体幹の回転力を安定させる多裂筋 | 股関節が硬い 徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座

股関節が硬い 徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座

骨盤後傾から骨盤をおこし股関節を超なめらかに。体幹と四肢を連動させ動きの質を追及する。運動とは人の重心が移動することである。運動を成立させるべく構造動作理論(Anatomical Activity)に基づくトレーニング方法と身体観察について綴ります。

背筋の第六層は、半棘筋、多裂筋、回旋筋からなる。これらの筋、とくに短い筋の作用は、おもに主動作筋としてよりは安定化筋として体幹の維持の役割がある。
 
半棘筋は、胸半棘筋、頚半棘筋、頭半棘筋の3つに区分される。胸半棘筋は、下位6個の胸椎の横突起、C6~T4の棘突起に付着する。頚半棘筋は、上位5個の胸椎の横突起、下位4個の頸椎の関節突起、軸椎の棘突起、C3~C5の棘突起に付着する。頭半棘筋は、厚く強力な筋で、半棘筋の中で最も発達している。C7~T6の横突起、C4~C6の関節突起、後頭骨に付着する。両側の筋が同時に作用すると、胸半棘筋と頚半棘筋は脊柱の胸部と頚部を伸展するように作用する。これらの一側性の作用は椎体を回旋させる。左右の頭半棘筋が同時に作用すると、頚部を伸展し、一側性に作用すると頭部をわずかに回旋する。
 
多裂筋は、腰多裂筋、胸多裂筋、頚多裂筋の3つに区分される。多数の筋束や腱束からなり、腰椎の乳様突起、胸椎の横突起、頸椎の関節突起、環椎を除くすべての椎骨に付着する。作用は脊柱を伸展、回旋、側方に屈曲する。多裂筋は、体幹回旋時の安定化筋として作用する。多裂筋の中で腰多裂筋がもっとも発達している。腰部では特に伸展に作用する。
 
回旋筋は多裂筋の深部にあり、横突起と棘突起との間の溝の最も深層にある筋束を構成する。この溝は、仙骨から軸椎まで脊柱の全長にそって走る。回旋筋は胸部で最も発達している。両側性に作用すると、脊柱の伸展を助ける。一側性に作用すると、脊柱の回旋を助ける。回旋筋の主な作用は、脊柱の安定化にある。
 
▲基礎・臨床解剖学 翻訳早川敏之 
 
背筋の第六層は、脊柱を軸とした回旋・回転運動の安定化に重要だ。若い頃、一輪車に乗る練習をしたことがあった。それまで猫背姿勢が慢性化していたこともあり、一輪車に乗って脊柱を立て、バランスをとることで、脊柱の形がイメージできるくらいの筋肉痛になった。これは、第六層の半棘筋、多裂筋、回旋筋などの筋肉痛だったと理解している。普段の生活動作では、精密な脊柱のコントロールををしなくても、猫背姿勢でまかなえてしまえることに、大きな気づきがあったものだ。
 
競技動作では、腰の回転を速くしたい、走行時の体幹を安定させたい、ノーモーションでハイキックを放ちたい、ターンを安定させたい、など、それぞれ目標がある。おそらく、身体に一足飛びという概念はなく、一層~六層まで順にクリアしていかなければ目標を達成できないのだと思う。
 
そして、股割り動作にて四肢と体幹の連動性と、背筋の第六層の作用状況を検査する。第五層の脊柱起立筋に左右差がない状態、四肢に左右差がない状態、 胸最長筋が胸部と腰部を直立に保つように脊柱にそって縦に浮き上がっている状態でスタートする。
 
体幹の回転運動を安定させる要素は、脊柱の安定化の他に、下肢の安定、上肢の安定、環椎と軸椎の回転運動を円滑にすることなどがある。