股関節を正しく円滑に動かすためには腰背部の安定した維持が欠かせない。立位では下肢を除く部分の体重が両股関節にかかる。さらに歩行や走行など動作をおこなうさいには、その何倍もの重さで負荷がかかる。そのため下肢骨の結合は、体重を支持するために上肢骨の結合に比べ、より強固である。腰背部を安定して維持するためには、骨盤から股関節を介して伝達する力を分散して大腿骨に伝わる骨格位置を身に付けることが必要不可欠だ。
▲骨梁の図出典「基礎運動学 中村隆一」、出典:Grant’s METHOD of ANATOMY
骨盤から股関節を介して伝達する力を分散して大腿骨に伝わる骨格位置で、力学的に強度を備えた骨盤の位置は、恥骨結節と坐骨結節を結ぶ三角形の骨盤底面が接触する位置である。この骨盤と股関節のアーチ構造において、腰背部を安定して維持することができる。股割りで、骨盤の位置を検査する場合は、後方に坐骨結節を確認する。
▲骨盤のアーチ構造
股割りトレーニングで股関節の可動域が拡大したときに、仙骨と腸骨の間で、コクンという音を経験し、私は自分の仙腸関節の存在を実感した。仙腸関節は、仙骨と腸骨の両耳状面の間にある結合。この関節は、過去に動かない半関節として分類されたが、現在は、はっきりと区別できる関節隙と2個の対立する関節面をもつ滑膜関節として分類されている。仙腸関節の運動については、1.仙腸関節の上面と下面に隙間があく2.仙骨底が前後にゆれる(うなずき運動)3.腸骨が仙骨の上で水平に動く、3タイプの報告がある。私は仙腸関節を実感したが、運動については実感できていない。今後の股割りトレーニングの成果で、仙腸関節の運動について、なにか知り得ることがあるのなら楽しみだ。現在の私の考えとしては、仙腸関節は脊柱と骨盤を連結し、体重を分散するショックアブソーバーのような関節だと考えている。
▲基礎・臨床解剖学 翻訳早川敏之
腰背部を安定して維持するためには、脊柱と下肢骨の力学的に強度を発揮する位置、各関節が役割を果たせる状態、そして、背筋第1層~第6層、腹壁筋群、下肢筋群などが運動に際して正常に作用する状態であることが必要だ。 股割りで、骨格位置、関節の状態、筋肉の作用状態を検査し、検出された問題に対し、適切な処置を施すことが大切だ。そして、正しい動作の感覚入力、円滑な運動で出力をすることを繰り返し、正しい股関節の動きを身に付けることが必要だ。