ベルギーのブリュッセルで開催されている、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。
5月15日は、セミファイナルの第6日(最終日)。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表)
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期)
以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。
また、以下の協奏曲はいずれもフランク・ブラレイ指揮、ワロニー王立室内管弦楽団との共演である。
06. Jonathan FOURNEL (France, 1993-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Concerto n. 18 in B flat major KV 456
PIERRE JODLOWSKI: Nocturne
FRYDERYK CHOPIN: Nocturne n. 17 in B major op. 62/1
JOHANNES BRAHMS: Variations and Fugue on a Theme by Handel op. 24
西欧らしい形式美、均整美あふれる端正なタッチはモーツァルトにふさわしく(その記事はこちら)、これに比べれば、同じく西欧風だった第2日のマルセル・タドコロでさえ、東方の「情」の要素を感じる。
どちらのモーツァルトも美しいが、タッチの安定やオケとのアンサンブルの点ではJonathan FOURNELのほうが多少上か。
ショパンも均整美だが、これはさすがにもう少し東欧の「情」が欲しい気がするのと、あと再現部でのトリルの粒の揃いが今一つ。
ブラームスは、感傷を排した形式美、珠を転がすような整ったクリアな美音が、バロックの主題を温ねたこの変奏曲によく合っている。
これぞヨーロッパ、といった音がする。
57. Yuki YOSHIMI (Japan, 2000-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Concerto n. 17 in G major KV 453
FRYDERYK CHOPIN: Barcarolle in F sharp major op. 60
MAURICE RAVEL: Noctuelles (Miroirs)
PIERRE JODLOWSKI: Nocturne
SERGEY PROKOFIEV: Sonata n. 7 in B flat major op. 83
モーツァルト、安定したタッチによる曇りのない演奏。
表現の引き出しが多いというよりは、どちらかというと一本気な、フォルテならフォルテで常にがつんと鳴らす、ベートーヴェンから見たモーツァルトといったような印象。
この曲らしいたおやかなイメージとは異なるが、これはこれで面白いし、タッチの揺るぎなさは他の巧者たちと比しても引けを取らない。
ソロ曲も同様で、ショパンやラヴェルは色彩豊かというよりは全てを白色光で照らしたような演奏だが、やはり技巧的に安定していてごまかしがない。
そしてプロコフィエフは彼の一本気な良さが出た演奏で、終楽章も終盤の跳躍で減速やミスなく、迫力ある強い打鍵で一気に突っ切る。
そんなわけで、第6日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
06. Jonathan FOURNEL (France, 1993-)
57. Yuki YOSHIMI (Japan, 2000-)
あたりである。
第1~6日を併せて、ファイナルに進める人数である6人を選ぶとすると
第1日
なし
第2日
58. Xiaolu ZANG (China, 1999-)
第3日
45. Tomoki SAKATA (Japan, 1993-)
第4日
34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-)
43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-)
第5日
なし
第6日
06. Jonathan FOURNEL (France, 1993-)
57. Yuki YOSHIMI (Japan, 2000-)
あたりになる。
さて、セミファイナルの実際の結果は以下のようになった。
【ファイナル進出者】
第1日
49. Vitaly STARIKOV (Russian Federation, 1995-)
第2日
なし
第3日
45. Tomoki SAKATA (Japan, 1993-) 〇
第4日
34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-) 〇
43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-) 〇
第5日
48. Dmitry SIN (Russian Federation, 1994-)
第6日
06. Jonathan FOURNEL (France, 1993-) 〇
なお、○をつけたのは私がファイナルに残ってほしかった6人の中の人である。
6人中4人。
概ね納得のいく結果で何よりである。
務川慧悟と阪田知樹、堂々のファイナル進出。
いったい誰が栄冠を手にするのか、ますます目が離せない。
なお、今後の日程は以下の通り。
【ファイナル】 2021年5月24日(月)~29日(土)
5/24 Vitaly STARIKOV (Tchaikovsky No. 1)
5/25 Tomoki SAKATA (Brahms No. 2)
5/26 Keigo MUKAWA (Prokofiev No. 2)
5/27 Sergei REDKIN (Rachmaninov No. 3)
5/28 Dmitry SIN (Rachmaninov No. 3)
5/29 Jonathan FOURNEL (Brahms No. 2)
※いずれも日本時間の翌朝3:00から
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