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司法試験の問題(ヒトの名前は変えてあるヨ)

<平成6年度旧司法試験第2問>


山形は、第三者が所有する店舗を賃借りして「山形商店」という商号で営業をしていたが、これを廃業し、店舗賃貸借契約を解除した。その後、山形の従業員であった太田が、当該店舗の所有者と新たに賃貸借契約を締結し、そのままになっていた店舗を利用することによって、山形に了解を求めることなく「山形商店」という商号で同種の営業をした。


山形の廃業後に山形の営業であると思って「山形商店」と取引した平は、山形に対し取引上の債務の弁済を求めることができるか。


また、山形は太田に対して「山形商店」の使用の差し止めを請求することができるか。


まず、平が山形に対して取引上の債務の弁済を求めることは、山形と平の間にはなんらの取引がないために、原則不可能となる。


では山形は14条によって、名板貸人としての責任を負わないか。この点14条は名板貸人の責任の成立要件として、名板貸人による商号使用の許諾がないといけないとしているため、14条を直接適用することによって、平は山形に名板貸人の責任を追及できない。


では、14条の類推適用は可能だろうか。


<判例>では、ある商号を用いていたものがその営業を終了し、変わって他のものが同一の商号を使って営業を始めた場合、後主の営業が前主の営業と同じであれば、前主は責任を負うとしているが、これは取引において紛らわしい外観を信頼した者を保護するために、かつて商人だったものがその当時用いていた商号を名板貸する場合も14条適用の対象となるという趣旨である。その具体的な要件としては、


①名義を借りた人が、名板貸人の商号を使用するという外観の存在
②その使用を許諾した名板貸人の責任
③第三者がその外観を誤認したこと…の三つがである


①については、太田が山形の商号を使用し、さらに同種の営業を行っていることから、その要件が認められる。②について、山形は太田の営業を許可していたといえるだろうか。これに関して、14条の趣旨から、許諾は明示のものだけではなく黙示のものでも足ると考えられるため、山形による黙示の許諾があったと認められれば、②の要件が認められる。そして③だが、平が誤認したといえるには、判例は「善意無重過失」で、山形が取引主体であると信じていればよいとした。これについて、本門においては肯定できる。


したがって、山形に黙示の許諾があったと認められる場合には、14条を類推適用することができ、平は山形に対し、太田との間の取引上の債務の弁済を求めることができる。


また、山形は太田に対して、「山形商店」の商号使用の差し止めを請求することができるのかについて、12条2項の適用可否が問題になる。この点12条2項は、商号が登記されているのか否かは問うておらず、また商号の差し止め請求権の主体は、「商人」に限るとしているので、すでに廃業している山形に対して12条2項を直接に適用することはできない。


ただし、上記のように、商法14条が類推適用されることで、既に廃業しているものが名板貸人の責任を負う可能性がある場合には、自己の商号の使用を差し止める必要がある。


したがって、14条が類推適用される虞がある場合には、山形は12条2項の類推適用により、太田に対して自分の商号の使用差し止めを請求することができる。

名板貸と商号

商号と名板貸についてだよ。商号ってのは、ト○タ自動車株式会社、みたいなやつだね( ´艸`)



◆ 商号とは?


商号とは、商人が営業上の活動の際に自分を個別化するために用いる名前のことである。
11条1項によれば、商人は商号を自由に決めることができるとする。


ただし、商号は商人の信用の対象になるので、ある程度の制限がある。


12条は、他の商人と誤認されるような名称はつかってはならないとし、それに違反する場合は、同条2項にて、それによる侵害の停止または予防を請求することができるとする。また、商号には「株式会社、合名会社」などの文字を使用しなくてはならないと定めるのは、会社法の6条である。そして、商号はひとつの営業についてひとつでなければならない。



◆ 商号の譲渡


商号は財産的価値をもつので、当然に譲渡が認められると考えられるが、一般人は、商号がいっしょであれば営業もいっしょであると思うのが普通であるため、15条は、商号は営業とともに、または営業を廃止する場合にのみ譲渡することができるとしている。



◆ 名板貸とは?


名板貸とは、自己の商号を使用して営業をすることを他人に許可することである。


14条によると、名板貸人の責任は、自分を営業主だと勘違いをして取引してくる相手に、その取引によって生じた債務を名板借人といっしょに連帯して弁済することだとある。


その要件は、
① 名義を借りた人が名板貸人の商号を使用するという外観の存在
② 名板貸人が商号の使用を許すこと、つまり名板貸人の帰責性
③ 第三者がその外観を誤認したこと
…の三要素である。


①については、商号以外の名前を使った場合にも、名板貸人の責任は成立するとする。たとえば、「サタン株式会社」が、「サタン株式会社チキチキ営業所」という名称を使うことを許した場合などがそうである。また、14条を見ればわかるように、名板貸人と名板借人の営業が同種でなくてはならない。


<判例>では、「現金屋」という商号で電気店を営んでいたものが廃業し、その後その知り合いが同じ店舗で同じ商号を用いて、食料品店の経営を始めた事案において、特段の事情がない限り、商号の使用の許諾を受けた人の営業がその許諾をした人の営業と同種のものでなくてはならないとしている。


②については、積極的に許諾をした場合だけじゃなくて、黙示的に許諾した場合でもいいとする。だから、他人が自分の商号を勝手に使っていることを知っておきながら、まあいいやと漫然と放置していた場合などは、その責任を免れない。


③について、<判例>は、相手が善意であれば、過失であっても保護されるとするが、重過失の場合は保護されないとする。



◆ 14条の「商号許諾者の責任」と会社法354条の「表見代表取締役」の関係


会社法354条の、表見代表取締役の規定を会社の取締役以外の人に類推適用できるのだろうか。<判例>では、会社の使用人、つまり従業員については、会社法354条の類推適用を認めるべきであるとしている。



◆ 名板貸人の責任の範囲は?


