、悪くねえ!」と言えないワケですね。


 もっと発展したお話をしましょうか。では、そのラーメン屋のオヤジの作った塩ラーメンのなかに、ウンコバエが浮いていた場合はどうなるでしょうか?さっきは小僧の例を挙げましたが、この小僧は法律的に「狭義の履行補助者」といわれます。履行補助者がこの「狭義の履行補助者」にあたる要件は、本人が履行補助者を利用して利益を拡大していることです。ラーメン屋のオヤジは、小僧を使って金を稼ごうとしている。よって、履行補助者を利用して利益を拡大することが許されるのであらば、逆に履行補助者を原因として生じる損失もまた本人が負担するべきというのが通説です。


 では、そのラーメン屋のオヤジの借りている賃貸家屋に一緒に住む家族は?彼らを「利用補助者」といいます。この場合、オヤジの末娘がイタズラでラーメンに鼻くそを混ぜたりなんかすれば、それは契約の付随義務に反するということで、娘の故意・過失は全て本人であるオヤジの責任となります。


 ではでは、復代理人や転借人なんかはどうでしょうか?これらの人を「履行代行者」と呼びます。まずは前提として、民法104条にもあります通り、本人の承諾を得ずに復代理人を選任しようとする任意代理人は、まずその時点で任意代理人自身に過失があるといえます。ということはつまり、任意代理人の責任は本人の責任ということになるワケですが、それでは民法106条における、ちゃんとした法定代理人による復代理人の選任などはどうでしょうか?この場合、法定代理人による選任・監督に過失がない限り法定代理人、ひいては本人が責任を負うことはありません。また、この104条、106条のいずれにも該当しないような事案の場合、例えば請負人などが復代理人を選任しちゃった場合は、履行補助者の故意過失と同視するので覚えておきましょう。


 次に、債務不履行に関する立証責任についてお話をしたいと思います。実際の裁判所での訴訟において、特別事情の予見可能性などの要件事実を誰が証明すべきなのでしょうか?もしかしたら、小僧はコケてラーメンをこぼしたのではなくて、飲酒運転をしている車にはねられてラーメンをこぼしたかもしれないのです。原則としては、その主張によって積極的に利益を受けるほうが責任を負うとされています。従って、債権者が要件事実を証明することが原則となりますが、わかりやすく言えばラーメンを注文する客のほうが債務不履行の立証をしなくちゃならないってことですね。ただしそれに対応する帰責事由については、その否定が債務者に委ねられていることを例外として覚えておきましょう。



 今日は眠いので、ここまでにしておきます\(*`∧´)/

 かなり近い将来、続きを更新したいと思います。


 

現実的履行の強制

 冬休みが終わって下宿に戻ったので、大学から更新します(*^ー^)ノ


 債権には、現実的履行がツキモノです。たとえば貸したお金は返さなくちゃならないっていいますが、その「返さなくちゃならない」ってことがただの倫理的な社会通念であって、現実社会において具体的な強制措置がとられなけれないとしたならば、お金を返すという行為はすべて債務者の良心にゆだねられることになってしまいますが、世の中には必ずしもキチンとお金を返してくれる人ばかりとは限らないので、われらが法治国家日本では、裁判所が履行の強制をしてくれます。


 では、裁判所に「○○さんがお金を返してくれない!」と訴え提起するために必要なモノはなんでしょうか?それは債務名義です。いくら「○○クンが僕のゲームとったんだぁー。」なんて先生になきついても、証拠がなければ先生は動いてくれませんね。債務名義とは証拠のことで、その例としては、確定判決や公正証書などが挙げられます。こうした証拠を裁判所に提出すれば、裁判所は安心して悪いヤツを懲らしめてくれます、多分ね。


 それでは具体的にどのようなカタチで裁判所は悪いヤツを懲らしめてくれるのでしょうか?まず一番わかりやすい形で行われるのが直接強制です。具体的には訴訟を提起した本人に代わって、国が直接相手方に「コラッ!」と言ってくれます。たとえば、金銭債権の取立て。大きくとらえると「与える債務」に限って、国が直接動いてくれます。与える債務というのは、簡単に言えば物を与えることを内容とする債務で、売買契約における売主の目的物引渡し債務などがそれにあたります。


 また、「与える債務」の対になる概念として「為す債務」と呼ばれるものがあります。動産の定義として、「不動産以外のすべてのもの」という説明がなされるのと同じように、「為す債務」は「与える債務」以外のすべての債務です。言葉をそのままとらえれば、文字通り「何かをしなくちゃならない債務」なんですが、わかりにくいので具体例を挙げるとするならば、公演を行うこととか、競業を行わないことなどがそれにあたります。そしてこの「為す債務」のうち、第三者が代わって行えるものに、代替執行というカタチで裁判所は私たちを助けてくれます。


 もう一度整理しますと、われわれ本人に代わって国が相手方にコラッと言ってくれるのが直接強制で、われわれ本人に代わって第三者が相手方にコラッ…と言ってくれるワケではありませんが、相手方に代わって第三者が「よし、オレが代わりにやってやるよ」と言ってくれるのが代替執行であり、条文で言えば民法414条2項です。例を挙げると、たとえば私の実家の敷地に、ある日右翼の街宣車が勝手に止めてあったとします。私は「もう、怖いんだよ!」と思って、裁判所に「どうにかしてくれ」と泣きつきます。そこで第三者であるレッカー車が、私に変わって車をどっかにもっていってくれるという流れになるワケですが、もちろんレッカー費用は右翼の方に負担していただきます。ただし、イチローさんに大学に公演に来ていただくといったイチローさんにとっての債務は、いちおう「為す債務」ではあるものの、代わりにイチローのソックリさんに代替執行してもらうとかいうのはナシなんで、そこんとこは常識で判断していきましょう。


 ほかには、直接強制と代替執行ときて、間接強制というものがあります。しつこいようですが、直接強制とは国がわれわれに代わって悪いやつを懲らしめてくれる強制履行の方法でしたね?では間接とは具体的に、何がどう間接なのかというと、相手方に「罰」を提示して、心理的に圧迫してやることで債権内容を実現させるというところがとっても間接的なワケです。この間接強制というヤツは、民事執行法173条1項にもありますように、金銭債権以外のすべての債権について使うことができます。たとえば、「人んちで勝手に野グソをしない債務」とかでもありです。もし野グソしたら罰金100万円!…とかは多分何かの法律が絡んでダメなんだと思いますが(笑)、間接強制とはそういうことです。


 ただし、間接強制によることができない場合がありますので、それを紹介しておきます。まあ常識的な話ではありますが、まず債務者が履行したいと思ってもすぐに実現できない場合。たとえば「人んちで勝手に野グソしたくなる病」の罹患者がいたとします。その人は、私の実家の庭に「野グソしたら罰金100万円」と立て札がしてあるのにもかかわらず、その病気のせいで我が家に毎日フラフラとやってきてはボトッとやります。でもその人はやりたくてやってるわけじゃない。「いやああああ!」といいながら毎日野グソしにくるその人に、近所の人の目は同情的だ。「まあ、simさんったら、あんなに目くじらたてて…病気なんだからしかたがないじゃない…!」みたいな。その「人んちで勝手に野グソしたくなる病」を治すためには、あるサプリメントが要ります。つまり、債務者が履行したいと思ってもすぐに実現できない場合というのは、この場合、その病気の人がサプリメントを購入するまでということになりますが、まあ多分この例おかしいと思いますので、みなさんは特殊な設備や第三者の協力を要するような、もっと現実的でビジネスライクな債務を想像していただいたほうが、より理解が深まるでしょう(;´Д`)ノ


