商法その④ | 制限速度20~30km/h

商法その④

その④!これでひと段落するよんヽ(;´ω`)ノ



◆ 定款による株式譲渡の制限


我が国には小規模経営の株式会社が多数存在し、会社の業務に理解のないものによって会社の経営がゆがめられる虞から、好ましくないものの会社への参加を拒否するために、株式譲渡に一定の制限を加えることが認められている。それが、定款による株式譲渡の制限である。


しかしながらその制限は、単元未満株主は議決権をもたないため、そういう場合には必要ないのではないかという疑問がある。しかし、単元未満株式の譲渡に定款の譲渡制限がなければ、会社にとって好ましくない者にもそれが譲渡されてしまうことになるので、やはり特段の定めがない限り、単元未満株式にも譲渡制限の決まりが及ぶと考える。


では、株式に譲渡担保を設定する場合にも、定款による株式譲渡制限の適用があるのだろうか?<判例>は、株式を譲渡担保にすることは株式の譲渡にあたるとした。ただし、譲渡担保を設定することは「譲渡」にはあたらないが、譲渡担保が実行されれば、それは「譲渡」となるため、株式会社の承認が必要となる。


では、承認を欠く状態で譲渡が行われたら、会社に対する関係では無効であるとしても、譲渡の当事者間においてはその効力はどうなるのか?


譲渡の承認請求は譲受人からもすることができると137条138条にはあるので、これは当事者間においては譲渡が有効であることを前提としていると考えられる。


では、承認がない場合の譲渡について、会社はあいかわらず譲り渡し人を株主として取り扱う必要があるのか?
<判例>は、譲り渡し人も譲受人も、株主として取り扱うとしている。もし譲り渡し人を株主として扱わなければ、会社は譲渡の承認をしていないことから、意図的に株主としての権利の空白状態を作ることになるためである。
また余談であるが、株式譲渡の制限は、会社と株主の間の契約でも有効である。



◆ 名義書換をめぐって


株券占有者が相続によって株式を取得したとして、株式の名義書換を請求してきた場合、会社はそのものが相続人であるかを調査するために名義書換を拒むことができだろうか。128条によれば、株式譲渡は株券の交付によってなされるため、株券の占有者が権利者である蓋然性がたかいが、これは通常の譲渡を前提とした規定であると考える。


この点相続のような包括承継の場合には、会社は調査という主張を押し通すことができると考える。



◆ 名義書換がすんでいない株主


130条によれば、株式を譲り受けても名義書換をしていなければ権利の行使はできない。では、会社側から名義書換がおわってない譲受人を株主と認めて権利行使することはできるのか?


<判例>によれば、名義書換がなければ、譲受人は会社に「対抗できない」とするのが130条だが、逆に会社から移転があったことを主張するのをさまたげるものではないとする。なぜならその危険負担は、会社が行うからである。


では、会社が不当に名義書換の拒絶をした場合、民法709条に基づく損害賠償請求や、同415条の債務不履行責任の追及などができるが、他にはどのような手段があるか?


会社は譲受人に名義書換をしなかった場合の不利益を負わせているのに、自分の任務懈怠をたなにあげておくのは、信義誠実の原則に反する。


したがってそのような場合、<判例>は、譲受人は名義書換なくして会社にたいして株主たる地位を主張し、その権利を行使することができるとした。



◆ 失念株について


失念株とは、名義の書き換えをしていなかったために、会社から剰余金の配当を受けられなかったような場合の株式である。


例えば株式譲渡があったとき、譲受人が名義書換を失念していたために、株主割当による募集株式の発行がなされて、譲り渡し人が引き受けと払込をしてしまった場合、譲受人は「それは私の権利だ」と主張することはできないのだろうか?


まず、譲渡当事者間において、株式の割り当てを受ける権利はどちらのものになるのだろうか?


<判例>では、名義書換を失念している間に株主割当による募集株式の発行がなされた場合、その権利は譲渡人に帰属するものとする。なぜなら、株式の割り当てを受ける権利を与えるかどうかは、会社が任意に決定するものであるからであり、株式が譲渡されたからといって、株式の割り当てを受ける権利もそれに随伴するものではないためである。



◆ 従業員持ち株制度


これは、厚生費類似のものとみとめる範囲で、従業員の福祉増進のためのものとして適法とされる。また株主平等原則との関連では、これは従業員たる地位に基づいて与えられるものであるからよいとされる。また、従業員の持ち株制度で、従業員に奨励金が支払われることに関して<判例>は、従業員の福利厚生のためであるとして適法とした。


また従業員の持ち株は、退会時に一定価格で株式を譲渡すべき合意がなされている場合が多いが、これは株式譲渡自由の原則に反しないかということができないか?