14条は、名板貸人は、名義を借りたものと連帯して責任を負うとする。


<判例>によれば、取引によって生じた債務のほか、債務不履行による損害賠償なども含むとする。不法行為に基づく損害賠償については、それが取引行為に関連するものに限って、名板貸人は責任を負うという風に判事されている。



◆ テナント契約と名板貸人の責任


スーパーマーケットが、ペットショップをテナント店として入居させていた事例で、ペットショップでオウムを買ったお客さんがオウム病にかかり、お客さんはスーパーマーケットに名板貸人の責任を追及した。


これに関して<判例>は、
① 営業主体の誤認もやむなしというような外観の作出
② 商号を許したことと同視できる程度の帰責理由の存在
があれば、その責任を認めるとして、実際にスーパーマーケットの責任を認めた。



◆ 商号の保護


商人が商号に関してもつ権利を商号権という。


それには積極的商号権と、消極的商号権があり、ひとつは他人の妨害を受けることなくその商号を使用する権利であり、もうひとつは、他人が不正な競争の目的をもって同じかもしくは似たような商号を使うことを排除する権利である。


<判例>では「更科」と「更科信州屋」が似ていることについて争われた事案がある。


結論としては、「更科」という部分が両者の商号にとって重要な意味を帯びているのだとして、商号から受ける印象が非常に類似していることを理由に、片方が類似商号であることをみとめた。


ただし12条は、同一もしくは類似の商号であっても、登記自体は認められるとする。


要は、12条1項の「不正の目的をもって」することは駄目で、それによって営業上の利益を侵害されるおそれのある商人は、同条2項によって侵害の停止または予防を請求できるというものである。


また、13条は100万円以下の科料をも定めている。


そして損害賠償請求については、民法709条不法行為に基づく損害賠償請求か、不正競争防止法4条に基づいて行うことになる。

商法における登記

商法の登記は民法とどうちがうんだろう?しっかりチェックしてねヽ(;´Д`)ノ



◆ 9条1項の、第三者が登記に対抗できる「正当な事由」とは?


通説、登記は公の制度として尊重することが必要であるため、登記の対抗力については簡単に例外を認めるべきではないとしている。


それによれば、災害による交通の途絶のような客観的な事情のみが「正当な事由」にあたるとして、その範囲を非常に厳格に捉えている。



◆ 9条1項と民法112条の関係について


例えば「ゴッド株式会社」の代表取締役であったレイが、代表取締役を退任し、その退任登記もなされているのにもかかわらず、未だにレイが「ゴッド株式会社」を代表して、「ハチミツ株式会社」と取引を行った場合、「ハチミツ株式会社」は「ゴッド株式会社」の責任を追及できるか。


レイが退任後も代表取締役として取引を行っているのを「ゴッド株式会社」が漫然と放置していたという事情があれば、会社法354条の表権代表取締役の規定を類推適用して「ゴッド株式会社」の責任を追及する余地があるが、そのような事情がない場合に、民法112条の、代理権消滅後の無権代理の条文をつかって「ゴッド株式会社」の責任を追及できないか。レイの退任登記が既になされている以上、「ハチミツ株式会社」は善意とはいえず、民法112条は適用されないのではないかということが問題となる。


これにたいして、9条1項から考えると、退任登記が既になされている以上、第三者はそれについて悪意擬制されるのだから、第三者の善意を要求する民法112条を適用する余地はない。そして、9条1項は商人の取引活動の性質に対応するため、一般法である民法の特別法として商業登記の効力を定めたものであるため、一般法である民法の112条が、特別法である9条1項によって排除されるのはやむをえないというべきであり、この点<判例>同旨である。


よって、9条1項は民法112条に優先し、退任登記が既になされている以上、「ハチミツ株式会社」は民法112条を用いることで、「ゴッド株式会社」の代理権消滅後の無権代理の責任を追及することはできないと考える。



◆ 9条1項が適用される範囲は?


<判例>は、9条1項は典型的な取引について適用されるものであって、たとえそれが不法行為や不法利得であっても、取引行為と不可分に生じたものについては適用されるとする。


訴訟関係について適用されるかどうかは争いがあるが、<判例>は訴訟関係についても適用するとする。



◆ 不実の登記の効果


9条2項は、故意または過失によって不実の登記をしたものは、その事項が不実であるからといって、善意の第三者に対抗することはできないとする。この背景には、禁反言の法理ないし外観法理がある。


その責任を負うのは当然登記をした者であるが、<判例>はその登記について承諾を与えた者にも9条2項を類推適用することで責任追及できるとした。例えば、代表取締役を辞任したものが、辞任登記がまだ終わっていないのに、積極的に代表取締役として行動するとかいった場合、9条2項が類推適用できるとする。

商法ことはじめ、その2

商法総則part2だよ!事例問題を最後につけときましたヽ(;´ω`)ノ



◆ 商人資格が消滅する時期は?