 そのほか、間接強制によることができない場合といえば、債務者を心理的に圧迫しても、そもそも適切な債務の履行が望めない場合です。たとえば、妻の同居義務なんてどうでしょうか?もともと法律というのは権利と義務を定めるもので、人の心の動きを定めたものであってはなりません。そこで威力を発揮するのが間接強制であり、たとえばいつまでたっても「いいアイデアが浮かばない」と原稿を送ってこない小説家に対して編集者の人が怒るのは自由ですが、「いいアイデアを浮かべなくてはならない」という義務を小説家の人に法律は強制できません。そこで、間接的なアプローチで、「期日までに納品がなければ、編集社の損害として一日あたり10万円の罰金を科します」とあらかじめ契約によって取り決めをおこなうワケです。間接的に、小説家に心理的圧迫を加えてるわけだな。しかし、これが妻の同居義務の場合はどうでしょうか?同居しないと罰金10万円!なんて、そんな結婚生活はイヤですよね。こんなことでは、到底適切な債務の履行は望みようもありません(ノД`)・°・あと今思ったんですが、上に書いた「野グソ病」の人の例は、どちらかというとこちらの「債務者を心理的に圧迫しても、そもそも適切な債務の履行が望めない場合」にあたるんじゃないかって気がしてきました。


 本エントリーは、今日はここまでにしておきます。なかなか学校で更新というのも、気を使うものですね。これだけの文章を打とうと思ったら、キーボードがガタガタいいますから(ノ_-。) 私と違ってちゃんと勉強してる人たちの邪魔になってるんじゃないか…なんてね。それでは、また次回も見てくださいね!


  

債権の効力

 債権が物権と異なるところは何でしょうか?それは、他人の行為がなければ権利が実現されないことです。例えば物権では、ひとつの土地を持っている、というだけで、その人は所有権という権利を実現できますが、契約などの債権問題においては、自分ひとりでどうのこうのなるものではありません。それともうひとつ、債権が物権と異なるところとしては、同一の特定人に対する同一の債権の債権の併存が認められるところで、物権においては一物一権主義という原則があったかと思いますが、債権においては二重譲渡という状態も生じせしめることができます。


 まず、債権には二つの効力があります。ひとつは強制履行請求権です。債務者が債権者の目的である行為をしなかった場合、債権者は国の力を借りて履行を強制でき、すみやかに履行がなされない場合には、債権者は債務者に給付を求めることができます。そしてもうひとつが給付保持力。債権者には給付保持力があり、受けた給付を債務者に返還する必要がありません。これは当たり前のように思われるかもしれませんが、不当利得にならないためにそういう風に給付保持力があると言われています。


 参考として、世の中には自然債務というものがあります。自然債務とは、債務者が任意に履行すれば有効な弁済となるけど、債務者が履行をしない時は、債権者側からその履行を裁判所に訴えることはできない債務のことです。つまり、債権者側に強制履行請求権がなくて、給付保持力がある債権のことなんだな。例えば破産の免責を受けた場合なんかだと、債務者はもう自己破産しちゃってるわけだから、お金はかえさなくってもいいわけだけど、実は任意でお金を返してもいいのです。相当、良心的な人だとは思いますが。あたしゃ国の世話になんかなりたかないよ!っていう人なんかがやるんじゃないでしょうか。


 他に、債権の効力としてはどのようなものがあるでしょうか。まずは民法414条の債務不履行責任の追及。次に、債権の履行を確保するための債権者代位権債権者取消権。債権者代位権とは、債権者がその債権を保全するために、債務者が第三者に対して持つ権利を代わって行使する権利のことで、別に間接訴権とも呼ばれています。債権者取消権というのは、債権者が自己の債権の弁済を確保するために、債務者が鯉にした財産減少行為である詐害行為を取り消す権利でして、別に詐害行為取消権や廃罷訴権などと呼ばれています。債権者取消権が行使できるのは、債務者の総財産が総債権額に満たない場合に限られ、かつ債務者、受益者及び転得者が悪意の場合に限られ、その取消の効果は全ての債権者の利益に帰するとされます。転得者が善意の時は、受益者から利益を返還させることを覚えておくといいでしょう。それともうひとつは、おなじみ民法709条、債権侵害に対する不法行為責任の追求です。それに、双務契約であれば解除なんかも、債権の効力として挙げられますね。


 


 

種類物と特定物

 いよいよ2006年も終わりますね。きっと2005年の今、「2006年はこういう風にしたいなあ」、なんて、みなさん抱負をお考えになったことかと思いますが、しっかりと実現できましたか?  …そうそう実現できるものじゃありませんねヽ(;´Д`)ノ 人間明日を望んじゃダメです。今日を精一杯生きた人にだけが明日をむかえることができるからです。今日を精一杯生きることのできなかった人にとっての明日は今日の続きでしかありません。だから私は、毎日、同じように繰り返される日々を送ってるんだなあって思います。ダメだね、私(笑)


 2006年最後のエントリーは、債権序論です。いよいよ物権編も終わって債権編というわけですが、今日は序論ですので、まず特定物債権と種類債権について勉強してゆきましょう。まず特定物とは何かということですが、これは取引の目的物として当事者が物の個性に着目したもののことを言います。種類物は、不特定物です。例えば同じ靴でも、マイケルジョーダンが履いたということでプレミアのついているものは特定物であり、普通に店頭に並んでいるそれは種類物だってことですね。


 以下は、特定物と種類物の扱いの違いです


            特定物       種類物

保管義務    善管注意義務      ×

瑕疵物引渡し  現状で引き渡す   完全なものを要求

所有権移転時期  契約時即      特定される時


 

 善管注意義務とは、物を自分のものにするのと同一の注意をはらって扱うことだから、軽過失は許されますが、基本的に善意無過失です。瑕疵物引渡しについての、「現状で引き渡す」というのは民法483条に明記されていることで、これは特定物には代わりがきかないためにそうなってます。もちろん、キズをつけたり滅失したりすれば、それ相応の条文が適用されますが…。


 じゃあ、特定物における瑕疵物引き渡しがそうなるならば、種類物はどうなるんでしょうか?表には完全なものを要求、と書かれていますが、これは、種類物はキズをつけたり滅失したりしても、ちゃんと代えはあるからです。聖徳太子の像をぶっこわしても代えはききませんが、瓶ビールを床にたたきつけて割ってしまっても、代えはききますね。種類物債権において債務者は、引き渡されたものに瑕疵がある場合、追完義務があるといわれるゆえんです。


