国際法前期中間試験対策 | 制限速度20~30km/h

国際法前期中間試験対策

国際法の特色

国際社会には全ての構成員を規律する明文法を作り出す立法機関は存在しないが、全ての構成員を規律する不文法である慣習法が存在する。その点条約は、当事国同士を拘束するものである。

国際社会には強制管轄権をもつ裁判機関が存在せず、例えば国際司法裁判所は、当事国間の同意がなければ管轄権を行使できず、よしんば裁判にこぎつけることができたとしても、敗訴国が判決による決定に自発的に従わない場合は、判決を強制的に執行する持たないため、形骸化する。

国際法の法源には、条約と慣習法、各国の国内法に共通の法原則、国際機構の決議などがあるが、フランスによる核実験事件のように、国家が自ら公に、かつ拘束される意思をもって宣言をした場合には、その宣言には法的拘束力が与えられ、かかる宣言は、法源たりうる性質を有する。

条約の原則はpacta sunt servanda(合意は拘束する)であるが、慣習法の成立要件は、長期にわたって行われる慣行、opinio juris(法的信念)とよばれる規範意識であるとされ、その成立の抽象性から、しばしば議論を呼ぶ。たとえば北海大陸棚事件は、北海油田の利権をめぐって西ドイツvsデンマーク、オランダがその領海を主張した事件であるが、国際司法裁判所は、大陸棚条約の慣習法的効力を否定し、衡平の原則に従って、個別に決めるべきである旨を判事した。

この判決によって、慣習法の成立はたとえ①短時間であっても、②利害関係国の行為が広範かつ一定であるということが必要であり、さらにかかる行為は③法的信念に基づく必要が主張された。

(ニカラグア事件)慣習法の存在を認定するためには、ある国家の行為がある承認された規則に反しており、それが新たな規則の承認を示すものではなく、規則の違反として扱われておれば足り、例えばある国家がある承認された規則に反するように行動していたとしても、規則それ自体に含まれる例外や正当化事由に訴えることで、自らの行為を擁護しようとする場合、その行為はそうした承認された規則を弱めるのではなく、むしろ慣習法としての効力を確認するものである。

判決では、国連憲章24項は武力行使を禁止しているが、その例外として、51条「自衛権」42条「軍事的措置」を認めているため、アメリカはそうした例外を使って自己を正当化した。

条約は特別法であり、慣習法は一般法であるため、当然に条約は慣習法に優先するが、海洋法の存在を考えれば自明であるように、慣習法の法典化が進んでおり、その逆もまた然りである。

国家承認

国家の承認には明示的承認と黙示的承認があり、前者は既存の国家から新規国家に向かって明示的に国家の承認が宣言される承認であり、後者は外交使節の派遣受入や、条約の締結など、実質的な国家承認行為が行われているとみなされるとき、黙示的に国家の承認が既存の国家により行われているとみなす承認であるが、その効果をめぐっては、第三国の承認を必要とする創設的効果説と、その承認を必要とせず、国家の三要素である領土、国民、統治国家を備えれば国家として成立するとする宣言的効果説があるが、現在では後者の宣言的効果説が通説であるとされる。

また、国際機構を通じて国家の不承認が義務付けられる場合があり、有名な例としては、南ローデシアにおいて少数の人権主義者が権力を簒奪した際に、安保理決議は全ての国家に対し、簒奪政府を承認しないように要請したことや、同じく安保理決議が、北キプロストルコ共和国の独立を無効とし、キプロス共和国以外のキプロス国家を承認しないように諸国に要請した例がある。

国内法における国家の承認の効果に関して、英米では未承認国家の法は適用しないとしているが、日本やドイツなどは、たとえ未承認国家の制定法であっても、実際に実施されている法を適用するというのは、王京花vs王金山事件において理解しやすい。当離婚訴訟において、中国人である夫の本国法は、夫の本籍である中華人民共和国のものなのか、中華民国のいずれのものなのかという点が論点となったが、夫は日本に居住し、中華民国の法令にしたがって生活しており、さらに中華人民共和国による国籍付与を受諾していない実質を鑑み、中華民国法を適用するとした。ちなみに、旧法令第16条には、「離婚について夫の本国法を適用する」という条文があった。

国家承認に関する主義には対立があり、ひとつは合憲に成立した政府しか承認しないという正当主義である。人民から自由に選ばれた代表が立憲的にその国を組織しない限り承認を与えないトバール主義はその代表例であり、これに対して政府に実効性があれば承認するという立場を事実主義と称し、この立場をより強固に推し進めたものがエストラーダ主義であるが、これによると、外国政府に正当性を判断する権利を一切認めない。また例外的なものとして、国家の三原則が認定される前に国家の承認が行われる、尚早の承認と呼ばれる様態があるが、これは「新政府を正式に承認する決定を表明しなければならないとなると、その新政府の政治体制をも黙示的に支持するものとなってしまう」との懸念を表明した、イギリスの明示的承認に対する批難にみられるように、実際には国家の三原則を満たしている国家を、そういった事情から承認しないというのは国際社会では普通に行われているのに対し、国家の三原則を見たさない点で、問題とされる。

