2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 1次予選 第3日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ベルギーのブリュッセルで開催されている、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

5月5日は、1次予選の第3日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。

 

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表

2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期

1次予選 第1日

1次予選 第2日

 

 

 

 

 

以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。

 

 

42. Leonardo PIERDOMENICO (Italy, 1992-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in D major Hob. XVI:24)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in C major op. 10/1

EINOJUHANI RAUTAVAARA: Etude op. 42/1

ALEKSANDR SKRYABIN: Sonata n. 5 op. 53

 

イタリアらしいというべきか、明るい音を持つ。

ただ細部までよく詰めるというよりは、少々弾き飛ばすところがある。

それでも、配信の音質もあってかパデレフスキのときよりは好印象。

 

 

26. Aaron KURZ (United States of America, 1995-)

 

SERGEY PROKOFIEV: Allegro moderato (Sonata n. 6 in A major op. 82)

JOSEPH HAYDN: Moderato (Sonata in F major Hob. XVI:23)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in C minor op. 10/12

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 13 "L'escalier du diable"

 

プロコフィエフのソナタやショパンの「革命」のような激烈な曲でもあまり激しくしない、肩の力の抜けた演奏。

どちらかというと素朴な印象だが、概ね問題なく弾けてはいる。

 

 

47. Ilya SHMUKLER (Russian Federation, 1994-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro con brio (Sonata n. 11 in B flat major op. 22)

ROBERT SCHUMANN: Novellette n. 8 in F sharp minor op. 21 (8 Novelletten op. 21)

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 8 "Wilde Jagd"

 

彼の直線的な情熱がよく発揮される選曲であったように思う。

ただ、ベートーヴェンで急速なトレモロやアルペッジョのミスタッチが散見されるなど、技術的な詰めはもう一歩か。

 

 

03. Nathan BEN-YEHUDA (United States of America, 1994-)

 

OLIVER KNUSSEN: Variations op. 24

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro molto e con brio (Sonata n. 4 in E flat major op. 7)

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 10 "Der Zauberlehrling"

BÉLA BARTÓK: Etude op. 18/3

 

冷静明快なピアニズムを持ち、現代音楽によく合っている。

ベートーヴェンも、激情や感傷を排し純音楽的に磨かれた演奏。

全体に音楽的な完成度が高く、技巧的にも安定感がある。

うまくいけば優勝候補者(その記事はこちら)たりうるかも。

 

 

20. Seolhwa KIM (Korea, 1993-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Andante (Sonata n. 13 in E flat major op. 27/1)

FRYDERYK CHOPIN: Scherzo n. 2 in B flat minor op. 31

ALEKSANDR SKRYABIN: Etude in C sharp minor op. 42/5

OLIVIER MESSIAEN: Etude de rythme n. 1 "Ile de feu I"

 

悪くないのだが、突き抜けた個性を感じるかというと微妙なところ。

エリザベートコンクールともなると、何か特別に光るものがないと厳しいかもしれない(これらの中ではスクリャービンが情熱的で良いが)。

 

 

45. Tomoki SAKATA (Japan, 1993-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro (Sonata n. 15 in D major op. 28)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in A minor op. 10/2

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 5 "Feux follets"

FRANZ LISZT: Paraphrase sur un thème de Rigoletto de Verdi

 

さすがはリストコンクールの覇者、技巧に余裕がある。

技巧派といっても爆演というよりむしろ弱音主体の優美な演奏で、難曲であるショパンのop.10-2やリストの鬼火の滑らかさは特筆すべきものだし、リゴレットも細やかで流麗(ミスは少しあるも許容範囲か)。

 

 

09. Giuseppe GUARRERA (Italy, 1991-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro con brio (Sonata n. 3 in C major op. 2/3)

FRANZ LISZT: Sonetto 104 del Petrarca

FRANZ LISZT: Grande étude de Paganini n. 3

 

イタリアらしい明るい音色が、特にペトラルカによく合っている。

しかし、ベートーヴェンではテンポの安定感がいま一つであり、ラ・カンパネラではペダルが薄めで小気味よいがその分ミスが多い。

 

 

08. Salih Can GEVREK (Turkey, 1992-)

 

