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留置権

さて、物上代位性のない法定担保物権である留置権について勉強はじめましょーか。


留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関連して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置できる法定担保物権でありマス。目的物が金銭に変化した場合、その金銭に対して権利行使ができる物上代位性のない留置権には、当然、他の債権者に先駆けて弁済を受けることのできる優先弁済的効力がありませんので、その性質は付従性随伴性不可分性の三つであると言えます。


留置権に関する基本条文は295条であり、「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有する時は、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りではない」、とあります。ではなぜワザワザ債権者は、そんな自分のものにもならないような物を手元に置いておく必要があるのでしょうか?それは、目的物をこちらの手中に置いておくことで、債務者に心理的圧迫を加えて弁済を促すためであり、ここに債務者と債権者の立場の公平を図る目的が見て取れますね。


条文から見て取れる留置権の成立要件は、二つあります。ひとつは、留置権者が他人の物を占有していること。もうひとつは、目的物に関して生じた債権を有すること、ですが、これは牽連関係(けんれんかんけい)を意味しています。牽連関係とは何かということですが、端的に言えば、直接的に意味的関係があることです。例えば、私が友達の梶原に、「この前貸したバイオ返せよ」と言ったとします。それに対して梶原は、「それじゃあ、お前こそこの前オレが貸した300円返せよ。そしたらバイオ返してやるから」と反論したとしまいます。これは、牽連関係にありません。それとこれとは別ってやつですヽ(`Д´)ノ


また、牽連関係の有無を判断するひとつの基準として、「物の留置によって債務者の履行を促す関係にあるか」というのがポイントとなります。例えば私が、梶原と、友達の堀田めぐみさんの両者に、「キミに土地をあげよう」といって、土地の二重譲渡の関係を作り出したとしましょう。梶原は素直に土地をもらって、私の家にすんじゃいます。一方、私はこっそりと堀田めぐみさんに、「登記をあげよう」と約束します。登記は土地所有権の対抗要件になっているので、実際は堀田めぐみさんが私の土地を手に入れ、おそらく梶原は私に対して債務不履行による損害賠償請求を被担保債権として、私の土地を留置しようとするだろうということが予測できるワケですが、それってできるの?という問題。判例では「できない」ということになったそうです。ここで最初に述べた「物の留置によって債務者の履行を促す関係にあるか」という基準にあてはめてみたいと思いますが、梶原が土地を留置する行為は、ただ単に土地を手に入れた堀田めぐみさんの権利を侵害するだけで、債務者でる私に何のプレッシャーをも与えておりませんねヽ(;´Д`)ノ


そして、295条但し書きには留置権の成立要件がもうひとつありますが、それは債権が弁済期にあること、です。債権が弁済期にあること、とはどういうことかというと、例えばアパートに住んでいて、月末20日になると大家さんに家賃を払わなくちゃならないとします。よって、19日の段階には「弁済期にはなく」、20日がきた段階で「弁済期にある」という風になると覚えておいてください。


次に、留置権のもつ留置的効力について、もっと詳しくみてゆきましょう。まずひとつ、弁済が終わるまで、引渡しを拒否してずっと占有を継続できること。ひとつ、賃貸借なら、借主は目的物を継続使用できること。ひとつ、債務者だけじゃなくてそれ以外の全ての者に対して留置権を主張できること(随伴性)。これは担保物権は追及効を持っているという意味であり、言い換えれば物件的効力があるということです。だから、私が梶原からパソコンを借りて、それをぶっ壊してしまったために勝手にアプライドに修理に出して、そのまま代金を払わずにアプライド側に代金返還請求権を被担保債権としてパソコンを留置されてしまったとしても、ここでは契約関係にない梶原に対しても、アプライドは留置権を主張できるということです。かわいそうに梶原。


ここでちょっと特殊な例をひとつ。297条「果実からの債権回収」ですが、もし留置権がリンゴの木だった場合、リンゴの木からなったリンゴは、優先的に弁済にあてることができます。また299条には費用償還請求権についていろいろ書いておりまして、例えば私が堀田めぐみさんの家を留置しており、その間、その家にすんで修繕やら掃除やらしていたとします。修繕のための費用は必要費といいまして、これは費用償還請求権に基づいて、債務者に請求できるので覚えておきましょう。あと留置権を持つ側の義務としては、298条善管注意義務と、無断使用の禁止があげられます。ちなみに先ほど挙げた「家にすむ」という例は、同条項中の2項に「ただし、その物の保存に必要な使用をすることはOK」とあるため、債務者は無断使用の禁止を理由に留置権の消滅を請求することはできないので注意してください。


最後に、留置権はどうすれば消滅するのかについて書いておきます。まず、さっきあげた留置権じゃの義務違反がひとつ。そして301条担保供与です。留置物の価値は、被担保債権の額に比べてずっと高価であることが多いため、相当な価値のある変わりの担保を用意することによって、留置権の代わりになるんですね。もうひとつが、302条占有の喪失です。これは不従性であり、債権者による留置物の占有がないところには、留置権は発生しません。例を挙げるとすれば、債権が消滅するだとか、目的物が滅失するだとかいうのが挙げられますが、注意しなければならないのは、留置物を「やっぱ返すわ」とか言って、あやまって所有者に返してしまった場合でも、留置権は消滅してしまうことです。例えば、例の代金未払いのパソコンを、何気ない風をよそおって「とりにきましたー」と新人のバイトの兄ちゃんに声をかけます。そこで私がうまい具合にパソコンを奪還できればバンバンザイ、できなければザンネンですね、ということになります。ただし、勝手に店のなかに入って、無言でパソコンをもちだしたらアウトですので、そこんとこ注意してくださいね(;´Д`)ノ


次回、先取特権について勉強します。楽しみにしといてくださいね(´・ω・`)

担保物権

さて、物権編もいよいよ担保に突入します、準備はいいですねー?


