《中編》 より
 

 

【TPPの本丸】
 今年2月14日の米下院公聴会では、米国の重要ターゲットが、「日本郵政問題」であると確認されています。
 簡易保険93兆円をゆうちょ預金175兆円とあわせると、ゆうちょマネーは約270兆円になります。これがTPPの本丸です。かつて小泉・竹中ラインにやらせようとして失敗したことを、今度は民主党政権にやらせようというのがアメリカ側の目論見です。(p.209)
 中国やロシアがTPPに参加しようとすれば、困るのは、じつはアメリカのほうです。・・・(中略)・・・いいとこどりを目論むアメリカに、牽制球を投げつけたということでしょう。そのため、アメリカ財界人の間でもTPP論議が中断するようなことが起こっています。(p.210)
 日本政府が中国やロシアを招いたとは思えないけれど、アメリカの独善を阻止するには、BRICs諸国と共闘した方が世界経済は安定するだろう。
 国際経済に対して毅然とした態度をとっているロシア君と中国君は本当に男らしい。それに比べて日本ちゃんは女の子みたいに柔だけど、日本はアゲマン国家だから、日本が付く方に世界は動くようになるはずである。日本はもう、「チンピラ国家アメリカにしゃぶられるのはもう嫌よ」とはっきり言わなくても、裏側で行動して大丈夫な時期に来ている。
   《参照》   『中国元がドルと世界を飲み込む日』 ベンジャミン・フルフォード (青春出版社) 《後編》

             【ペルシャ湾岸協力会議の発表の重大性】

 

 

【好況・不況を定めるマネーストック】
 経済が好況になるか不況になるかは、銀行が市中に潤沢に供給するか否かによって決まります。(p.239)
 単純に言えば、資金の供給量が経済の成長度合いに比較して、増えれば好況(インフレ)、減れば不況(デフレ)になる。
 しかし、ここでは、資金の供給量に関して、政府日銀のマネタリーベースと市中銀行のマネーストックの2つの問題があることがポイント。
 ただし、好況、不況は、日銀のマネタリーベースの供給量だけでは決まりません。日銀がマネタリーベースを増やしても、銀行が貸し出しを増やさなければ、企業にお金は回ってきません。つまり、銀行がそのマネーストックを信用乗数どおりに貸し出しているかという点がとても重要になってくるわけです。(p241)
 問題はマネーストックの側にある。そこに絡んでいるのがBIS規制である。

 

 

【流量制限をしているBIS規制】
 当たり前の話に聞こえるでしょうが、ヨーロッパの銀行家の意図を知る上で、ここは非常に重要なポイントです。いくら日銀が国債を購入し銀行に現金を供給しても、市中に通じる銀行の蛇口を誰かが固く閉じてしまえば、それは世の中に流れ出て行きません。
 そして、その蛇口を誰が握っているのかといえば、BISなのです。(p.241)

 つまり、日本のマネーストックは、政府にも日銀にも決定権がなく、すでにBIS第2次バーゼル規制(バーゼルⅡ)下のいまでさえ、すべてBISが決めるに等しい状態になっているわけです。・・・(中略<1>)・・・。
 このように、いま日本のマネーストックは、BIS規制がボトルネックになり、銀行は市中に資金を供給できなくなっています。現在銀行はBIS規制により、企業や個人に貸し出すのではなく、国債を買うしかない状況になります。(p.242)
 下記リンクと読み合わせれば、BIS規制は、世界中の国々の市中不況と国債累積危機の両面から煽ることを目的としているらしい。
      《参照》  『2012年、日本経済は大崩壊する』 朝倉慶 (幻冬舎) 《前編》

                【BIS規制】

 であるなら、国際経済は、まさに隘路へと押し込められて、暴発へと向かわされていると見ざるを得なくなる。

 

 

