会社法その③ | 制限速度20~30km/h

会社法その③

その③、でありマス(;´Д`)ノ



◆ 会社の不成立


会社の不成立とは、設立手続きが設立登記に至る前に途中で挫折し、会社が法律上も事実上も存在するに至らなかった場合のことをいう。


では、会社が不成立の場合、発起人は設立に関してした行為について連帯責任を負い、設立費用も発起人の負担になると58条には定められているが、創立総会で発起人の意図に反して設立は意思の決議がなされた場合のように、もっぱら株式の引受人側に不成立の原因がある場合にはどうだろうか?


56条が発起人に全部の責任を負わせたのは、株式引受人を保護するために、特に政策的に株式の引受人を第三者と同様に扱ったためと考えられる。


とすれば、株式の引受人に不成立の原因がある場合には、株式引受人を保護する必要はなく、56条後段の適用はないとするのが相当である。



◆ 株主の権利義務


自益権。これは、株主が会社から経済的な利益を受けることを目的とする権利であり、105条の剰余金配当請求権や、残余財産分配請求権などがある。


そして、共益権。これは、株主が会社の運営に参加し、経営に参加することを目的とする権利である。例えば、株主総会における議決権や、それ以外の監督是正権などがある。


また、単独株主権と少数株主権で違いがある。単独株主権とは、1株の株主でも行使できる権利であり、少数株主権というのは、総株主の議決権の一定割合以上、または一定数以上の議決権を有する株主のみが行使できる権利である。


また、固有権と非固有権。固有権とは、株主の同意がないと奪うことのできない権利であるのに対し、非固有権というのは、株主総会の決議によって奪うことのできる権利のことである。



◆ いろんな株式


107条の譲渡制限株式とは、株式譲渡に株式会社の承認を有する株式のことである。本来株式は他人に自由に譲渡できるのが原則であると127条にはあるが、特別な定めをすることができる。


そして、取得請求権つき株式とは、株主が会社に対して株式の取得を請求することができる株式である。


また、取得条項つき株式とは、会社が一定の自由を満たした場合に、当該株式を取得できる株式である。



◆ 種類株式の発行


種類株式を発行するには、定款の定めと登記がいる。普通は株主総会の特別決議で決めるが、それによって誰か株主が損害を被る場合は、種類株主総会の特別決議がいる。


種類株式としては、剰余金の配当に関する種類株式や、残余財産の分配に関する種類株式、株主総会において議決権を行使することができる事項に関する種類株式である、議決権制限種類株式などがある。他にも、譲渡制限種類株式、取得請求権種類株式、取得条項つき種類株式、全部取得条項つき種類株式、株主総会などにおける拒否権つき種類株式などがある。


また、公開会社ではない会社、すなわち発行株式の全部が譲渡制限株式である株式会社の場合、剰余金の配当や株主総会における議決権などについて、株主ごとに異なる取扱を行うことができることを定款に定めることができる。


これは、公開会社でない株式会社は、株主の異動が少なく株主相互間が密接な関係であることが多いため、定款自治をより広く認めようとする趣旨のものである。



◆ 株主平等の原則


株主平等原則とは、株式会社は株主をそのもっている株式の内容や数に応じて、平等に取り扱わなければならないという原則のことをいうと、109条にある。株式は均等な割合単位だから、権利も均等であるべきというのがその趣旨である。


したがって株式の数が異なる場合には、株式数に応じて平等に取り扱わなければならないが、種類株式の場合は別である。


また他の例外として、剰余金配当、残余財産分配、議決権に関しては、定款で株主ごとに異なる取扱ができる。

また共益権の行使に関して、少数株主権がある。また後に後述するが、単元株制度がある。


では、会社が一般の株主には無配としながら、特定の大株主には中元やお歳暮の名目で金銭を贈与した場合、株主平等原則に反するのではないか?<判例>は、大株主を特別有利に待遇するものとして無効にした。


では、電鉄会社や興行会社などで、優待乗車券、優待入場券などをあたえる場合があるが、こうした株主優待制度は、株主の平等原則に反するのではないか?


株主優待制度の場合、議決権や利益配当請求権のような、法律上強く平等が要求されている権利が問題となっているのだから、そこまで厳格であるひつようはなく、自社の製品や施設の宣伝などの正当目的があり、目的達成のための合理性があれば、株主優待制度は株主平等の原則に反することはないと理解できる。


また<判例>は、総会において従業員株主を別の入り口から入場させ前方の席に座らせたことについて、そのようにする合理的な理由はないが、それによって誰かの法的利益が侵害されてはいないので別段問題はないとした。


株主平等原則違反の効果は、これに反する決議や定款は、全て無効とかす。



◆ 株主の権利の濫用が問題となるのは?