会社法の場合、会社法476条、645条にあるように、それは法人格を失うとき、すなわち清算結了の時に商人資格を喪失すると考えられる。


自然人の場合は、営業的行為自体が終了したときでなく、その残務処理が終了したときに商人資格を喪失するとしているが、他の説もある。



◆ 商業登記の効果


9条1項によれば、登記すべき事柄は、それがたとえ存在していたとしても、登記をしたあとでなかればその存在を善意の第三者に対抗することができないとする。


ただし、登記前においても、悪意の第三者には対抗できる。


そして善意とは、第三者が取引当時に、登記事項である当該事実を知らなかったことをいい、その際には過失の有無は問わないものとする。


また、登記すべき事項が存在している場合に、それを登記したあとは、当事者は善意の第三者に対してもその登記を対抗できる。


ただしその例外で、第三者が「正当な事由」によりそれを知ることができなかった場合には、当事者は第三者に対抗することができないとするのも9条1項である。




◆ 商業登記の対抗力


例えばゴッド株式会社が商号をサタン株式会社と変更して、新たにレイが代表取締役として就任したが、商号の変更や代表取締役の就任登記はなされていなかった事例について。その後、代表取締役のレイが「サタン株式会社代表取締役レイ」という名義で約束手形を発行したが、その手形の所持者である菊池は、「サタン株式会社」は存在しないとして、手形の発行者であるレイの責任を追及し、そしてレイの代表権の存在を否定することで、レイに対して無権代理人としての責任を追及した。


会社の商号変更の登記がなされるまえに、新しい商号による手形の発行がなされた場合に、善意の第三者は手形の発行者である会社は存在しないのだと主張できるのか。また、会社の代表取締役の就任登記がまだ済んでいないのに、新しい代表取締役によって手形の発行がなされた場合に、善意の第三者は代表取締役の代表権は存在しないと主張できるのかが問題となる。


<判例>はこの点、手形の持ち主は会社の存在を否定して、代表者の個人の責任を追及することはできないとしている。なぜなら、商号登記のまえに新しい商号で手形を発行したことに関して、手形の発行者が善意の第三者に対抗できないのは商号を変更したという事実のみであって、会社の存在や同一性ではないからである。


また、自然人の場合でも通称による署名が認められるように、会社の場合で登記している商号以外の名称を使ったとしても、その記載が特定の会社を表示すると認められれば、その会社による手形行為であると認められるべきである。


したがって、「サタン株式会社」という記載が「ゴッド株式会社」を指すのだと認められる場合には、菊池はレイに、手形の発行人として記載された「サタン株式会社」は存在しないと主張してレイ個人の責任を追及することはできないと考える。


また、会社の代表取締役の就任登記がまだ済んでないのに、新しい代表取締役によって手形の発行がなされた場合に、善意の第三者は代表取締役の代表権は存在しないと主張できるのかについては、<判例>は代表取締役の無権代理を追及することはできないとしている。


なぜなら、会社法の908条1項、すなわち会社の登記に関する条文の趣旨は、取引の上で重要な事項を公示させることによって、第三者が不測の損害を被ることを防ぐというものであり、第三者である菊池は、レイが「サタン株式会社」の代表取締役であると信頼して手形を取得したと考えられるのだから、その期待通りにサタン株式会社のみが菊池に責任を負うことについて、菊池はなんらレイに対して不測の損害を被るといった立場になく、それなのにレイに対して無権代理の責任を問うのは、単なるタカリ行為であるというほかはない。


したがって菊池は、会社法908条1項による保護を受ける利益をもたず、レイの代表権を否定して無権代理人の責任を追及することはできない。

商法ことはじめ♪

まずは商法総則について勉強してゆきますヾ(@^(∞)^@)ノ頑張ってついてきてネ!


■ 商行為概念について


◆ 商人法主義
商人とは何かを定めてから、その商人の行う行為を商行為とする。


◆ 商行為法主義
商行為とは何かを定めてから、その行為を行うものを商人とする。


◆ 日本の立場
まず商行為とはどのようなものかを501条、502条で定め、4条でこの商行為を業とするものを商人としているが、他方同条2項で、店舗で物品を販売するものや、鉱業を営む物は商人とみなすという、擬制商人を定めており、これは商行為概念を離れた商人について規定するものであり、また503条で、商人がその営業のためにする行為は商行為であるとする付属的商行為を定めている。したがって、日本の商法は商行為法主義をメインにしつつ、商人法主義を加味したものであるということができる。



◆ 商人資格を取得する時期は?


