2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 1次予選 第4日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ベルギーのブリュッセルで開催されている、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

5月6日は、1次予選の第4日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。

 

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

 

 

 

 

 

以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。

 

 

19. Junhyung KIM (Korea, 1997-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)

FRYDERYK CHOPIN: Polonaise in A flat major op. 53

EINOJUHANI RAUTAVAARA: Etude op. 42/4

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 10

 

音そのものはどちらかというとモノトーンだが、緻密なテクニックと表現力とがそれを補って余りある。

最後のリストも、Jinhyung PARKや務川慧悟に劣らぬ鮮やかさ。

 

 

21. Séverine KIM (Korea, 1994-)

 

JOSEPH HAYDN: Presto (Sonata in E minor Hob. XVI:34)

CLAUDE DEBUSSY: Etude pour les cinq doigts

FRYDERYK CHOPIN: Etude in F major op. 10/8

HENRI DUTILLEUX: Choral et variations (Sonata)

 

音はやや小ぶりだがかなりの弾き手で、ショパンこそブゾーニコンクールのとき同様の余裕のなさをわずかに感じるが、それでも相当弾けているし、ドビュッシーとデュティユーは最高度のキレをみせる。

 

 

05. Tatiana DOROKHOVA (Russian Federation, 1991-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro con brio (Sonata n. 3 in C major op. 2/3)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in B minor op. 25/10

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 4 "Fanfares"

VLADIMIR HOROWITZ: Variations on a theme from Carmen

 

ロシア風のパワフルな音がショパンやホロヴィッツで発揮されている。

ただ、ベートーヴェンではトリルやその類の音型がときにぎこちない。

ホロヴィッツもテンポが遅めで、また最後の主題再現時のオクターヴも苦しく、この曲らしい技巧的華麗さを出すには至っていない。

 

 

33. Aidan MIKDAD (The Netherlands, 2001-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Grave (Sonata n. 8 in C minor op. 13)

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 5 "Feux follets"

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 5 "Arc-en-ciel"

FRANZ LISZT: Erlkönig (after F. Schubert)

 

いくらでも速く弾けてしまえそうな、若々しく活きのいい演奏。

ただ、序盤はそうなのだが、曲の中途でテンポが落ちてしまい、特に「鬼火」の右手が単音から重音になった途端に精彩を欠くのは残念。

 

 

28. Hyuk LEE (Korea, 2000-)

 

JOSEPH HAYDN: Presto (Sonata in E minor Hob. XVI:34)

GUIDO AGOSTI: The Firebird Suite (after I. Stravinsky)

SERGEY PROKOFIEV: Etude in C minor op. 2/3

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 10

 

相当なキレをみせる反面ミスも多く、完成度よりも流れ重視の演奏。

とはいえ勢い任せの荒れはなく、ミスさえ気にしなければ音楽の造りはしっかりしており、音そのものも硬すぎずくっきり明快で素直、総合的にはなかなか聴かせるという不思議な魅力を持つ。

 

 

11. Wataru HISASUE (Japan, 1994-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Grave (Sonata n. 8 in C minor op. 13)

PASCAL DUSAPIN: Etude n. 2 « Igra »

FRANZ LISZT: Paraphrase sur un thème de Rigoletto de Verdi

 

少しそっけないほどに(美音や歌でなく)技巧そのもので勝負する。

「悲愴」では上のAidan MIKDADの勢いはないが、音楽の歩みはより盤石、「リゴレット」では阪田知樹の艶やかさはないが、左手内声の和音スタッカートはより精妙、と目立たぬところでの作り込みが見事。

 

 

48. Dmitry SIN (Russian Federation, 1994-)

 

JOSEPH HAYDN: Moderato (Sonata in C minor Hob. XVI:20)

FRANZ LISZT: Grande étude de Paganini n. 6

ALEKSANDR SKRYABIN: Fantaisie in B minor op. 28

 

ロシアらしい音とパワーを持つが、細部に気を遣うというよりは勢い任せのタイプで、特にリストでは細かなミスが多い(上のHyuk LEEのミスとは違って粗さを感じる)。

 

 

29. Taek Gi LEE (Korea, 1996-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:49)

FRYDERYK CHOPIN: Barcarolle in F sharp major op. 60

OLIVIER MESSIAEN: Etude de rythme n. 1 "Ile de feu I"

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in F sharp minor op. 39/3

 

弾けてはいるのだが、トップクラスの巧者たちには及ばない。

また表現が直線的に過ぎるところがあり、舟歌はもっと柔らかさが欲しいし、ラフマニノフも前日のMaxime ALBERTIに比べて生硬。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第4日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

19. Junhyung KIM (Korea, 1997-)

21. Séverine KIM (Korea, 1994-)

28. Hyuk LEE (Korea, 2000-)

11. Wataru HISASUE (Japan, 1994-)

 

あたりである。

次点で、

 

05. Tatiana DOROKHOVA (Russian Federation, 1991-)

33. Aidan MIKDAD (The Netherlands, 2001-)

 

あたりか。

第4日もうまい人がけっこういたので、このペースで選んでいると最終日にセミファイナリスト選定に苦慮しそう。

嬉しい悲鳴である。

 

 

次回(5月7日)は1次予選の第5日。

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。