音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~ -20ページ目

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

関西フィルハーモニー管弦楽団

第13回城陽定期演奏会

 

【日時】

2023年8月20日(日) 開演 14:00

 

【会場】

文化パルク城陽 プラムホール (京都府)

 

【演奏】

指揮:藤岡幸夫

ピアノ:亀井聖矢 *

管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団

(コンサートマスター:木村悦子)

 

【プログラム】

J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 より アリア

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品16 *

ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92

 

※アンコール(ソリスト) *

リスト:パガニーニによる大練習曲 より 第3曲 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

 

※アンコール(オーケストラ)

ロンドンデリーの歌(管弦楽版)

 

 

 

 

 

関西フィルの城陽定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、1962年東京生まれで2007年より関西フィルの首席指揮者を務める、藤岡幸夫。

好きな指揮者の一人であり、城陽定期もこれまで何度か聴いた。

ソリストは、2001年愛知県一宮市生まれ、2022年ロン=ティボー国際コンクール優勝のピアニスト、亀井聖矢。

好きなピアニストの一人だが、彼の実演を聴くのは今回が初めて。

 

 

 

 

 

まず最初に、バッハの「G線上のアリア」が奏された。

拍手なしの、追悼の演奏。

その後が、プログラムの本編である。

 

 

 

 

 

前半の曲は、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。

この曲で私の好きな録音は

 

●ヴィニツカヤ(Pf) G.ヴァルガ指揮 ベルリン・ドイツ響 2010年4月セッション盤(NMLApple MusicCD

●A.カントロフ(Pf) ラザレフ指揮 ロシア国立青年響 2021年3月15日モスクワライヴ(動画

●務川慧悟(Pf) H.ウルフ指揮 ベルギー国立管 2021年5月26日エリザベートコンクールライヴ(動画

●ダヴィチェンコ(Pf) A.ルービン指揮 スヴェトラーノフ記念ロシア国立響 2023年6月27日チャイコフスキーコンクールライヴ(動画) ※5:02:45-

 

あたりである。

ヴィニツカヤとダヴィチェンコは、パワー・キレ・完成度と三拍子揃った、この曲の規範ともいうべき演奏。

カントロフと務川慧悟は、独自の表現力で勝負する演奏で、カントロフは動的な、務川慧悟は静的な情熱をそれぞれ孕んでいる。

 

 

そして、今回の亀井聖矢の演奏も、これらに匹敵するものだった。

とにかく情熱的で、タイプとしては上記のカントロフに近いが、表現の激しさはそれ以上。

特に第1、3楽章がものすごく、たぎるような若きパッションの全てを曲にぶつけていて、これまでの彼のスマートなイメージを塗りかえるほど。

それでいて、どれだけ激烈な表現をしても、いわゆる爆演のように音が荒れたり硬くなったりすることはなく、細部までしっかり配慮の行き届いた丁寧な演奏となっていた。

 

 

丁寧な分、第2、4楽章は落ち着いたテンポを採っていた。

もしも彼の情熱や丁寧さに加え、ヴィニツカヤやダヴィチェンコのようなトップスピードでの最高度のキレがあったなら、唯一無二の絶対的名演となっていただろう(彼ならばいつか実現してくれる気もする)。

また第4楽章の主要主題では、フォルテ(強音)とピアノ(弱音)の対比をほとんど付けず、全てフォルテにして、ペダルの深さによってアーティキュレーションの対比のみ付けるという、独自の解釈をしていた。

全体的にも、弱音で一休みするような箇所はあまりなく、常に全力投球した熱演だった。

 

 

上記カントロフの演奏ではラザレフの強力な指揮がかなり寄与しているのと同様に、今回の亀井聖矢の熱演には、藤岡幸夫の力強くも引き締まった指揮が果たした役割も大きかった。

これほどエキサイティングなプロコフィエフ協奏曲第2番が聴けることは、めったにないだろう。

終演後、亀井聖矢と藤岡幸夫は抱き合って健闘を称え合っていたし、聴衆の熱狂ぶりもすごかった。

 

 

 

 

 

後半の曲は、ベートーヴェンの交響曲第7番。

この曲で私の好きな録音は

 

●トスカニーニ指揮 ニューヨーク・フィル 1936年4月9,10日セッション盤(CD

●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1950年1月18,19日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●C.クライバー指揮 バイエルン国立管 1982年5月3日ミュンヘンライヴ盤(NMLCDYouTube1234