【復興国債案】
 上記書き出しの・・・(中略<1>)・・・の部分。
 だからこそ私は、日銀が直接に復興国債を引き受けて、財務省が資金を使えばいいのだと主張しました。日銀と政府のやり取りで完結させれば、そこに銀行は入りませんから、BIS規制も関係ありません。震災復興という絶好の大義名分がありますから、中央銀行の直接引き受けを咎め立てする声もでなかったことでしょう。(p.242)
 上記リンクの 『2012年、日本経済は大崩壊する』 を読んだ時は、日銀引き受けであろうと復興国債を出せば、市中銀行と同じBIS規制の対象になるのだと思い込んで読んでいた。(!)
 とにかく、現状では、
 BIS規制により、我々の預金は企業への貸し出し原資になっているのではなく、政府特別会計の収入になっているのです。
 それが日本のデフレを長引かせ、いままた震災復興を阻み、震災大不況を誘発しかねない状況を生んでいるわけです。(p.242-243)

 

 

【日本の不況を仕掛けているBIS】
 ヨーロッパの大銀行家は、BIS第2次規制のころから日本国際の格付けを下げさせ、世界の資金が日本に流れ込まないようにしました。とくに今後に始まるBIS第3次規制以降は、だんだんと、国債の格付けに合わせて自己資本比率が毀損される仕組みに移行していきますから、日本の銀行にドル買い、ユーロ買いの圧力として働きます。アメリカの実体経済は相当にひどいものですが、それでも米国債の格付けは日本国債よりも上ですから、米国債買いです。さすがにユーロはボロボロですが、それでもトリプルAのルクセンブルグ国債やドイツ国債の買い圧力が働いています。
 つまり、1500兆円の日本の個人資産を吸い上げるために、彼らは意図的に日本国債の格付けを下げているのです。日本の不況は意図的に仕掛けられており、それはBISがつくっているということです。(p.245)
 「ルールを勝手に変えて、自分に有利にする」
 略奪経済が基礎になっている日本以外の諸国家は、このようなことを当たり前にするということを、若者たちは、国際的な教養としてちゃんと知っておいたほうがいい。
   《参照》   『じゃんけんはパーを出せ!』 若菜力人 (フォレスト出版)

              【戦略思考における必勝法】

   《参照》   『アメリカはどれほどひどい国か』  日下公人&高山正之  PHP  《前編》

              【略奪経済】

   《参照》   『お金の正体』 日下公人 (KKベストセラーズ)

              【略奪と踏み倒しは国際金融の常識】

 貪欲な狼たちが仕掛けるBIS第3次規制によって、羊のように従順な日本は、みすみす餌食となるのか、それとも、それによって欧米が自ら墓穴を掘るのか、あるいは、天佑があって何か大きな世界の変化が生じるのか。

 

 

【世界の経済カーストとその手口】
 誰がどういう数字を見たいのかが決定的な因子であるとすると、経済指標や経済統計を見るときは、世界の経済カーストを見なくてはいけない、ということになります。
 世界の経済の頂点にいるのは、欧米の巨大銀行のオーナーである銀行家です。
 そして、その下にいるのは、欧米巨大銀行の頭取です。その下には、IMF、BIS等の国際金融機関がいて、さらにその下に巨大投資銀行頭取クラスがいます。(p.225)
 1900年代初頭、アメリカでストッククラッシュが起こったさい、マネーストックという数値の重要性を知っていたJ・P・モルガンは、金のリザーブなしにドルを発行して、当時のアメリカをクラッシュから救済し、一躍アメリカのヒーローとなったという。抜け駆け的だったFRB設立の前にあったことだという。「やはり頼りになる中央銀行が必要だ」という世論を形成する上で、重要な役割を果たした事件であったことが記述(p.255) されている。
 白川総裁がBISに副議長に選ばれたことから見て。日銀も彼らの軍門に完全にくだったと見るべきでしょう。
 こうした姿勢をつづける総務省、日銀は、マネーストックの増減によってインフレとデフレが起こるという事実や、お金の価値は絶対的な基準ではないという事実を私たちから隠し、国際金融資本が望むとおりにひたすら大不況を演出しているように見えます。
 しかも、いまBIS第3次バーゼル規制(バーゼルⅢ)は着々と準備されています。世界のマネーストックの蛇口が、間もなく閉められようとしているのです。
 ここまでくれば、世界経済を待ちうける次の展開は、おおよそ想像がつくというものでしょう。大不況、戦争は、これからも十分に起こりうるということです。(p.262)
 ピンチとチャンスは裏表である。

 

 

<了>