音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~ -21ページ目

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ブロードウェイ・ミュージカル 「ウエスト・サイド・ストーリー」

 

【日時】

2023年8月5日(土) 開演 17:00

 

【会場】

オリックス劇場 (大阪)

 

【プログラム】

バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」

 

【あらすじ】

ステージに炸裂するソング&ダンスの饗宴!
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」をベースに、設定をニューヨークのウエストサイドに置きかえ、そこに芽生えた恋を描いた、ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」。
ミュージカル・ナンバーとして、トニーとマリアがデュエットする「TONIGHT」をはじめ、「AMERICA」、「I FEEL PRETTY」、「SOMEWHERE」などいくつもの広く知られた名曲が作品を彩る♪
胸に迫る超ド級の衝撃と陶酔。これぞ正真正銘のミュージカルだ!
舞台はNYのストリート。不良グループ「ジェッツ」と「シャークス」は人種の違いから対立状態にあった。ある日、ジェッツの元リーダー、トニーは現リーダーのリフとダンスパーティーに出かける。そこでトニーは美しい少女マリアに出会い、2人はまたたく間に恋に落ちた。しかし、彼女は対立するシャークスのリーダー、ベルナルドの妹だった。恋と友情の板挟みにトニーは悩み、禁断の恋は、悲劇の連鎖を生んでいくのだった・・・。

 

【スタッフ】

オリジナル演出・振付:ジェローム・ロビンス

脚本:アーサー・ロレンツ

音楽:レナード・バーンスタイン

作詞:スティーブン・ソンドハイム

演出:ロニー・プライス

振付:フリオ・モンへ

音楽監督:グラント・ストリアーレ

舞台美術:アンナ・ルイゾス

照明デザイン:ファブリス・ケブール

音響デザイン:トム・マーシャル

 

【キャスト】

PRINCIPALS

トニー:ジェイドン・ウェブスター

マリア:メラニー・シエラ

アニタ:キラ・ソルチェ

ベルナルド:アントニー・サンチェス

リフ:タイラー・ハーレイ

 

ADULTS

ドク:ダレン・マティアス

シュランク:ブレット・トゥオミ

クラブキ:エリック・グラットン

グラッドハンド:スチュアート・ダウリング

 

THE JETS(ジェッツ)

アクション:アンソニー・J・ガスバール3世

A-ラブ:スカイ・ベネット

ベビー・ジョン:ダニエル・ラッセル

スノーボーイ:リアム・ジョンソン

ビッグ・ディール:アシュトン・ランバート

ディーゼル:マレック・ズロウスキー

エニィボディズ:ローラ・レオ・ケリー

グラジェラ:ナタリー・スーティエ

ヴェルマ:ビクトリア・ビロ

ミニー:ニコル・レワンドウスキー

クラリス:ケイトリン・ニーヴーナー

 

THE SHARKS(シャークス)

チノ:クリストファー・アルバラード

ペペ:アレッサンドロ・J・ロペス

ムース:アーネスト・オリバス

ルイス:マイケル・ビショップ

アンキシャス:ヴァコ・グヴェレシアニ

ニブレス:ヘラルド・エスパルサ

ロザリア:ミチェル・ヴァスケス

コンスエーロ:ディアナ・カジョー

テレシタ:ジャンナ・アネージ

フランシスカ:マーヨ・リベロ

マルガリータ:ベロニカ・ケサダ

 

SWING & UNDER STUDY(スウィング&アンダースタディ)

ダニエル・ディピント

ジャスティン・ロペス

サラ・ゴールド

ガビ・シモンズ

 

【オーケストラ】

Music Director:Grant Horace Sturiale

Reed 1:Daniel Orie Dorrance

Reed 2:品川 政治、日向 秀司

Reed 3:Tanner Michael Dawson

Reed 4:鈴木 徹

Trumpet 1:柴山貴生、荒井弘太(大阪・群馬)

Trumpet 2:佐藤秀徳 *、牛腸和彦 *

Trombone:細貝潤 *、梶原彰人 *

French Horn:廣川実 *、比嘉康志 *

Violin 1:遠藤雄一(concert master)

Violin 2:谷口いづみ *、浮村恵梨子 *

Violin 3:佐久間大和 *(double concert master)、青柳萌 *

Violin 4:申愛聖 *、奈須田弦 *

Cello 1:鈴木和生 *、宮尾悠 *

Cello 2:谷口広樹 *、塚本慈和 *

Bass:安藤章夫

Percussion:土屋吉弘、清田裕里江

Drums:Taylor Gage Simpson

Keyboard:David Terriault、白石 准

 * シアターオーケストラトーキョー

 

