今回も茶花から
茶道や日本の文化、工芸を
皆さんと一緒に學んでいきたいと思います。

今回は
茶の湯を代表する花
【椿(つばき)第二回目】です。

何とか第二回目を小正月に配信できました。

  
◼️「万葉集」「日本書紀」に見る椿の霊性

《万葉集》
三諸は 人の守る山 本辺には 馬酔木花咲き 
末辺には 椿花咲く うらぐはし 
山そ 泣く子守る山

⚫訳
麓では馬酒木が咲き、山頂には椿が咲く。
ああ、心惹かれる山よ、
泣く子のお守りをするように大切にする山よ。

三輪山は、山全体が御神体とされる
神の山として知られています。

その麓には海石榴市(つばいち)という
市場があった所から、三諸の地は
三輪山とも考えられています。

民族学者の折口信夫氏は
「この場所は修験者のような呪力を持った人が
椿の杖を持ち、土地を浄化することで
この海石榴市を作ったようだと云っています。」

《日本書紀》
景行天皇が九州で起こった乱を鎮めたおり、
土蜘蛛(大和朝廷に服従しない民族)に対して 
「海石榴(ツバキ)の椎」を用いた。

海石榴樹(ツバキノキ)を採って、
それを椎(ツチ=槌=工具)を
作って兵(ツワモノ=武器)を
作ったと記されています。

この中で「椿の木」は
土蜘蛛退治の武器とされ、
しかも呪術的な霊木として扱われています。


◼️東大寺二月堂「お水取りの椿」は
「卯杖」の儀式から生まれた!


日本の卯杖 (うづえ)卯槌(うづち)という儀式は
中国、漢朝の剛卯杖という風習が
日本に伝わり、
予祝行事に用いる神聖な木の棒。

小正月の粥(かゆ)をかき回すために用いる
「粥かき棒」または新嫁を叩いて多産を促す
「嫁たたき棒」など各地にある
「祝棒 (いわいぼう)」の風習
じったものと言われています。

正月から最初の卯の日に、
邪気を祓うため、

杖で大地をたたく儀式です。




奈良平安時代、宮中で日本化し、
中国で霊力があるとされる「桃の杖」に代わり、
梅・桃・椿・柊や柳などの陽木で

尺3寸(約1.6m)に切ったのち

一本ないし二・三本を束ね、

五色の糸を巻いて寿詞の奏上とともに

天皇へ献上されました。

これを御帳の四隅に立て邪気を祓ったと

されています。

平安時代には縁起のものとして

互いに「卯杖」を贈り合い、

新年を迎えた最初の卯の日から節分まで、

室内の几帳や柱などに吊るして飾られました。


引用「卯日椿杖」正倉院 南倉

奈良の正倉院にあるこの「卯日椿杖」は

孝謙天皇が752年4月9日に
東大寺大仏殿開眼供養に使われたと
伝わっています。

そのお水取りの行法には
紅白の和紙で作った椿、
「二月堂椿」が供花されます。

なぜ椿の造花なのか?という答えの
一つにはやはり、
孝謙天皇が「椿杖」を用いて
東大寺大仏殿開眼供養に使ったことや、
椿の霊性が大きいのではないかと私は思います。

 

卯杖は、次第に全国各地の神社の儀式にも

取り入れられるようになり、

伊勢神宮にも卯杖の記録があります。


また京都の上賀茂神社では

現在でも卯杖を大神に奉納する神事が行われ、

他の全国の神社でも卯杖の儀式が

行われていますので、ぜひ皆さんの

近くの神社でも調べてみてください。


引用元:萬々堂通則さん

そしてお水取りと言ったら
2月~3月中旬まで期間限定で販売されている
銘菓「のりこぼし」が有名です。
化粧箱まで美しいですね。


◼️空海さんの錫杖も「椿」

日本に密教を伝えた
真言宗の開祖・空海さんもまた、
椿で作った錫杖(しゃくじょう)を
携えて全国を巡り歩きました。

「大同二年(807年)に空海(後の弘法大師)が、遣唐使として唐国に渡り、恵果大阿闍利より密教を授かり帰国、約二年間九州に滞在なされ、
当山椿堂に巡錫し、持した椿の錫杖で
奥の院のご霊水を、湧き出されたことから、
椿大師「椿堂」といわれとされています。



◼️「卯杖」「振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)」
「どんど焼き(左義長)」は共通の儀式


・奈良平安で確立された儀式
正月から最初の卯の日に、邪気を祓うため
杖で大地をたたく儀式「卯杖」

・平安時代の正月の遊びとされる

・1月15日の小正月に行われる
平安時代の厄祓いの儀式どんど焼き(左義長)

もぐら打ち(もぐらうち)は、
竹に巻いた藁等で家先や田畑の地面を
叩いてまわる伝統行事もある。


つまりこれら3つの儀式は
正月に行われること、
地をたたく儀式として共通しています。

私はこれら3つの儀式は宮中儀式と
民衆儀式の形が違うのみで、
同じ目的の儀式・同じ祈りが
込められていると思います。

ゆえに、現代の茶道に見られるように
正月だから平安童の遊具として「振振」を
飾るというだけでなく

むしろ「振振」は新しいものであり、
もっと本質がわかれば室礼も趣向も
広く深くすることができるはずです。

すみません
やはり「椿」は二回で終わりませんでした。
次回「椿」最終回になります。