ベルギーのブリュッセルで開催されている、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。
5月13日は、セミファイナルの第4日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)についてのこれまでの記事はこちら。
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者発表)
(2020年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ピアノ部門)が中止もしくは延期)
以下、使用されたピアノはいずれもマーネである。
また、以下の協奏曲はいずれもフランク・ブラレイ指揮、ワロニー王立室内管弦楽団との共演である。
34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Concerto n. 27 in B flat major KV 595
PIERRE JODLOWSKI: Nocturne
JEAN-PHILIPPE RAMEAU: Gavotte et six doubles
SERGEY RACHMANINOV: Variations on a theme of Corelli op. 42
DMITRY SHOSTAKOVICH: Prelude and Fugue in D flat major op. 87/15
モーツァルト、最晩年に書かれた最高傑作の、最高に美しい演奏。
繊細にして絶美、全篇がモーツァルトの優しさに包まれている。
欲を言うと、この曲としてはわずかに華美に過ぎると感じる装飾音やニュアンス付けもなくはないのだが、彼はこの曲を書いたモーツァルトよりも若いのだからこれはこれでいいのだし、それにこの演奏を昨日通勤中に泣きながら聴いた私に今さら文句を言う資格はない。
ラモー、もはや彼のシンボルのような曲だが、今回のマーネのピアノは、浜コンでのカワイ(その記事はこちら)ともオンラインコンサートでのスタインウェイ(その記事はこちら)とも違う、クラヴィコード風の繊細で軽やかなバロックの音がして、得も言われず美しい。
そしてラフマニノフにショスタコーヴィチ、選曲が渋すぎないかと心配したのは全くの杞憂で、“ロシア印象派”とでも名付けたいラヴェル風の妖しい美しさで魅せるコレッリ変奏曲から、各声部次々と鋭く畳みかけて息もつかせないフーガまで、間断なく聴き手を圧倒する。
会場の拍手のタイミングも、もはや審査員としてのそれではなかった。
43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-)
WOLFGANG AMADEUS MOZART: Concerto n. 17 in G major KV 453
FRANZ SCHUBERT: Wandererfantasie D 760
PIERRE JODLOWSKI: Nocturne
CLAUDE DEBUSSY: La plus que lente
CLAUDE DEBUSSY: L'Isle joyeuse
モーツァルト、第3日の阪田知樹の歯切れよいアーティキュレーションとは異なるレガート主体の演奏だが、タッチの繊細さは全く劣らない。
阪田知樹のくっきりと丸みを帯びた音と比べると鋭さがあるが、ロシア特有の華やかな音色を緻密にコントロールして美しく歌い上げる。
ソロ曲は、彼の持ち味をとりわけ活かす選曲とは言えないようにも感じるが(シューベルトやドビュッシーにしてはやや派手)、それでも和音は輝かしくアルペッジョはつややか、表現も細やかに行き届いていて、ピアニズムとして非の打ち所がない。
そんなわけで、第4日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
34. Keigo MUKAWA (Japan, 1993-)
43. Sergei REDKIN (Russian Federation, 1991-)
あたりである。
次回(5月14日)はセミファイナルの第5日。
―追記(2021/05/23)―
「マーネの平行弦ピアノ」と書いていましたが、どうやら平行弦でなく交差弦の通常のピアノのようで、「平行弦」の記載を削除しました。
マーネはバレンボイムと共同で平行弦ピアノを開発したものの、今回用いられているのはそのピアノではないそうです。
大変失礼いたしました。
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