 

 

 

 

ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」を観に行った。

昨年に観た「ミス・サイゴン」(その記事はこちら)がヨーロッパ・ミュージカルの最高峰だとすると、「ウエスト・サイド・ストーリー」はアメリカ・ミュージカルの最高峰と言えるだろう。

私はニューヨークに行ったこともないし、ブロードウェイの来日公演も観たことがなかったので、初めてのブロードウェイはぜひこの曲で、と思ったのだった。

 

 

 

 

 

バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」で私の好きな録音は

 

●ゴーバーマン指揮 管弦楽団 1957年9月29日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

 

あたりである。

初演メンバーによる録音で、この何ともいえないノリのよさ、軽薄さが良い。

 

 

なお、このCDには、作曲者バーンスタインの指揮、ニューヨーク・フィルによる組曲「ウエスト・サイド・ストーリーからの交響的舞曲」(1961年録音)がカップリングされていて、そちらはもう少しクラシック音楽風の重みがあり、ダイナミックで、でもやはりノリがよくて、これまた良い。

この2種の録音ほど、1950~60年代のニューヨークの空気が感じられる同曲演奏は他にあるまい。

 

 

今回のストリアーレの指揮は、ゴーバーマンの軽みもバーンスタインの重みもなく、中庸といったところ。

個性は感じられなかったが、変なクセがあるよりはずっとよく、初めての生ブロードウェイを安心して楽しめた。

 

 

また、歌手陣は、上記初演メンバーであるトニー役のラリー・カート、マリア役のキャロル・ローレンス、アニタ役のチタ・リヴェラらの歌声にはやはり敵わないけれど、それでもみな水準以上の歌唱力ではあったし、美男美女たちでダンスも上手くて、さすがは本場のクオリティであった。

 

 

余談だが、トニーのナンバー「Something's Coming」は、本当は初演メンバーのラリー・カート以上に、好きなミュージカル歌手でヘルデンテノール風の声の持ち主、アーロン・トヴェイトのライヴ録音が最高(Apple MusicCDYouTube)。

こういう歌をいつか生で聴いてみたいのだが、こんな声だとトニーにしてはかっこよすぎるかもしれない。

 

 

 

 

 

ともあれ「ウエスト・サイド・ストーリー」、やっぱり名曲である。

アメリカが最も栄えていた時代に、その栄光の裏側、ユダヤ移民やヒスパニック移民の悲哀を描いて、それにぴったりな音楽をバーンスタインはつけた(彼もまたユダヤ系だった)。

こうした“陰の真実”“弱者の悲哀”を表現するのに、音楽はしばしば非常に適した手段となる。

アメリカ音楽を発展させてきたのも、WASPよりも彼ら移民たち、またアフリカ系アメリカ人たちだった。

 

 

「ウエスト・サイド・ストーリー」は、そんなアメリカ音楽の全盛期を代表する記念碑的作品の一つであり、当時のアメリカの空気感を如実に表すとともに、それだけにとどまらず、人間の寛容/不寛容について、高い普遍性をもって私たちに訴えかける。

ノリノリで聴いていても、最後には涙してしまうのだった。

 

 

(カーテンコールの様子)

 

 

 

(画像はこちらのページからお借りしました)

 

 


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日本センチュリー交響楽団

ハイドンマラソンHM.32

 

【日時】

2023年8月4日(金) 開演 19:00 (開場 18:00)

 

【会場】

ザ・シンフォニーホール (大阪)

 

【演奏】

指揮:飯森範親

フルート:永江真由子 *

ハープ:篠﨑和子 *

管弦楽:日本センチュリー交響楽団

(コンサートマスター:荒井英治)

 

【プログラム】

ハイドン:交響曲 第55番 変ホ長調 Hob. I:55 「校長先生」

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K. 299 *

ハイドン:交響曲 第29番 ホ長調 Hob. I:29

 

 

 

 

 

センチュリー響のハイドンマラソン(ハイドンの交響曲全曲演奏会ツィクルス)Vol.32を聴きに行った。

というのも、今回はハイドンと同時に、好きなフルート奏者、永江真由子をソリストに迎えて、モーツァルトのフルートハープ協奏曲が演奏されるからである。

センチュリー響の首席フルート奏者である彼女は、大フィルの首席フルート奏者である田中玲奈とともに、関西オケのフルート奏者の二大巨頭だと私は勝手に考えている。

そんな彼女がフルートハープ協奏曲を演奏するとあっては、聴き逃すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

モーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」で私の好きな録音は

 

●パユ(Fl) ラングラメ(Hp) アバド指揮 ベルリン・フィル 1996年9月22,24,28,29日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●パユ(Fl) レナエルツ(Hp) ルルー指揮 パリ室内管 2021年1月4-6日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●シュッツ(Fl) ジュス(Hp) シェレンベルガー指揮 ベルリン響 2021年9月20-22日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

 

あたりである。

フランス系の華やかな音を持つエマニュエル・パユと、ウィーン風のまろやかな音を持つカール=ハインツ・シュッツ。

この2人のフルートには、抗しがたい魅力がある。

また、フランス・ベルギー系のマリー=ピエール・ラングラメとアンネレーン・レナエルツ、それからドイツ系のマルギット=アンナ・ジュス、彼女らのハープも、それぞれパユやシュッツの音楽性と相性が良い。

 

 

今回の永江真由子らの演奏は、これらの名盤に匹敵する、と言いたいほどに美しいものだった。

彼女は、パユやシュッツのような彩り豊かでふくよかな音とは対照的に、線の細い、淡く清廉な音を持つ。

また、一音一音の出し方がとても丁寧で、特にノンレガートの速い音階風パッセージの、きわめて均質に整えられていることにかけては、パユやシュッツにも勝るほど。

 

 

彼女は、殊更に各フレーズにニュアンスを付けることはせず、こじゃれたリズムの伸び縮みも排して、あくまで楽譜に忠実に、音量や音長の均等かつ滑らかな配分に細心の注意を払う。

その涼やかさ、清冽さは、古海行子の弾くモーツァルトの同じ調性のピアノ協奏曲第21番を思わせる(演奏動画はこちら)。

このように澄んだ“モーツァルトのハ長調”を聴けることは、ピアノにせよフルートにせよ、私のようなモーツァルトファンにとってこの上ない喜びである。

 

 

篠﨑和子のハープは、永江真由子のフルートほどの特別な清澄さはなかったにしても、この難しい技巧曲をしっかりこなしていたし、ニュアンスをあまり付けすぎない点も永江真由子の音楽性に合っていた。

飯森範親の洗練された指揮も含め、全体に文句なしの出来だった。

 

 

 

 

 

ハイドンの交響曲第55、29番は、私は普段ほとんど聴かない曲だが、さすがは飯森範親、こうした地味な曲でも聴かせる。

特に第29番、第2楽章の、対向配置された第1/第2ヴァイオリンの掛け合いが印象的。

これら2曲は、現在進行中の飯森範親&センチュリー響によるハイドン交響曲全曲録音に含まれることになると思われるが、それと同時に番外編として、上記モーツァルトのフルートハープ協奏曲の録音を、どうかどうか一緒に発売してくれないものだろうか。

もしそれが実現したならば、きっと同曲最高の名盤の一つとなることだろう。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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石井楓子(ピアノ) 北欧の風&ブラームス

 

【日時】

2023年7月31日(月) 開演 14:00 (開場 13:30)

 

【会場】

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 小ホール

 

【演奏】

ピアノ:石井楓子

 

【プログラム】

ラヴェル:古風なメヌエット

ブラームス:3つの間奏曲 op.117 より 第2番 変ロ短調

ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24

グリーグ:抒情小曲集 より

 民謡 op.12-5

 アルバムリーフ op.12-7

 スプリングダンス op.47-6

 過ぎ去った日々 op.57-1

 春に寄す op.43-6

 トロルハウゲンの婚礼の日 op.65-6

 

※アンコール

グリーグ:抒情小曲集 より 家路 op.62-6

 

 

 

 

 

好きなピアニスト、石井楓子のコンサートを聴きに行った。

ラヴェル、ブラームス、グリーグから数曲ずつ選んだリサイタルである。

彼女の実演を聴くのは、コロナ禍前の2020年2月(その記事はこちら)以来、3年半ぶり。

 

 

 

 

 