会社の場合は、会社法49条にあるように、会社が設立されるとき、つまり設立登記をした後に商人資格を得る。
それに対して自然人の場合はどうだろうか。映画館の経営を計画したAが、開業資金とするため友達から金銭を借り入れたが、友達が弁済期を過ぎたのに五年以上何も請求してこなかった場合、Aは借りたお金を返す債務が522条商事消滅時効の「商行為によって生じた」ために、消滅時効にかかったと主張できるのだろうか。


Aがお金を借りた時点でAが商人資格をもつとするならば、503条は商人が営業のためにする行為は付属的商行為であるとしているため、522条の商事消滅時効にかかると考えられる。


この点<判例>は、表白行為説をとっている。この説は、商人資格を取得するためには、営業の目的である行為を一回でもしておかなくてはならないという必要はないが、営業の意思を外部に発表しておかなくてはならないとするものである。


思うに、どの段階で商人資格を認めるべきかという問題は、営業の意思が主観的に実現されているから、自分は既に商人であり、商人である自分が行う行為は付属的商行為であると主張する者の利益と、相手の利益を比べることによって判断できる。


そうなると、重要なのは相手が営業の意識を認識できたかどうかである。


<判例>では、開業の準備行為をなしたものは、その行為によって営業を開始する意思を実現したものであり、これによって商人の資格を得るとしている一方で、そのような準備行為は、相手方はもとよりそれ以外の者にも客観的にそれが開業準備行為であると認められうることが必要であるとしている。


これらの判例の考え方から、相手方が営業意思を認識できたかどうかに応じて、商人資格の取得時期を決めるべきであると考える。


具体的には、行為者の営業の意思が、開業の準備行為によって主観的に実現されれば、相手方は行為者の商人資格およびその行為の付属的商行為性を主張でき、また開業行為による営業の意思が相手方に認識され、また認識されるべき場合には、行為者も相手方に自らの商人資格およびその行為の付属的商行為性を主張できるものとし、さらに503条によって、商人であることが一般に認識されうる段階になれば、その者の行為には付属的商行為の推定が働くと考えるべきである。


したがって事案において、Aが友達に自らの開業準備行為によって自らの行為は商行為となったと主張するには、相手がそれを認識されるべき状況にあったことを証明しなければならず、他方で友達は、Aの行為は開業行為であると認識ができなかったことを証明しなければ、自分の貸し付けたお金は消滅時効にかかってしまうことになる。また、Aの行為が一般に開業行為であると認識されるべき段階にあったならば、Aの金銭借入行為は付属的商行為であったとの推定が働くことになり、Aの借入金の返済債務は商事消滅時効にかかる。

借地借家法

借地借家法は民法の特別法です。重要なので、暗記でぁ!ヽ(;´ω`)ノ


■ 借地借家法


その適用対象には、建物の所有を目的とする土地の貸借権および地上権と、建物の賃貸権の2つがある。前者の適用対象について、貸借権と地上権をあわせて借地権と呼ぶ。借地権をもつものを借地権者とよび、借地権者に借地権与えているものを、借地権設定者という。
この借地借家法は、一般法である民法の特別法として、その適用が優先される関係にある。
借地借家法3条によれば、借地権の存続期間は30年であり、契約によりこれより長い時間を定めることができる。
また、借地借家法10条によれば、借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、それをもって第三者に対抗することができるとし、このように容易に対抗要件を備えさせることによって借地権者を保護する趣旨であるとする。
そして、同法13条は、借地権の有効期限が終わったのに契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他、借地権者が権限により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。これは、権利者の一方的な意思表示によって法律関係を変動させる形成権であるとされ、借地権者の負う建物退去および土地明け渡し義務と、借地権設定者の代金支払い義務は同時履行の関係にたつとするのが判例の立場である。これは、本来ならすぐに建物を引き払って土地を明け渡すべきであるが、それでは借地権者が社会経済的に不利益な立場に立たされてしまうので、建物にした資本投下を借地権設定者によって回収させることにより、保護しようというものである。
そして、借地権設定者が、借地権者による借地権の譲渡や転貸を許諾しないときは、第三者は借地権設定者に対して建物の買取請求権を行使できるとする。19条1項によれば、借地権者が、貸借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合には、その第三者が賃借権を取得し、または転借をしても、借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者が、その賃借権の譲渡または転貸に同意しないとき、裁判所は借地権者の申し立てにより、借地権設定者の承諾にかわる許可を与えることができると定めている。
こうした規定に反する特約として、借地権者に不利なものを当事者間で定めたら無効となるとしているのが同9条、16条、21条である。このように、片方だけが強行規定に服するものを片面的強行規定という。
次に、借地借家法の適用対象のうち、建物の賃借権について考える。借地借家法29条は、期間を一年未満にしている賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなしている。民法604条の、賃貸借契約の存続期間を20年に制限する規定は、ここにおける建物の賃貸借については適用しないのである。また、建物の賃貸権は、その登記がなくても建物の引渡があったときには、その後その建物について物件を取得したものに対し、その効力を生じるとするのは借地借家法の31条1項である。なお、これらの規定も同法30条、37条により、片面的強行規定であるといえる。
他には、借地借家法33条は、造作買取請求権を規定している。これは、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳や建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申し入れによって終了するときは、建物の賃貸人に対して、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができるとする。これは土地の明け渡しの場合と違って、建物の賃借人の建物明け渡し義務と、賃貸人の造作代金支払い義務とは同時履行の関係にならないとするのが判例である。
また、同法34条1項は、建物の点貸借がなされる場合において、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申し入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができないとする。