●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1983年12月1-3、5日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●西本智実指揮 ロイヤル・フィル 2009年9月22日東京ライヴ盤(CD

 

あたりである。

重量感のある中から、じわじわと熱狂を生み出していくような演奏が好み。

 

 

今回の藤岡幸夫&関西フィルは、これらほどの重量感はなかったけれど(シベリウスやヴォーン・ウィリアムズを得意とする彼は低弦など少し優しめ)、それでも軽い演奏では決してなく、想像した以上にこの曲らしい熱狂があった。

演奏前の「前半の亀井くんに負けない演奏でベートーヴェンのすごさを伝えたい」との言葉通り、20世紀のプロコフィエフとはまた違った19世紀なりのベートーヴェンの破天荒な音楽を、しっかり堪能させてくれた。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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坂東玉三郎特別公演

片岡愛之助出演

怪談 牡丹燈籠

 

【日時】

2023年8月17日(木) 開演 14:00

 

【会場】

南座 (京都)

 

【プログラム】

怪談 牡丹燈籠(かいだん ぼたんどうろう)

 

【あらすじ】

 旗本の娘・お露は、ひと目惚れをした浪人・萩原新三郎に恋い焦がれてこの世を去りますが、後を追って自害した乳母のお米とともに幽霊になり、牡丹が描かれた燈籠を手にして、新三郎を訪ねようとします。下男の伴蔵はお露に、新三郎と会えるように懇願されますが、幽霊からの依頼に伴蔵は躊躇します。悩んだ末に女房のお峰に相談したところ、お峰は100両の大金をもらうことを条件に、この願いを引き受けるよう伴蔵を説得し…。
 それから1年後。伴蔵とお峰は、もらった100両を元手に、馬子久蔵の口利きもあり野州栗橋で荒物屋を営みます。店は繁盛し羽振りの良い生活をしていた二人でしたが、伴蔵は料理屋笹屋の酌婦お国に入れあげて、通いつめる始末。それを知ったお峰から厳しく問い詰められます。ついには口論をする二人のもとに、いずくともなく牡丹燈籠が飛んできて…。
 三遊亭円朝の傑作の一つとして知られる怪談噺で、人間の欲望の深さを巧みに描き出しています。玉三郎のお峰に、初役となる愛之助の伴蔵と、昨年の『四谷怪談』に続く南座での二人の共演にどうぞご注目ください。

 

【スタッフ】

原作:三遊亭円朝

脚本:大西信行

演出:坂東玉三郎

演出・補綴:今井豊茂

所作指導:花柳壽輔

音響:松竹ショウビズスタジオ

狂言作者:竹柴慧一

狂言方:吉田正清

頭取:宮脇信治

製作:松竹演劇部

 

【キャスト】

伴蔵女房お峰:坂東玉三郎

伴蔵:片岡愛之助

萩原新三郎:喜多村緑郎

お国:河合雪之丞

お六:中村歌女之丞

乳母お米:上村吉弥

 

坂東玉雪

坂東功一

坂東玉朗

上村折乃助

上村吉太朗

片岡孝法

片岡愛一朗

河合誠三郎

河合穂積

喜多村一郎

岸本源輝

 

【演奏】

<長唄>

杵屋勝四郎

杵屋巳之助

杵屋長寿郎

杵屋彌六朗

杵屋巳志郎

杵屋巳喜助

杵屋勝六三

 

<三味線>

和歌山富之

杵屋六治郎

柏要吉

杵屋巳佐

部長 杵屋巳太郎

 

<鳴物>

田中傳八郎

望月太州

望月太喜十朗

藤舎悦芳

藤舎華生

望月太喜之助

部長 田中傳左衛門

 

 

 

 

 

歌舞伎を観に行ったことはこれまでほとんどなかったが、思い立って観に行ってみた。

現代語の台詞によるバージョンであり、筋は分かりやすかった。

坂東玉三郎と片岡愛之助はさすがに芸達者で、笑わせるし泣かせる。

 

 

片岡愛之助演じる伴蔵は、ダメ男はダメ男だけれども、もともとの話では救いようのないダメ男となっているが、今回のバージョンでは少し筋が変えられ、憎めないダメ男でとどまっていて、モヤモヤすることなく楽しめた(本来の筋に慣れた人には物足りないかもしれないが)。

 

 

