現実的履行の強制 | 制限速度20~30km/h

現実的履行の強制

 冬休みが終わって下宿に戻ったので、大学から更新します(*^ー^)ノ


 債権には、現実的履行がツキモノです。たとえば貸したお金は返さなくちゃならないっていいますが、その「返さなくちゃならない」ってことがただの倫理的な社会通念であって、現実社会において具体的な強制措置がとられなけれないとしたならば、お金を返すという行為はすべて債務者の良心にゆだねられることになってしまいますが、世の中には必ずしもキチンとお金を返してくれる人ばかりとは限らないので、われらが法治国家日本では、裁判所が履行の強制をしてくれます。


 では、裁判所に「○○さんがお金を返してくれない!」と訴え提起するために必要なモノはなんでしょうか?それは債務名義です。いくら「○○クンが僕のゲームとったんだぁー。」なんて先生になきついても、証拠がなければ先生は動いてくれませんね。債務名義とは証拠のことで、その例としては、確定判決や公正証書などが挙げられます。こうした証拠を裁判所に提出すれば、裁判所は安心して悪いヤツを懲らしめてくれます、多分ね。


 それでは具体的にどのようなカタチで裁判所は悪いヤツを懲らしめてくれるのでしょうか?まず一番わかりやすい形で行われるのが直接強制です。具体的には訴訟を提起した本人に代わって、国が直接相手方に「コラッ!」と言ってくれます。たとえば、金銭債権の取立て。大きくとらえると「与える債務」に限って、国が直接動いてくれます。与える債務というのは、簡単に言えば物を与えることを内容とする債務で、売買契約における売主の目的物引渡し債務などがそれにあたります。


 また、「与える債務」の対になる概念として「為す債務」と呼ばれるものがあります。動産の定義として、「不動産以外のすべてのもの」という説明がなされるのと同じように、「為す債務」は「与える債務」以外のすべての債務です。言葉をそのままとらえれば、文字通り「何かをしなくちゃならない債務」なんですが、わかりにくいので具体例を挙げるとするならば、公演を行うこととか、競業を行わないことなどがそれにあたります。そしてこの「為す債務」のうち、第三者が代わって行えるものに、代替執行というカタチで裁判所は私たちを助けてくれます。


 もう一度整理しますと、われわれ本人に代わって国が相手方にコラッと言ってくれるのが直接強制で、われわれ本人に代わって第三者が相手方にコラッ…と言ってくれるワケではありませんが、相手方に代わって第三者が「よし、オレが代わりにやってやるよ」と言ってくれるのが代替執行であり、条文で言えば民法414条2項です。例を挙げると、たとえば私の実家の敷地に、ある日右翼の街宣車が勝手に止めてあったとします。私は「もう、怖いんだよ!」と思って、裁判所に「どうにかしてくれ」と泣きつきます。そこで第三者であるレッカー車が、私に変わって車をどっかにもっていってくれるという流れになるワケですが、もちろんレッカー費用は右翼の方に負担していただきます。ただし、イチローさんに大学に公演に来ていただくといったイチローさんにとっての債務は、いちおう「為す債務」ではあるものの、代わりにイチローのソックリさんに代替執行してもらうとかいうのはナシなんで、そこんとこは常識で判断していきましょう。


 ほかには、直接強制と代替執行ときて、間接強制というものがあります。しつこいようですが、直接強制とは国がわれわれに代わって悪いやつを懲らしめてくれる強制履行の方法でしたね?では間接とは具体的に、何がどう間接なのかというと、相手方に「罰」を提示して、心理的に圧迫してやることで債権内容を実現させるというところがとっても間接的なワケです。この間接強制というヤツは、民事執行法173条1項にもありますように、金銭債権以外のすべての債権について使うことができます。たとえば、「人んちで勝手に野グソをしない債務」とかでもありです。もし野グソしたら罰金100万円!…とかは多分何かの法律が絡んでダメなんだと思いますが(笑)、間接強制とはそういうことです。


 ただし、間接強制によることができない場合がありますので、それを紹介しておきます。まあ常識的な話ではありますが、まず債務者が履行したいと思ってもすぐに実現できない場合。たとえば「人んちで勝手に野グソしたくなる病」の罹患者がいたとします。その人は、私の実家の庭に「野グソしたら罰金100万円」と立て札がしてあるのにもかかわらず、その病気のせいで我が家に毎日フラフラとやってきてはボトッとやります。でもその人はやりたくてやってるわけじゃない。「いやああああ!」といいながら毎日野グソしにくるその人に、近所の人の目は同情的だ。「まあ、simさんったら、あんなに目くじらたてて…病気なんだからしかたがないじゃない…!」みたいな。その「人んちで勝手に野グソしたくなる病」を治すためには、あるサプリメントが要ります。つまり、債務者が履行したいと思ってもすぐに実現できない場合というのは、この場合、その病気の人がサプリメントを購入するまでということになりますが、まあ多分この例おかしいと思いますので、みなさんは特殊な設備や第三者の協力を要するような、もっと現実的でビジネスライクな債務を想像していただいたほうが、より理解が深まるでしょう(;´Д`)ノ


 そのほか、間接強制によることができない場合といえば、債務者を心理的に圧迫しても、そもそも適切な債務の履行が望めない場合です。たとえば、妻の同居義務なんてどうでしょうか?もともと法律というのは権利と義務を定めるもので、人の心の動きを定めたものであってはなりません。そこで威力を発揮するのが間接強制であり、たとえばいつまでたっても「いいアイデアが浮かばない」と原稿を送ってこない小説家に対して編集者の人が怒るのは自由ですが、「いいアイデアを浮かべなくてはならない」という義務を小説家の人に法律は強制できません。そこで、間接的なアプローチで、「期日までに納品がなければ、編集社の損害として一日あたり10万円の罰金を科します」とあらかじめ契約によって取り決めをおこなうワケです。間接的に、小説家に心理的圧迫を加えてるわけだな。しかし、これが妻の同居義務の場合はどうでしょうか?同居しないと罰金10万円!なんて、そんな結婚生活はイヤですよね。こんなことでは、到底適切な債務の履行は望みようもありません(ノД`)・°・あと今思ったんですが、上に書いた「野グソ病」の人の例は、どちらかというとこちらの「債務者を心理的に圧迫しても、そもそも適切な債務の履行が望めない場合」にあたるんじゃないかって気がしてきました。


 本エントリーは、今日はここまでにしておきます。なかなか学校で更新というのも、気を使うものですね。これだけの文章を打とうと思ったら、キーボードがガタガタいいますから(ノ_-。) 私と違ってちゃんと勉強してる人たちの邪魔になってるんじゃないか…なんてね。それでは、また次回も見てくださいね!