小品が集められたプログラムだが、超有名曲や超絶技巧曲ではなく、渋めの選曲なのが彼女らしい。

冒頭のラヴェルからしてすでに、その演奏は大ピアニストの風格をみせる。

ブラームスの間奏曲op.117-2は、ラルス・フォークトのように遅いテンポでいかにも“深く”みせるのではなく(それはそれで好きだが)、あくまで作曲者指定の「アンダンテ・ノン・トロッポ」のテンポを採るが、それでもなおこの曲の味をしっかりと出せてしまう。

グリーグの「抒情小曲集」抜粋も、さすが2022年グリーグ国際ピアノコンクールの覇者だけあって、堂に入ったもの。

 

 

 

 

 

そして、今回唯一の大曲である、ブラームスのヘンデル変奏曲。

この曲で私の好きな録音は

 

●ペトリ(Pf) 1938年3月3日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●ナット(Pf) 1955年セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●エイマール(Pf) 1957年セッション盤(Apple MusicYouTube

●ファレル(Pf) 1957年頃セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●S=レオナルディ(Pf) 2004年7月12,13日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●フルネル(Pf) 2021年5月15日エリザベートコンクールライヴ盤(NMLApple MusicCDYouTube動画その記事はこちら

 

あたりである。

この曲は器用さよりも何よりも、とにかく端正な美音と歌が欲しい。

それがあるのがこの6つの盤で、かっちりしたドイツ系のペトリ/レオナルディと、優美なフランス系のナット/エイマール/フルネルとに大別される(なおファレルはニュージーランド人だが演奏は優美であり後者寄りか)。

 

 

そして、今回の石井楓子は、これらの名盤に匹敵する味わいを持ち、さらに完成度をも兼ね備えた、最高の名演だった。

演奏の系統としてはドイツ系で、冒頭の主題も優美というよりは決然と弾くのだが、うるさくなるようなことは決してなく、全てが美しい音と端正な歌に満ちている。

スタインウェイのピアノは、彼女が弾くと何ともまろやかなドイツの音が鳴って、まるでベヒシュタインかブリュートナーのよう。

また、例えば第14変奏など、これまで軽快なスタッカートのイメージだったのだが、彼女が弾くとリズムは重くならないまま、軽すぎずずっしりと充実した、引き締まったノンレガートになっていて、これぞブラームス、と言いたくなる。

当代一流のブラームス弾きである彼女の面目躍如。

この曲がこれ以上に“ブラームスらしく”美しく弾かれたことはなかったのではないか、とさえ感じた。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2023

歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

(新制作/全2幕 イタリア語上演・日本語字幕付)

 

【日時】

2023年7月23日(日) 開演 14:00

 

【会場】

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

 

【スタッフ&キャスト】

指揮:佐渡裕

演出:デヴィッド・ニース

装置・衣裳:ロバート・パージオラ

照明:高沢立生

かつらデザイン:アン・ネスミス

振付:広崎うらん

合唱指揮:矢澤定明

声楽コーチ:デニス・ジオーク

声楽コーチ:森島英子

演出助手:飯塚励生

装置助手:ニコラス・コスナー

衣裳助手:小栗菜代子

舞台監督:幸泉浩司

プロデューサー:小栗哲家

制作:兵庫県立芸術文化センター

 

ドン・ジョヴァンニ:大西宇宙

騎士長:妻屋秀和

ドンナ・アンナ:高野百合絵

ドン・オッターヴィオ:城宏憲

ドンナ・エルヴィーラ:ハイディ・ストーバー

レポレッロ:平野和

マゼット:森雅史

ツェルリーナ:小林沙羅

 

合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団

管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

(ゲスト・コンサートマスター:ステファノ・ヴァニャレッリ)

(チェンバロ:森島英子)

 

【プログラム】

モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」

 

 

 

 

 

兵庫県立芸術文化センター主催のオペラ、モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」を聴きに行った。

なぜかというと、昨年末に聴いたジルヴェスター・コンサートで高野百合絵が歌ったドンナ・アンナのアリアに感銘を受けたからである(その記事はこちら)。

これはぜひ全曲聴いてみたいと思ったのだった。

 

 

 

 

 

モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」で私の好きな録音は

 

●クリップス指揮 ウィーン・フィル 1955年6月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ 2015年11月23日~12月7日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

 

あたりである。

歌手陣が最高なのが前者、指揮が最高なのが後者。

そして、2019年にルツェルン音楽祭で聴いたクルレンツィスの実演は、ドンナ・アンナ役のナデージダ・パヴロヴァが大変に素晴らしかった分、上記2盤をも超える忘れがたい名演となった(その記事はこちら)。