また集合的不承認という不承認様態も問題となることがあり、1991年、ハイチにおいて民主的な選挙により選ばれた大統領を国外に追放する軍事クーデターが勃発した際、国連総会決議は、かかる違法状態から生じたいかなる実態も認められないとし、禁輸等の不承認政策を実行した。

国家承継

国家承継の一般的問題としては、その国家領域についての責任が、先行国から承継国へと承継される際に、国際関係の安定性を優先すべきなのか、それとも承継国の政治的経済的主導権を尊重すべきなのかが問題となる。なお、代表的な国家承継に関する条約には、ウィーン条約がある。

ここでは国家承継に関して、個別具体的な問題について論じてゆくが、まず国境移動に関しては、東西ドイツの統一などに見られるように、承継の問題は生じないとされる。次に国家の独立に際しては、クリーンスレート原則(白紙の状態)が採用され、ウィーン条約によれば、多国間条約については、承継の通告によって当事国の地位を確保でき、二国間条約については、両当事者の合意により有効であるとする。また財産に関しては移転するが、債務は移転しない点に注意する。そして、一般の承継については包括的承継原則が採用されており、東西ドイツの統一のように、国家が結合する場合においても、また分離分裂する場合においても、条約は原則継続され、さらに財産債務についても、問題なく移転ないし公平な分配がなされるということを理解しておく。

ただし、例外として国家承継は領域制度には影響を及ぼさない。つまり、対外境界は全ての場合において尊重されるべきであり、分裂に際して、内部境界は自由かつ相互の合意によってのみ修正されうるとした。ここで国家承継全般における具体例を示したいと思うが、条約承継に関しては、ソ連からロシアへの独立の際に国連の議席の承継が行われたことが有名である。また新ユーゴが旧ユーゴの継続国家を主張したが認められず、新たにセルビア・モンテネグロとして国民投票により分離独立を果たしたことなども有名である。また国際人権規約の委員長声明では、国際人権規約の自由権規則に責任を負う当事国が分裂した場合、先行国が規約に追っていた人権関係条約は、分裂後の国家をも拘束するとの見解がとられている。なお、香港は1997年にイギリスから中国へ返還されるにあたって、英中共同宣言により、変換後の香港が「特別行政区」として中央政府の権威の下、高度の自治作用によって市民の権利が特別行政区の法によって保障されることを定めたが、これはすなわち、承継後にも自由権規約の諸規定が効力を持ち続ける例である。

国家承継と紛らわしい概念として、政府承継がある。政府承継とは、一国内の政治体制の変更において、前政府から新政府へと権利義務が承継されることであり、その性質には、新政府が前政府の全ての権利義務、在外財産を引き継ぐ完全承継と、国家権力行使のための財産を認められないものについては、政府承認によって新政府に承継されるべき財産と認めない不完全承継がある。

外交・領事関係

外交使節団や領事機関について定められた国際条約はウィーン条約である。外交使節団に関しては、その2条で相互の同意の必要、4条でアグレマン(外交使節団の長を決定するに際し、接受国の同意が必要であること)、9条でペルソナ・ノン・グラータ(理由を示さず、好ましからざる人物であることを相手国に通達し、相手国はその人物の召還ないし任務の終了を決定する)について規定している。また外交使節団には様々な特権が与えられているが、その根拠としては、派遣国の領域には接受国の管轄権が及ばないとする治外法権説や、国家代表としての外交使節団には、それ相応の特権免除が与えられるべきとする代表(威厳)説、また外交使節団がその職務を遂行するにあたって、必要な特権免除を与えるべきとする職務(機能的)必要説がある。ちなみに、外交関係に関するウィーン条約には、外交使節団の特権免除の目的として、「国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行」を前文に掲げており、代表説と職務必要説を採っている。

外交使節団の基本特権として、公館の不可侵、裁判権からの免除などが挙げられるが、後者に関しては刑事裁判権が完全に免除され、民事行政裁判権に関しては原則免除となる。民事行政裁判権免除の例外としては、個人の不動産関連訴訟、相続に関する訴訟、任務の範囲外で行う活動に関する訴訟などが強制執行の対象となるが、その際、身体や住居の不可侵原則は堅持される。ちなみに特権免除は放棄可能であり、その意思は常に明示的に行われなくてはならず、推定されない。また特権免除の期間は、接受国に入国したときから、接受国を出国するまでの間であるが、武力抗争が生じた場合にはその特権享有期間は存続し、また享有機関が消滅したあとであっても、任務推敲行為については引き続き特権免除が存続するとウィーン条約において規定されている。