まず「担保」って何ってことですが、それは「債務不履行に備えて債権者が得る、債務者による弁済を確保するための保健」です。もっと広い意味で表現すれば、それは金融をカクジツにする制度であります。


担保には「物的担保」「人的担保」があります。


「物的担保」とは、特定の財産が債権の担保となることで、これには物や権利が対象となります。物的担保の特徴として、その担保の価値が維持される限り、担保の目的を遂げるということが挙げられます。またもう一つの特徴として、確かに担保の価値が維持される限り、絶対に弁済はカクジツとなりますが、それは財産の限度内でしか執行できないというものがあります。


それに対して「人的担保」は、連帯保証人なんていう言葉で我々になじみが深いですね。これは、ある人の信用に属する一般財産によってされる債権の担保であり、特定の第三者が主債務者に代わって弁済するものです。その特徴として、弁済がカクジツに得られるかどうかはわからないけど、人的担保に対しては無限の責任を追及できるというところが非常に大きいですね。



さて、次に「担保物権」についてお話しましょう。担保物権とは物的担保に分類される、まさに「担保として扱われるモノ」なわけですが、それには「法定担保物権」「約定担保物権」の二種類があります。


法定担保物権とは、文字通り「法律に定められたある条件がそろえば、法律上当然に成立する担保物権」のことでありまして、これにはこの次に勉強する留置権先取特権などがあります。


そして約定担保物権は、「債権者と担保提供者が担保設定契約によって成立させる担保物権」です。これには次に勉強する、質権抵当権などが挙げられます。



んで最後に担保物権の性質について、ちょっと法学的な知識を覚えましょう。


担保物権の性質

付従性がある

随伴性がある

不可分性がある

物上代位性がある。


随伴性はこないだ勉強しましたね。この場合、債権が移動すればそれに伴って担保物権も移動するということです。付従性とは、債権があるところに担保物権もまた存在するということで、逆に言えば、債権がないところには担保物権も存在しないということ。不可分性もこないだやりましたね。この場合、債権全部の弁済を債権者が受けるまで、目的物の権利を全て債権者が行使できるってことですよ。付従性と随伴性はソックリなので、よく意味の違いを理解しないといけませんねヽ(;´Д`)ノ


ただ、物上代位性っていうのはちょっと説明がいりますね。ここで用語チェック入るんですが、もともと物上代位っていうのは、「担保物権の目的物が売却などによって法律上または事実上カタチを変えたときに、担保物権がその変形したものの上に効力を及ぼすこと」です。売却などによってカタチを変えるといえばお金をすぐに思い浮かべることができるかと思いますが、要するに担保にしていた家なんかを債務者が勝手に売却して、「もう家がないから弁済できませんな」とか言っても、「いやいや、家を売ったお金を出してくれればいいですから」って言える権利です。


この「担保物権の物上代位性」というのは、優先弁済効力をもつ担保物権にのみ認められます。なんか用語チェック多くて恐縮なんですけど、優先弁済効力というのは「他の債権者に先んじて価値代表物から弁済を受けられる」効力です。これも次回からのお話になるのですが、例外として、留置権は優先弁済効力を有しておりません。留置権の留置とは、文字通り「とどめおく」ことですが、要するに「お金払うまでこのチャリを預かっておくからね」というようなことで、こうした留置的効力は、担保物権全般に認められる性質です。なんでそんなことをするのかというと、債務者に心理的圧迫を加えて弁済を促すためであり、また担保物権には追求効がありますので、いくら目的物がどっかに譲渡されてしまったとしても、どこまでも「いや、それは担保ですから」って権利行使してゆくことができるという、債権でありながら物権のような効力を持つという非常に強力な面を持っています。


さて、次回は留置権について詳しくやってまいりますので、楽しみにしていてくださいヾ( ´ー`)




用益物権

恒例の用語チェーック!(`・ω・´)シャキーン!


用益物権

=他人の土地を、自分の一定の目的のために使用させてもらう物権のことです。


その種類

地上権

地役権

(永小作権、入会権、特別法による採掘権、鉱業権、漁業権も含む)



◆地上権


まずは地上権について説明したいと思います。これは民法の265条にそのまま書いてあることですが、地上権とは端的に言えば「他人の土地で工作物や竹木を所有するために、その土地を使わせてもらう権利」です。


地上権を取得する方法は契約。それ以外のやり方で地上権を取得したいと思うなら、時効取得という手もあります。取得時効の要件は、①土地を継続的に使用しているという外形的事実に加え、②地上権が欲しいという意思が客観的に表現できていること、この二つです。