贈与契約と賃貸借契約

贈与契約と、賃貸借契約についてやります(;´Д`)ノ


■ 贈与契約について
贈与契約は549条に規定のある諾性契約であるが、550条にあるように、書面によらない贈与は拘束力が弱いとされ、未履行の部分については当事者が撤回することができる。
551条によれば、贈与者は受贈者に対して担保責任を負わないが、贈与者がもともと贈与目的物の瑕疵や不存在を知っていながら受贈者に告げなかった場合には、担保責任を負うとする。また同条2項は、その贈与に何らかの負担がついていた場合、贈与者はその負担の限度において担保責任を負うとしている。
負担付贈与とは、受贈者が贈与者に対して、一定の義務を負う贈与契約のことである。これについては553条によれば、双務契約に関する規定が準用されるとする。例えば、家をあげるかわりに扶養してねという場合などがそれにあたり、受贈者がその扶養義務を怠った場合には、受贈者は541条の履行遅滞の規定を用いて、贈与契約を解除することができるとすうのが判例である。


■ 賃貸借契約について
規定は601条である。その契約の効果としては、目的物の所有権は賃貸人から賃借人へは移転しない。また目的物が不動産である場合、賃貸権については騰貴することができるが、特約がない限り賃貸人は登記に協力しなければならないといった義務を負わないとするのが判例である。
また604条によって、賃貸借の期間を定めることができるが、限界は20年である。その期間を定めない場合は、617条によれば、当事者の一方からいつでも解約することができ、その申し立てから解約までの期間は、動産なら1日、建物の賃貸借なら3ヶ月、土地の賃貸借については1年とする。期間の更新がない場合でも、賃借人が期間満了後にずっと目的物を使用し続け、賃貸人もそれについて何も異議をさしはさまない場合は、更新が推定されると619条1項は規定する。また559条によって売買契約の規定は有償契約に準用されるため、559条による570条の準用によって、賃貸人は賃借人に対して瑕疵担保責任を負う。そして、559条を561条に準用することで、他人の物を貸し付けた賃貸人は、賃借人に対して担保責任を負うとする。また、606条1項は、賃貸人は目的物の修繕義務を負うとする。そして608条は、賃借人が、目的物の改良のために支出される有益費や、目的物を維持するための必要費を拠出した場合には、賃貸人はその償還義務を負うとする。必要費については支出後ただちに償還しなくてはならず、有益費については契約終了後に直ちに償還しなくてはならない。


■ 賃貸借契約の続き
614条は、賃借人が目的物を使用・収益するにあたっての賃料を支払う時期に関する任意規定であり、これは当事者の特約によって変更可能である。
そして賃貸借契約が終わると、賃借人は616条により598条の規定を準用することによって、目的物の返還義務および原状回復義務を負う。賃借人が目的物に付着させたもので分離が可能であっても、それによる経済的損失が大きい場合は、目的物の所有者のものとなるが、一定の場合には賃借人は費用の償還を賃貸人に請求することができるとするのが、608条である。これにたいして、建物は土地に附合しないので、土地の賃貸借が終了すれば賃借人は自分の所有物である建物を片付け、土地を明け渡さなくてはならない。
そして、目的物の所有者である賃貸人は、賃借人の承諾なしにもおくて器物を第三者に譲渡することができる。賃貸人が第三者に目的物を譲渡した場合、第三者である新しい所有者は賃借人の目的物を使用・収益させる義務を負わないが、これはなぜなら賃貸人の地位は移転しないからである。新しい所有者は、目的物を占有する賃借人に対して目的物の明け渡しを請求することができるが、判例によれば、明け渡しの請求が権利の濫用となる場合がある。
また、目的物が不動産である場合、賃借権が登記されると、そのあとに目的物について新たに所有権を取得した所有者に対して賃借人は賃借権を対抗することができることについて、605条は定めている。したがって、新しい所有者が賃貸人となるわけだが、新しい所有者が賃貸人としての地位を賃借人に対抗するためには、所有権の移転登記を備える必要がある。判例は、賃借人は177条所定の第三者にあたるとしているのである。
しかしながら、賃貸人は賃借権の登記に協力する義務を負わないため、賃借人が協力してくれない限り賃借人は賃借権の登記を備えることができない。このような状況によって賃借人が土地を明け渡さなくてはならなくなるような売買の様態を、俗に地震売買とよぶ。
次に、賃貸借契約を解除するにはどうすればいいか。その要件としては、賃貸人または賃借人に債務不履行があればよい。判例は、信頼関係破壊の理論を用いており、例えば土地の賃貸借契約において、賃借人が目的物である土地にある建物に無断で増改築をすることを禁止する特約があるにもかかわらず増改築を行った事案について、増改築が賃借人の土地の通常の使用上相当であるという理由で賃借人に対する信頼関係を破壊するとまではいえないときは、賃貸人はその特約によって解除権を行使することは信義誠実の原則上、許されないとしている。ちなみに自分の行為が信頼関係を破壊するほどのものではないのだということを証明するのは、賃借人の責任である。
また、賃借人が無断転貸や賃借権の譲渡を勝手にやった場合612条2項は、賃借人による契約解除が可能であるとする。ただし判例は、そうした勝手な無断転貸をやった場合でも、賃貸人に対する背信的行為であるというほどではない事情があるならば、賃貸人による解除権は発生しないとした。また、当事者が互いに合意している場合は、賃貸借契約を終了させることができる。
そして、賃貸借契約の解除の効果は将来効であり、遡及効ではないとするのが620条である。なぜなら賃貸借契約は継続的な契約であるためである。そして解除によって、賃借人は解除した後の賃料を払う義務を負わないが、それまでの文の賃料の債務は消滅することはない。そして賃貸人にとっては、既に支払われた解除以前の分の賃料については給付の保持力があるため、お金を返す必要はないとする。ただし同条は、当事者の片方が勘違いしていた場合、相手に損害賠償の請求をすることも可能であるとしている。