怪談ということで、篠笛のヒョロヒョロした音や、太鼓のドロドロした連打が、お化けの雰囲気をうまく表現していた。

作曲・編曲者や、唄方・三味線方・囃子方の名前が知りたかったが、公開されていないようなのは残念(パンフレットを買えば載っているのかもしれないが)。 → と書いていたところ、ご厚意でパンフレットをお見せいただけたため、演奏者名や他のスタッフ・キャスト名を上に追記した。

 

 

 

(画像はこちらのページからお借りしました)

 

 


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そういえば、ヴァーグナー聖地を巡ったスイス旅行(その記事はこちらこちら)以来、旅日記を書いていなかった。

今回、京都を代表する近現代日本庭園2ヶ所に遊びにいったため、せっかくなので少し記録しておきたい。

 

 

 

 

 

【明治時代の日本庭園 無鄰菴】

 

 

七代目小川治兵衞(1860-1933)が、山縣有朋の依頼でその別邸に明治29年(1896年)に作庭した日本庭園。

遠くの東山を借景として広大さを演出、また苔よりも芝生を主とした明るい庭地に、池でなく(琵琶湖疏水の豊富な水源を利用して)躍動感ある水の流れが配されている。

江戸時代の伝統的な庭園とは異なる、自然主義的な近代日本庭園の代表的名作、とのこと。

確かに、モネの庭にも比べられるような明るさ、爽やかさで、大変美しい。

山縣有朋の好みがかなり反映されているらしく、山縣有朋のアイディア力・西洋志向と七代目小川治兵衞の職人技・美的センスとの共作といえるかもしれない。

 

 

 

動画撮影禁止のため、静止画で。

水の流れに小さな段差を作って、せせらぎの音が聞こえるよう設計されている。

ずっと聞いていたくなる、癒やしの音である。

 

 

 

庭園の奥から母屋の方向を見た風景。

 

 

 

左が茶室、右が洋館。

洋館2階では、日露戦争開戦前の1903年4月21日にいわゆる「無鄰菴会議」が開かれ、山縣有朋のほか伊藤博文、総理大臣桂太郎、外務大臣小村寿太郎が集まり会談を行った。

 

 

 

洋館のほうから見た母屋の様子。

 

 

 

座敷の様子。

 

 

 

入口の様子。

 

 

 

 

 

【昭和時代の日本庭園 光明院 波心庭】

 

 

重森三玲(1896-1975)が、東福寺の塔頭の一つである光明院に昭和14年(1939年)に作庭した日本庭園。

上述の無鄰菴に代表される明治時代以来の自然主義的な近代日本庭園からの脱却を図り、伝統的な枯山水に回帰しつつ、個性的な模様や石組みでモダンに仕上げた、象徴主義的な現代日本庭園の代表的名作、とのこと。

確かに、独創的でありながらも奇抜すぎない、日本固有の侘び・寂びを活かしつつ独自の渋い美感を備えた空間となっている。

 

 

 

庭園の様子(動画)。

美しい京都の描写が印象的だったドラマ「いりびと -異邦人-」(その記事はこちらこちら)、そのロケ地として使用されたこの光明院は、主演を務めた高畑充希の大のお気に入りの地とのこと。

上述の無鄰菴のように明るく爽やかな庭園ではなく、こちらの波心庭のように少し独特な渋い庭園を気に入るあたりが、何だか彼女らしい(無鄰菴はロケ地ではなかったからというのもあるが)。

確かに、とても落ち着く空間であり、ここでのんびりと庭を眺めながらいつまでも過ごしていたいと感じた。

 

 

 

庭園の奥から本堂の方向を見た風景。

 

 

 

座敷の様子。

 

 

 

入口の様子。

 

 

 

 

 

【番外編】

 

 

文久元年(1861年)創業の「松葉」で食べた、冷やしにしんそば。

 

 

 

享保11年(1726年)頃創業の「鍵善良房」で食べた、くずきり。

 

 

 

黒蜜か白蜜かどちらかを選べるが、今回は黒蜜を選んだ。

 

 

 

明治40年(1907年)架橋の古川町橋(行者橋、一本橋)。

最初の架設年は不明で、文献上の初出は天明6年(1786年)とのこと。

上述のドラマ「いりびと -異邦人-」でもロケ地として使用され、菜穂(高畑充希)と樹(SUMIRE)が再会するシーンで大変美しく描写された。

 

 

 

遅くとも江戸時代前期~中期には行われていたとされる、五山送り火(写真は大文字)。

 