ただ、前に所有権の時効取得をやったときに、土地の所有権の時効取得は「所有の意思をもって継続的に」というカタチの占有が必要要件だって話をしたかと思いますが、ここで「これって地上権とゴッチャになるんじゃね?」というギモンがわいてきますね。しかし、実際に所有権の時効取得と地上権の時効取得は話がべつです。ちょっとレベルの高い知識になりますが、地上権の時効取得の要件は「所有の意思をもって権利の行使を継続する」というカタチの占有が必要であり、これら両者は一見同じようにみえて、実は文言の解釈に微妙なズレがあるとされています。つまり、同じような占有でも、所有権の時効取得の時は自主占有と認められても、地上権の場合はそれが認められない場合があるということですな。


それはどういうことかというと、単に「土地を使わせてもらう権利」を取得する過程で、ちゃっかり所有権まで時効取得しちゃうってのは、いくらなんでも土地の持ち主が可哀想じゃないですか。例えば自分の土地に国が「電線をひきたいのだ」とかいって申し出てきたとします。「ああ、いいっすよ」ってこちらは快くOKするんですけど、悪意の取得時効の要件を満たす20年後に、いきなり国が「私たちは所有の意思をもって継続的にアンタの土地を使わせてもらったので」とか言って、わたしの土地を当たり前のようにのっとっちゃった。…なんてことが合法ってことになったらヤバイですよね?だから所有権の時効取得と地上権の時効取得は区別されておるというワケです。


次に地上権の特性について。まず地上権は、その権利の持ち主に処分がまかせれているため、土地の持ち主の許可なしに譲渡でもなんでもバンバンすることができます。また土地の占有が可能。民法269条には、「地下や空間に地上権を設定するのもOK」とされている。空でラジコンを飛ばす権利とか、井戸水を掘る権利って言い換えることもできるってわけだな、地上権は。


そして、所有権には物権的請求権も認められます。物権的請求権とは何でしたか?これは物上請求権とも言われ、①返還請求権、②妨害排除請求権、③妨害予防請求権の三つがありましたね。最後に、地上権はその存続期間に制限はありません。だから、未来永劫ずっと井戸水を使わせてもらう永代地上権も許されちゃうのです。



◆地役権


地役権とは、「他人の土地を自分の土地の便益に供する権利」であると民法280条に定められています。わかりやすく言えば我田引水ってやつだよな。自分の田んぼに水をひくって故事だけど、地役権にはちゃーんと「水利地役権」ってのがあって、他人の土地から水をひく権利が本当に成立しているんですな。あとほかにも「通行地役権」やら「眺望地役権」やら「汲水地役権」などなど、地役権には種類がたーっくさんあります。ここで用語チェーック


要益地=利益を受ける自分の土地

承益地=利用させていただく他人の土地


地役権の特徴としては、随伴性不可分性があることが挙げられます。随伴性とは、要益地に対して地役権がくっついているということで、例えばわたしに誰かが「その要益地を買いたいんだけどナァー…」と言ってきたとして、わたしは快く「いいよん」と了解したとします。だけどわたしは内心「でも地役権はわたしのもんだ」と思ってる。でも、地役権には随伴性があるため、要益地を売ったら、地役権はその要益地に付随しちゃうってことですな。また不可分性というのは、地役権を切り売りできないことです。どういうことかというと、ちょっと図で説明しましょうか。


要益地の切り売りの図


図で黄色の部分が要益地です。この要益地が、上の承益地にある井戸水を使う権利(汲水地役権)をもっているという図なんですが、黄色の土地である要益地の持ち主であるわたしは、「もうこの土地イラネ」と思い、SさんとMさんに要益地を売りさばいちゃいます。だけど、上のように地役権を分断することはできないヨ、というのが、地役権の不可分性です。これ以上説明不要ですね(*^-^)b


つまり、黄色の土地を分け合ったSさんとMさんは、なかよく井戸水を使わなくちゃならなくなった。ここで、要益地が共有されている場合の地役権の時効取得についてお話したいと思うのですが、もしSさんが運良く承益地を時効取得することができた場合、Mさんはどうなるのでしょうか?ハブられちゃうんでしょうか。答えは、「Mさんも時効取得できちゃ」います。これは民法284条に書いてあるのですが、要益地が共有されている場合、一人が地役権の時効取得をすると、他の共有者みんなも時効取得したことになります。また、民法292条にはそれと全く別のことが書かれてて、一人が消滅時効の中断または消滅時効の停止を行えば、他の共有者みんなにもそれと同じ効果が及ぼされます。そして極めつけが284条2項で、取得時効の中断を単独でしようと思っても、それは共有者全員に対してしないと意味がないというものです。


ここまでくればピンときますね。つまり、地役権は「発生し易く消えにくい」んです。「しめしめ、俺だけ時効取得しちゃうもんね」と考えてたら、「いや、みんな時効取得したことになります」とくるし、「時効なんて行為、人としてダメだろ」って思っても、時効の中断をするにはいちいちみんなに「いいよね?」って聞かなくちゃならない。「もったいないだろ」って言われれば、それでオシマイ。また、自分の地役権を犯そうとしてくる外敵から、いくら必死に自分の土地が消滅時効にかからないように孤軍奮闘しても、それはみんなのため。「おまいらのために頑張ったよー!」って言っても、「あ、そうなん?」くらいにしか思われなかったりしちゃったりなんかしたりして、もはやアガペーっすよ、アガペー無償の愛ですねヽ(;´Д`)ノデスネー