 次に、所有権移転時期について、種類物は「特定される時」とありますが、これはどういうことなのでしょうか?例えば、「ビールくださる?」、と店の人に頼んだとしましょう。これが特定物の場合、私がそう店の人に頼んだ時点で契約が成立してしまうわけですが、種類物の場合そうはいかないというのは、そのビールの数量、銘柄などの情報が欠如しているからであって、私がそうした要件を全て店の人に伝えた時点で、所有権が移転します。言い換えれば、種類物を特定物と同じような扱いにしてはじめて、所有権が安全に移転するというわけです。


 とりあえず、債権序論はこんなもんでヽ(;´Д`)ノ 来年からガンガンやっていきましょう ヘ(゚∀゚*)ノウヒョー

 


 


 


 



非担保物権

 勉強をしてゆく上で大切なことは、基本をしっかり理解したうえで例外を暗記することです。


 前のエントリーでは担保物権全般について勉強してきましたが、ここでは非担保物権を扱います。非担保物権とは、通常の担保権では満たすことのできない、現実社会の取引における慣習の要請に答えるために作られた担保権です。


 本エントリーでは、具体的に「譲渡担保」と「所有権留保」について勉強したいと思います。


 まず譲渡担保ですが、これは目的物を債権者に譲り渡す方法による物的担保です。具体的には目的物の占有を債権者に移転する譲渡質と、債務者が賃貸契約に基づいて引き続き占有する譲渡抵当の二種類があります。


 譲渡担保は、債権の担保のために財産権を譲渡するものであるから、例えばとても高価で生産性のある農機具の所有権を移転するかわりに、その見返りとして金銭を受け取るといったことが可能であり、その目的物である農機具の価額が非担保債権の学を超える場合には、その超える部分は債務者に返還されます。要するに、信用授受の目的を達する制度なのです。


譲渡担保の設定方法


①動産は占有改定

②不動産は登記



譲渡担保権の効果


①期間内にお金を返済できた場合

→ちゃんと所有権は債務者に返還される


②期間内にお金を返済できなかった場合

→目的物が処分されるパターン→精算金は債務者に

→目的物の所有権が債権者に移転→余剰金は債務者に清算



 譲渡担保のイイところは、主に三つあります。

①動産は占有改定による引渡しなので、動産抵当が実現されること

②競売手続きを踏まなくてよいので、弁済手続きが簡単なこと

③工作機械20台など、集合物をまとめて担保にすることができる


 逆にダメなところをあげてみましょう。

①譲渡担保は94条1項の虚偽表示にあたるのではという点

→なぜなら、金銭返済による目的物返還の合意があることと、担保目的以外で目的物を処分するから

②無占有質の禁止や、流質契約の禁止の原則に抵触する疑いがあること


※②の流質契約というのは、弁済期前に目的物を処分することで、これは譲渡担保を所有権的構成で見た場合有効となり、担保権的構成で見た場合無効となります。なぜ担保権的構成で見た場合無効になるかというと、94条2項や即時取得の制度によって取引の安全を図ることができるからです。



 次、所有権留保。これは売買などで、代金が完済されるまで、所有権を売主の元に留保しておく制度です。あれ?これは譲渡担保とどう違うのかな?ということですが、カンタンに言えば、所有権が移るのが譲渡担保であり、占有が移るのが所有権留保です。


この関係を債務者の視点から図示します

★譲渡担保 +占有権 +所有権

★所有権留保 +占有権 -所有権


 所有権留保は、割賦でモノを買うときなんかに行われる取引の形態であると覚えておけばよいでしょう。




 次回、債権総論です。これでカンペキに担保物権総論の基礎が終わりました。張り切っていきましょう(*^ー^)ノ





 

抵当権

 さて、担保物権編もいよいよラストスパートで、いよいよ抵当権、頑張っていきましょうヽ(;´Д`)ノ


 まず、抵当権とは何か?抵当権とは、目的物である不動産の引渡しを受けずに、その不動産に優先的弁済権を確保する、約定担保物権のことです。一般的に、世間で用いられる抵当権に関する話題では、よく、「借金のカタにとられる」などという言葉が使われますが、要するにあの「カタ」というのが抵当のことです。


 基本的に抵当権の効力というのは、債務不履行の場合に、目的物を競売ににかけて、そこから生まれたお金から優先弁済を受けるという権利として重視されてきたのですが、近年では不動産の収益をもって弁済にあてることも重要視されるようになってきました。抵当権が質権と大きく異なる点は、抵当権は、抵当権設定者に、抵当権設定後も目的物を引き続き用益させることができるトコロです。つまりどういうことかというと、ある中小企業の社長さんが、お金がスッカラカンになっちゃったということで、東西銀行から自分の会社の工場をカタにして、借金をしたとします。質権であれば、不動産は質権者が自由に使用・収益できる(356条)となっていましたが、抵当権では、引き続きその工場の使用権や、そこから生じる収益権は社長さんに留保されたままとなりますので、これによって社長さんが経済的に利益をあげることで、債務の返済を容易にできるということになります。


 抵当権の性質としては、先に挙げた約定担保物権であることのほかに、いままで習ってきたように、担保物権であるならばほとんどこれがスタンダードであるといっていい諸性質である、付従性随伴性不可分性、そして物上代位性が認められます。また、抵当権の目的物は、すでにあげた不動産のほかに、地上権永小作権などにも設定できると、民法369に書かれています。


 さて、抵当権の設定に関してですが、抵当権の設定は、抵当権が約定担保物権であることからもわかるように、抵当権設定契約によってなされます。そして、抵当権では、ひとつの不動産にいくつもの抵当権の設定が成立します。これは373条にも書いてあるように、その複数の抵当権のうち、どの抵当権が優先するかというのは、登記の先後によって決まります。つまり、早い者勝ちというワケですね。また、この「ひとつの不動産にいくつもの抵当権の設定ができる」というのは、民法の最初のほうで習った、一物一権主義に反するんじゃないの?と疑問に思われる人もいるかもしれませんが、もともと一物一権主義というのは、ひとつの物権の客体は、一個の独立した単一のものであるというキマリゴトでしたね?つまりどういうことかといいますと、例えば一本の日本刀を例にとってみますと、鞘が私のもので、抜き身が私の友達のものという風にはできない、これが「独立した」という意味であり、日本刀500本に、まとめてひとつの所有権を設定できない、これが「単一の」という意味です。よって、ある不動産に抵当権を設定しようとする物権の主体としての人間がいくらいても、別にかまわないっていうことになります。