では、外交使節団の基本特権としての公館の不可侵とは別にして、diplomatic asylum(外交的庇護)は認められるのだろうか。ペルーでの反乱に失敗した人物が、コロンビア大使館に庇護を求めた事件について、外交的庇護の決定はその国の主権を侵害し、接受国の国内管轄事項に対する干渉となるため、このような外交的庇護は一般国際法上認められるべきものではないとされた。

外交使節団の主たる任務が派遣国及びその国民の代表することであるのに対し、領事機関の主たる任務は、派遣国及びその国民の利益の保護である。ここでは領事機関と外交使節団の相違点について列挙したいが、外交官の派遣について、相手国の同意やペルソナ・ノン・グラータが規定されている点で同じだが、領事館員に関してはアグレマンが不要である。また外交使節団の特権免除の根拠は職務必要説に限定されるので、外交使節団特権免除よりも制限的であるといえ、その特権に関する比較においては、外交使節団の身体不可侵権は絶対であるのに対し、領事館員の場合は、一定の場合には司法の決定に基づき逮捕拘禁されるとしており、また民事裁判権からの免除に関しては、数種の例外を除いて外交使節団は原則免除となるのに大使、領事館員は任務遂行行為以外については免除されず、また刑事裁判権について、証人としての出頭義務が科される。

内政不干渉とその根拠

国際法における主権は、形式的平等であるとされている。形式的平等とは、各国の権利義務が等しく、自国を拘束する国際法の定立や決定の過程に関して、平等な立場で参加できることを旨とする。そうした形式的平等を制限する立場としては機能的平等という考え方があり、これによれば権限というものは、その国家の能力と責任の重さに比例すべきであるとされ、例を挙げると、国連安保理における常任理事国の拒否権や、IMF(国際通貨基金)やIBRD(世界銀行)において、保有する一株式ごとに各一票の票数を獲得する加重投票制度などに、そうした考え方が底流している。また形式的平等の修正として、実質的平等という考え方もある。これによると、経済力の弱い国家などに対して特別の待遇を与えるべきとされ、国家承継における新独立国に対するクリーンスレート原則の適用などは、その典型例であるといえる。以上が、主権の内容である。

内政干渉の定義は、他国の国内管轄事項に命令的に介入することである。では国内管轄事項とはなにかということになるが、従来それは、国家の基本構造や統治に関する事項であるとされていた。しかし現在では、国際法の規律が及んでいないが故に国家の自由な処理が可能な事項であるとされている。なお補足として、友好関係宣言を行った当事国同士は、お互いに国内管轄権内にある事項に干渉しない義務を負う。次に特殊な内政干渉について列挙してゆきたいが、他国の領域内での掃海活動や、他国の政府を妥当する目的をもった武装集団への援助供与なども、内政干渉にあたる。ニカラグア事件判決では、かかる武装集団への援助供与は内政干渉であるとした。また、政治経済的圧力としての経済援助の停止や、放送衛星によるテレビ番組の送信や、探査衛星による探査なども、他国の国内問題へ影響を与えるおそれがある点で、内政干渉の虞がある。

内戦への干渉については、従来反政府側への援助が内政干渉とされた一方で、政府側への援助は豪放であるとされたが、現在では内戦に対する双方不干渉が原則となっている。また、その例外は認められるかという問題があるが、例えば内戦において一方の当事者に対する敵性第三国の援助がある場合、それに対抗して他方当事者への援助が認められるかということについて、かかる対抗干渉は禁止されているとみなされている。そして、植民地独立付与宣言により、植民地施政国への援助の禁止が宣言されているが、これは植民地施政国への援助は内政干渉であることを意味する。なお、NATOによるコソボ空爆は、内政干渉であると同時に人道的干渉ともいわれる。

国内管轄事項についてであるが、国連憲章に「essentially」と書いてある意図は、対象事項に国際法の規律が及んでいても、加盟国はこれが本質上国内管轄事項に属すると排他的に主張することができるというが、実際の実行において、国内管轄事項に属するか否かという問題は、「matters of international concern」という観念の成立により、大規模な人権侵害は、もはや本質的に国内管轄事項とはみなされず、例え当事国が国内管轄事項であると強弁しても、国連の軍事的または非軍事的強制措置に対しては、内政不干渉の原則を主張することは不可能となる。