所有権②(おわり)

まずはじめに用語チェーックヽ(`Д´)ノウオオオオ


持分権(もちぶんけん)

=共有関係において、共有物に対しおのおのの共有者が持つ権利のこと。所有権が他の共有者の持分権のために量的に制限された状態であるとされる。質的には完全な所有権であるから、持分権者は単独で保存行為ができ、その持分を自由に譲渡できる。また単独で、共有物又は持分権に対する侵害を排除し、持分の確認を求め、取得時効を中断させることができる。



まずはここからです。例えば☆型の家があったとしますね。5つの頂点それぞれに部屋があって、5人が別々にその部屋を持ってる。5人はそれぞれ自分の部屋に対して権利をもっていますから、自分の部屋は他人に譲渡することが自由にできるってことだ。


256条にはこんな決まりもある。「各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるけど、5年以内なら分割しない期間制限を設けることもできるよ。またその契約はその範囲内で更新することができるからね」と。持分権者は、分割請求権も持っているっていうワケですね。



さ・て。大原則をここではお話したので、次は「こういう場合もあるよ」ってのを説明したいと思います。



まずは含有について。

これを説明するためにはいっきに所有権から債権にとんで676条を見なくちゃならないんですが、条文によると「組合員は組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合および組合と取引をした第三者に対抗することができない。また組合員は、生産前に組合財産の分割を求めることができない」とあります。


これは、持分権の原則とは違いますね。持分権の原則では、自分の持分についての処分は自由だし、分割請求だって自由でした。組合契約においては、そのふたつがカンタンに否定されちゃってます。ただ持分が存在するだけ。でも、これじゃあ「わが組合のために!」っていう精神のために、持分のある個人がないがしろにされてんじゃね?っていうギモンがわいてきて当然なのですが、実は民法681条には、「組合を脱会した人の持分については、組合財産の状況にしたがってされること」が求められており、さらに「持分の変換は金銭によるペイバックが可能」とあります。



つぎに総有について。

総有は含有と違って、そもそも持分というものが潜在的に存在しません。わかりやすく言えば、目的物に対して利用権や収益権があるだけの場合です。


ここで用語チェキラッヽ(;´ω`)ノグワアー

「権利能力なき社団」

=社団法人と同様の実体をもつが、法人格を認められていない団体。設立中などで未登記の団体などがこれに当たる。法人格をもたないが、できるだけ社団法人の規定を類推適用することが妥当と解されており、社団の財産は社員に合有的または総有的に帰属する。ただし登記は代表者名義でするほかなく、民事訴訟の当事者となりえることは、名文で認められている。また権利能力のない社団のうち、代表者または管理人の定めのあるもので一定の収益事業を営むものは、法人税法などの税法上、法人とみなされている、と。長いっすね。


ここでは社団の財産が総有的に社員に帰属する場合のことを考えてゆきたいんですけれども、例えば「ゲートボールを楽しむ会」というのがあったとしますね。とりあえずその会の設立にあたって、長老的人物が「みんなで金をだしあってボールを買おうじゃないか」と言い出したとして、みんなしぶしぶ「仕方がないよな…ゲートボールのためだ」って金を払ったとする。まあそんなこんなで道具もそろってゲートボールができるようになってみんな喜んでいるわけだけど、なかには「やっぱツマラン」って思ってるバアさん(トメさん)もいるわけで。そんなバアさん(トメさん)が、「アタシやっぱりやめます。つきましては、アタシが出したぶん(金を)の道具は返してもらいますからね!」とかいって、目に涙を浮かべながら抵抗する長老のクラブをガッとひったくっていく、こういうことができるかできないかってことを考えていただきたいんですが、もちろん用語チェックにあるように、そんな横暴はできませんよね。総有とはそうゆうことです(・ω・)b



さて、次はもっと細かく共有物の管理などについて説明してゆきましょう。



まず、共有物の使用に関しては、全ての共有者が共有物全ての使用ができること(249条)。そして252条で、共有物の使用収益の方法は共有者間の協議によって決定、過半数で決せられるが、その割合には持分の価格が反映される(国連が共有物だとすると、拠出金をたくさん払ってる国に発言権があるということ。現実はそうじゃないけど)ということが規定されています。


また252条の但し書きには、「ただし保存行為は各共有者ができる」とありますが、これは「共有者が個別にできる」という意味です。どういうことかというと、この但し書きは「所有権が妨害されるのは極力防がれなくてはならない」という考えが反映されており、例えば☆の家の4頂点の人が全員海外に出張にいっており、知らない間に家に不法占拠者が住むような状況を許していたとしても、最後の1頂点の人が「この家は私等のものですから」ってしっかり主張することで、時効取得なんかされないようにできるっていうことです。


最後に、251条には「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることはできない」とありますが、これはあたりまえですね。例えば☆の家のある頂点だけが、壁にウンコの絵を書き散らしたとします。他の頂点のひとたちは「コラッ」って怒るわけだけど、その頂点の人は「これは芸術です」って言い張る。でも、そういう単独行為によって、☆の家という共有物全体の利益が損なわれてしまうのは目に見えていますよね。だから、みんなの同意がいるっちゅうことですな(;´Д`)ノ




所有権①

所有権とは…(`・ω・´)シャキーン


特定のブツを法令の範囲内で自由に扱い、収益及び処分できる権利――民法206条(第三章のはじまり)



