緊急避難 | 制限速度20~30km/h

緊急避難

お次は過剰避難です。正当防衛との違いをハッキリさせようね((((((ノ゚⊿゚)ノ



◆ 緊急避難


緊急避難とは、現在の危難を避けるためにやむを得ずした行為であり、他にその害悪を避ける方法がなく、またその行為から生じた害悪が避けようとした害悪を超えないものをいうとする。正当防衛が、必要性と相当性を要件とするのに対し、緊急避難は補充性と法益の均衡を要件としている。


緊急避難が37条1項によって不可罰とされる根拠は、一つは他人のための緊急危難を認めていることと、緊急避難に対する正当防衛を認めることは避難行為を行った者に酷である点にある。つまり、違法性阻却事由であるという点にあると考えられる。


緊急避難は、①自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する「現在の危難」を、②「避けるため」、③「やむを得ずにした行為」であった、④「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」であるとしている。


①における「現在」とは、法益の侵害が現実に存在していること、または法益の侵害が目前に切迫していることをいい、正当防衛における「急迫」と同じ意味である。また「危難」とは、法益に対する実害または危険の状態のことをいう。


②の避けるため、とは「防衛の意思」である。


③の「やむを得ずにした」とは、避難行為が唯一の方法であったこと、つまり補充制を意味する。なぜなら、緊急避難は「正」対「正」の関係を要請しているためである。


④の「これによって生じた害が避けようとした害の必要を超えなかった場合」とは、避難行為から生じた保全法益が、侵害法益を超えていることを要請する法益均衡の原則を要請するものと理解できる。


<判例>は、緊急避難のために道路交通法上の酒気帯び運転を行ったものに対して、侵害法益が保護法益を上回っているとして、過剰避難を認めた。法益の均衡がない場合には、37条1項後半の過剰避難となる可能性があるということだ。


また<判例>は、監禁状態を脱するために放火を行った事案に関して、他にもとりうる手段があったはずであるとして、過剰避難を認めた。これは、補充制がない場合にも、37条1項後半の過剰避難となる可能性があるということだ。




◆ 自招危難


本人が犬に石を投げたら犬が襲い掛かってきたので、本人は友達の家に勝手に逃げ込んだが、これは住居侵入罪にあたらないのか。自らが招いた危難に対しても、緊急避難ができるのかが問題となる。


<判例>では、行為者が有責に引き起こした危難から逃れようとする場合には、緊急避難が認められないとしている。


しかしながら、緊急状態を積極的に利用する意図で自ら危難を招いた場合は別として、まったく偶然の事情から自ら招いた危難について緊急避難が成立しないというのは妥当ではない。


なぜなら、予期せぬ緊急状態が生じた場合について、それが自ら招いたものであろうがそうでなかろうが、行為者が困惑することには変わりがないためである。


したがって、緊急避難による違法性の阻却が行われるか否かは、「これによって生じた害が、避けようとした害の必要を超えなかった場合」というほう駅の均衡を重視して、避難行為によって守られる法益がどの程度存在するかによって決するものとする。


すなわち、自招危難による緊急行為が自己の法益を守るためであった場合には、緊急避難が成立しないとする。他方で、他者の法益を保全する場合には、たとえ自招危難による緊急避難であっても、他者の法益の保護性は減少しないので、緊急避難の成立を認めてよいと解する。




◆ 過剰避難


過剰避難とは、緊急避難の要件が満たされている場合において、補充性や法益の均衡原則が守られなかった場合に適用され、37条1項によって規定されている。


AがつないであったBの飼い犬を解き放ち本人にけしかけてきたので、本人がBの犬を蹴り殺した場合、本人はBに対して正当防衛を主張できるか。Bは第三者であって、「正」の法益所有者であることから問題となる。


確かに違法性阻却自由として正当防衛が成立するには、「正」対「不正」の関係が必要であり、動物は「不正」の意思にもとづく行為をすることはできないため、「不正」は人の行為に基づくものであるとも考えられるが、それでは被害者の法益保護が不十分である。したがって、「人の意思に基づくもの」でなくても、およそ何らかの法益侵害が起きていればそれは「不正」の行為であり、「不正」を違法性ととらえるのではなく、正当防衛の成立根拠ととらえるべきである。


したがって、本件においては、本人は具体的な急迫の侵害に対して防衛の意思をもってやむを得ず反撃したものと理解できるため、本人の行為には正当防衛が成立すると考えられる。