綿(わた) アオイ科 9/5撮影 東京

今回も茶花から
茶道や日本の文化、工芸を
皆さんと一緒に學んでいきたいと思います。

今回は【綿(わた)】です。

◼️南京綿から日本へ
日本の綿はアジアワタの系統の
キダチワタが中国に伝播し、
そこで品種改良された 
南京綿の系統といわれています。

綿の花 9/17東京

花は一日花で、朝開き夕方にはしぼむ。
しぼみ始めると下のように赤く変わります。

色が変わるなんて茶席に入れたら
おもしろいですね。



南京綿 9/7東京

◼️綿が日本に伝来するまで
インドでは古くから綿が栽培され、
モヘンジョ・ダロの遺跡からは
紀元前2500年-同1500年の綿布が
発見されています。

欧州ではまだ見たことの無い綿を
「インドには羊毛が生える木がある」と
伝わっていたそうです。


『日本後紀』には、日本への綿の伝来は
8世紀末三河国に漂着したインド人が
もたらした種子によるとされていますが、
栽培は定着せず
その後16世紀末に中国、朝鮮から
種子が導入されたことにより
九州などで栽培が始まり、
江戸時代には日本各地に栽培産地 ができました。

畿内の摂津 ・河内 ・和泉 ・大和 と三河 ・
尾張両国,及 び瀬戸内海浴岸の播磨 ・備前 ・
備中 ・備後 ・安芸 ・讃岐 と山陰の伯耆などです。

しかし、現在国産綿花の国内自給率は0%です。
国内ブランドのファッションは高額ですが、
原料を作る農家さんが綿を作っても
共生できないのは残念です。


◼️「真綿」と「木綿」の違い

真綿
真綿は蚕(かいこ)の繭(まゆ)から
作る動物繊維です。
紡いだ糸でつくる織物が「絹(織物)」で
紬の原料にもなります。




木綿
木綿は、今回紹介している
アオイ科の植物「綿」からとれる植物繊維です。
英語ではcotton(コットン)です。 


 


「徐々に責める、痛めつける」という意味で
使われる「真綿で首を絞める」
木綿よりも古くから使われてきた
絹だからこその表現らしいです。


◼️万葉集のなかの綿

しらぬひ筑紫(つくし)の綿(わた)は身につけていまだは著(き)など暖(あたた)かに見ゆ

沙弥満誓(さみまんせい)

僧侶である沙弥満誓が723年に筑紫観音寺別当
として大宰府に赴任し筑紫名産の綿を誉めて
旅人達に筑紫の素晴らしさを伝えているようです。

この綿は時代的に「真綿(絹)」だと
考えられます。


◼️9月9日「重陽の節供」の着せ綿


9月9日の重陽前夜
菊に真綿を被せ夜露を集めます。

時代を経て菊の色に合わせて
真綿の色も決められるようになりました。

移しとった菊の露と香りで肌を撫で
美と長寿を祈る日本の伝統文化です。

このように毎回稽古の際には
点前だけでなく
義務教育や高校大学では學べない
「日本人としての嗜み」
日本文化や歳時記を楽しく學びます。




和菓子も、もちろん「着せ綿」です。

日本は本当に素晴らしいな~と思えるのは、
やはり日本の伝統文化芸術 を総合的に包含する
茶道を學ぶ事で生まれます。

そんな茶道の素晴らしさを私に教えてくれた
恩師の熊倉功夫先生 を前回は紹介しましたが、
茶懐石料理を教えてくれた高橋英一先生  の
素晴らしい動画も紹介しておきます。