 

 

同じく五山送り火(動画)。

あかあかと燃える大文字を見ながら、祖霊の安らかならんことをお祈りした。

 

 


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オーストラリアのシドニーで開催された、第13回シドニー国際ピアノコンクールが、終わった(公式サイトはこちら)。

これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)、感想を書いてきた。

とりわけ印象深かったピアニストについて、備忘録的に記載しておきたい。

ちなみに、第13回シドニー国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第12回シドニー国際ピアノコンクール ファイナル結果発表

第13回シドニー国際ピアノコンクール 出場者一覧

予選 第1日

予選 第2日

予選 第3~5日

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3、4日

ファイナル 第1日

ファイナル 第2日

ファイナル 第3、4日

 

 

 

 

 

17. Pedro LÓPEZ SALAS (Spain, 9 October 1997)

予選1)(予選2

 

予選で選出されなかった外国人から一人選ぶなら彼か。

これぞヨーロッパというべき美しい音が特長で(特にハイドン)、今回ほど特別にハイレベルな大会でなければ予選通過していただろう。

 

 

11. Carter JOHNSON (Canada, 25 September 1996)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

また、私の中での個人的な今大会のMVP。

近年、アジア系のピアニストたちの活躍が著しく、それに東欧系のピアニストが次ぐが、西欧系のピアニストについては(20世紀の百花繚乱ぶりに比し)何とも寂しい限りで、特にミケランジェリやグルダ、ポリーニ、ベロフ、ル・サージュといったトップクラスの技巧派がとんと見られなくなっている(ベンジャミン・グロヴナーあたりは数少ない例外か)。

そんな中、今回初めて知ったCarter JOHNSONは、カナダ人とのことだが演奏は西欧系で、トップクラスの技巧派と言っていいかもしれない人材。

彼くらい弾ける人は、近頃アジア系ではそれほど珍しくないが、それでも彼はアジア系や東欧系ピアニストたちにはない、情よりも知の勝った、均整のとれた演奏様式とクリアな音を持つ。

そういう演奏が合うような曲を聴きたい場合、彼は貴重な存在となるだろう。

 

 

08. Yungyung GUO (China, 11 September 2003)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の第3位。

独自の内省的な音楽を持つ。

歌わせ方にどこか“訴えかける力”がある(少し神経質な感はあるが)。

 

 

07. Yasuko FURUMI (Japan, 5 February 1998)

予選1)(予選2

 

予選で選出されなかった日本人から一人選ぶなら彼女か。

彼女ほどの基礎力を持つ人は、ファイナリストの中では優勝者のJeonghwan KIMくらいのもの。

しかし彼女のストレートな様式はなかなか評価されず、一クセ二クセあるようなタイプの人が評価されやすいのは、何とかならないものか。

 

 

22. Korkmaz Can SAĞLAM (Turkey, 18 October 1999)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

彼もまたストレートな技巧派タイプで、古海行子も弾いたスクリャービンのソナタ第2番も遜色ない出来、そして少し暗めの渋いロマンティシズムが特徴。

 

 

13. Jeonghwan KIM (South Korea/Germany, 10 July 2000)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の優勝者。

技巧と音楽性とのバランスの取れたピアニスト。

特に混戦となったセミファイナルで、技巧派たちが次々落とされるなか競り勝ったのは、ショパンのチェロ・ソナタで技巧を超えた味わいを引き出したからではないだろうか。

逆にもしチェロでなくヴァイオリンに当たっていればどうなっていたか分からないが、運も味方につけての見事な優勝である。

それにしても、2021年ブゾーニコンクール(その記事はこちらこちらなど)で初めて知った際には残念ながら予選落ちだった彼が、2022年仙台コンクール(その記事はこちらなど)で第4位、そして今回2023年シドニーコンクールで優勝と、あれよあれよと結果を出していったのは嬉しい驚きだった。

 

 

12. Uladzislau KHANDOHI (Belarus, 7 October 2001)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の第2位。

クセが強く、出来にもムラがあるが、そのスラヴ風の美音と独自のスケルツァンドなノリがうまくハマれば相当な名演となる。

第2位というのは妥当と思われる(本人は納得いっていないかもしれないが)。

 

 

19. Philipp LYNOV (Russia, 6 January 1999)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

派手さが優先されることも少なくないロシアのピアニストたちの間にあって、穴のない堅実で力強い演奏をする彼は、熟練した職人にたとえられるかもしれない。

 