■ 賃貸借契約の続き②
賃借人は、賃貸人の承諾がなければ賃借権の譲渡ができないとするのが612条1項である。承諾がないと、譲渡を受けた第三者は賃貸人に対抗することができない。ただし判例は、無断譲渡であっても、賃貸人の解除権が制限される結果、賃貸人が解除できない場合には、承諾があるのと同じであるとする。承諾があれば、第三者が新たな賃借人となる。
転貸においても、賃借権の譲渡とまったく同じであり、これは612条において記載されている。転貸の承諾があれば、もともとの賃借人は、賃借人である立場と賃貸人である立場を併存して負うこととなる。
また判例は、Aの所有物に関してAB間で賃貸借契約がなされ、その後BC間で転貸がなされた場合、ABで賃貸借契約が合意解除されても、原則として転貸人であるCには対抗できないとした。これに対し、ABの賃貸借契約がBの債務不履行を理由として543条により解除されてしまった場合、BのCに対する債務も履行不能となり、AはCに目的物の返還請求ができると考えられている。

売買契約partⅡ

ヽ(;´Д`)ノ前回の続きでありマス、大佐!


■ 売買契約の続き
買主が売主に瑕疵担保責任を追及するためには570条によって566条を準用する点については以前述べたが、不特定物について、買主がその瑕疵の存在を認識した上でこれを履行した場合には、買主は瑕疵のない物を給付することを売主に求めることができなくなってしまうとするのが判例の立場である。
瑕疵担保責任の法的性質は、法定責任説である。不特定物について瑕疵物の給付は履行にはあたらず、買主は売主の債務不履行責任を追及するが、特定物についてはその物の個性が重視されることで代替性がないことから、瑕疵のある特定物の給付は履行にあたって、買主は売主の債務不履行を追及できない。これをもって、特定物のドグマという。これを前提として買主を保護するために特別に法律の規定によって定められている売主の責任が瑕疵担保責任である。
それに対して、特定物について瑕疵があるものを給付するのは債務不履行であるとして、瑕疵担保責任の法的性質は債務不履行による責任であるとする説もある。


■ 売買契約の続き②
数量指定売買とは何か。これは、目的物に実際の数量が確保されていることを証明するために、一定の面積や容積、重量などがあることを売主が契約する際に表示し、かつこの数量を基礎として代金額が定められる売買であるとするのが判例の説明である。したがって、土地の坪数などの目的物の数量が契約のときに示されているだけでは、当然には数量指定売買であるとはいえず、一定の面積や容積、重量などを表示しておかなくてはならない。
数量指示売買をした物に不足がある場合、買主がその不足や滅失を知らなかった場合において、565条によって、563条、564条を準用することができる。具体的には、565条によって563条1項を準用し、買主は不足する部分の割合に応じて代金の減額請求ができ、また565条によって563条2項を準用することによって、買主が残存する部分では満足しなかった場合、買主は契約の解除をすることができる。また565条によって563条3項を準用することによって、買主は売主に対して損害賠償を請求することができる。
また判例は、売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示されていた場合でも、その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり、売買契約の目的達成を特に阻害するものではない場合は、当該土地が表示どおりの面積を有していれば買主が得たであろう履行利益について、売主は損害賠償を負わないとするのが判例の立場である。
また、565条の準用する563条の権利を、買主は事実を知ったときから一年以内に行使しなければならない。そしてこの除斥期間は、買主が売主の目的物の数量不足を知ったときから始まるが、買主が、その責任によらず売主が誰であるかを知ることができなかった場合は、売主が誰であるかを知ったときから始まるとするのが判例である。
そして、565条は数量不足の場合について書いてあるだけであって、数量指示売買において数量が超過する場合には、売主は565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することができないとするのが判例の立場である。
では、売買目的物に第三者の権利がくっついている場合はどうであろうか?566条は、売買目的物に地上権などの第三者の権利がくっついていた場合、善意の買主は売主に対して損害賠償でき、さらに買主は、そうした権利があることによって契約の目的を達することができないときには、契約の解除ができるとした。また同条566条2項は、売買目的物である不動産にくっついているはずの地役権がなかった場合や、あらかじめ賃貸借について登記があった場合などの場合においても1項を準用するとしている。そして同条3項は、これらは買主が事実を知ってから1年以内にしなくてはならないとしている。
また567条は、売買目的物に先取特権や抵当権がついている場合について定めており、それによって買主が所有権を失ったときに、買主は契約の解除をすることができることを定めたのが同条1項であり、さらに買主が自ら費用を出してその所有権を保存したとき、売主に対してその費用を返せと請求できるとしたのが同条2項。さらに、買主が実際に損害を受けたときに、その損害を売主に賠償させることができることを定めたのが同条の3項である。
では、目的物に隠れた瑕疵があった場合はどうだろうか。隠れた、というのはすなわち買主の善意無過失と同じであり、その瑕疵が明らかな場合は565条の一部滅失の問題となる。これについて、570条は、瑕疵の存在について善意無過失の買主は、損害賠償を請求することができるとし、570条によって566条1項を準用することで、売主の瑕疵担保責任について定めている。また570条は566条1項を同じく準用することで、貸しによって契約をした目的を達成することができない場合は、契約の解除をすることができるとした。
買主の権利の期間を、事実を知ってから一年以内と定めるのは、570条による566条3項の準用によるものである。