主権免除

※前回の内政干渉の問題の続きであるが、教科書問題について中韓の抗議は内政干渉にあたるのだろうか。内政不干渉原則の定義をもう一度おさらいすると、内政干渉とは、国際法の規律が及んでいないがゆえに或る国家の自由な処理が可能である事項に関して、他国が命令的に介入することであり、この定義に即して考えると、中韓の抗議は、命令的、すなわち強制的に自国の意思に従わせる行為であるかどうかというのが問題となるが、実際に中韓の抗議が世論や国家政策に与える影響は大きく、かかる抗議は内政干渉であると結論付けざるをえないのが実情であろう。

国際法では、国家はその行為や財産について、一般に外国の裁判管轄権に服しないとされるが、厳密には、国家活動は全て外国の裁判管轄権から免除されるとする絶対免除主義と、国家の行為を主権的行動と業務管理行動に分離し、主権的行動については全て外国の裁判管轄権から免除されるにしても、校舎の業務管理行為については、外国の裁判管轄権の免除が制限されるとする制限免除主義の二つの立場がある。スクーナー船エクスチェンジ号事件は、帝政時代のフランスが、公海上で拿捕したアメリカ船籍の船舶をフランス海軍に編入し、後に海難事故にあった同船舶をフィラデルフィアにて発見した当該船舶の所有者であるアメリカ人が、同船舶の所有権をもとめた事件であるが、判決は、主権者はいかなる場合も他の主権者に従うことはないとの絶対免除主義を採用した。他方で、WWⅡの国家賠償として、日本がフィリピンに譲渡した船舶を、フィリピン政府が汽船会社に売却するについて同社にその運航を委託していたが、同社は後に香港の海運代理業者と用船契約を結び、その当時同船舶は、修繕のために香港に入港していた経緯から、当該汽船会社と当該海運代理業者との間に修繕費拠出の債務について争い、汽船会社が当該契約を破棄しようとした結果、当該海運代理業者が対物訴訟を提起し、台湾最高法院は、当船舶の競売と代金納付を命じたため、これに対してフィリピン政府が、同船舶が政府の所有物であることを理由に主権免除を主張したアドミラル号事件判決において、枢密院司法委員会は、通常の業務管理行為を行う商業用国有船については、主権的行為と峻別して主権免除は認められないとした。

日本においては、松山事件が、不動産に関する訴訟など特別の理由の存するものを除き、民事訴訟に関して外国は日本の裁判権に服さないとの判決をしているように、絶対免除主義がみられる傍らで、横田基地夜間飛行差止等請求事件については、合衆国軍機の横田基地における夜間離発着は、合衆国軍の公的活動そのものであるとして、国家の主権的行為と業務管理行動とを明確に分離する限定免除主義を採用し、またパキスタン人の代理人である会社との間に売買契約を締結し、売買目的物を引き渡した後に売買代金債務を消費貸借の目的とする準消費貸借契約を行った者が、そのパキスタン人に対して貸金元本を請求した事案であるが、パキスタン人は主権免除を主張したのに対し、最高裁は横田基地夜間飛行差止等請求事件同様に、限定免除主義を採用した。

制限免除主義について、主権的行為と業務管理行為を区別する基準については、横田基地事件において、「その目的ないし性質上、主権的行為であることは明らかであって」と判事されるように、行為の目的と性質に着眼するものとされている。これを受けて貸金請求事件では、「その性質上、私人でも行うことが可能な商業取引であるから、その目的のいかんにかかわらず、業務管理的な行為にあたるべきである」と判事して、このように行為目的説、行為性質説を採用した。

主権免除に関する条約としては、国連国家免除条約と呼ばれるものがあり、同条約は原則として行為性質説を採用しているが、但し書きとして行為目的の考慮があるとされている。また同条約には、主権免除に関して明示の放棄をすることが可能であるとし、この点貸金請求事件においては、当該事件における会社の注文書には、パキスタン人が売買契約に関して紛争が生じた場合に、日本の裁判所で裁判手続きを行うことに同意する旨が明らかに記載されており、主権免除に関する明示の放棄がなされたと考えられる。この立場に対し、黙示の放棄で足るとする立場もある。

また主権免除に関して、不法行為の被害者は加害行為以前に加害者との間に何らの債権債務の関係も有しないことから、契約の場合にはその契約の際に相手に主権免除を放棄する旨の言質を得ておくことが可能であるのに対し、不法行為の場合にはそれを事前に得ることができず著しく不合理であるため、不法行為については、主権的行為であっても免除しないとの立場が主張される。

そして免除が否定される場合でも、外交関係に及ぼす影響を考慮して、国連国家免除条約には、強制執行や仮差押などの措置からの免除が認められる場合について規定してあることに注意。