 

28. Yuanfan YANG (United Kingdom, 2 January 1997)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の第4位。

煌びやかな美音ではなく、少し鄙びたようなくっきり明快な音を持つ彼は、古典やドイツものに親和性があり、派手さとは無縁の味わいを聴かせる。

ファイナルの協奏曲で彼はその持ち味を存分に発揮しており、私はファイナリストたちの協奏曲演奏の中で最も気に入った(優勝でも良いと感じた)。

また、審査対象外だが、セミファイナルでのアンコール、古今東西どの主題や様式にも即座に対応可能らしい彼の即興演奏は、圧巻というほかない。

 

 

23. Vitaly STARIKOV (Russia, 8 May 1995)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の第6位。

こちらも“味”で攻めるタイプだが、古典派よりもロマン派に親和性がある。

特に、ショスタコーヴィチのチェロ・ソナタは、この曲の陰鬱なイメージを一新する、夢見るようなロマンを湛えていて印象的。

 

 

03. Junyan CHEN (China, 9 August 2000)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

私の中での個人的な今大会のMVPについて、上記Carter JOHNSONとどちらにするか迷った。

燃えるように情熱的な演奏で、かといって荒っぽくなることはなく、しっかりと引き締まっている。

現代曲やリストの地味な曲を、熱く聴かせてくれる。

私は何年か前に彼女の実演を聴いたことがあるのだが(その記事はこちら)、そのときも良い演奏だと感じたものの、まだ16歳だったためもあってか、これほどの逸材とは気づかなかった。

 

 

25. Reuben TSANG (Australia, 29 August 2003)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

若々しい明るく素直な音と多少のアラは気にしない華やかな技巧が特徴。

特に室内楽ではアラも目立たず、音の存在感を主張できており、(ファイナルには進めなかったが)協奏曲映えしそう。

 

 

26. Wynona Yinuo WANG (China, 9 October 1996)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2)(ファイナル1)(ファイナル2

 

今大会の第5位。

技巧面や音色面に優れるというよりは、それらを独自の表現力でカバーするタイプで、私の好みとは異なるが、ラフマニノフのソナタ第1番など地味な曲をなかなかに聴かせる。

 

 

27. Junlin WU (China, 12 December 1997)

予選1)(予選2)(セミ1)(セミ2

 

今大会のセミファイナリスト。

名人芸タイプのピアニストで、ショパンよりはリストタイプ。

セミファイナルのショパンのチェロ・ソナタでは優勝者Jeonghwan KIMのような細やかな情感はみられず落選してしまったが、プロコフィエフのソナタ第6番でのパワーや安定感はむしろ上だった。

また「亡き王女のためのパヴァーヌ」の歌も印象的。

 

 

 

 

 

以上のようなピアニストが、印象に残った。

 

 

今大会は、予選が稀に見るレベルの高さだった。

リストコンクール(ブダペスト)第2位のSergey BELYAVSKY、浜松コンクール第2位のRoman LOPATYNSKYI、仙台コンクール優勝のJiaqing LUO、高松コンクール優勝の古海行子といった錚々たるメンバーがなんと予選落ち。

それでも理不尽な結果とはいえない、納得せざるを得ないような実力者たちがセミファイナリストにも揃っていた。

予選だけでいうと、世界三大ピアノコンクールの一つに数えられるチャイコフスキー国際コンクール(その記事はこちらなど)よりも余程ハイレベルだったように思う。

 

 

しかし、ファイナルの演奏は全体的にいまいちパッとしなかった印象で、コンクールでの選別の難しさを痛感した。

その一因にセミファイナルの室内楽があると私は考えているのだが、まぁシドニー国際ピアノコンクールのスタンスとして、これはこれでありかもしれない。

全てのコンクールでファイナルがパッとする必要はない、というのも一つの考え方か。

世界三大ピアノコンクールに室内楽選考がないのは、私は賛成である。

この三つにはやはりこれからも、いぶし銀タイプよりもスタータイプのピアニストを選出する場であってほしいから(ただ、チャイコフスキー国際コンクールについては戦争が終結しWFIMCに再加盟が認められた場合に限るけれど)。

 

 


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バービー

 

【劇場公開日】

2023年8月11日

 

