2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 1次予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ベルギーのブリュッセルで開催されている、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

5月4日は、1次予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。

 

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期

1次予選 第1日

 

 

 

 

 

以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。

 

 

16. Maria KHOKHLOVA (Russian Federation, 1991-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:52)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in C major op. 10/1

CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les arpèges composés

FRANZ LISZT: Erlkönig (after F. Schubert)

 

ロシアらしいしっとりした美音を持つ。

ただタッチの安定感は今一歩で、ハイドンではときどき指が転んだり、ショパンではときに音が抜けたりする。

 

 

38. Jinhyung PARK (Korea, 1996-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro vivace (Sonata n. 2 in A major op. 2/2)

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 10

FRYDERYK CHOPIN: Ballade n. 1 in G minor op. 23

 

スマート系の彼らしからぬ、じっくりと力を込めたベートーヴェン。

これはこれで悪くないが、モントリオールやリーズでのさらりと優美なベートーヴェンのほうが彼には合っていた気もする。

リストは力感とスマートさとが両立した名演。

 

 

44. Kazuya SAITO (Japan, 1990-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)

BÉLA BARTÓK: Etude op. 18/2

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 4 "Mazeppa"

MAURICE RAVEL: Jeux d'eau

 

自然体の美しい演奏で、ドイツ物にもフランス物にもよく合っている。

リストもいわゆる爆演系とは違った端正な演奏で、こういうマゼッパも大変良い(少しミスタッチが目立ってしまったのは惜しいけれど)。

 

 

25. Evgeny KONNOV (Russian Federation, 1992-)

 

OLIVIER MESSIAEN: Regards des prophètes, des bergers et des mages

WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro (Sonata n. 6 in D major KV 284)

ALEKSANDR SKRYABIN: Etude op. 65/1

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 4 "Mazeppa"

 

ロシア風の力強い音を持つが、表現は淡白なほうで、モーツァルトはもっと歌が欲しいし、マゼッパも力強いがややもっさりして安全運転的。

スクリャービンはお国ものということもあってか悪くない。

 

 

37. Ilia PAPOIAN (Russian Federation, 2001-)

 

JOSEPH HAYDN: Moderato (Sonata in E major Hob. XVI:31)

EINOJUHANI RAUTAVAARA: Etude op. 42/6

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in E flat minor op. 39/5

FRANZ LISZT: Hungarian Rhapsody n. 12 in C sharp minor

 

ロシア風の情熱的な打鍵と、古典にふさわしい均整のとれたタッチとを持ち併せている。

そのため、曲ごとの出来不出来のムラが少なく安定している。

 

 

49. Vitaly STARIKOV (Russian Federation, 1995-)

 

DMITRY SHOSTAKOVICH: Prelude and Fugue in D flat major op. 87/15

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro con brio (Sonata n. 11 in B flat major op. 22)

CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les tierces

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 8 "Wilde Jagd"

 

力強い打鍵を持ちながらも、それを感情のままにぶつけるのでなくしっかり制御しているのが特徴で、前奏曲とフーガなど特に似合う。

技術面でも今回の曲では概ね問題なし(ベートーヴェンで弾きにくそうな箇所で急にテンポが少し落ちるのはいただけないが)。

 

 

36. Kyle ORTH (United States of America, 1990-)

 

EINOJUHANI RAUTAVAARA: Etude op. 42/1

JOSEPH HAYDN: Sonata in B minor Hob. XVI:32

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 4 "Mazeppa"

 

大変情熱的な演奏で、ラウタヴァーラなど迫力満点。

ハイドンの終楽章であまりの高速テンポに破綻しかけたり、リストで内声の三度和音が曖昧になったりはするものの、全体的にはテクもあるほうで、次も聴いてみたいと思わせるところのある演奏。

 

 

13. San JITTAKARN (Thailand, 1992-)

 

WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro (Sonata n. 6 in D major KV 284)