 

 

「ドン・ジョヴァンニ」は、冒頭のドンナ・アンナ、ドン・ジョヴァンニ、レポレッロの三重唱が、私にとって試金石となっている。

ここのドンナ・アンナの歌は、初っ端から高音域の速いパッセージが連続しており、多くの場合荒れてしまう。

ここが満足のいく出来だったのは、上記クリップス盤のシュザンヌ・ダンコか、ルツェルン音楽祭のナデージダ・パヴロヴァくらいのものである(他にフルトヴェングラー盤のリューバ・ヴェリッチュやアーノンクール盤のエディタ・グルベローヴァも良い線いっているが、それ以外の数多の盤はどれもいまいち)。

 

 

今回の高野百合絵のドンナ・アンナは、この冒頭の三重唱からして見事な出来だった。

高音に余裕があり、シュザンヌ・ダンコやナデージダ・パヴロヴァにも引けを取らない。

第1、2幕それぞれのアリアも、ナデージダ・パヴロヴァの繊細きわまる針の穴のコントロールはないにしても、もう少したっぷりとした声質で、それでも決して粗くならず端正かつ丁寧に歌えており、十分以上の素晴らしさ。

それ以外の箇所の何気ないアンサンブルでも彼女の声は際立っており、これだけの歌手は日本にいなかったのではないか。

 

 

ドンナ・エルヴィーラ役のハイディ・ストーバーは、高野百合絵のような安定した高音域を持たないが、そのぶん中音域の声質が明るく華やか。

こういう声質はさすが欧米人というべきか、日本人からはなかなか聴かれない特長かもしれない。

ハイディ・ストーバーのカラフルな衣装と、高野百合絵のシックな衣装が、それぞれの声質とよく対応していて、キャラクターの描き分けが明快だった。

 

 

バスの4人(大西宇宙、平野和、森雅史、妻屋秀和)が、これまた良い声。

上記クリップス盤におけるドン・ジョヴァンニ役のチェーザレ・シエピ、レポレッロ役のフェルナンド・コレナ、マゼット役のヴァルター・ベリー、騎士長役のクルト・ベーメといった名歌手たちほどの個性や存在感はないけれど、なかなかの歌いぶりで、また四者四様の声質がちゃんとある。

こういうアンサンブル・オペラにおいて、声によるキャラ分けは重要だと思う。

 

 

佐渡裕の指揮について、これまで私は彼のベートーヴェンやブルックナーを聴いて、変なクセがないのは良いのだが可もなく不可もなくというか、彼の持ち味があまり分からずにきた。

しかし、今回は彼のそうした面がプラスに作用し、重すぎてモーツァルトを逸脱してしまうこともなく、逆に軽すぎて悲劇性を損なってしまうこともなく、この曲らしさを引き出せていたように思う。

全てを自身の音楽にして突き進むクルレンツィスのカリスマ性とはまた違った、縁の下の力持ちのような良さがあった。

 

 

 

 

 

ルツェルン音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」は、私にとって忘れがたい体験だけれど、指揮のクルレンツィスとドンナ・アンナ役のナデージダ・パヴロヴァが圧倒的に素晴らしく、次いでツェルリーナ役のクリスティーナ・ガンシュが良かった一方、他の歌手はどちらかというと没個性的で、そういう意味では今思うとややムラがあった。

今回の「ドン・ジョヴァンニ」は、歌手陣も指揮も、みな一定以上のレベルと個性とを発揮できていた。

今までに生で聴いたオペラの中で、歌手陣が最も粒ぞろいの公演だったと言っていいかもしれない。

こういうオペラが日本で聴けるようになってきたと思うと、感慨深い。

 

 

(カーテンコールの様子)

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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大阪フィルハーモニー交響楽団

第570回定期演奏会

 

【日時】

2023年7月21日(金) 開演 19:00

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】

指揮:下野竜也

ピアノ:ヴァルヴァラ *

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:崔文洙)

 

【プログラム】

フィンジ:前奏曲 ヘ短調 作品25

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595 *

フランク:交響曲 ニ短調

 

※アンコール(ソリスト) *

チャイコフスキー:ノクターン ヘ長調 作品10-1

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、1969年鹿児島市生まれ、現在は広島交響楽団音楽総監督を務める指揮者、下野竜也。

ソリストは、1983年ロシア生まれ、2012年ゲザ・アンダ国際ピアノコンクール優勝のピアニスト、ヴァルヴァラ。

 

