非担保物権 | 制限速度20~30km/h

非担保物権

 勉強をしてゆく上で大切なことは、基本をしっかり理解したうえで例外を暗記することです。


 前のエントリーでは担保物権全般について勉強してきましたが、ここでは非担保物権を扱います。非担保物権とは、通常の担保権では満たすことのできない、現実社会の取引における慣習の要請に答えるために作られた担保権です。


 本エントリーでは、具体的に「譲渡担保」と「所有権留保」について勉強したいと思います。


 まず譲渡担保ですが、これは目的物を債権者に譲り渡す方法による物的担保です。具体的には目的物の占有を債権者に移転する譲渡質と、債務者が賃貸契約に基づいて引き続き占有する譲渡抵当の二種類があります。


 譲渡担保は、債権の担保のために財産権を譲渡するものであるから、例えばとても高価で生産性のある農機具の所有権を移転するかわりに、その見返りとして金銭を受け取るといったことが可能であり、その目的物である農機具の価額が非担保債権の学を超える場合には、その超える部分は債務者に返還されます。要するに、信用授受の目的を達する制度なのです。


譲渡担保の設定方法


①動産は占有改定

②不動産は登記



譲渡担保権の効果


①期間内にお金を返済できた場合

→ちゃんと所有権は債務者に返還される


②期間内にお金を返済できなかった場合

→目的物が処分されるパターン→精算金は債務者に

→目的物の所有権が債権者に移転→余剰金は債務者に清算



 譲渡担保のイイところは、主に三つあります。

①動産は占有改定による引渡しなので、動産抵当が実現されること

②競売手続きを踏まなくてよいので、弁済手続きが簡単なこと

③工作機械20台など、集合物をまとめて担保にすることができる


 逆にダメなところをあげてみましょう。

①譲渡担保は94条1項の虚偽表示にあたるのではという点

→なぜなら、金銭返済による目的物返還の合意があることと、担保目的以外で目的物を処分するから

②無占有質の禁止や、流質契約の禁止の原則に抵触する疑いがあること


※②の流質契約というのは、弁済期前に目的物を処分することで、これは譲渡担保を所有権的構成で見た場合有効となり、担保権的構成で見た場合無効となります。なぜ担保権的構成で見た場合無効になるかというと、94条2項や即時取得の制度によって取引の安全を図ることができるからです。



 次、所有権留保。これは売買などで、代金が完済されるまで、所有権を売主の元に留保しておく制度です。あれ?これは譲渡担保とどう違うのかな?ということですが、カンタンに言えば、所有権が移るのが譲渡担保であり、占有が移るのが所有権留保です。


この関係を債務者の視点から図示します

★譲渡担保 +占有権 +所有権

★所有権留保 +占有権 -所有権


 所有権留保は、割賦でモノを買うときなんかに行われる取引の形態であると覚えておけばよいでしょう。




 次回、債権総論です。これでカンペキに担保物権総論の基礎が終わりました。張り切っていきましょう(*^ー^)ノ