名板貸と商号
商号と名板貸についてだよ。商号ってのは、ト○タ自動車株式会社、みたいなやつだね( ´艸`)
◆ 商号とは?
商号とは、商人が営業上の活動の際に自分を個別化するために用いる名前のことである。
11条1項によれば、商人は商号を自由に決めることができるとする。
ただし、商号は商人の信用の対象になるので、ある程度の制限がある。
12条は、他の商人と誤認されるような名称はつかってはならないとし、それに違反する場合は、同条2項にて、それによる侵害の停止または予防を請求することができるとする。また、商号には「株式会社、合名会社」などの文字を使用しなくてはならないと定めるのは、会社法の6条である。そして、商号はひとつの営業についてひとつでなければならない。
◆ 商号の譲渡
商号は財産的価値をもつので、当然に譲渡が認められると考えられるが、一般人は、商号がいっしょであれば営業もいっしょであると思うのが普通であるため、15条は、商号は営業とともに、または営業を廃止する場合にのみ譲渡することができるとしている。
◆ 名板貸とは?
名板貸とは、自己の商号を使用して営業をすることを他人に許可することである。
14条によると、名板貸人の責任は、自分を営業主だと勘違いをして取引してくる相手に、その取引によって生じた債務を名板借人といっしょに連帯して弁済することだとある。
その要件は、
① 名義を借りた人が名板貸人の商号を使用するという外観の存在
② 名板貸人が商号の使用を許すこと、つまり名板貸人の帰責性
③ 第三者がその外観を誤認したこと
…の三要素である。
①については、商号以外の名前を使った場合にも、名板貸人の責任は成立するとする。たとえば、「サタン株式会社」が、「サタン株式会社チキチキ営業所」という名称を使うことを許した場合などがそうである。また、14条を見ればわかるように、名板貸人と名板借人の営業が同種でなくてはならない。
<判例>では、「現金屋」という商号で電気店を営んでいたものが廃業し、その後その知り合いが同じ店舗で同じ商号を用いて、食料品店の経営を始めた事案において、特段の事情がない限り、商号の使用の許諾を受けた人の営業がその許諾をした人の営業と同種のものでなくてはならないとしている。
②については、積極的に許諾をした場合だけじゃなくて、黙示的に許諾した場合でもいいとする。だから、他人が自分の商号を勝手に使っていることを知っておきながら、まあいいやと漫然と放置していた場合などは、その責任を免れない。
③について、<判例>は、相手が善意であれば、過失であっても保護されるとするが、重過失の場合は保護されないとする。
◆ 14条の「商号許諾者の責任」と会社法354条の「表見代表取締役」の関係
会社法354条の、表見代表取締役の規定を会社の取締役以外の人に類推適用できるのだろうか。<判例>では、会社の使用人、つまり従業員については、会社法354条の類推適用を認めるべきであるとしている。
◆ 名板貸人の責任の範囲は?
14条は、名板貸人は、名義を借りたものと連帯して責任を負うとする。
<判例>によれば、取引によって生じた債務のほか、債務不履行による損害賠償なども含むとする。不法行為に基づく損害賠償については、それが取引行為に関連するものに限って、名板貸人は責任を負うという風に判事されている。
◆ テナント契約と名板貸人の責任
スーパーマーケットが、ペットショップをテナント店として入居させていた事例で、ペットショップでオウムを買ったお客さんがオウム病にかかり、お客さんはスーパーマーケットに名板貸人の責任を追及した。
これに関して<判例>は、
① 営業主体の誤認もやむなしというような外観の作出
② 商号を許したことと同視できる程度の帰責理由の存在
があれば、その責任を認めるとして、実際にスーパーマーケットの責任を認めた。
◆ 商号の保護
商人が商号に関してもつ権利を商号権という。
それには積極的商号権と、消極的商号権があり、ひとつは他人の妨害を受けることなくその商号を使用する権利であり、もうひとつは、他人が不正な競争の目的をもって同じかもしくは似たような商号を使うことを排除する権利である。
<判例>では「更科」と「更科信州屋」が似ていることについて争われた事案がある。
結論としては、「更科」という部分が両者の商号にとって重要な意味を帯びているのだとして、商号から受ける印象が非常に類似していることを理由に、片方が類似商号であることをみとめた。
ただし12条は、同一もしくは類似の商号であっても、登記自体は認められるとする。
要は、12条1項の「不正の目的をもって」することは駄目で、それによって営業上の利益を侵害されるおそれのある商人は、同条2項によって侵害の停止または予防を請求できるというものである。
また、13条は100万円以下の科料をも定めている。
そして損害賠償請求については、民法709条不法行為に基づく損害賠償請求か、不正競争防止法4条に基づいて行うことになる。