 次に、抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲を検討するために、民法370条をみてゆきましょう。民法370条には、「抵当権は、抵当権の上に存する建物を除き、その目的物である不動産(以下、抵当不動産)という)に付加して一体となっている物に及ぶ」と書いてありますが、抵当権の上に存する建物を除き、とはどういうことなのでしょうか?これはつまり、建物には抵当権の効力が及ばず、土地にのみその効力が及ぶ、言うなれば、土地と建物は別個のものであるという含意をうかがうことができますね。また、後半の「不動産に付加して一体となっている物」とは何なのでしょうか?以下、付加一体物と呼ぶことにしますが、この付加一体物というのは、従物とは異なりますので覚えておいてください。従物とは、主物と不可分であり、互いにその機能を補い合っているものということは既に勉強したかと思いますが、不動産においては、例えばタタミや障子などが従物となります。対する付加一体物ですが、これには立木や庭石、獅子威しや網戸、ガラス戸などがそれにあたります。しかし通説では、付加一体物は従物を含む、とされており、ここらへんが曖昧で嫌ですねヽ(`Д´)ノプンプン。では、こうした付加一体物が、目的物から分離されて動産となった場合、抵当権の範囲は及ぶのでしょうか?もちろん、担保価値を維持するために、抵当権の効力は及びます。そもそも、いったん効力が及んでいた抵当権を、わざわざ失われるとする理由がありませんものね。


 さて、371条に移って参りましょう。「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」、とありますが、これはどういうことなんでしょうか?ここで重要なのは、「その担保する債権について不履行があったときは」という部分で、これは「抵当権の実行が可能になる時期は、債務不履行後である」と言っていることと同じです。よって、債務不履行が行われる前には、抵当権設定者に収益を得させる必要性があるため、抵当不動産の果実に抵当権は及ばないということです。また、「果実」とは、天然果実も法定果実も含むので、覚えておいてください。天然果実とは何でしたか?リンゴや、鉱山から採掘される鉱石などのことでしたね。では、法定果実は?家賃、地代、利息などの、物の使用を対価として受け取る金銭その他の物ですよ。これからは用語チェックをバンバンしてゆくので、みなさんはそれをとことん利用して、知識をつけていってくださいね。


 質権が350条で、「留置権に関する規定を、質権にも準用する」と書いてあったように、抵当権も同じように372条で、「物上代位に関する規定は、抵当権にも準用する」と書いてあることから、抵当権には物上代位性がありまして、その存在意義には、2つの説があります。ひとつは、法定制度説。これは、物上代位というのは、目的物の消滅によって、その付従性によって抵当権も消滅してしまうことから、抵当権者を保護するための特別な制度であるという説で、これに対するは当然説です。当然説では、そもそも抵当権というのは、物の交換価値を把握する権利であるとされています。つまりどういうことかといいますと、交換価値が具体化した場合、価値代表物に抵当権の効力が及ぶのは当然であって、マリーアントワネット風に言えば、「お菓子を食べればいいじゃない」ということですな。抵当権を設定した建物がなくなったのなら、それと同じ価値があるものなら、当然なんでも弁済にあてて構わないじゃないか、というのが、当然説の主張なのです。


 じゃあ、物上代位の対象となるのはどのような目的物なのでしょうか。これは372条が準用している民法304条に明記されており、「(抵当権は)、その目的物の売却、賃料、滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他のブツに対しても行使することができる」とあります。賃料に関しては、これは371条の果実に関する規定から考えても、当然に抵当権の効力が及ぶと考えられますが、ここで考え方に争いがあるのは、滅失、または損傷によって債務者が受けるべき金銭というやつで、これは要するに損害賠償請求権や、保険金のことです。論点となっているのは後者の保険金であり、保険金を物上代位の対象とする肯定説に立てば、保険料と保険金は価値の差が非常に大きいものであるから、保険金は価値代表物ということができるということになり、否定説に立てば、保険金は純粋に保険料の対価であるとして、保険金が価値代表物であることを否定しています。私個人としては、とにかく抵当権者を保護する要請から、ここは肯定説に立つのが妥当なのではないかなと考えております(´Д`;)


 さらに304条の後半を読み込んでゆきたいかと思いますが、「ただし、先取特権者(抵当権者)は、その払い渡しまたは引渡しの前に差し押さえをしなければならない」とあります。まず差し押さえの意義に関してですが、これは物上代位法定制度説にたった場合と、物上代位当然説にたった場合によって、導き出される結論が異なります。まず、法定制度説にたった場合ですが、法定制度説にたつと、差し押さえは、他の債権者に先立つための対抗要件であるということになります。そもそも法定制度説というのは、目的物が毀損や滅失によって失われることによって、所有権者が受ける保険金などの金は、いわば抵当目的物の価値が変化したものであるとしており、そこから、所有権者だけが利益を得るのはダメだろうということで、物上代位という法定制度によって、抵当権者を保護しようという理屈になっているわけだけど、その抵当権者が複数いた場合などは、抵当権設定者は誰を優先して弁済すればいいのかわからないことになる、よって、差し押さえは他の債権者に先立つための要件となる、という論理構成が完成します。それに対して当然説にたつと、差し押さえは、価値代表物を特定するための要件に過ぎない、ということになります。なぜなら、物上代位が抵当権の性質から認められる当然の制度であるとするならば、物上代位に関して第三者に対抗する要件は、もとの抵当権の登記であると考えられるからです。


 次の論点、差し押さえは抵当権者自身がなす必要があるか、ということですが、これは法定制度説に立てば、先に書いたように、自ら為すことを要求されます。なぜなら、債務者が誰に弁済すればよいのか明らかにする必要があるからでしたね。そして、当然説にたてば、どうなりますか?自らする必要はないんでしたね。なぜなら、対抗要件は登記で十分だからです。また、差し押さえは他の債権者に先立ってする必要があるかということですが、これはないとするのが判例の立場です。言い換えれば、当然説の立場であるということが言うことができるわけですが、これは法定制度説でも言うことができないことはありません。法定制度説においては、差し押さえが対抗要件であることを重視していますが、抵当権にもともと備わっている優先弁済効と、抵当権による優先弁済効が登記によって公示されていることは債務者にとって十分な保障となり、物上代位をするにあたって、別段他の債権者に先立って登記をすることを必ずしも必要とはしないし、なによりそのような要件は条文にも明記されていないことからも、こうした結論を根拠付けることができるかと思います。


 さあ、次は抵当権の侵害に関してお話したいと思います。もちろん抵当権は物権である以上、抵当権が侵害された場合には、どうどうと物権的請求権を主張して構いません。その根拠は、抵当権には不可分性があるからです。また、物権的請求権とは何でしたか?返還請求権妨害排除請求権妨害予防請求権の3つでしたね。妨害排除請求権とは、例えば抵当権を設定している竹林から、勝手に高級タケノコをもってゆかれた場合、このバカ野郎やめろ!ということのできる権利でしたね。予防は、そんなことをしたらタダじゃあおかねえ!ということのできる権利でした。じゃあ、返還請求権は?これは、もっていかれた高級タケノコをカエセ!ということのできる権利でした。ただし、抵当権の要素として、占有はありましたか?ありませんでしたね。つまり「タケノコ返せ!」というのは、抵当権設定者の下への返還請求しかできないのであって、抵当権者の下への返還はできないので、これはしっかりと覚えておかなくちゃなりませんね(。・ω・)ノ゙