人が所有権を有するに至るには…


①法律行為、②法律規定、③事実行為、④自然法則による。①だったら売買契約、②だったら相続、③だったら貝殻を拾う、④だったら作物が育つ、といったものを想像するといいだろう。



でも、所有権とヒトコトに言ったって、いろんな種類がある。例えば下のような


添付

=所有者を異にする二つ以上のブツが結合して一つのものができること


合体ロボットなんかはそうだよね。足の部分が「今日は風邪で休みます…」とか言ってサボタージュしたら、ガオガイガーなんかは怪獣を倒せないからね。



添付にはいろんな種類がある。それを細かく見ていこうか。



混和(245条)

=混ざること (例えば水とカルピスの原液)



加工(246条)

=手を加えること (木材で家を建てる)


この加工は少しおもしろい。まず一条で、原則として加工物の所有者は、材料の所有者(つまり金をだした人)に帰属するんだけど、加工することによってそのブツが著しく価値を高騰し、その価値が材料費を上回る場合において、加工した人がその加工物の所有権を得ると1項で規定されている。


また2項では、1項のシチュエーションにおいて、加工者が材料費の一部を負担している場合は、その高騰したぶんの価格プラス加工者が支出した材料費が、もともとの材料の所有者が支出した材料費を上回る場合において、加工した人がその加工物の権利を得るとある。


つまりだな。例えばある高名な陶芸家の人が近所の田んぼで粘土をかってに持っていってだね、見事なお皿を作ったとする。そのお皿は実に見事に完成しちゃって、世間では「500万はくだらない」と言われるようになった。そこに農家の人が、「見てましたよ…。あなたウチの粘土をかってにもってっちゃったんだってね。その皿の材料はウチのなんだから、その皿はワタシがいただかなくてはなりませんネエ…」といってきた。そういう場合に、この条文が生きてくるというわけですな。



付合(243条、244条)

=ブツがくっつくこと (混和とは違う。まざるんじゃない。下記説明)


動産バージョン

所有権を異にする数個の動産が、符号により損傷しなければ分離することができなくなった場合、その合成物の所有権は主たる動産の所有者に帰属する。また分離するのに過分の費用を要するときも同様とする、と。


不動産バージョン

不動産の所有者は、その不動産に従として符合したブツの所有権を取得する。ただし、権原によってそのブツを附属させた他人の権利を妨げない、と。


※ここで用語チェック

権原=ある法律行為を正当なものとする原因。例えば他人の土地に工作物を設置している人が持つ地上権や貸借権など。なお占有については、正当か否かに関わらず、その人が占有するに至った原因全てを権原という。



動産で問題になるのは、「主たる動産の所有者」というもの。なんだそれは、と思われるかもしれないが、例えば椅子を思い浮かべて欲しい。友達をよんで「椅子作りに協力してくれないか?」といって、自分は本体を、もうひとりは塗装(ペンキぬり)をやったとして、どっちがメインかってこと。これは社会通念によって判断される事柄なんだけど、要するにそのメインの所有者が全体の所有者になるってことだ。


なお、244条には「付合した動産について主従の区別がつかない場合」についての記載があるが、この場合、「その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する」ことになってるのだ。


不動産の場合は、その土地の所有権をもっている者が、全ての支配者となるんだな。ただ用語チェックにもでてたように、その自分の土地に他人の権原が存在した場合、自分は他人の権利を妨げることができないので注意すべしってことだな。例えば土地の所有者に農地を借りていたとするじゃないか?そんで俺は頑張って耕作してネギとか作るわけだけど、そこに突然地主がでてきて「ハイ、全部俺のものね」とかいってネギもっていかれたらタマランでしょ?だからこの法律があるってわけだ。





占有権その②(終わり)

今回は前回やった占有権について、より細かい説明をしたいと思います。まず占有承継人についてですが、占有承継人とは文字通り「占有を受け継ぐ者」のことです。


民法187条1項:占有者の承継人はその選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。


民法187条2項:前の占有者の占有を合わせて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。


この条文は分かり易いので見ればすぐに理解できるかと思いますが、要するに占有を受け継ぐ時には、前の占有者の占有を受け継ぐかどうかは承継人(私)の自由ですよということです。ただし、仮に前の占有者の占有を受け継ぐとして、その占有に瑕疵があったならばその瑕疵さえも受け継いでしまうと。


呪い(瑕疵)のついたヨロイカブト(占有権)を受け継ぐとき、その呪いをもセットで受け継ぐか、それともお払いをしてしまうかってことですね。例えばAがある土地を善意で5年間無権限占有していたとして、その後占有承継人であるBがその土地を悪意で5年間譲り受けたとして、BはAの無権限占有の5年間(呪い)を主張することもできるし、主張しないこともできるというわけです。善意の場合の取得時効は10年で成立しますから(占有初期に善意でありさえすればいいんです)、BはAの無権限占有の5年間を主張することによって、見事その土地を所有することができるというわけです。


また占有の権利推定システムは時効システムと似ていて、186条2項には「前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有はその間継続したものと推定する」とあります。加えて同1項は、「占有は所有の推定は意思をもって、平穏公然善意であることを条件とする」とあります。