FRANZ LISZT: Grande étude de Paganini n. 5

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in E flat major op. 33/7

SERGEY PROKOFIEV: Sonata n. 1 in F minor op. 1

 

モーツァルトはタッチコントロールが甘くペダルでごまかしがちな印象だが、他の曲は彼らしいさわやかなロマン性がよく出ている。

選曲のためもあってか、高松やジュネーヴのときよりも好印象。

 

 

22. Su Yeon KIM (Korea, 1994-)

 

WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro (Sonata n. 3 in B flat major KV 281)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in G sharp minor op. 25/6

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 10 "Der Zauberlehrling"

FRYDERYK CHOPIN: Ballade n. 4 in F minor op. 52

 

端正なロマン性を持つ。

ただ、モントリオールでファイナリストとなった彼女だが、エリザベートでも同様にいくかというと厳しいかもしれない(なお彼女はモントリオールを棄権するのか両立するのか、いずれにしてもすごいことである)。

 

 

55. Se-Hyeong YOO (Korea, 1990-)

 

WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro moderato (Sonata n. 10 in C major KV 330)

ALEKSANDR SKRYABIN: Valse op. 38

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in E flat minor op. 39/5

 

緻密なタッチコントロールによる、雄弁で音楽的な演奏。

モーツァルトなど、あの藤田真央に匹敵する、とは少し言い過ぎかもしれないが、音の粒の揃え方からは同等のこだわりが感じられる。

後の2曲も、雰囲気でごまかさない、明快で生き生きとした解釈。

 

 

04. Nicolas BOURDONCLE (France, 1998-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:52)

FRYDERYK CHOPIN: Scherzo n. 3 in C sharp minor op. 39

CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les octaves

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 8 "Wilde Jagd"

 

概ね弾けてはいるのだが、細部の詰めが甘く勢い任せになってしまっている箇所が散見される。

また全体的に音がやや硬めで、音で魅せるということがあまりない。

 

 

58. Xiaolu ZANG (China, 1999-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in C major Hob. XVI:50)

ALEKSANDR SKRYABIN: Sonata n. 4 in F sharp major op. 30

FRYDERYK CHOPIN: Etude in A flat major op. 10/10

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in D major op. 39/9

 

ハイドン、彼にしては少しミスが目立ったか。

スクリャービン、第1日のIvan BASICに比べソナタ感はあまりないがファンタジー感はよく出ており、技巧的にも優れている。

全体に強音がきつめなのが少し気になるが、弱音はきれい。

 

 

40. Youngho PARK (Korea, 1993-)

 

MAURICE OHANA Etude d'interprétation n. 2

LUDWIG VAN BEETHOVEN Allegro (Sonata n. 9 in E major op. 14/1)

ALEKSANDR SKRYABIN Sonata n. 9 op. 68

FRANZ LISZT Grande étude de Paganini n. 3

 

一見淡々とした冷静な演奏の中に、激しい熱情を秘めている。

技巧面でも相当な実力者で、ラ・カンパネラの同音連打も鮮やか。

優勝候補者(その記事はこちら)に彼もまた含めるべきだろう。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

38. Jinhyung PARK (Korea, 1996-)

44. Kazuya SAITO (Japan, 1990-)

37. Ilia PAPOIAN (Russian Federation, 2001-)

49. Vitaly STARIKOV (Russian Federation, 1995-)

36. Kyle ORTH (United States of America, 1990-)

55. Se-Hyeong YOO (Korea, 1990-)

40. Youngho PARK (Korea, 1993-)

 

あたりである。

次点で、

 

13. San JITTAKARN (Thailand, 1992-)

22. Su Yeon KIM (Korea, 1994-)

58. Xiaolu ZANG (China, 1999-)

 

あたりか。

第2日はたくさん挙げすぎてしまったかもしれない。

さすがはエリザベートコンクール、レベルが高い。

 

 

次回(5月5日)は1次予選の第3日。

 

 


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