売買契約①

ここでは売買契約について勉強します。途中で問題をつけましたので、チャレンジしてみてくださいо(ж>▽<)y ☆


■売買契約について
176条によれば、物権の設定や移転は当事者の意思表示、つまり契約によってのみ効力を有する。そして、売買契約が成立したとき、560条により、他人の権利を売買契約の目的物としたとき、売主は所有権などの権利を取得して、買主に移転する義務を負い、これを売主の担保責任という。所有権などの権利の所有者は、勝手に自分の権利を他人に売買の目的物にされたからといって、権利を移転する義務を負わないが、その場合、勝手に他人の権利を売買の目的物にした者は、債務不履行責任として415条を追及されたり、543条の履行不能によって契約を解除されたりしてしまう。
また、561条は、売主が買主に権利を移転することができない場合には、買主は契約の解除をすることができるとする。ただし、買主が売主をさしおいて、直接に所有者から所有権を取得した結果、売主が履行不能になってしまった場合には、買主は解除権をもたない。そして判例は、この561条によって、売主が買主に権利を十分に移転することができない場合に、買主が契約の解除をする場合でも、買主は解除までの間に目的物を使用したことによる利益を売主に返さなくてはならない原状回復義務を負うとするのは、判例の立場である。
そしてまた、561条は、売買契約の当時に、所有権などの権利を売主が持っていないことを知らなかった善意の買主は、売主に対して損害賠償の請求をすることができる。したがって、もともと権利を売主が持っていなかったことを知っていながら売買契約をした悪意の買主については、売主の追奪担保責任、つまり売主が瑕疵なく権利を取得していなかったことに対して買主が売主に対して追及することのできる担保責任を追及できない。しかし判例は、売主に帰責の事由があれば、悪意の買主であっても債務不履行責任として売主に損害賠償請求ができるとした。
そして、562条1項は、売買契約の当時、自分に権利がないことを知らずに買主との間に売買契約を行った善意の売主は、買主に権利を移転することができない場合には、善意の買主に対して信頼利益の分だけ損害賠償をして、契約を解除することができるとする。またこれと同じ条件のもと、善意の売主が悪意の買主に対する場合、同条2項は、単に権利の移転をすることができない旨を売主が買主に通知するだけで、契約が解除できるとする。その場合、売主は既に悪意の買主から給付を受けている場合には、原状回復義務を負うのでお金を買主に返さなくてはならない。
基本的に無権利者からの買主は無権利者なので、他人の所有物を勝手に売買の目的物にした売主と契約をした買主が目的物の権利を取得することはないが、例外として、動産については192条により即時取得が可能であり、また不動産については94条2項を類推適用することによって例外的に買主は所有権を取得する。
では、権利の一部分が他人の権利に属するのに売買契約が行われた場合はどうなるのか。563条1項はその場合、買主が善意であるか悪意であるかに関わらず、不足する部分の割合に応じて売主に代金の減額を請求することができる。また同条2項は、残った部分のみでは買主は満足がいかなかった場合、買主が善意の場合に限って買主は契約の解除をすることができる。そして同条3項は、1項の場合でも2項の場合でも、善意の買主は売主に損害賠償の請求をすることを妨げないとした。
そして564条は、563条に基づいて代金減額請求や契約の解除をする場合、買主が善意の場合は事実を知ってから1年以内、悪意の場合は契約から1年以内に権利を行使しなければならないとする。
また567条は、売買目的物に先取特権や抵当権などがついていた場合、買主はいままでのように悠長に、売主に対し追奪担保責任を追及するのではなく、即座に契約を解除することができるとする。