 他に抵当権を侵害されたときの対策として、民法709条にある、不法行為に基づく損害賠償請求がありますが、条文を参照していただけたらわかるように、損害賠償請求は、損害が発生していないかぎり請求はできないので注意してください。そんなの当たり前じゃないか、と思われるかもしれないので、いちおう説明しておきますが、それじゃあ、敵(笑)によって、抵当目的物である不動産に対して投石された結果、窓ガラスが割れた場合、不法行為に基づく損害賠償はできるのでしょうか?普通に考えれば、できますね。それでは「できる」と思った人に質問です。抵当目的物の価値が1000万で、被担保債権が800万だった場合はどうでしょうか?ちなみに窓ガラスは20万しますよ。どうでしょうか?できますでしょうか。答えは、不法行為に基づく損害賠償請求はできません。なぜなら、元の抵当目的物の価値が1000万で、損害は20万、差し引き980万だから、その差額が被担保債権額である800万を下回らない限り、敵に対して妨害排除請求はできこそすれ、抵当権者は十分な弁済を受けられることから、不法行為に基づく損害賠償請求はできないということになっております。これを説明できれば、なんかデキる人って感じですよね(;´ω`)ノ


 さて、次に抵当権の行使についてお話を続けたいと思います。民法304条にもあったように、抵当権を行使すると、目的物の競売手続きによって目的物を売却し、その売却代金から優先弁済を受けることになり、そして374条にもあるように、その優先権は、抵当権の順位に従います。ただし、次の375条にもあるように、利息その他の定期金にかかる抵当権は、満期となった最後の2年分しか請求できないのでこれはできたら覚えておくことです。


 ここからは388条の説明になりますが、これによると、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った時は、その建物について、地上権が設定されたものとみなす」、とあります。なぜこのような制度が必要なのかといいますと、例えば同一の所有者が所有する建物と土地の両方、もしくは一方に抵当権を設定したとしますね。しかし抵当権の実行により、その土地と建物で、それぞれ所有者が別々となってしまった場合、どうなるでしょうか?このままでは、建物の所有者が、自らの建物を利用することは出来ませんね。というのは、建物は土地に立っているため、建物を利用する場合、どうしても土地を利用しなければならないという事情があるからです。建物の所有者に、建物の利用権がない、こんな社会経済上の損失はあってはならないということで考え出されたのが、建物存立のために法定地上権を設定すればいいじゃないかという必殺技です。


 例えば私が自分の建物と土地に抵当権を設定したとして、抵当権者であるAさんが私の家を競売にかけて、建物の所有者がBさんになったとします。しかし、あいかわらず土地の所有権は私のものなので、Bさんはいつまでたっても建物を利用することができません。よってBさんは、私との間で強制的に地上権を設定したということにして、Bさんは晴れて建物を利用することができるようになります。これは、土地と建物が別々の不動産であるとされることから起こる問題だといえますね。また、原則として抵当権設定者である私が、自己借地権を設定することはできないので、そこのところは注意しておいたほうがよさそうです。この、競売の結果、土地と建物の所有者が別々になってしまったこと、というのが、法定地上権成立の第一の要件です。


 さらに、法定地上権の成立要件を列挙していきたいかと思いますが、もうひとつの要件として、抵当権設定当時に建物が存在していることと、さらにもうひとつの要件として、抵当権設定当時に、同一人物が土地と建物を所有していることが必要とされています。まず、第ニの要件ですが、例えば私が、1000万円の価値がある更地を所有していた時のことを考えます。更地とは、その上に建物が建てられていない土地のことで、一般的に更地のほうが、建物の建てられている土地よりも取引価格が高いわけですが、そんな土地に建物を建立することによって、その建物に対する地上権と、底地の2つに権利が分かれてしまいます。底地とは、借地権のついた土地の所有権のことで、だいたい地上権が600万、底地が100万くらいになってしまうんでしょうか。つまり、抵当権が設定された後に建物がつくられても、抵当権者にはいいことはひとつもないということで、抵当権設定後に建てられた建物には、法定地上権は設定されません。


 第三の要件に関しては、例えばもともと土地と建物に別々の所有者がいた場合建物に土地利用権がついているから、新たに抵当権を設定しても、その権利を存続することで、いちいち地上権を発生させる必要はなくなるというわけです。土地・建物、いずれに抵当権を設定しても、地上権は不成立というのが判例。しかし、抵当権設定当時に同一の人物が土地と建物を所有していた場合を考えてみると、例えば私が自分の土地と建物抵当権を設定し、その後競売によって所有権が、それぞれ建物がBさん、土地がCさんに移転してしまった場合、普通にBさんはCさんに「出て行け」といわれてしまいますね。これじゃあダメだということで、法定地上権が発生します。じゃあ、抵当権が設定された後に、所有者が異なってしまった場合はどうでしょうか?土地利用権は抵当権には対抗できないので、法定地上権を発生させる必要があります。ではでは、さらにひねって、一番抵当権設定当時に土地と建物が別人所有で、二番抵当権設定当時に、同一人所有で、抵当権が建物に設定された場合はどうでしょうか?この場合、判例では、法定地上権を設定させるとなっております。では、こういう場合はどうでしょうか。私が法定地上権の成立している建物を所有しており、土地はBさんが抵当権を設定しています。そこで私は、競売によってBさんの抵当目的物である土地を購入することによって、建物と土地の両方を取得することとなるわけですが、その場合、法定地上権を成立させる必要があるのでしょうか?答えは、土地利用権は抵当権に優先し、法定地上権は消滅しません。では、土地利用権が抵当権に対抗できないのは、どういう場合でしたか?抵当権が設定された後に、所有者が異なってしまった場合でしたね。この場合、法定地上権を成立させるというのが判例の立場でした。ああ、なんてややこしいんだ・°・(ノД`)・°・


 さて、次に説明する明渡猶予の制度で、抵当権編も大詰め。ここでは395条1項2項を前文引用することにします(`・ω・´)

 

第395条 1項

 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

1.競売手続の開始前から使用又は収益をする者
2.強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者


第395条 2項 
 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。


 

 この条文の趣旨は、ヒトコトで言えば抵当権者と賃借人の利益調整です。例えば、今年で私も大学生だーなんて喜んで、下宿を探しているとして、やっとのことで学校にも比較的近くて家賃も安い物権を見つけたとします。それでもって、大家さんとも賃貸契約を結び、いよいよ大学生活がスタート。大学生活も1ヶ月が経った頃、ある日いきなり大家さんがこう言ってきます。「ごめん、ウチ、金がなくなって、このアパートを抵当に入れてたんだ。昨日、2000万で競売されて、新たに所有者の人がこのアパート所有することになって、あたしもアンタたちがかわいいから、その人に頼み込んだんだけど、俺は高卒だから大学生が嫌いだといってきかないの。だから、ゴメンだけど、このアパート出て行ってくんない?」と。こんな理不尽な話ってありますか?だから民法395条は、競売が行われてからも六ヶ月を経過するまでは、建物を買受人に明け渡す必要はないんだ、ということを言ってくれているわけです。

 