株主による権利の濫用が問題となるのは、株主であることと関係のない純個人的利益を追求することによって会社の利益を追求する場合と考えることができる。


では、議決権の行使はどうか?議決権の行使に関しては、原則株主は自己のために行使できるのだが、その判断基準として<判例>は、株式を高く買い取らせる目的の一環で、会社のっとりのための議決権の行使は権利の濫用とした。


また<判例>は、会計帳簿閲覧謄写権についても、株式の譲渡にあたってその株式の適正な価格を知る目的でした場合は、その目的は適正であるとしてその権利の行使は濫用ではないとした。


では、株主総会で以下の定款変更がなされる場合の問題点を指摘せよ。


①株式譲渡は株主総会の承認を必要とする
会社法では、譲渡について会社の承認を要する譲渡制限株式を発行することができる


②ある一定株以上の株主は、自社製品を定価の4割引で入手できる。

合理的な必要性が欠け、さらに株主平等原則に反するので認められない。


③ある年以降に発行する株式に対して行う利益配当は、それまでの2分の1とする。
公開会社であれば許されないが、未公開会社であれば可能である。



◆ 株券の発行について


会社が株券を作ったあと株主に発想したが、運送途中で株券が紛失し善意の第三者が善意で手にいれた場合、善意取得はなるのだろうか?


<判例>では、会社が株券を作成した、これを株主に交付したときに株券の効力が生じるとしたので、事案においては善意取得はないと考えられる。



◆ 株主名簿


株主名簿とは、株主および株券に関する事項をあきらかにするために、会社法の規定によって作成することを必要とする帳簿のことである。


その内容は変動しやすいので、124条によって、基準日が設定される。また基準日がすぎたあとに株式を譲渡されたものは、基準日の株主の権利を害することになるので、議決権を行使することはできないとされる。また株主名簿は本店に備え置かなければならないし、また閲覧や謄写などは請求の理由がいるし、場合によっては、株式会社はそれを拒むこともできる。



◆ 株式の譲渡とは?


株式の譲渡とは、法律行為によって株主の地位を移転することをいう。株主の資格の一切が移転するわけである。基本的に株主が投下資本を回収するには、この株式譲渡による。


したがってこれは、127条によって株式譲渡自由の原則として保障される。


株券譲渡の方法としては、株券発行会社としては、譲渡の効力の発生の要件は株券の交付である。株券の占有者は適法な所持人と推定されるので、その占有者から株券を交付されたものは、悪意重過失でない限り善意取得する。


また株券不発行会社については、当事者間の意思表示で譲渡ができるとする。



◆ 時期による株式譲渡の制限


権利株とは会社成立前の株式引受人の立場である。


権利株の譲渡は、会社との間では対抗できないが、<判例>は、当事者間の譲渡は有効であるとする。では、権利株の譲渡を会社が効果として認めることができるかについては、もともと設立手続きや募集株式の発行を円滑にすることが目的なので、進んで譲渡の効力を会社が認めることはできると考える。株券発行前の株式譲渡についても同様であろう。


では、会社が意図的に株券の発行を遅らせていた場合にはどうだろうか?<判例>は、株券発行前の株式譲渡であってもその効力を否定できないとした。



◆ 自己株式の保有に関して


自己株式の保有とは、株式会社が自社株を取得することである。


これは、実質的に出資を払い戻したことになるので資本維持の原則に反し、さらに一部の買主から優先的に買い取る場合があるので株主平等原則に反すること、そして、取締役が自己の地位の強化のために使うという虞があるし、株価の操作やインサイダー取引に利用されたりするかもしれない。


したがって、自己株式を取得できる場合には、いくつもの制限があるが、それは155条に列挙されている。また会社は、自己株式には議決権などの共益権は認められないとされている。そして、剰余金配当請求権や、残余財産分配請求権などの自益権も否定されている。


財源規制に違反して自己株式が取得された場合には、その取得は有効としたうえで、損害は株主、取締役などに支払い義務を負わせることで解決するが、株主総会を経ずに、勝手に取締役会のみで、公開買い付けの方法で自己株式を取得した場合はどうなるのか?


原則無効であるが、自己株式の取得が第三者の名義でなされた場合には、常に向こうとすれば取引の安全を害することになるので、譲り渡し人が悪意、つまり会社が自分の名をかたって自己株式の取得をやっているな、ということを知ってする場合には、無効となると考える。


では、無効の権利者は誰だろうか?自己株式取得の禁止の規定によって保護されるべきなのは、一般の投資家や株主、会社を含めた会社側の人間である。それに対して、譲渡人は相手が誰であろうと株式を譲渡することが目的なので、譲渡人は向こうの主張権利者とはなりえないと考える。


自己株式取得をするにしても、例えば無償取得の場合のように、実質的に何の弊害もない場合には、株主総会の決議などは省略できる。ではそれ以外に、会社の事業の継続や安定など、会社の利益を守るために緊急避難的に株主総会の決議を省略してもいいものだろうか?


しかしこれでは、取締役による権利の濫用のおそれがあるため、弊害が生じないことが明らかな場合だけに限ると考えられる。