ベルギーのブリュッセルで行われる、エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門が、ついに始まった(公式サイトはこちら)。
5月3日は、1次予選の第1日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表)
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期)
以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。
32. Rodolphe MENGUY (France, 1997-)
BRUNO MANTOVANI: Étude pour les octaves
JOSEPH HAYDN: Allegro moderato (Sonata in A flat major Hob. XVI:46)
ALEKSANDR SKRYABIN: Etude in D flat major op. 8/10
OLIVIER MESSIAEN: Par lui tout a été fait
フランス風の硬質な美音を持つ。
ハイドンなど細かいところでタッチにやや不安定さがあるが、他の曲では概ね許容範囲か。
41. Daria PARKHOMENKO (Russian Federation, 1991-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro con spirito (Sonata n. 9 in D major KV 311)
FRYDERYK CHOPIN: Etude in B minor op. 25/10
SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in D major op. 39/9
SERGEY PROKOFIEV: Sonata n. 3 in A minor op. 28
ロシア風の力強くもしっとりした美音を持つ。
ただし技巧面では万全と言えず、ラフマニノフで音を外すことがやや目立ち、またプロコフィエフももう少しキレが欲しい。
54. Xiaohui YANG (China, 1991-)
LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro molto e con brio (Sonata n. 4 in E flat major op. 7)
CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les degrés chromatiques
FRANZ LISZT: Etude de concert S 144/2 "La leggierezza"
CAMILLE SAINT-SAËNS: Etude en forme de valse op. 52/6
細身の音で派手さはあまりないが、表現が音楽的。
技巧的には最高度とは言わないにしても、リストやサン=サーンスを美しく聴かせるだけの技術は十分に備えている。
56. Sung Ho YOO (Korea, 1996-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Allegro (Sonata n. 15 in F major KV 533)
PASCAL DUSAPIN: Etude n. 2 « Igra »
FRYDERYK CHOPIN: Ballade n. 2 in F major op. 38
概ね問題なく弾けているが、全体的にあっけらかんとしている。
モーツァルトでは対位法的に左右で掛け合う美しい歌、ショパンでは平穏と激動との鋭い対比、そんなワンポイントが何かあると良かった。
30. Daumants LIEPINS (Latvia, 1994-)
JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:52)
MAURICE RAVEL: Sonatine
FRYDERYK CHOPIN: Etude in A minor op. 25/11
SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in A minor op. 39/6
みずみずしい音を持ち、端正かつ詩情豊か。
ただ、ショパンでは技巧的な弱さが出てしまっており、他の曲がよく弾けているだけに惜しい。
14. Mirabelle KAJENJERI (France, 1998-)
JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:52)
CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les arpèges composés
MILY BALAKIREV: Islamey
ハイドン、一つ前の人ほどの美音はないが、表現力は劣らない。
ドビュッシーも美しいが、バラキレフは丁寧に弾けているもののテンポが遅めで、キレが命のこの曲としてはやや物足りない。
02. Ivan BASIC (Serbia (Rep.), 1996-)
JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in C major Hob. XVI:50)
FRANZ LISZT: Grande étude de Paganini n. 6
ALEKSANDR SKRYABIN: Sonata n. 4 in F sharp major op. 30
ハイドンは疾走感があり、スクリャービンも内声までよく歌えている。
音色の魅力はやや乏しいし、技術的にも万全とは言えないが(リストの最後のユニゾンなど)、それでも浜コンやブゾーニのときより好印象。
53. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-)
LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro molto e con brio (Sonata n. 4 in E flat major op. 7)
FRYDERYK CHOPIN: Scherzo n. 3 in C sharp minor op. 39
FRYDERYK CHOPIN: Etude in A minor op. 25/11
SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in A minor op. 39/6
ベートーヴェンとショパンスケルツォは勢いがあって良かったが、最後の2曲のエチュードはところどころもたつきがちで、全体としてはやや尻すぼみの印象。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
54. Xiaohui YANG (China, 1991-)
30. Daumants LIEPINS (Latvia, 1994-)
あたりである。
次点で、
32. Rodolphe MENGUY (France, 1997-)
14. Mirabelle KAJENJERI (France, 1998-)
02. Ivan BASIC (Serbia (Rep.), 1996-)
あたりか。
第1日は、良いところまで行っているのだけれどあともう一歩、という人が多かったような気がする。
次回(5月4日)は1次予選の第2日。
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