 この条文はとても素直なので、特に説明はいらないかと思いますが、ひとつ、1項2号で、「強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者」と規定しているのはなぜなのでしょうか?それは、例えば「俺は既に1年分を前払いしてるんだ!」とか言って、アパートを出て行かないような住人の主張を封じるためです。それと、1号で「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」と定められていますが、それでは競売手続きの開始後から使用または収益をする者に関してはどうなのでしょうか?もちろん、そんな人は保護されませんね(。・ε・。) また、2項ですが、いくら競売手続きの開始前から使用又は収益をする者、と定められているからといって、ちゃーんと家賃を払わないと、そりゃ出て行けって言われてもしかたないからねっていうことが書いてあります。

 

 ラスト!(ノ´▽`)ノォォォ!抵当権の消滅原因について。これは、いままでさんざんやってきた競売、火災などによる目的物の滅失、他には不従性による債権消滅などなど、いろんなものがありますが、覚えておくべきは、消滅時効にかかった場合です。消滅時効は何年でしたか?債権10年、それ以外の財産権は20年(所有権を除く)でしたね。ただし抵当権が消滅時効にかかるのは、抵当権のついた目的物を譲り受けた場合のみで、自分で抵当権を設定した場合は、消滅時効にはかからないので、当たり前のようですが注意してください。また、抵当目的物が時効取得されることによっても、抵当権は消滅します。あと、民法396条は、「抵当権は、抵当権設定者と債権者との間では、抵当権だけが独立して消滅せず、その担保する債権と同時でなければ、消滅時効にかからない」ということを書いてあります。例えば私がAに100万円を貸し、Cから建物を抵当にとったとして、この場合、100万の債権と建物の抵当権は同時に消滅するので、債権が時効にかかったときだけ、抵当権も時効にかかるというわけですね。

 

 はい、これにて抵当権は終了です(*^ー^)ノ いままでやったなかで、イチバン長くてややこしかったんじゃないでしょうか。みなさま、本当にお疲れ様です。情報量が多かったので、またヒマがあったらもう一度読み直すなんかして、知識をより強固なものにしてくださいね。さすがに私も今回は、恒例の山田さんなんかを例に用いる余裕がないくらい、書くことがたくさんあってタイヘンでした。次回は、非典型担保です。それでは、また会いましょう。ごきげんよう~(・ω・)/

 

質権

 さて、民法担保物権も、留置権、先取特権とやって参りましたが、いよいよ質権に入ります。質権というのは、その言葉を聞いてまず質屋さんを連想するかと思いますが、そのままのイメージでOKです。債権者が、その債権の担保として債務者または物上保証人である第三者から受け取った物を債務の弁済があるまで留置して、その弁済を間接的に強制するとともに、弁済のない場合には、その物によって他の債権者に優先して弁済を受ける権利、これが質権の内容です。


 つまり、金に困った人が、質として自分の動産なり不動産なりの財産を預ける代わりに、債権者から高い金利でお金を借り、お金を返すことができるまで、債権者はその財産を手元においておくことができるというわけですな。なぜ手元においておくかというと、それは「もしお金の返済ができないのなら、この指輪はもらっていくからね」という、債務者による弁済を促すプレッシャーをかけるためです。とは言っても、テレビ番組でみる質屋さんでは、お客さんは単に金銭を得ることが目的であって、別にいついつまでにお金を弁済して、絶対に財産を取り戻すぞっていう気概は、あまり感じられないのですが…(;´Д`)


 質権の性質としては、まず質権は約定担保物権であり、質権設定契約によって生じます。その効力は、附従性随伴性不可分性物上代位性があり、さらに債権者は弁済があるまで目的物を留置できることから、留置的効力、加えて、弁済がない場合、その目的物につき、他の債権者に優先して弁済を受ける権利があることから、質権には優先弁済効があるといえます。



 質権には、動産質、不動産質、権利質があります。動産、不動産は言わずでのことかと思いますが、権利質というのがよくわからないかもしれないので説明しますが、これは株式とかがそれに該当します。ゴルフ会員権とかもそうでしょう。とにかく、○○権というのがそれにあたります。それでは、給料債権なんかの、差し押さえ禁止債権はどうなると思いますか?実のところ質権は、火災保険の保険金請求権などのように、差し押さえられない権利にも本人の意思さえあれば設定できるのですが、年金や扶養請求権のような譲渡のできない権利にはどうがんばっても設定することはできないので、これは特に注意しなくてはなりません。


 動産質の設定に関してですが、まず質権はその附従性にしたがって、質権者は債権者となります。そして質権者である質権設定者は、債務者、または物上保証人である第三者に対して権利を持ちます。そして344条にもあるように、質権は債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を発することから、要物契約であるということがいえます。また、引渡しに関してですが、345条は、「質権者は、債権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない」とあるように、前に習った民法183条の占有改定をすることはできません。ただし、民法184条の「指図による引渡し」はできるので、その辺の知識を確実にしておきましょう。


 いちおうわからない人がいるといけないので説明しておきますが、占有改定とは、年寄りのおじいちゃんが、「この刀をお前に(孫)にやるが、ワシが死ぬまで、ワシの手元におかせておいてくれな」、「うん、わかったよ、おじいちゃん!」というような占有の移転をさします。つまり、事実上の占有は孫に移っているのだけど、実際の物は、まだおじいちゃんの手元にあるというような法律関係です。これに対して指図による引渡しというのは、たとえばビンビール1000本くらいの大きな取引で、譲渡人のキリヌビール(仮)が、第三者である倉庫業者に預けてある1000本のビールを、指図によって取引先のビヤホール業者に占有を移転する、なんて場面を考えていただければわかりやすいと思います。確かに占有の対象となる物は、権利者の手元にあるのがいちばん理想的なのだろうけど、もしその物がデカすぎるとか量が多すぎるとかいった場合、どうしても不都合が生じるため、こういう制度ができたんでしょうね。なお、民法352条には、動産質の対抗要件は、動産質権者が継続して質物を占有することだとあります( ´ー`)


 さて、動産質権の効力ですが、前にも書いたように、質権には不可分性がありますので、その効力は果実にまで及びます。297条には留置権者は、留置物から生じる果実を優先弁済できるとありますが、これ350条で、質権にも援用されると記述がありますので、質権でも同じく、果実から優先弁済することができます。また347条の、質権の留置的効力ですが、これは但し書きで、留置権には劣後してしまいますので、そこんとこ注意してください。そして298条2項は、留置権者は債務者の承諾がなければ、留置物の使用、賃貸などはできないけど、その物の保存に関することならばその限りではないとしており(これも留置権に関する記載だけど、同じく350条で質権にも援用)、たとえば質入された指輪が、持ち主の手垢でサビそうになっていたならば、別に債権者に無断で磨きにだしたりするのはかまわないってことですな。