<問題>A所有の土地についてBを売主とし、Cを買主とする売買契約がBC間で締結された。ABCの法律関係を論じよ。


176条によれば、物権の設定や移転は当事者の意思表示、つまり契約によって効力を有する。当事者の意思表示によって売買契約が有効に成立する場合、555条によって、売主は買主に目的物の引渡義務を負い、他方で買主は代金支払い債務を負う。ここで売主が所有権を取得している場合、売買契約によって買主に所有権が移転するが、560条において、売主が所有権を有しない場合には、売主は所有権を取得して買主に所有権を移転する担保責任を負う。
事案において、BはAから土地の所有権を取得してCに移転する義務を負う。もっともAはBやCに所有権を移転する義務はないため、Aが任意に協力しない限り、BのCに対する義務は履行不能となり、Cは所有権を取得しない。
債務者の責任によって履行不能がおこる場合、543条により債権者は契約の解除を行えるほか、415条によって債権者は債務不履行に基づく損害賠償を請求できる。
したがってBの責任によって履行不能がおこるときには、CはBに損害賠償請求ないしは契約の解除ができ、解除をすることによって代金債務を免れる。
そして、帰責事由がない場合であっても、他人の権利の売主には追奪担保責任が561条によって定められている。
Cはその場合、契約の解除をすることができ、なおかつ売買契約締結時にBが土地の所有権を持っていないことについて善意であったならば、Bに対して損害賠償を請求することができる。
またこれに対し、無権利者からの買主が例外的に所有権を取得する場合がある。不動産について無権利者があたかも所有権者であるかの外観を有し、それについて真の所有者に帰責性があり、さらに第三者がその外観に対して善意で信頼していた場合には、94条2項を類推適用することによって、無権利者からの買主は保護される。
以上の要件を満たしていれば、Cは土地の所有権を取得し、Aは所有権を失うこととなる。なおこの場合、Cは所有権を取得しているのでBの責任を追及することはできないと考えられる。




契約の解除について

(`・ω・´)契約を解除すると、どうなるのでしょうか?


◆ 契約の解除
一定の理由があるときは、一方が相手の同意なしに契約を解除することのできる制度である。当事者が契約によって定める解除の理由を「約定解除事由」といい、541条の定める履行遅滞による解除権や、543条の定める履行不能による解除権など、法律が定める解除の理由を法定解除事由という。ちなみに債務不履行による損害賠償請求権を規定する条文は、415条であり、債権者は、解除を行わずに損害賠償請求することもできるし、解除後にあらためて損害賠償を請求することもできる。
541条にある、履行遅滞による解除権の要件は、①債務者が債務を履行できるのに履行しないこと、②債務者に責任があること、③債権者が相当だという期間を定めて履行を促す催告をすることである。
いつから履行遅滞になるかについては412条に規定があり、1項は、決まった期限が定められている場合には、債務者はその期限がやってきたときから履行遅滞になるとし、また2項は、不確定期限が定められている場合には、債務者はその期限がやってきたことを知ったときから履行遅滞になるとする。また3項は、期限の定められていない場合には、債務者は履行の請求を受けたときから履行遅滞になると定めている。ただし533条の同時履行の抗弁権がある場合には、履行遅滞にはならない。
債権者は債務者が履行遅滞に陥った場合、541条によって、解除をする前に催告をおこなう必要がある。催告から相当の期間が経過しても債務の履行がない場合、判例は解除権が発生するものとしている。ただし、542条は定期行為といって、契約の性質上、特定の期間内に履行をしなければ契約目的を達成することのできない場合を定めており、この場合には催告をする必要はなく、また当事者間にあらかじめ催告なしで解除ができる特約があれば、催告の必要がないとされる。


◆ 契約の解除の続き
では、543条の履行不能にも度づく解除の要件は何だろうか?①債務の履行が後発的に不能となったことと、②債務者に責任があること、である。履行不能では、催告は問題とならない。また、債務不履行の責任が債務者の責めに帰すことができない場合には、危険負担の問題となる。
そのほかの解除としては、売買契約において、売主の担保責任を追及して買主が解除を行う場合について、561条から570条は定めている。
そのほかには、賃貸借契約において、借り主が第三者に無断転貸したり、その賃借権を無断で譲渡したりした場合の、貸し主による解除権などがある。
また、請負契約において、請負人やった仕事に瑕疵があった場合ついて注文者が解除する瑕疵担保責任を定めた635条や、委任契約の当事者が随時理由なく解除できることについて定めている651条などがある。
解除の効果としては、①債務の履行が行われていない場合には債務が消滅し、債権者は債務の履行を請求ないし強制することはできなくなること、②債務の履行がすでに行われている場合には給付保持力がなくなり、すでに履行を受けてしまった者は、不当利得を相手に返還することによって原状に回復する義務を負う。


◆ 売買契約の解除の効果について
物の引渡は、すでに引き渡しているならば、買主は売主に物を返さなくてはならないし、まだ引き渡していないのならば、引き渡す義務がなくなるので引き渡さなくてよい。そして、契約による引渡から解除によって物が返還されるまでの間に物を使用することによって得た利益についても返還しなくてはならないとするのが判例の立場である。また目的物が失われたり壊れたりした場合、買主である返還義務者はその物の市場価格分の金銭を支払わなくてはならないとする。また、引渡の目的物が不動産であった場合、契約により所有権の移転登記がすでになされていたならば、抹消登記を申請する義務を買主である返還義務者は負うことになる。
では、解除が行われる前に第三者が現れた場合はどうなるか。545条による解除の遡及効を否定し、解除前の第三者を保護するのが判例の立場であり、これによれば第三者は悪意でも保護されるが、ただし保護を受けるには騰貴を備える必要がある。
では、解除が行われた後に第三者が現れた場合はどうなるか。解除によって、買主から売主へと所有権を戻すためには、売主から買主への所有権移転登記を抹消しないかぎり、第三者には対抗できないとするのが判例の立場である。
また545条3項は、解除権を行使して原状に回復させてもなお損害がある場合には、損害賠償を請求することができるし、また解除権を行使せずに、損害賠償を請求することもできるとする。後者の場合には、代金を払う債務は免れない。