【解説】

世界中で愛され続けるアメリカのファッションドール「バービー」を、マーゴット・ロビー&ライアン・ゴズリングの共演で実写映画化。さまざまなバービーたちが暮らす完璧な世界「バービーランド」から人間の世界にやってきたひとりのバービーが、世界の真実に直面しながらも大切なことは何かを見つけていく姿を描く。

ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。

「レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のグレタ・ガーウィグが監督を務め、「マリッジ・ストーリー」のノア・バームバックとガーウィグ監督が共同で脚本を手がける。

 

【スタッフ】

監督:グレタ・ガーウィグ

製作:デビッド・ハイマン、マーゴット・ロビー、トム・アカーリー、ロビー・ブレナー

製作総指揮:マイケル・シャープ、ジョージー・マクナマラ、イノン・クライツ、コートニー・バレンティ、トビー・エメリッヒ、ケイト・アダムス

脚本:グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック

撮影:ロドリゴ・プリエト

美術:サラ・グリーンウッド

衣装:ジャクリーン・デュラン

編集:ニック・ヒューイ

音楽:アレクサンドル・デスプラ

音楽監督:ジョージ・ドレイコリアス

視覚効果監修:グレン・プラット

 

【キャスト】

バービー:マーゴット・ロビー(高畑充希)

ケン:ライアン・ゴズリング(武内駿輔)

グロリア:アメリカ・フェレーラ(本田貴子)

変てこバービー:ケイト・マッキノン(朴璐美)

アラン:マイケル・セラ(下野紘)

サーシャ:アリアナ・グリーンブラット(早見沙織)

大統領バービー:イッサ・レイ(斎賀みつき)

ルース・ハンドラー:リー・パールマン(木村有里)

マテル社CEO:ウィル・フェレル(内田直哉)

最高裁判事バービー:アナ・クルーズ・ケイン

ノーベル物理学賞受賞バービー:エマ・マッキー(坂本真綾)

お医者さんバービー:ハリ・ネフ

売れっ子作家バービー:アレクサンドラ・シップ(沢城みゆき)

ケン:キングズリー・ベン=アディル(諏訪部順一)

ケン:シム・リウ

ケン:ンクーティ・ガトワ

ケン:スコット・エヴァンス(置鮎龍太郎)

マテル社重役:ジェイミー・デメトリウ

アーロン・ディンキンス:コナー・スウィンデルズ

弁護士バービー:シャロン・ルーニー

外交官バービー:ニコラ・コーグラン

報道記者バービー:リトゥ・アリヤ

マーメイドバービー:デュア・リパ

ナレーター:ヘレン・ミレン(榊原良子)

ケン:ジョン・シナ

ミッジ:エメラルド・フェネル

 

【作品データ】

製作年:2023年

製作国:アメリカ

配給:ワーナー・ブラザース映画

上映時間:114分

原題:Barbie

 

 

 

 

 

以上、映画.comのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

映画「バービー」吹替版を観た。

好きな俳優、高畑充希がバービー役のマーゴット・ロビーの吹替役を担当しているからである。

日本公開に先立って残念な出来事が生じたものの、ともかくも無事に公開となった。

以下、少しネタバレあります。

 

 

「バービー」は、高畑充希が敬愛しているというグレタ・ガーウィグ監督の第3作とのことで、第1作「レディ・バード」と第2作「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」もあらかじめ観ておいた。

3作品のテーマは共通していて、それは“女性の生き方”である。

 

 

バービーランドは、完璧な“女性社会”。

現実の“男性社会”とは真逆のバービーランド、完璧な世界のはずだったのに、うまく立ち行かなくなってきて、ではどうしたらいい?、という話。

バービーが主人公だけれど、甘い夢の国にいざなわれるディズニー映画等とは全く違った、風刺の利いた苦い話である。

 

 

全体的に、やけにシュールでキッチュで荒唐無稽でバカバカしいテイストで描かれているのだが、だからこそ、苦い真実がさらっとダイレクトに突きつけられるし、また苦くても後味は重すぎない。

こういう映画を撮る監督を敬愛しているというのが、何となく高畑充希らしいように感じた。

 

 

観終わってスカッと溜飲を下げるタイプの映画ではないが、一見の価値はあると思う。

バービーランドでバービーとケンとの間に起こるあれこれは、女性のみならず男性にも訴えかけるものとなっている。

ふと、矢野顕子の曲「ラーメンたべたい」の一節を思い出した。

 

“男もつらいけど 女もつらいのよ 友達になれたらいいのに”

 

 

 

 

 

 


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