脊柱起立筋と大腰筋の収縮力で骨盤を前傾する | 股関節が硬い 徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座

股関節が硬い 徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座

骨盤後傾から骨盤をおこし股関節を超なめらかに。体幹と四肢を連動させ動きの質を追及する。運動とは人の重心が移動することである。運動を成立させるべく構造動作理論(Anatomical Activity)に基づくトレーニング方法と身体観察について綴ります。

体位と移動運動の重要な要素の一つは、大腿骨頭部上での骨盤の前後方向への傾斜である。骨盤の前部の近位方向への運動、つまり恥骨結合を臍の方に持ってくる運動は、後方傾斜(骨盤後傾)とよばれ、腰部脊柱の屈曲をともなう。これと反対方向への骨盤の傾斜は腰部脊柱を伸展させる。この骨盤の前方傾斜(骨盤前傾)は脊柱起立筋と大腰筋の収縮によりなされる。骨盤の後方傾斜には、腹直筋と内外腹斜筋ばかりでなく、ハムストリング筋と大臀筋も関与する。

 

▲基礎・臨床解剖学 翻訳早川敏之  
 

一般にハムストリング筋として知られる大腿の後部の筋群は、股関節を伸展させ膝関節を屈曲させる作用がある。この筋群は、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋の3つからなる。大腿が固定されていると、とくに大腿二頭筋は、骨盤の後方への傾斜に作用する。大腿二頭筋は長頭と短頭の2頭を起始にもつ。大腿二頭筋の短頭を除き、これらの3つの筋はすべて近位側は坐骨結節に付着する。大腿二頭筋の短頭は、大腿骨の粗線外側唇と外側顆上線からおこる。半腱様筋と半膜様筋は大腿の後内側に位置するのに対して、大腿二頭筋は後外側にある。

 

臀部のもっとも表層の筋が大臀筋である。身体の筋のうちで最大で、この筋が大きいことがヒトの筋系の特徴で、これは直立姿勢を獲得する上で果たした役割に起因すると考えられている。大臀筋は腸骨の後臀筋線より後方、仙骨、尾骨の外側縁、胸腰筋膜、仙結節靭帯からおこり、下外側方に走る。大転子を越え、浅層は大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯にうつり、深層は大腿骨の臀筋粗面に付着する。骨盤が固定されていると、大臀筋は大腿を屈曲位から伸展させる作用がある。大腿の強い外旋を助ける作用もある。上部の線維は股関節における強い外転に作用する。大腿が安定していると、この筋はハムストリング筋とともに、かがんだ姿勢から身体を起こす時のように骨盤を大腿骨頭上で後方へ回旋させるのを助ける。腸脛靭帯への付着によって、大臀筋は大腿骨を脛骨上で安定化させる助けとなる。また正常歩行の様々な位相において、断続的に作用するという点で重要である。

 

梨状筋は中殿筋の深部に横たわっている西洋なし形をした筋である。仙骨の前面で上方にある3つの前仙骨孔の間および傍らからおこり、筋束は外側方に向かって集まり大坐骨孔を通って骨盤腔を出る。大転子の上縁に付着する。正常では、大坐骨孔を出るとき坐骨神経のすぐ上に横たわるが、ときには坐骨神経の総腓骨部が梨状筋を貫き、分割する。この場所で神経がワナにかかったようになるのを梨状筋症候群と呼ぶ。梨状筋の作用は伸展された大腿を外側方に回転する。大腿が屈曲していると、股関節を外転する。

 

▲日本人体解剖学 金子丑之助著
 

大腿四頭筋は脚の大きな伸筋である。この筋は、外側広筋、中間広筋、内側広筋、大腿直筋の4つの部分からなる。このうちの3つ、すなわち広筋は大腿骨上に起始があるが、大腿直筋は骨盤からおこる。大腿直筋は2頭からなり、下前腸骨棘および寛骨臼上縁からおこる。これらの筋は大腿前面をくだり、幅広い筋膜によって膝蓋骨底に付着する。大腿直筋は膝を伸展させるだけでなく、股関節を屈曲させる作用がある。この筋の作用は大腿が固定されていると、骨盤の前方への傾斜を助ける。

 

▲日本人体解剖学 金子丑之助著
 
競技動作において、脊柱起立筋と大腰筋の収縮によりなされる骨盤の前方傾斜(骨盤前傾)は重要だ。股割りは、脊柱起立筋と大腰筋を、どの程度、収縮して作用させることができているか、検査するのに適している。
 
股割り動作で骨盤を前方傾斜するさいに、脚を固定することが重要だ。大臀筋と大腿四頭筋、ハムストリング筋、梨状筋などの外旋六筋など、それぞれの筋の作用、主動作筋と拮抗筋の関係を理解し、脊柱起立筋と大腰筋の収縮率を高めたい。

 

 

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