そして果実について。


民法189条1項:善意の占有者は占有物から生ずる果実を取得する。


民法189条2項:善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。


これも読んだまんまですね。これと関連して…


民法190条1項:悪意の占有者は果実を返還し、かつ既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。


民法190条2項:前項の規定は暴力もしくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。


これもまんま。つまり「この木苺は俺のものだ」と思って、山に生えてた木苺を木ごと引っこ抜いて庭に移植するのはOKということですね。でも後から「いや、それは私が植えたんですよ」とか言って山男が現れて、その人との争いに負けてしまった場合、こっちはもともと「人のものだとわかっていて木を引っこ抜いた」のと同じ扱いをされてしまうということです。そして、勝手に木苺をもっていっちゃった分の弁償は、しっかりと山男に対してしなければならない、そういうことですね。ここでもうひとつ、重要な条文を紹介します。


民法196条1項:占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要日を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得した時は、通常の必要費は占有者の負担に帰する。


民法196条2項:占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従いその支出した金額又は増加額を償還させることができる。ただし悪意の占有者に対しては、裁判所は回復者の請求によりその償還について相当の期限を許与することができる。(つまり悪意の占有者に「はやく金払え」っていわれたら、もともとの所有者は「もうちょっとまてよ」って云えるということ)


この条文の内容は通称「費用償還請求」と呼ばれ、悪意の占有者を保護する規定です。木苺を勝手に持っていった側にしても、やっぱり木苺の世話とかあるじゃないですか。場合によっちゃあ肥料なんかやったりして、普通に自生してる木苺なんかよりよっぽど発育がよかったり。だから、その分くらいは返せよと。なかには、「肥料は勝手にやったことで、元の占有者はそんなことされるのを望んでいないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、これって交番に届けられた落し物の財布に似てるんですよ。財布の持ち主がいくら「オセッカイだなあ」なんて云っても、現実に財布が拾われたことによって利益を得てるわけじゃないですか。費用償還請求というのは、つまり拾った分の10%の謝礼みたいなものなんだな。


最後に、占有訴権について説明をしておきたいと思います。


民法197条:占有者は次条から第二百二条までの規定に従い占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も同様とする。


民法198条:占有者がその占有を妨害された時は、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することが出来る。


民法199条:占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。


民法200条1項:占有者がその占有を奪われた時は、占有回収の訴えによりその物の返還及び損害の賠償を請求することができる。


民法200条2項:占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。但し、その承継人が侵奪の事実を知っていたときはこの限りではない。


民法201条1項:占有保持の訴えは、妨害の損する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。但し、公示により占有物に損害を生じた場合において、その公示に着手した時から1年を経過し、又はその公示が完成したときは、これを提起することができない。


民法201条2項:占有保持の訴えは、妨害の危険の存する間は提起することができる。この場合において、公示により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項但し書きの規定を準用する。


民法201条3項:占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。


民法202条1項:占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また本権の訴えは占有の訴えを妨げない。


民法202条2項:占有の訴えについては本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。


あー疲れた(;´Д`)ノ


これらの条文を端的な言葉で表すとすれば、占有の妨害排除請求権ですね。198条は占有保持に関する妨害排除請求権であり、199条は占有保全に関する妨害予防請求権200条は占有回収に関する占有返還請求権です。危険度の低い順に並べるとするならば、199条<198条<200条といったところでしょうか。199条、198条、200条の三条ともに、201条によって一年の権利行使期間の制限が設けられています。ちなみに占有権は物権ですが、この1年の期間制限のあるせいで、物権の特徴である物権的請求権(即時取得されないかぎり、どこまでも自分の物権を守るために相手を追及できる)ほど効果が強くないことを指摘しておきます。また200条2項但し書きは、悪意の承継人について規定してありますが、これには善意有過失も含むことができるんじゃね?との議論があります。しかし善意者ないしは有過失者への占有移転は、占有状態が平穏に落ち着いているからなされるのであると考えられるので、悪意には善意有過失は含まないとされています。


また200条のおもしろいところは、前のエントリーにも書いたように、自転車を盗まれた人が、町で偶然自分の盗まれた自転車が盗人によって勝手に乗られているところを、力ずくで取りもどしたら罰せられるという根拠条文となっていることです。202条を見てもらったらわかるように、占有の訴えは本権の訴えを妨げないし、逆もまた然りであると書いています。占有回収の訴訟に関して、自力救済をした側の人間は本権を占有回収に対する抗弁の根拠とすることはできないのです。厳しいようですが、自力救済ではなくて、ちゃんと民法200条の占有返還請求権を行使すれば、紛争は穏便に解決できるのですから仕方がありませんね(ノДT)


次回は所有権について勉強してゆきたいと思います(*^ー^)ノ 占有権、なかなかボリュームがありましたね。

占有権その①

法律には占有という考え方があります。占有とは、物に対して事実上の支配状態にあること。なぜわざわざこんなことを規定するかというと、無占有状態を作り出すのは危険だからです。例えばあなたの家のお風呂が誰のものでもない無占有状態だったらどうでしょうか?「ああ~お風呂入りたいわ~」と自分ちの風呂の扉を開けたら、どっかのおっさんが「いい気持ちですなあ」なんつって身体を洗わずに湯船に使ってる。「じじいコラ」って怒ると、「いや、この風呂は誰のものでもないから」なんて返される。こんな理不尽なことはありません。よって法律では、占有者が保護されることになっています。