 ここでちょっと小話をしたいのですが、実は民法の349条は、流質契約を禁止しているのです。流質契約というのは、要するに「金が返せなかったら、ワタシはアナタの大切な婚約指輪をいただいちゃいますけど、いいですよね~?ウヘヘヘ」というような契約のことで、これは質屋さんのイメージからしたら意外かもしれません。でも、その意外というのは正しいです。実は、民法では流質契約は禁止されているだけの話であって、ちゃーんと特別法である質屋営業法で、それはOKということになってます。法律っていうのはそういうヤラしいところがあって、民法なんかで、「そんなことをしてはダメだ」ってカタブツみたいなことを言っておきながら、実は特別法で、「そんなカタイことばかり言ってられない」という感じで、バンバンと民法の規定を塗り替えたりなんかしてるんだよな。ちなみに、流質契約は、債務の弁済期前に結んじゃうのがダメなのであって、債務の弁済期後に、代物弁済契約として補填策を講じるのは結構だ、ということになっているので、ご安心ください。

 質物は、転質ができます。転質とは、質権者が質物を、さらにほかの質権者に質入してしまうことで、転質には承諾転質と、責任転質があります。承諾転質では、もともとの質権設定者の承諾の上で転質がなされることで、その要件、効力はすべてその承諾の内容によって決するのに対し、質権設定者の承諾なしに、勝手に質権者がなす転質である責任転質では、その転質によって生じた損害は、たとえ不可抗力によるものであっても、質権者はその責任を賠償する責任を負います。また、承諾転質においては、たとえ転質の額が原質の額を超過したものであっても、必ずしも不法にはならないということを覚えておきましょう。

 さてさて、動産質権が消滅するとき、それにはどういう要件がいるのでしょうか?298条は、留置権に関する条文でしたが、そこには留置物の無断使用、または賃貸が行われたときに、留置権は消滅請求にかかるとあります。これは例の350条によって質権の契約に準用されますので、頭に入れておいてください。また、質権を根拠とする物の返還請求は認められません。物をカエセといいたいならば、353条にあるように、必ず占有回収の訴えによってなされる必要があります。したがって、質物を質権者の不注意によって遺失した場合、もしくは詐欺をされたりなどして物の占有を失ってしまった場合、質権者は法律によって一切の保護がされないので、質権者は、物の占有に関しては特に注意を払わなければなりませんね。

 ここまでで、ほとんど質権についてはオシマイです。最後に、不動産質と権利質の設定に関する決まりをザザッと説明して終わりにしたいと思います。まず、不動産契約は要物契約です。対抗要件は登記。動産の場合は何でしたか?占有でしたね。不動産が動産と特に異なる点は、動産ではできなかった目的物の使用収益が、民法356条で認められていることです。ただし、357条、358条は、いくら目的物の使用収益ができるとは言っても、管理費用は質権者が負担しなければならないし、また利息は取れないことを規定してありますので、これはぜひとも覚えておきましょう。

 

 ラスト、権利質。権利質の質権は、民法362条1項に書いてあるように、「財産権をその目的とすることができる」とあって、つまりこれは債権だとか株式だとかいう、いろいろな財産権上に成立する権利であると言うことができます。権利質である債権質では、差し押さえ禁止債権に質権をつけることは可能だけど、譲渡のできない債権については、質権を設定することができないんでしたよね?また、権利質の設定においては、要物契約性が修正されて、原則は諾成契約となっております。諾成契約とはなんでしたか?当事者の意思の合致だけで成立する契約のことでしたね。なぜそんなことになっているかというと、動産や不動産のように、権利質は目に見える物ではないからです。これを補う条文として、民法363条は、債権譲渡の際に証書を交付し、それを質権の目的とすることによってその効力を発する、という規定がありますので、権利質は諾成契約だというのは、あくまで原則であるとして記憶にとどめておけば良いかと思います。


 ちと長かったかと思いますが、以上が質権でした。そしていよいよ次回は、担保物権のオオモノ、抵当権です。これとその後の豆知識編が終われば、いよいよ民法は債権に突入することとなります。あともう一息って感じですね(*^ー^)ノ がんばりましょう。


2000年前の哲学者達(その①)

 最近、個人的に多忙な用事が続いておりまして、なかなか更新ができないでいたのですが、ここにきてやっと落ち着いてきたので、これからはガシガシと更新していきたいと思います(*^ー^)ノ

 …とサワヤカに行きたかったのですが、実は今、手元に民法の資料がありません。というのは、このブログの更新はいつも大学のほうでやっておりますので(アカデミックな雰囲気がないと、イマイチ集中できないから)、学校に法律用語辞典なんかを持ってくるのを忘れると、もうそれだけで民法の話題を提供するのは絶望的になります。スミマセン、そこまで勉強できないんです(´・ω・`)

 そこで今日は、手元にある成田先生の「哲学」の講義の資料を使って、哲学についてやりたいと思います。それも、多くの人が辟易するような近代の難しい哲学者の議論じゃなくって、それよかもっと大昔の、卑弥呼が生まれるさらに500年前くらいの時代に生まれた哲学者について、やさしくいろいろ話題を展開してゆきたいなーなんて思ってます。


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 知られている限り、世界ではじめて「哲学」が生まれた場所は、古代ギリシャの植民地であるイオニアでありました。もともと、哲学というのは「物事の根源的なものを探る」というあくなき探求というか、好奇心のようなものが始まりとなっています。arche(アルケ:根源)とは何か?これをひたすら探求し続けた人たちのことを、ここで紹介したいと思います。



 タレス(BC.625頃)


 彼は、万物の根源はhydor(水)であると考えました。絶えざる変化にある世界、この多様な世界、ないしは自然が、究極的には一つのもので構成されているのではないか、と。宗教によって人々の心に永く根付いていた宗教的な超自然的自然観、いうなれば神話的な宇宙生成物語から脱却し、経験的事実に基づく合理的な観照(theoria:テオリア)を行うことによって、ここに人間の知性は神話から解放されたというわけだなヽ(;´Д`)ノ



 アナクシマンドロス(BC.586頃)


 タレスと逆の立場でarche(根源)を探求したのが、アナクシマンドロスであります。彼は、多様なもののうちには互いに相反する性質を持つものが多く存在することに着目しました。たとえば、タレスが主張するhydor根源説ひとつとっても、水には「冷たい」性質の逆の性質として「熱い」があるし、「濡れている」の逆は「乾いている」。つまり、片方を否定するものは根源足りえない、と。よって彼は、「一なる根源」から「多」を説明することは難しいから、根源をなすものをなにか特定のものに限定することはなく、それ自身は一切の限定をもたないもの、to apeiron(無定限なるもの)としました。


 世界の生成変化は、「熱」や「冷」、「光」と「闇」のような相反する性質が規則的に交代し、一方の性質が支配的になると、反対の性質による反撃を受けて、逆方向の変化に転じる。この交代が、時間の秩序によって支配されており、さらに自然におけるこの変化が、不正の償いという、人間世界の道徳的な用語で語られており、人間世界の道徳的秩序と自然のなかにある規則性とが切り離されずに結び付けられている。


 有限なるもの(peres)は無限なるもの(apeiron)より生じ、それは寒たさ、また熱さを持ち、罪によって再び無限なるものに帰す、といえばわかりやすいかと思います。「それって人間のことを言ってるんじゃね?」と、私と同じようなことを思った人もおおいかと思うんですが、彼が「時間」や「罪」を用いて哲学しているあたり、「哲学」と倫理」って、深い関係があるんだなーってことがわかるかと思います(´・ω・`)



