正当防衛 | 制限速度20~30km/h

正当防衛

今回のエントリーでは刑法、なかでも正当防衛の類型を勉強します。刑法オモシロいので、ハリキっていこう!(´Д`;)



◆ 正当防衛の成立要件


36条1項によれば、①「急迫不正の侵害」にたいし、②自己または他人の権利を「防衛するため」、③「やむを得ずにした」行為であることが必要であるとする。


①について、あらかじめ侵害が予期された場合、その侵害に急迫性があるといえるのだろうか。


この点<判例>は、侵害が確実に予期されるとしても、それだけで急迫性が失われることはないが、その機会を利用して積極的な加害行為に及んだ場合、急迫性がみとめられないとした。


積極的加害意思に基づいて行為を行った場合、そもそも防衛行為ではないので、過剰防衛の成立はないものとする。


②について、「防衛の意思」が必要なのかについては、争いがある。


思うに「防衛の意思」の必要性を認めなければ、偶然防衛の際に、犯罪の積極的意図を持っていた者を保護してしまう虞がある。そして、違法性の判断をするにあたっては行為者の主観と客観の全体で考慮すべきであり、したがって行為者の主観面も判断の基準とするべきである。


<判例>では、防衛の意思は必要としたうえで、憤激逆上した反撃行為であっても、攻撃を受けたに乗じて積極的な加害行為にでたのではない限り、正当防衛が成立するという。なぜなら、攻撃を受けた際に、一般人であるならば興奮してしまうのはやむをえないことであると考えられるためである。


したがって防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつそれを回避しようとする単純な心理状態であると理解するのが相当であろう。


またそういう事情から、<判例>では、防衛の意思と攻撃の意思が並存していた場合には、防衛の意思を欠くものではない、としている。


③について、「やむを得ずにした行為」とは、急迫不正の侵害に対する反撃の①必要性と、②相当性が認められることと解する。つまり防衛行為は侵害を排除するための必要な限度で許され、防衛手段として相当な性質を備えていることを意味するが、36条2項は、相当性が欠ける場合には、過剰防衛の問題となるとしている。


<判例>では、反撃行為が必要最小限のものであり、かつそれが防衛手段として相当であれば、それによって生じた結果がたまたま侵害されようとした法益よりも大きかったとしても、過剰防衛にはならないとしている。


また、鉄パイプで殴ってきた男に対する正当防衛として、男をアパートの2階から階下に落とした事案において、<判例>は、反撃の必要性はあったが、相当性が認められないことから「過剰防衛」が成立するとしたが、<学説>はこれに対して、「当該行為以外にとりえる手段を明示せよ」と、判例には批判的である。


従って、手段の相当性が欠けるとして過剰防衛を成立させる際には、代替手段を提示すべきである。
以上、これらの3つの要素が認められる場合には、正当防衛が成立するものと解する。




◆ 対物防衛


友人の飼い犬が襲ってきたので、本人はこれを撲殺した場合、261条の器物損壊罪が成立するか。


違法性阻却事由として正当防衛が成立する場合には、相手の侵害が「不正」である必要があるが、人以外の行為が「不正」の範囲に含まれるのかが問題となる。


確かに、物や動物が違法な行為を行うはずがないため、「不正」とは「人の意思にになわれた行為」であると考えられるが、それでは被害者の法益保護が不十分である。


したがって、「人の意思にになわれた行為」がなくとも、およそ何らかの意味で法益侵害が生じていれば、それは「不正」の行為であるとし、「不正」を違法性と捉えるのではなく、正当防衛の成立要件であると考える。


事案においては、友人の飼い犬が襲ってきたことにより、本人の法益侵害の危険性が生じているため、それは「不正」の侵害であるとして、36条1項の正当防衛が成立する。




◆ 偶然防衛


本人が友人を射殺したところ、相手もこちらを狙っているところだった場合、どうなるか。


②の「防衛するため」というためには、「防衛の意思」が必要なのかどうかが問題となる。


「防衛の意思」が必要かどうかには、争いがある。


思うに、「防衛の意思」が必要であるとすると、明らかに犯罪的な意図をもってなされた偶然防衛をも保護してしまうことになり、結論が不当となるため、違法性の判断をするにあたっては、行為の客観性のみならず、行為者の主観をも含めた全体で判断すべきである。


したがって、「防衛するため」というためには、行為者の主観をも正当化事由とする。


<判例>では防衛の意思が必要であるとしたうえで、それがたとえ憤激逆上した結果行った反撃行為であっても、攻撃を受けたのに乗じて積極的な加害行為にでたのではない限り、正当防衛を認めるとしている。


したがって、防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態で足りると考えられる。
事案においては、本人にまったく防衛の意思がないため、正当防衛は成立せず殺人罪となる。




◆ 過剰防衛


過剰防衛とは、急迫不正の侵害に対して、防衛の意思で反撃行為を行ったが、その反撃行為の相当性が認められない場合である。


過剰防衛の効果は36条2項によれば任意的減免である。


思うにその根拠として、過剰防衛は急迫不正の状況下における行為であり精神的な動揺が不可避的に生じるため、多少の「行き過ぎ」があっても強く非難できないために、防衛者の責任が減少する点にあると解する。


そして過剰防衛には、過剰の基礎となる事実について認識がある場合があるが、これは例えば、素手による暴行に対して日本刀によって反撃する場合のことである。この場合、故意犯が成立するが、過剰防衛として36条2項により刑が減免されうる。


それに対して、過剰防衛には、過剰の基礎となる事実について認識のない場合があるが、例えば殴られそうになったので、とっさに近くにある棒をとって反撃しようとしたら、それが日本刀だった場合である。この場合、故意が阻却され過失犯が成立するが、36条2項によって刑が減刑されうる。


<判例>では、反撃行為が必要最小限度であり、かつ防衛手段としての相当性があれば、たとえそれによって生じた結果が、侵害されようとした法益よりも大きかったとしても、過剰防衛とはならない、としている。