 

 

 

 

最初のプログラムは、フィンジの前奏曲。

この曲は、私には耳馴染みがないけれど、ネオバロックとでも言うべきか、バロックとロマン派を足して2で割ったような、フィンジらしく聴きやすい癒しの音楽だった。

 

 

 

 

 

次のプログラムは、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番。

この曲で私の好きな録音は

 

●グルダ(Pf) アバド指揮 ウィーン・フィル 1975年5月13日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●クリーン(Pf) スクロヴァチェフスキ指揮 ミネソタ管 1978年セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●務川慧悟(Pf) ブラレイ指揮 ワロニー王立室内管 2021年5月13日エリザベートコンクールライヴ盤(NMLApple MusicCDYouTube123動画

 

あたりである。

片やロマン的、片や古典的とアプローチに違いはあれど、それぞれのやり方で自国最大の作曲家の“白鳥の歌”をうたい尽くしたオーストリアの二大巨頭、グルダとクリーン。

そして、演奏時まだ20歳代、この曲を書いたモーツァルトよりも若く、またお国ものでもないのに、二大巨頭に負けない美しい演奏をした日本の新星、務川慧悟(その記事はこちら)。

 

 

今回のヴァルヴァラの演奏は、入りを一拍間違えてオーケストラとのアンサンブルが崩壊しかけたり、ミスもちょこちょこみられたりと、これまでに私が聴いた大フィルの歴代共演ソリストの中で最も完成度が低かったが、その代わりというべきか、音色は大フィルの歴代共演ソリストの中で最も美しかった。

特にモーツァルトのピアノ協奏曲の場合、これまでのピアニストたちは田中玲奈の色彩的な美しいフルートの陰に隠れていたのだが、今回に限っては、田中玲奈のフルートがモノトーンに聴こえるほどに、ピアノの音が華やいでいた。

古典的なスタイルの中にときどき大仰なロマン派風スタイルが混じるのは気になったが、全体的には品があり、また(上記名盤たちほどとは言わないが)あらゆるフレーズに歌もあって、モーツァルトが合わないわけではなさそう(むしろ合っている)。

また、ミスはけっこうあったものの、多くのパッセージはスムーズに弾けており、技量がないわけではなくポテンシャルはありそう(緊張もしくは準備不足の問題か)。

 

 

アンコールのチャイコフスキー「ノクターン」は、技術的に難しくない曲ということもあってか、文句なしに美しい、絶品の演奏。

ヴァルヴァラ、これまであまり聴いてこなかったが、ちょっと注目していきたいピアニストとなった。

同郷の同世代のピアニスト、アンナ・ヴィニツカヤの力強いピアニズムとは対照的で、どちらも面白い。

 

 

 

 

 

最後のプログラムは、フランクの交響曲。

この曲で私の好きな録音は

 

●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1953年12月14,15日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●クレンペラー指揮 ニュー・フィルハーモニア管 1966年2月10-12,15日セッション盤(NMLCDYouTube123

●ネゼ=セガン指揮 モントリオール・メトロポリタン管 2010年7月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●アルミンク指揮 ベルギー王立リエージュ・フィル 2012年6月4-8日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

 

あたりである。

フレーズを豊かにニュアンスづけしてドラマティックに仕上げていく“ドラマ型”の演奏と、ニュアンスづけを極力抑えて音の響きそのものを積み上げていく“純粋器楽型”の演奏。

“ドラマ型”VS“純粋器楽型”の対比を、20世紀のブルックナー風重厚スタイルで味わえるのがフルトヴェングラーVSクレンペラー、21世紀の今風洗練スタイルで味わえるのがネゼ=セガンVSアルミンクである。

 

 

今回の下野竜也&大フィルの演奏は、どちらかというと“ドラマ型”タイプ。

第1楽章の再現部など、テンポをぐっと落としてのドスの利いた表現は、魔王でも出てきそうな雰囲気である。

それに加え、彼はおそらく日本でもトップクラスの洗練を持つ人で、同世代のネゼ=セガンやアルミンクと同様に(彼らのすっきり爽やかな音楽とはタイプがやや異なるが)、配慮の行き届いた演奏をする。

あとは、フルトヴェングラー盤の威容やネゼ=セガン盤の優美さのような、何かもう一つ独自の魅力が備われば、私にとって上記名盤たちに並ぶ存在になったかもしれない。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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