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 …と、ここでゴメンナサイ。ちょっち用事があるので、今日はここまでにさせていただきます。次回は、アナクシマンドロスの議論を根拠として、to apeiron(無定限なるもの)としてふさわしいもの、つまり真の根源とはaer(アエラ:空気)であるとしたアナクシメネス物活論から、数学の定理で有名なピタゴラス、それに孤高の賢者、ヘラクレイトスについてお話を広げていきたいと思いますので、こうご期待。同時並行で、民法の担保編もペースップしてゆきますので、楽しみにしといてくださいネ(*^ー^)ノ

 

先取特権

さて、担保物権編。留置権と同じく、法定担保物権である先取特権に移りたいと思います。


先取特権についての規定は民法303条にありまして、さっそく用語チェックといきたいのですが、先取特権とは、法律が定める特殊の債権を有する者が債務者の総財産あるいは特殊の財産から、一般の債権者に優先して弁済を受けることができることを指します。


なんでこんな制度ができたのかというと、例えば給料債権なんかを考えていただければわかりやすいかと思います。会社では、まずなにより、社員との契約関係をおろそかにするようなことがあってはなりませんから、月末に給料30万払うと約束したなら、ほかの予算などの何よりも優先して給料を支払わなくちゃなりません。他にも、共益費用のことなんかもいい例になりそうですが、この共益費用というのは、例えば時効取得されてしまいそうな土地を、太郎と次郎と三郎で共有していたとしましょう。太郎と次郎は怠惰な兄貴で、正義感にあふれた三郎は、「くそ、アニキたちは頼りにならないから、俺が人肌脱ぐしかない」と思い立って、自腹で所有権を主張する手続きにでます。やっぱり法律ってのは、義務を果たさず権利だけ主張するような人にはキビシイですから、こういう賢い三男坊には、当然に先取特権を与えてやるべきだってのが、民法の考え方のようです。


さて、先取特権の性質ですが、前にもお話したとおり、担保物権の性質は共通して不従性随伴性不可分性物上代位性があり、ただし留置権のみは物上代位性がないよってことは覚えていただけてるでしょうか。よって、先取特権にはそれらのすべてが備わっております。


先取特権は、その目的となる債権者の財産の種類によって、一般の先取特権特別の先取特権とに分けられます。


まずは一般の先取特権ですが、これは民法306条に列挙されています。

共益の費用

②雇用関係

③葬式の費用

④日用品の供給

これらの原因によって生じた債権を有数r者が、債務者の総財産について先取特権を有する、とあります。例えば、葬式の場合の債務者というのは、死んだ人のことで、葬儀費用を負担したものは、債務者の遺産に関して先取特権が認められるってことですね。なーるほど、って感じでしょ。雇用関係では、さっき例を挙げた給料債権なんかがそうですね。


次に特別の先取特権ですが、これは「動産を目的とする先取特権」と、「不動産を目的とする先取特権」の二種類に分けることができまして、前者の例としては、例えば動産保存や動産売買の先取特権などがあります。どういうことかというと、例えば私がアパートの経営をしていたとして、ある学生に家賃未納で逃げられたとするじゃないですか。「くそっ」と思って、がらんとした部屋を整理していると、ふすまの奥のほうに変な小箱が落ちていることに気づいた私。「なんだろう」と思ってその小箱を開けてみると、なんと驚いたことに、なかから高そうな時計がでてきたじゃありませんか。急いでその筋の友達に相談にいった私は、その時計に100万円くらいの価値があることを知ります。動産保存や動産売買の先取特権とは、つまりその時計に対する先取特権のことです。


じゃあ不動産を目的とする先取特権ってナニ?って話になりますが、これは単に動産が不動産になっただけです。例えば、山田さん家の建設を請け負った建設会社は、その家に対して先取特権をもちます。同様にして、不動産保存や不動産売買に関しても、同じように先取特権がついてまいります。たとえば不動産売買では、誰がイチバンに登記をしたかによって、その土地に対する先取特権が決まりますな。まあ、いまは民法の知識をサラッと概説するところに重点をおいているので、なんとなく、「ああ、そういうものがあるんだなあー」って思っていただきたければバンバンザイですヽ(;´Д`)ノバンザーイ


さて、ここでちょっと司法試験をニラんだ知識を紹介しておきます。


★不動産の担保権の順位

①公益費用

②不動産保存・不動産工事の先取特権(339条)

③抵当権・質権(次にやります)・不動産売買の先取特権

④一般の先取特権


★動産の担保権の順位

①公益費用

②質権・第一順位の特別先取特権(イチバン金を出した人が真っ先に弁済を受ける)

③特別の先取特権

④一般の先取特権


ポイントは民法329条2項にあるように、「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する」ということになってます。あとは黒字の部分を覚えれば、先取特権の順位に関してはカンペキに暗記したことになります。


最後に、先取特権の具体的な効果について、おさらいもかねて知識を入れておきましょう。先取特権の効果というのは、ヒトコトでいえば優先弁済的効力です。さっきの建設会社の例で考えると、建設会社は山田さんがお金を払ってくれなかった場合、いよいよその家を処分することができます。これを、目的物の交換価値を把握する権利といって、仮にその家が家事によって燃えてしまった場合、建設会社は目的物の交換価値を把握することによって、山田さんの火災保険に担保権を行使することができるというワケですね。


また、民法333条によりますと、動産の先取特権には追求効が存在しません。これはどういうことかというと、例えば不動産なんかだと、いくら目的物が誰かさんのところへ譲渡されてしまっても、どこまでも優先弁済効を主張することができるワケですが、動産が売却されてしまえば、その先取特権はいともカンタンに消えてしまいます。おいおい、そんなんでいいのかよ、と思ってしまった人は、先取特権には物上代位性があることを思い出してください。よって、動産の売却によって消滅してしまった先取特権は、その売却によって生まれたお金に対して優先弁済効が発生するというカタチで、うまくフォローされているというワケです。


あと一般の先取特権の効力は、登記がなくても一般の債権者に対抗できますが、対抗力のある担保物権には劣後します。つまりそれはどういうことかと言いますと、さっき紹介した図をみていただければ理解しやすいかと思います。赤字が、対抗力のある担保物権です。


★不動産の担保権の順位

①公益費用

②不動産保存・不動産工事の先取特権(339条)

抵当権・質権(次にやります)・不動産売買の先取特権

④一般の先取特権


それに対して、特別の不動産を目的とする先取特権ですが、これは図でいうところの②に該当しますね。この特別の不動産を目的とする先取特権は、337条338条にもあるように、登記がなければその効力がありません。逆に、登記がありさえすれば、抵当権にすら優先するという強力な効果があります。


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今回はちょっと覚えることが多くてウワーってなっちゃいそうでしたが、まあ今は図だけ覚えておけばよかろうかと思います。次回は質権をやりたいと思います。質屋さんっていう言葉でもなじみがあるように、質権は先取特権よりずっとおもしろいと思いますので、楽しみに待っていてくださいネ(*^ー^)ノ