では、その根拠は何なんでしょうか?ひとつに、民法が自力救済を禁止しているからというのがあります。自力救済ってのは、北斗の拳なんかで、メチャクチャに荒廃した世界を筋肉ムキムキの悪いヤツラが悪さしまわって、そのへんの町から食べ物とか娘とかを強奪していって、あとから現れた正義っぽい人が「許さん!」つって悪いヤツラをグチャグチャに殺しまわるようなことを指します。まあ確かに詐欺にあって変な商品を買わされたときなんかに、「許さん!」とかいって悪徳セールスマンを血祭りにできたらさぞ爽快なんでしょうが、現実の世の中でそんなことをしたらつかまってしまいます。自力救済が禁じられているひとつの理由として、一般人がするとミスる可能性が高いからです。それに万引きしたからといって、店主が「許さん!」といって硫酸の入ったビンを持って走ってくる世の中は、なんだか量刑が不当なような気がします。要するに世の中が世紀末英雄伝説みたいにならないために、自力救済は禁じられているのですね。


こういうことで、盗人なんかでも場合によっては保護されちゃうわけですね。チャリを盗まれて、「くそ~」と思っていたある日、街角で自分の盗まれたのと同じチャリがあったとして、それを無断で持って帰っちゃったら捕まりますから。ここにあるキズは俺のチャリであることの証拠だぜ!とか言ってもダメ。ここに占有者が保護される根拠のもうひとつがあるのですが、もともと所有権その他の本権を証明するのは極めて困難です。さっきの勝手に風呂に入ってたおっさんの話にしてもですね、「ここがアンタが所有する風呂だって証拠は?」なんていわれると、いちいち書類を持ち出さなければなりません。こんな自体を防ぐためにも、所有権などの権利の証明は外観保護によって負担が軽減されているのです。「いや、どうみてもウチのですから」で済むんですな。


さて、占有の様態についてはどのようなものがあるんでしょうか。占有には自己占有代理占有があります。自己占有は文字通り、自分ちの風呂を自分が所有している状態のことで、代理占有とは賃貸借の賃借人の現実の占有を通じて、賃貸人本人が間接的に占有する状態を意味します。占有とは、実際に手元にあるといった現実の所持を問わず、実際に物を支配している状態のことを指します。よって自己占有も代理占有も物を支配している状態という意味では同じ訳ですが、占有補助者となると話が変わってきます。占有補助者とは実際に物を占有しているわけではなくて、あくまで本当に物を占有する人を補助する機関ないしは道具とされている人のことで、コンビニのアルバイトなんかがそうです。別にレジにたってお店を任されているからといって、お菓子とかが全部自分の物だってことにはなりませんよね?


また自己占有や代理占有とは別の概念で、自主占有他主占有という概念があります。自主占有とは、客観的に他者を排除する様態で行う占有であり、他主占有とは自主占有以外の占有です。例えば賃貸借の賃借人が部屋を占有しようとする状態は、自己占有でありかつ他主占有ですよね。もし賃借人の占有が自主占有だったら、明らかに借りている部屋をのっとろうとする意思がみとめられるわけですが、実は他主占有を自主占有に転換する要件についても法律は規定しています。


民法175条:権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が自己に所有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原によりさらに所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は変わらない。


つまり、ある日突然賃借人が「この家は俺のもんや」といって叫びだしたり、賃借人が所有者から家を買い取ったりした場合、他主占有は自主占有となります。法律家はできるだけ条文を通じて、現実の揉め事をスタイリッシュかつ重厚に表現することが求められていますが、私はそういうことができないので、こういう表現になっちゃいます・°・(ノД`)・°・でもわかりやすいはず!ヽ(`Д´)ノ


次、占有権の移動について。占有の取得の方法には、原始取得承継取得というものがあります。原始取得というのは、海岸で誰のものでもない貝殻を拾うような行為であり、承継取得とは引渡しによってなされる取得でありマス。以下は、承継取得における引渡しの様態について。


民法182項1項:占有権の譲渡は占有物の引渡しによってする。

同2項:譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。


民法183項:代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人はこれによって占有権を取得する。


民法184条:代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにそのものを占有することを命じ、その第三者がコレを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。


ひとつひとつ噛み砕いて説明してゆくと、まず民法182条1項は「現実の引渡し」と呼ばれます。これは手渡しとかですね。同2項は通称「簡易の引渡し」。これは「借りてたゲーム返すよ」「いや、もう飽きたからお前にあげるよ」というようなケース。この「あげるよ」という意思表示が発せられた瞬間に、ゲームの占有権は引き渡されたわけですね。これを法学部風にカッコよく表現すると、既に占有を得ている者に対抗要件を得させるということです。つまり他主占有が自主占有になるってことですね。


つぎに民法183項、これは「占有改定」と呼ばれます。すごくわかりやすく言うと、「おじいちゃん、その日本刀、本当にくれるの?」「ああ、これはタダシにやろう。その代わり、おじいちゃんが死ぬまで手元に置かせといてくれるかい?」「うん!」というケースなんかがそうです。いちおう占有は孫へと移動するのですが、現実の所有はおじいちゃんに残るって場合ですね。