この点<判例>では、退会時に株式を譲渡する合意は、会社と株主間でなされたものであっても、原則有効であるとする。なぜなら個別的な意思にかかわらず効力を発する定款の制限とは違って、これは契約によるものであるからである。



◆ 株式譲渡の自由とその制限について述べよ


127条によると、株式の譲渡は自由なのが原則である。


なぜなら、退社制度のない株式会社においては、投下資本を回収する手段が必要だし、たとえ譲渡されても、株式会社における株主は個性が問題とならないので、譲渡には一定の許容性が生まれてくるからである。


しかし常に株式譲渡の自由を認めるということには、技術的にも政策的にも問題がたくさんある。


したがって法律による制限というものが必要であり、権利株譲渡は制限されている。権利株というのは、会社が成立する前、もしくは新株が発行されるまえの株式の引受人の地位のことであるが、この権利株の譲渡を制限する趣旨は、会社の設立や新株発行事務を円滑に行うためである。これは、当事者間において勝手に譲渡をするのは可能であり、またそれに対して会社の側から自発的に譲渡の効力を認めることは、会社が責任を負うことを覚悟でやっているので可能であるとする。


そして、株券発行前の譲渡制限については128条に定めがあり、これは会社の株券発行事務を円滑になすための趣旨をもつ。その効果は、権利株の譲渡制限といっしょで、当事者間譲渡は可能であり、会社の側から自発的に譲渡の効力を認めることができるとする。


そして自己株式の取得制限だが、自己株式の取得は原則として許容される。


しかし無制限にこれを許容することは、実質的な払い戻しと同じになってしまい、資本維持の原則や、株主平等原則などに反してしまう。したがって、法は461条によって財源の規制を設けたり、株主が平等に売却する機会を得られるような手続きを要求したりして、そのような弊害を防止している。


また、子会社による親会社の株式の取得制限というものがある。


また、定款による制限について。譲渡自由の原則がみとめられるのは、多数の出資者の存在を前提とする大規模な会社であって、小規模で閉鎖的な会社においては、第三者の経営に対する介入を防止する必要が、企業の理解という観点が重要視される以上、非常に強い。したがって、定款による譲渡制限が可能とされており、例外として当事者間では譲渡が有効だが、ただし会社に対して対抗できないと解する。


そして最後に、契約による制限というものがある。



◆ 株式をいじくりたおす


178条によると、株式の消却とは、会社が有する自己株式を絶対的に消滅させる行為である。また180条によると、株式の併合とは、数個の株式をあわせてそれよりも少数の株式とすることをいう。また183条によれば、株式分割とは、株式を再分化して従来よりも多数の株式にすることをいう。



◆ 単元株制度とは?


単元株制度とは、定款で定めた一定数の株式をまとめたものを一単元とし、一単元の株式について一個の議決権を与えるが、単元株式数に満たない株式には議決権を与えないこととする制度であると188条にある。



◆ 新株予約権について


新株予約権というのは、株式会社に対して行使することによって当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいうと、2条21項に書いてある。


新株予約権の効用としては、まず買収者の持ち株比率を下げることによる、買収防衛作の手段として用いられる部分がある。そしてまた、資金調達としての機能がある。


そして、ストックオプションとしての機能もある。これはインセンティブ報酬として、一定の期間内にあらかじめ定められた価格で会社から株式を取得できる権利のことである。だから、業績が上昇したら、それだけ得をするというわけで、インセンティブを目指して皆努力するだろうということである。


また株式会社は、募集新株予約権を発行する場合、238条により、金銭の払い込みはいらないとすることができる。



◆ 募集株式の発行


募集株式の発行等とは、会社設立後に株式引受人を募集することによって株式を発行すること、および自己株式を処分することをいう。


ただし、募集株式の発行等は、すでに会社に対して密接な関係を有している旧株主の地位に影響を与えるため、旧株主が持ち株比率の低下によって経済的な損失を受ける虞がある。


そこで公開会社の場合には、202条によって、法は旧株主の保護よりも、募集株式の発行による資金調達の迅速性を重視して、株主に割り当てを受ける権利を与えるかいなかは取締役会の決定にゆだねている。


また公開会社でない場合は、募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要とされており、その限度で旧株主の持ち株比率維持の利益は保護される。


では第三者に対して、「特に有利な金額」で募集株式の発行をする場合、株主総会の特別決議がひつようであるが、「特に有利な金額」とは何か?


旧株主を保護する視点からは新株主にも旧株主と同じ資金寄与をすべきだろうが、保護よりも資金調達の目的達成というのも大事である。また、払込金額を決定してから募集株式を発行するまでに株価が下落する場合もありえる。


したがって、「特に有利な金額」とは、通常募集株式の発行をする場合に払込金額とするべき公正な金額に比べて、本当に特に有利な金額のことをいう。だから、時価より10パーセント安いくらいでは、特に有利であるとはいわない。


また株価が高騰している場合でも、原則として市場価値を基準とすべきであるとするのが<判例>である。


また、募集株式の発行の差し止め処分を無視して募集株式の発行がなされた場合、その効力は無効となる。また、買収を考える者の持ち株比率を定価させるために募集株式の発行をすることは、210条の「著しく不公正な方法」による発行であるとされる。そして「著しく不公正な方法」であると認められれば、募集株式の発行事態は有効だが、423条で取締役の責任が生じる。


また公開会社において、公示をせずに募集株式を発行した場合、株主に発行差し止め請求をさせる210条の権利を害するので、原則無効だが、差し止め事由がない場合には、株主の利益が奪われたとはいえないため無効にはならない。