FRYDERYK CHOPIN: Variations brillantes in B flat major op. 12

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro vivace (Sonata n. 2 in A major op. 2/2)

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 2

ALEKSANDR SKRYABIN: Etude op. 65/3

 

広々とした美しい音を持ち、パワーもあり、ロマン派の曲が映える。

ただ、ベートーヴェンで急速上行音階がよろけたり、展開部で左手低音部の粒の揃いが悪かったりと、古典派は少し苦手そう。

 

 

15. Eylam KESHET (Israel, 1992-)

 

FRYDERYK CHOPIN: Nocturne n. 16 in E flat major op. 55/2

JOSEPH HAYDN: Moderato (Sonata in G minor Hob. XVI:44)

FRYDERYK CHOPIN: Etude in E minor op. 25/5

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in C minor op. 39/1

 

大きな破綻なく弾けているが、やや地味か。

これだけ猛者が多いと、もうワンポイント何か個性がないと埋もれてしまいやすいのも否めない。

 

 

34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-)

 

JOSEPH HAYDN: Allegro (Sonata in E flat major Hob. XVI:49)

FRANZ LISZT: Etude d'exécution transcendante n. 10

SERGEY PROKOFIEV: Etude in D minor op. 2/1

CLAUDE DEBUSSY: Feux d'artifice

 

浜コンやロンティボー同様、どの曲も完全に彼の血肉となっている。

バロックを得意とする彼だが古典派はあまり聴かないなと思いきや、他の誰とも違う美しいハイドン(それも様式感を損なうことがない)。

リストやプロコフィエフは彼のシャープなキレとエスプリが遺憾なく発揮、ドビュッシーもNHKでの演奏(その記事はこちら)よりいっそう洗練されている(左右交互トレモロや幅広いアルペッジョの美しいこと)。

腕達者の居並ぶエリザベートにあってなお特別な存在感をみせる。

 

 

43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-)

 

JOSEPH HAYDN: Moderato (Sonata in F major Hob. XVI:23)

FRYDERYK CHOPIN: Ballade n. 4 in F minor op. 52

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in A minor op. 39/6

GYÖRGY LIGETI: Etude n. 6 "Automne à Varsovie"

 

ロシアらしい力強い音を持つが、それを強烈に発散させるというよりは高い技術をもってしっかりコントロールし、オーソドックスな解釈につなげた、バランス型の演奏。

ハイドンからリゲティに至るまで、どの曲も高い完成度を誇る。

 

 

07. Jean-Paul GASPARIAN (France, 1995-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)

ALEKSANDR SKRYABIN: Fantaisie in B minor op. 28

FRYDERYK CHOPIN: Etude in E flat major op. 10/11

ALEKSANDR SKRYABIN: Etude op. 65/1

 

優勝候補の2人の後ということもあって、分が悪い。

ベートーヴェンはタッチが安定せずペダルでごまかしがちだし、ロマン派の諸曲も粗い箇所が散見される(フォルテも硬め)。

 

 

01. Maxime ALBERTI (France, 1991-)

 

LUDWIG VAN BEETHOVEN: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)

KAROL SZYMANOWSKI: Variations in B flat minor op. 3

SERGEY RACHMANINOV: Etude-tableau in F sharp minor op. 39/3

 

フランスらしい硬質の美音を持つ。

ベートーヴェンはややタッチの甘さもあるものの概ね悪くないし、シマノフスキやラフマニノフはエスプリの感じられる演奏となっている。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第3日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

03. Nathan BEN-YEHUDA (United States of America, 1994-)

45. Tomoki SAKATA (Japan, 1993-)

34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-)

43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-)

01. Maxime ALBERTI (France, 1991-)

 

あたりである。

次点で、

 

42. Leonardo PIERDOMENICO (Italy, 1992-)

26. Aaron KURZ (United States of America, 1995-)

47. Ilya SHMUKLER (Russian Federation, 1994-)

08. Salih Can GEVREK (Turkey, 1992-)

 

あたりか。

第3日は優勝候補者が何人も集まった、目玉の日であったように思う。

 

 

次回(5月6日)は1次予選の第4日。

 

 


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