ラスト、民法184条、通称「指図による引渡し」。「明後日には三河屋さんがとりにくるだろうから、酒を東京の倉庫から大阪にうつした上で、あずかっといてくんない?」「おk」「あー、三河屋さん?今ヤマト運送さんに準備させとるから、明後日大阪にきてよ」「ちわーっす」という場合です。最後のやりとりの段階で、現実の所持は三河屋さんにあるということですな。要件は譲り渡し人(代理人じゃないよ)から第三者への意思表示と、第三者の承諾ですね。


占有権については、ここでいったん終わっときます。最後にひとつ付け足しておきますが、条文には書いていないのですが、相続によっても占有は移転します。これは一時期論点となったのですが、当然移転するとされます。なぜなら最初にも述べたとおり、無占有状態が生まれるのは非常に危険であることに加えて、社会通念上、被相続人の支配は当然に相続人に承継されるという慣習があるからです。次回は、もうすこし占有権について説明をしていきたいと思いますヽ(;´Д`)ノ


混同

民法179条1項:同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する。但し、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときはこの限りではない。


同2項:所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した時は、当該他の権利は消滅する。この場合においては、前項但し書きの規定を準用する。


同3項:前二項の規定は、占有権については適用しない。


民法520条:債権及び債務が同一人に帰属した時は、その債権は消滅する。但し、その債権が第三者の権利の目的である時はこの限りではない。


179条520条は、それぞれ物権債権についての「混同」という法律要件について規定しています。


混同について、179条を用いる分かり易い例を挙げると、例えば抵当権のついた建物を債権者が購入した場合。自分の建物を抵当に入れるのは変ですね。よって抵当権は所有権との混同によって消滅します。


520条については、例えば子供が親に借金をしていたとして、その親がガンかなんかで死んで子供が財産を相続した場合、債務が混同によって消滅します。


また、179条も520条にも但し書きがありますね。これはどういうことかというと、債権が第三者の質権の対象になっていたり、差し押さえられていたりする場合。もっと面白い例を挙げると、ある物権をAが借金のカタに抵当に入れたとして、Bがその物権の1番抵当権者となり、Cが2番抵当権者となったとする。そしてBがその抵当目的物を売買によって取得した場合、Bの抵当権は消滅しません。なぜかというと、Bの1番抵当権が消滅してしまうと、Cの2番抵当権が生きてくるからです。これとは逆に、Cが抵当目的物を購入した場合、Cの抵当権は消滅します。なぜなら、もともとCはBに優先できないからです。またBがAを相続した場合、債権と債務が同一人Bに帰属しているので、債権の附従性によってBの担保権は消滅します。


今日は混同について勉強しましたヽ(;´Д`)ノ

明認方法

世の中に現存するものは普く動産と不動産に分けることができますが、その二つの区分だけでは取引の際に困難が生じる場合があります。例えば林業なんてどうでしょうか?私が秋田にある山を所有しているとして、そこに生えている杉をある建築業者に売りたいとします。しかし前にも勉強したように、土地の定着物は不動産であるため、所有権の移転を示す公示手段としては登記しかないことになってしまいます。しかし私が建築業者に登記を移転してしまうと、杉どころか土地まで持っていかれてしまうという困ったことになると。


そこで、明認方法というものが考え出されました。これは第三者に対して対抗力を有します。具体的には、杉の木ひとつひとつに墨で「これは俺の木です」とか「○○建設所有」などと書いたり、立て札をしたりすることで、この杉は自分のものですという表示をすることです。杉が二重に譲渡された場合などは、明認方法を備えたものが勝ちますね。ただし、水性ペンで書いていたせいで表示が消失してしまった場合は、明認方法の効力も消滅してしまうので注意が必要です。


また、明認方法は取引の客体が土地と関係の無い定着物である場合にのみ使えます。つまり、土地と定着物がセットで取引される場合、明認方法のみを備えたAと、登記を備えたBとでは、Bのほうが保護されるというわけですね。

動産物権変動

この間は不動産の物権変動について勉強しましたが、ここでは簡単に動産の物権変動について扱いたいと思います。不動産において採用されている考え方は公示の原則でしたか、それとも公信の原則でしたか?不動産においては、登記に対抗力をもたせることによって、間接的に公示の原則が採用されていましたね。


動産における物権変動では、公信の原則が採用されています。なぜか?例えば私が預かり物のPSPを勝手にゲーム屋に売ってしまったとします。動産の物権変動における公示とは「引渡し」のことであるため、そこにはPSPを預かった私に占有の事実が生じてしまいますが、それではまるで私がPSPの所有者であるかのような紛らわしい外観を作出します。これでは引渡しによる占有を公示とする意味がなくなってしまいますので、占有に公信力が与えられたというわけです。


民法192条:取引行為によって、平穏公然に動産の占有を始めた者は、善意かつ過失がないときは、即時その動産について行使する権利を取得する。こういうワケですね。


動産の即時取得をポイント整理すると、取引による取得が平穏公然善意無過失であることです。


最後に例外。もし私がPSPを落として、どっかの子供が「やったー」とか云って勝手に持って行っちゃった場合、私がPSPの返還請求ができるのは2年間の間のみです(民法193条)。またその子供が私の遺失物であるPSPをゲーム屋に売った場合、私がPSPの占有を回復するためには、店の人に代価を弁償しなければなりません(同194条)。つまり、モノは絶対に落としたりしちゃいけないってことですね。